ARIA星人イアちゃんと出会った結月ゆかりの青春模様   作:へるしぃーぼでぃ

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イアとゆかりとオネ、CeVIO組に出逢う

 

 

ジャーン……とギターの音が狭いスタジオに反響する。

息の荒いゆかりとイアが上気した顔で互いを見やると、ゆかりはギターを置いた。そして渾身のドヤ顔で目の前のオーディエンスに吠える。

 

「どーですかオネちゃん!私たちのデュエット曲はっ!魂が震えたでしょう!?」

 

感想を求められる鑑賞客だったオネ。

彼女はドヤ顔のゆかりを数秒見つめると、イアに向き直ってニッコリ笑った。

 

「綺麗な歌声だったよ姉さん。隣の音が邪魔だったけど全然気にならなかった」

 

「えへへ、ありがとう、オネ」

 

「ちょっとォ!?それはあんまりですよオネちゃん!?……でもイアちゃんの声が綺麗なのは真理」

 

ギャンギャン吠えるゆかりに、「なんだコイツうるさいな」という表情を向けるオネ。イアは妹に褒められニコニコとしている。

三人は今、アパートから一駅離れた所にあるスタジオにて演奏・評価をしていた。

弱音ハク命名による『ふたりはゆかいあ!』(仮)というユニットを組むにあたり、実際の相性を第三者視点(オネ)から見定めてもらおうと来たのである。

そんな経緯で、いつもの如く睨み合うゆかりとオネに、褒められてテレテレしていたイアが申し訳なさそうに上目遣いでオネに喋りかけた。

 

「オネ、私だけじゃなくて、ゆかりさんの方もちゃんとした意見が欲しいな。今日はユニットとしての私たちを見て、ってお願いしたはずだよ?」

 

姉に優しく窘められ、唇を尖らせたオネがしぶしぶといった様子でゆかりに向き直った。

 

「じゃあ本音を言うけど、ゆかりは勢いはあるけど自分の演奏に酔いすぎ。自信があるのはいいと思うけど、もう少しテンション低めでいいと思う」

 

「っえ」

 

ガチの評価にゆかりがピシッと石になる。

最近、演奏に自信がついてイケイケモードになっていた手前、それをダメ出しされて多大なダメージを受けたようだ。

そんな固まったゆかりをつんつん突っつくイアに、オネはついでというふうな流れで姉にも評価を下した。

 

「それに姉さんも、なんていうか良くも悪くもマイペースなんだよね。自分の歌唱力は万全に発揮されてるけど、ゆかりとの親和性が皆無」

 

「はぅ」

 

愛する妹からの厳しい意見に涙目になるイア。

哀愁漂うスタジオ内に、トドメと言わんばかりにオネの言葉が響いた。

 

「つまり相乗効果……化学反応が皆無。結論、ユニット組まずにそれぞれで活動した方がいいんじゃない?」

 

「それはダメです!!」

「それはダメ!!」

 

二人の叫びがハモる。オネはそんな二人にため息をこぼすと、「じゃあどうするの?」と視線だけで促した。

二人は顔を合わせてしばし考え込むと、イアが両手をぎゅっと握りしめて言った。

 

「こ、これからもっと頑張るっ!」

 

「ハイ可愛いけどダメ。気合いでどうにかなるなら世の中みんな成功してるよ。もっと具体的に」

 

しゅんとするイアの隣で、ハッと何か閃いたゆかりが真顔で呟いた。

 

「二人の親和性を高める……、つまり、同棲して私生活の段階からイアちゃんと一緒になれば……ッ!」

 

「ハイ却下。下心がまるっと出てるし、というか今でも私生活は十分に干渉してるでしょ。やる気あるの?」

 

呆れるオネの言葉に、ゆかりはぐうの音も出ないとはこの事か、思い切り表情を引き攣らせる。

と、その時。

ピピピピッとタイマーの音が鳴った。オネが入口付近にあるタイマーを停め、二人に向き直る。

 

「あーあ、もう終わりの時間だね。スタジオを利用しての貴重な練習だったのに、成果が見合ってないよ」

 

オネの容赦ないため息で、二人はノックアウト。

二人は落ち込みながらもヨロヨロ楽器を片付け立ち上がると、ゆかりが突如として爆発した。

 

「……ぬぅ、ぬぁあー!!頼んだのはコッチですけど、もう少しなんか褒めてくださいオネちゃん!親和性は回数こなせばその内合ってくるハズです!だから今は良かった所を褒めて下さい!!私は褒められて伸びるタイプなんです!!」

 

一通り叫び終えて、はぁはぁ息を荒らげるゆかり。

オネは冷たい視線を寄越したが、その内ありえないほど綺麗な笑顔になるとゆかりの肩に手をポンと置いて言った。

 

「演奏の腕はいいんだから、姉さんと別れて一人で活動した方がいいよ」

 

「それ全く褒めてないですからね!?!?」

 

オネはソロ活動を執拗に勧めてくる。

愛しの姉とペアを組むゆかりの事を、まだ全然許していないらしかった。狂犬オネである。

 

「オネちゃん、ゆかりさん。ここの二階、カフェになってるみたい。ちょっと休憩してこう」

 

ギャーギャー言い合う二人を余所に、イアが壁に貼られた案内図を見て一人、早速部屋を退出していく。

この姉は姉で、全然妹の言うことを聞かずマイペースを貫くから困ったものだ。

 

「あっ、待ってくださいイアちゃん!一緒に行きましょう!」

 

「あ、ちょっと二人とも!?……っもう!本当にやる気あるのー!?」

 

オネの叫びはスタジオ内に反響したが、二人の耳にはあまり届かなかった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

一行はてくてく歩いて二階に上がると、オシャレ感漂うカフェの入り口に辿り着いていた。

ゆかりがごくりと唾を飲み込む。

 

「なんだか高そうな雰囲気ですね。私たちの財力で耐えられますか?」

 

「大丈夫じゃないかな。ほら、あれ見て」

 

イアが指さしたのは、入り口手前に置かれた看板だ。

可愛らしい筆跡で書かれた看板には『ちぇびおカフェ』と大きく店名が書いてあり、その下には都内でコーヒーを飲むには破格な値段が設定されていた。

 

「ホントだ、安い。あ、しかもスタジオを借りた人には、そのレシートを見せれば割引だって」

 

オネが驚いたように言う。ゆかりは目を輝かせた。

 

「最高じゃないですか。歌って小腹も空いたことですし、ここで何か軽く食べていきましょうか」

 

言うが早いか、ゆかりはさっきの躊躇はどこへやら早速扉を開けて入っていった。

それに続いてイアとオネも入ると、出迎えたのは一人の青年だった。

 

「おや、可愛らしいお客さんたちだ。いらっしゃい」

 

そう言って白い歯を見せた青年は、デカかった。

カウンター越しでもゆうに180は超えると分かる長身を前に、イアたち160未満はボケーっと見上げて立ち尽くしてしまう。

 

「?、空いてる席へどうぞ、お嬢さんたち。注文が決まったら呼んでね」

 

圧倒されているイアたちに首を傾げた彼。

そんな青年に席を勧められて、いそいそとテーブル席についた三人は完全に恐縮してしまっていた。

 

(デ、デデデカいですね、あの人)

 

(ちょっと、動揺しすぎでしょゆかり。あのくらいの男の人は普通に居るって。……多分)

 

こしょこしょ小声で話しかけてきたゆかりに釣られて小声で返すオネだが、いざ目の前で高身長男性を見るとやっぱり多少の恐怖感はあるらしかった。

 

「背が大きいですね。何を食べてそんなに大きくなったんですか?」

 

そんな中、イアだけはのほほんとそんな質問を繰り出した。ゆかりとオネがヒュッと息を飲む。

青年は一瞬ポカンとしたが、直ぐにはにかんで答えた。

 

「はは、別に普通の食事だよ。んー、でも強いて言うならラーメンと草加煎餅かな?」

 

成長には1ミリも関係なさそうな食べ物を紹介された時、店の奥から明るい声が響いてきた。

 

「タカハシさーん!制服に着替えましたよー!」

 

そう言って勢いよく裏から出てきたのは、イアたちと同じ年齢くらいの明るい少女だった。頭の片側に括られた茶髪がハツラツと揺れている。

彼女はタカハシの姿を確認した後、イアたちの存在に気付いてピシリと止まった。

そして瞬く間に顔を真っ赤に染めながら「あはは、い、いらっしゃいませー……」とはにかんだ。

タカハシと呼ばれた青年がため息をつく。

 

「ささらちゃん、落ち着いて、ね?」

 

宥められたささらと呼ばれた少女は「ご、ごゆっくりー」とそのまま店の裏に消えていった。

彼女の消えていった方を、ゆかりとオネが神妙な顔をして呟く。

 

「……おっきかったですね」

 

「大きかった」

 

互いの胸を見やる二人を他所に、我が道を行くイアは普通に会話を再開していた。

 

「さっきの人は従業員さんですか?」

 

「そうだよ。しかも今日が初出勤だから、優しく見守ってあげてね」

 

タカハシはウインクすると、「おしぼり持ってくるね」と言って彼も裏に消えていった。

残された三人は落ち着きなさげに店内をキョロキョロしていたが、その内イアがメニュー表を広げた。

 

「わぁ。ケーキがいっぱいだねぇ」

 

「飲み物もたくさんありますね。私は紅茶にしましょうか」

 

「私はコーヒーと、ケーキは……」

 

姦しく注文を決め、手元にあった呼び鈴を押す。

すると奥から直ぐに人が出てきた。

 

「いらっしゃいませ。メニューをお伺いします」

 

出てきたのはタカハシともささらとも違う、ショートヘアの青髪の女性だった。

大人の雰囲気漂う彼女に、三人はまたしてもホケーっとする。

 

「?、あの、注文を……」

 

青髪の彼女に促され、ゆかりがハッとなって捲し立てた。

 

「っあ!すみません!……えーと、飲み物はコレとコレとコレと、このケーキ三つください!」

 

次々に指さして注文すると、青髪の彼女は手際よく端末に記入して裏に下がっていった……と思ったら、途中の何も無いところで躓いてビターン!と倒れた。

 

「ええ!?ちょっ大丈夫ですか!?」

三人が駆け寄って起こすと、彼女は真っ赤な顔で「すみません、運動苦手なもので……」と申し訳なさそうに俯いた。

 

「いや運動苦手ってレベルじゃないでしょう……」

 

ゆかりが戦慄する中、奥からタカハシが小走りで出てきた。その後ろからささらも付いてくる。

 

「また何も無いところで転んだのかいつづみちゃん!?ケガないかい!?」

 

「つづみちゃん大丈夫!?」

 

二人の口ぶりから、つづみと呼ばれた彼女が転ぶことは日常茶飯事なのだろう事が伺えた。

 

「失礼しました。私は大丈夫なので、お二人は自分の仕事に戻って下さい。お客さまも、失礼しました」

 

「いや、君も初出勤なんだからムリしないで……」

 

あくまでも接客モードを崩さないつづみに、タカハシが苦笑して言った。

 

「二人とも、もっとリラックスしてくれていいんだけど……って言っても難しいよね。……そうだな、お嬢さんたち、迷惑じゃなければこの二人と一緒にお茶してくれないかな?」

 

タカハシがイアたちに視線を向けると、そんな提案をしてきた。それに目を丸くしたのはつづみとささらだ。

 

「ちょっとタカハシさん!?急に何を!?」

 

「働きに来たのに、それでは本末転倒では?」

 

「それじゃあ宜しくね。僕は注文の用意してくるから」

 

二人の抗議を他所に、伝票を拾うと颯爽と裏へ消えていってしまったタカハシ。

全員が呆気に取られる空気の中、マイペースの権化イアが最初に声を上げた。

 

「えっと、宜しくお願いします」

 

「え!?あ、はい、宜しく……お願いします?」

 

ささらが反射的に反応し、何故か気を付けの姿勢でその場で固まってしまった。つづみもそれに倣って隣に立ち並ぶ。

ゆかりが居た堪れない表情で声を掛けた。

 

「あの、よろしければ座って下さい。せっかく店長さん?が気を遣ってくれた事ですし……」

 

そう言われ、ささらがふにゃりと力なく笑った。

 

「えへへ……、そうだね。それじゃあお言葉に甘えて失礼します。ほら、つづみちゃんも」

 

「う、うん……。失礼します」

 

まだどこか硬いが、それでも相向かいで着席したささらとつづみ。

そんな二人にイアたちが好奇の視線を無遠慮に送る中、落ち着いたささらは物怖じしない性格なのか、彼女もイアたちを観察するとその目がゆかりのギターで止まった。

 

「あなた達は、下のスタジオで楽器の練習を?」

 

「あ、はい。私……、結月ゆかりとこのイアちゃんでユニットを組んでます。こっちの子はイアちゃんの妹のオネちゃんで、私たちの演奏を客観的に視てもらってました」

 

ゆかりが慣れた様子で自己紹介していく。外面はメチャクチャに良い女であるので、こういう場でも率先して動けるのだ。

ゆかりの話を聞いて、ささらが目を輝かせてつづみを見やる。

 

「わあ、私たちと変わらないくらいの年齢なのに音楽活動なんて……、カッコイイ!凄いねつづみちゃん!」

 

「うん。どういう曲、歌うの?」

 

「そうですねぇ、今練習してきたのは……」

 

ゆかりが饒舌に語って場が盛り上がる。

その傍らでニコニコと話を聞いていたイアの裾が、不意にギュッと引っ張られた。

イアが横を見ると、顔を俯かせたオネがスカートの裾を摘んで引っ張っていた。

 

「?、オネ?」

 

「……」

 

どうやら人見知りしているようである。

そういえばオネはまだ地球に来て日が浅い、無理もない話であった。

 

「それはそうと、イアちゃんとオネちゃんはすっごい美人さんだね!いや、ゆかりちゃんも美人なんだけど、二人はなんか浮世離れした顔立ちっていうか……」

 

萎縮したオネを気遣ってか、ささらが明るい口調で話題を振ってきた。つづみも「お人形さんみたいですごく綺麗」と言葉を零す。

その言葉に反応したのはゆかりだ。

 

「ふっふっふっ、そうでしょう!何を隠そうこの二人、実は宇宙人なんですよ!」

 

何故か得意げにアリア姉妹の正体を明かすゆかり。

ささらとつづみがポカンとする中、イアはオネと手を繋いで言葉を続けた。

 

「そうなんです。私とオネは、アリアっていう星から来ました。ささらさん、つづみさん、よろしくね。……ほら、オネも挨拶、しよ?」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

促されて、オネは気合いが入りすぎて空回った挨拶をすると、ささらが困惑しながらも挨拶を返した。

 

「よ、よろしくお願いします?」

 

「……宇宙人、……納得の存在感だわ」

 

対してつづみは真剣な表情だ。

どうやら宇宙人というワードにたいへん興味を持ったらしく、無遠慮な視線で姉妹を観察してくる。イアは「?」と首を傾げ、オネは恥ずかしいのかさらに縮こまってしまった。

と、そこでタカハシが厨房から出てきた。

両手に器用にトレイを持ち、その上にはそれぞれ飲み物と食べ物が乗っている。それらをテーブルに置くと、明るい口調で会話に入ってきた。

 

「お待たせしました。どうぞごゆっくり、地球のお茶を楽しんでください」

 

タカハシはウィンクすると、マグカップをひとつ取って隣のテーブル席に着いた。

他に客が居ないので、彼も隣で休憩をとるようだ。

 

「あれ?意外と信じてくれてる……?」

 

ゆかりが呆気に取られたように目をぱちくりした。

イアたち姉妹が宇宙人だというトンデモ話をした自覚のあるゆかりは、もう少し「な、何だって〜!?」みたいなイイ反応が返ってくると思っていたのだ。

つづみが得意げに語る。

 

「世の中には意外と不思議なことが溢れているものよ。事実は小説よりも奇なりって言うし、何より信じた方がステキじゃない?」

 

本をこよなく愛する彼女は柔軟な考えを持っていて、イアたちの身の上を快く肯定した。

ささらとタカハシも笑顔で頷く。

 

「うんうん。宇宙人って言葉には少しびっくりしたけど、外国から来たって考えればあんまり変わんないしね!」

 

「それに、そんな宇宙人と仲良くなれるゆかりちゃんも素敵だよね。この数奇な出会いを祝して、いっぱい食べていってね」

 

タカハシに促され、熱いお茶と色とりどりなケーキたちを口に運ぶ面々。オネも緊張が解けてきたのか顔を綻ばせて堪能し、タカハシも嬉しそうに紅茶を啜った。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

しばらくの団欒で皆の心の距離もだいぶ縮まった頃。一息ついたところでタカハシがふとこんな話をしてきた。

 

「ゆかりちゃんとイアちゃんは音楽を作ってるんだよね?もし良かったら、この店の雰囲気に合うような店内BGMを作ってくれないかい?」

 

それはユニットを組んで初めてとなる仕事の依頼だった。イアとゆかりは顔を見合わせると、飛びつくように了承した。

 

「それはもう喜んで!!というかむしろいいんですか?私たち、まだ実績も何も無い無名なんですが……」

 

「ふふ、じゃあ僕が最初の出資者って事になるのかな。未来のアーティストへの先行投資だよ」

 

そう言ってはにかむタカハシ。

喜ぶイアとゆかりに、オネも嬉しそうに微笑んだ。

 

「良かったね、姉さん。ゆかり」

 

そんなオネの横顔を見つめていたささらが、ふと質問した。

 

「二人はユニットを組んでるけど、オネちゃんも何かやってるの?」

 

「え!?いや、私は姉さんの応援というか、……まあ特に何も……」

 

急に矛先を向けられて尻すぼんでいくオネの声。

姉たちは拙いながらも目標に向かって一生懸命走っている中、自分には何も無いことを強く自覚させられたからだ。

そのしょげる姿を横目で見ていたゆかりがハッとなって声を上げた。

 

「まあまあ!オネちゃんはまだ地球に来たばっかりですし、やりたい事はこれからゆっくり探していけばいいですよ!」

 

「うん。私もそう思うな」

 

イアもコクンと頷く。

だがオネはそんな慰めが耐え難いのか、口をもにょもにょさせた。

そんなオネに、タカハシが再びの提案をした。

 

「それなら、ここで働いてみない?地球慣れしてないなら今事情を知った僕がフォロー出来るし、何よりこの二人もまだ新人さんだ。うってつけだと思わないかい?」

 

ウインクするタカハシの言葉にハッとなるオネ。

イアが後押しするように言った。

 

「どうする、オネちゃん?」

 

「わ、私は……」

 

もじもじするオネに嗜虐心をそそられたゆかりが、普段の毒舌の仕返しとばかりに悪い顔で煽った。

 

「もしかして、独りで働くのが怖いんですか〜?」

 

「怖くない!ただお姉ちゃんと離れるのが寂しいだけでッ……あ!いや、その……ッ」

 

売り言葉に買い言葉で声を荒らげたオネが、つい本音を口走ってしまい顔が紅潮する。

言い訳するならば、最愛の姉と再開してまだ1ヶ月と経ってないのだ。まだまだ甘えたい欲が満たされてないのである。

 

「オネ」

そんな妹を、姉がぎゅっと抱き締めた。

オネの肩がビクリと跳ねる。

そんな妹を宥めるように、落ち着かせるようにその背中をぽんぽんと優しく叩く。

 

「大丈夫。怖くないよ」

 

「い、いや、別に怖いワケじゃ……」

 

イアのズレた発言に苦笑いするオネ。

しかしそれで毒気が抜かれたのか、ふう、とひとつ息を吐くと、タカハシに向き直った。

 

「えっと、その、ホントに地球に来たばかりで右も左も分からないですし、ご迷惑を沢山かけると思いますが、それでも良ければよろしくお願いします!」

 

「うん。こちらこそよろしく」

 

タカハシが嬉しそうに微笑んだ。

遅れてささらとつづみも喜色を浮かべた。

 

「よろしくねオネちゃん!大丈夫、私たちも初心者だから、一緒に頑張っていこうね!」

 

「タカハシは滅多な事じゃ怒らないから、焦らずにやっていこうね」

 

イアもぱちぱちと拍手をしてオネ歓迎ムードの中、一人ゆかりだけが深刻そうな顔をしていた。

 

「……むう、私も焚き付けましたが、先に就職されたとなると複雑……ッ!イアちゃん!私たちも早く稼げるように頑張りましょう!」

 

「え?うん、頑張ろうね」

 

(姉さんは本当に、仕事とかお金のことを分かってるのかな?)

 

二人の微妙な温度差にオネは横目で心配する。

かくして、三人は金銭が発生する初めての仕事にありつけたのであった。

 

 

 

 

 

 





ゆかいあ
いあおね
ゆかおね
ささつづ
タカハシ
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