ARIA星人イアちゃんと出会った結月ゆかりの青春模様   作:へるしぃーぼでぃ

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作中想定曲、『なんもかんもおしまい』和田たけあきさん。
知声ベビ好き。容姿も声も何もかも。



イアたち、テレビジャック犯ベビと出会う。

 

 

 

「ッこの!いい加減くたばりなさいオネちゃん!」

 

「ふん。そのセリフそっくりそのまま返してやる!」

 

現在、結月ゆかりの部屋でオネとゆかりは白熱のバトルを繰り広げていた。

二人が睨みつけるのはテレビ画面の大乱闘。

コントローラーをガチャガチャと鳴らし、歯を食いしばって互いに罵詈雑言を並べている。

その背後ではイアと紲星あかりがニコニコと「この二人は今日も仲良いなぁ」とお茶菓子をつついていた。

 

「これでっ、トドメぇ!」

 

「甘い!カウンタァア!」

 

決着の一瞬。

突然ブツンと画面が暗転した。

 

「えええ!?」

 

「おぬぁあ!?」

 

上がりきったテンションで素っ頓狂な悲鳴を上げる二人。

そんな彼女たちを前に、画面に何かが映し出されていた。

 

『……出てこれた。けど、ここはどこ?』

 

真っ黒な画面には、一人の少女の姿がポツンと映し出されていた。

三つ編みお下げを片方の肩に流した、白髪にオレンジのメッシュの入った少女の映像。

画面の中の彼女は、途方に暮れている様子だった。

間違えて何かのドラマに切り替わってしまったのだろうか?

しかし、なんとなくそれは違うとゆかりは思った。

何やら異様なまでに存在感があるのだ。この画面の中の少女は。

 

「イアちゃん。もしかして、また不可思議ARIAパゥワーを発揮してしまいましたか?」

 

こういう謎現象はイアの専売特許だ。

悲しいかな、ゆかりのこれまでの経験からイアがまた何かをやったのだと思った。

しかし、イアは首を横に震る。

オネも否定した。

 

「さすがにイアも、こんなに唐突に変なことはしないよ。やるなら何か前フリがあるはず」

 

オネの妹視点からの指摘。

確かにイアは時々変なことをするが、結果的に不思議現象が起こるだけで、こういうイタズラ的な事はしない。

悩むゆかりを他所に、あかりがテレビの人物に話しかけた。

 

「こんにちは。アナタのお名前はなんて言うの?私は紲星あかり!」

 

『ん、こんにちは。私は知声。よろしく紲星あかり』

 

画面上の人物から反応が帰ってきた。

ARIAの不思議パワーでもなければ、画面の人間が応対するなどありえない。というか、あかりはナチュラルに受け入れすぎである。

なおも考えるゆかりを置いて、イアもオネも続々と自己紹介し終え、画面上の人物──知声がジッとゆかりを見つめてきた。

 

『……』

 

「な、何ですか」

 

『アナタは誰?』

 

「わ、私は結月ゆかりです。貴女こそ誰なんですか?いきなりテレビ画面をジャックして」

 

『私は知声。テレビはジャックしちゃってゴメン。それじゃ、私はこれでグッバイ』

 

あ、帰るんだ。と思ったのも束の間。

画面の端までトボトボ歩いて去ろうとする知声だったが、画面の縁でゴン!とぶつかった。『あぅ』と呻いてヨロヨロする知声。

 

『うぅ……あーもう……なんもかんもおしまいだ……」

 

画面上をフラフラしながら、フレアスカートを靡かせて物悲しい歌を歌い出す知声。

そんな哀愁漂う空気の中、ゆかりはツッコんだ。

 

「それで結局、この子は何なんですか?」

 

「なんだろうね」

 

「なんなんだろ」

 

「何でしょうね!」

 

結局全員そんな感じなので、やけにリズムの良い知声の歌が聴きながら大人しく待つ四人だった。

 

 

 

 

 

 

『私はとあるラボの、歌う人工知能。ある日、私の住む電子空間を散歩してたら、変な回路に迷い込んでここに出た』

 

ひと通り歌って落ち着いたのか、知声からそんな事情を説明された。

聞いてもあまり要領を得ない内容だったが、本人もよく分かっていないらしいのでこれ以上の追求は無意味。

質問は他愛ない雑談に変わっていった。

 

「知声さんは普段、どんな事をしてるの?」

 

『悠々自適な毎日。つまり何もしてない』

 

「人工知能ってすごい頭良さそうな感じだけど、そこら辺どうなの?」

 

『それほどでもある。微分積分いい気分』

 

「お腹空いてない?いつも何食べてるの?」

 

『お腹は空かない。いつも食べてるのは歌詞』

 

「うんうん。お菓子美味しいですよねー」

 

質問すればするほど謎が深まっていく知声。

だが悪い子ではないらしい事は、受け答えの端々から伝わってくる。少しズレた感じてはあるが。

ラボとやらでも、なんとなく愛されているらしい事が伺えた。

現状、特に問題らしい問題は無い。

無いが、問題はそこではない。

ゆかりは意を決して言った。

 

「知声ちゃんは、元居たラボに帰りたいですか?」

 

ゆかりの質問にハッとする一同。

少しの沈黙の後、知声は答えた。

 

『……帰りたい』

 

無感情な音声と表情だが、それ故に本心である事が窺えた。

ゆかりが立ち上がる。

 

「よし。それなら帰る手段を考えましょうか」

 

「そうだね。質問ばっかりしてごめんね、知声さん」

 

『ん、大丈夫』

 

「でも、実際問題どうするの?ラボとやらも何処にあるか分かんないし」

 

「うーん。とりあえずネット検索してみますか」

 

ゆかりがパソコンを開いて知声の言うラボの名前を検索してみると、普通にヒットした。

だが現在地からだいぶ離れており、気軽に移動できる距離ではない。

それでもゆかりは立ち上がった。

 

「毒を食らわば皿まで、ですね。ずいぶんと遠いですが、知声ちゃんをこのラボまでお届けしましょう。……と思うんですが、皆さんはどうしますか?」

 

ゆかりの問いに、全員が頷く。

 

「うん、行こう。知声さんをちゃんとお家に帰さないとね」

 

「ま、ここまで関わっちゃったからね。知らんぷりなんて出来ないでしょ」

 

「皆でお出掛けだね!せっかくだし、美味しいモノを食べながら行こう!」

 

反対意見など出るはずもなく、むしろ嬉々として同調するイア、オネ、あかり。

ゆかりもなんだか楽しくなって、拳を天井に突き立てた。

 

「よーし。じゃあ知声ちゃんをラボにお届け隊、出動ー!」

 

『あー、ハロー。ハロー』

 

と、アガってきた部屋に冷めた電子音が響いた。

知声だ。

水を差されたゆかり達だが、テンションの上がっている彼女たちはガサゴソと遠出の準備をしながら返事する。

 

「どうしたんですか知声ちゃん?知声ちゃんも何処か寄りたいところがありますか?」

 

『寄りたい所というか、ちょっとそっち寄る』

 

そっち寄る、とは?と呆ける中、テレビ画面からフオンと知声が消えた。

その代わりに、テーブルから彼女の声が。

 

『パソコンからハロー』

 

「あ、そうか。電子の存在だからそうやって移動できるんですか」

 

「という事は、もしかして……」

 

『ん。行ってきます』

 

検索欄のラボ名を、知声は手の平でクリック。すると、再びフオンと彼女の姿が消えた。

数秒後。

帰ってきた知声が、無表情でピースしながら呟いた。

 

『帰れた。ピース』

 

知声をラボにお届け隊、解散である。

 

 

 

 

 

 

コーポ「ふぁ〜すとぷれいす』の受付口にて、弱音ハクが完成した書類を片手にひと息ついた。

 

「では、これで知声さんの仮登録が完了しました。貴女は電子の存在なので、訪れる際は私のパソコンに一度顔を出してください」

 

『YES』

 

一瞬で電子空間を移動できる知声は、いつでも『ふぁ〜すとぷれいす』に入れるよう住民として仮登録された。

ラボの開発者に聞いたところ、彼女は『歌うAI』というコンセプトで開発されたようで、声を生業とするこのアパートのコンセプトとも合致している。

なので特に問題なく、知声はここの仮住民となれた。

大家であるハクとの挨拶も終わり、改めて知声が頭を下げる。

 

『というわけで、これからよろしく。ゆかり。イア。オネ。あかり』

 

そんな知声は現在、イアのARIA謹製指輪から立体映像でみんなの前に立っていた。

ARIAの謎技術と知声の電子空間移動の合わせ技だ。

 

「改めましてよろしくね、知声さん」

 

「よろしく。……ていうか、意外と背が高い」

 

オネが少し戦慄した様子で知声を見上げる。

言動が割と幼かったので油断していたが、等身大の彼女はこの中で一番デカかった。

 

『ん。ヒール履いてるから。肉体年齢も19歳?だし』

 

あかりが「おー」と感嘆の声を上げる。

 

「じゃあ私たちの中でイチバンお姉さんだ!知声お姉ちゃん!」

 

『お姉ちゃん……とてもいい響き』

 

相変わらず無表情だが、どこか嬉しそうな雰囲気を醸す知声。

その手があかりの頭に置かれようとして──……ポン、と置かれた。

 

『ん。なんか触れた』

 

「えへへー。もっと撫でてー」

 

言われるがまま撫でる知声に、撫でられてご満悦なあかり。

その横でゆかりが愕然としていた。

 

「え……なんでホログラムなのに、触れて……っイアちゃん!」

 

バッと振り返った先には、自身の指輪を見つめるイアが。

ゆかりの視線を受けて言わんとしている事が分かったのか、イアはえへへと笑った。

 

「なんか、実体化機能も付いてるみたい」

 

さすがARIAテクノロジー、万能過ぎである。

オネも呆れ顔で、ついでに否定する。

 

「本当、イアは規格外な事するね……ちなみに私はそんなこと出来ないから。そもそも指輪も無いし」

 

同じ星出身でこの格差は何なのか。

だが不思議パワーにはイア一人で充分過ぎるほど振り回されているので、ゆかりはオネの肩にポンと手を置いた。

 

「良い意味で、オネちゃんは是非ともそのままで居てください」

 

「まぁ、私もあんな力持たされても困るし……」

 

あかりとイアと、お互いに頭を撫であっている知声たちを遠巻きに見守るゆかりとオネ。

そんな二人に、知声は上目遣い気味に目を向けた。

 

『二人も、いっしょにあそぼ』

 

「かわいっ。なんですかこの可愛い19歳はっ」

 

「肉体年齢って言ってたし、実際はまだ生まれて間もないのかもね。電子の存在だし」

 

知声の、見た目に反する幼なさに心をくすぐられながら、オネとゆかりは彼女の頭を撫でにいった。

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの後、知声は基本的にイアの指輪から出没するようになり(本人曰く『容量が超デカい、快適空間』)、天然×天然コンビにオネとゆかりが振り回されることを二人はまだ知る由もない。

 

 

 

 

 

 







『私の住むラボ……ぼいそなラボのイカしたメンバーを紹介するぜっ』

「なんか始まった」

「知声ちゃん、無表情のまま急にテンションぶち上がりますよね」

『まずはアンドロイドの三人。身体が楽器兼用で、あとなんか皆お腹出してる』

「……まぁ、合成音声界隈は露出度高いですからね。オネちゃんとかもエッチですし」

「うるさい服装バスタオル」

『次にラボの主任。人間。目隠れママ。ママって呼ぶとギュッてしてくれる』

「属性がギュッと凝縮されてますねー」

「お母さんみたいな人なんだね。私にもそんな人が居るから、親近感が湧くな」

『最後に広報担当の姉御。カサを手作りしたり集めたり、ビームが出たりする。あとアンドロイドたちでも持ち上げられないモノを持ち上げられる、力自慢。人間』

「ちょいちょいちょい」

「なんかヤベーお姉さんが居ますねっ。その人が一番アンドロイドじゃないですか」

『そして私、知声。たまに赤ちゃんと呼ばれる。別にどこも赤くないのに』

(全員、生暖かい目で見る)


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