ARIA星人イアちゃんと出会った結月ゆかりの青春模様   作:へるしぃーぼでぃ

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食べ物系(ガチ)音声合成キャラ、結月ゆかり。



結月ゆかりはオイシイ

 

 

 

ぐぎゅる〜。

それは、紲星あかりの腹の虫の音だった。

コタツでぬくぬく読書に集中していた結月ゆかりも思わず顔を向ける音だった。

あかりが無垢な瞳を向けてくる。

 

「あ、ゆかりさん。あかりはお腹が空きました」

 

「えー……?藪からスティックですね。お茶請けのお菓子は……」

 

「もう食べ切りました!」

 

元気よく返すあかり。

彼女専用のクソデカ銘々皿に山盛りだったはずのお菓子は一片も残されておらず、妹分の腹ペコ具合に戦慄するゆかりだった。

 

「しょうがないですね。……まだ何かありましたっけ?」

 

仕方なしに立ち上がり、キッチンの戸棚を覗きに行くゆかり。

だがそこもスッカラカンだった。折り悪くストックも切れてしまったようだ。

後ろからとてとて付いてきたあかりがカラッポの戸棚を見て、絶望の声を上げる。

 

「わーんっ、何も無いよーっ」

 

コミカルな泣き顔を披露するあかりの隣で、ゆかりの脳内に『食い尽くし系』という文字が踊った。

そんな感じで二人が狭いキッチンで立ち往生していると。

 

ピンポーンと呼び鈴が鳴った。

 

ひとまず腹ペコあかりは置いといて、玄関へ向かうゆかり。

玄関を開けると、今日も今日とてアリア姉妹が遊びにやって来た。今日も麗しいっ。

 

「こんちには、ゆかりさん。あかりさん。……どうしたの?あかりさん」

 

イアは朗らかな挨拶もそこそこに、ゆかりの背後に控えたしょんぼり気味なあかりに気が付いた。

あかりはお腹を両手で抑えて訴える。

 

「うぅ……お腹が減って、力が出ないですー……」

 

「この通り、あかりちゃんは私の家の食べ物を食い尽くして腹ペコ状態です。イアちゃんオネちゃん、何か食べ物ありませんか?」

 

「食い尽くしておいて腹ペコって……」

 

オネが呆れた視線を向けるが、当の本人は「えへへー」と何故か照れている。褒めてない。

イアは「うーん」と口元に人差し指を置いて可愛らしく唸った。

 

「ゆかりさん達を誘って今からご飯を食べに行こうと思ってたけど……、でもあかりさんがもう限界そうだね」

 

イアの言葉にあかりが「そうなんです。もう一歩も動けないです!」と力強く頷いた。

その気迫はエネルギッシュに溢れており、オネのジト目は留まるところを知らなかった。

ゆかりはこの腹ペコ騒動は日常茶飯事なので、慣れた様子で「さて、どうしましょうか」と仕方なさそうにため息を吐いた。ゆかりは姉御肌なのだ。

そんな中、イアの頭の上に豆電球がポンと光った。

 

「あ。食べられるもの、あったよ」

 

「え、本当ですかイアちゃん。助かります。あ、本物の豆電球はわざわざ召喚しなくてもいいんですよ?……それじゃあかりちゃん、イアちゃんのお家くらいまでは頑張って行きましょう」

 

ご飯に誘いに来てもらったのに、食料も恵んでもらう。

ゆかりは申し訳なさを感じつつも、ありがたくイアの部屋へ行こうとして……

 

「ううん。もうここにあるよ。ゆかりさん、ちょっと動かないでね?」

 

「え?」

 

イアの意味深な言葉にゆかりの動きが止まる。

イアは止まったゆかりのもみあげを、宝物を扱うように手に取った。

そして反対の手を手刀の形にして構える。

その手刀がブン、と光を纏った。

 

「えい」

 

バサリと。

髪留めから先のゆかりのもみあげが、断髪された。

 

「………………え」

 

固まる結月ゆかり。

そんな彼女を尻目に、イアは朗らかに紫の髪の束をあかりの目の前に掲げた。

 

「じゃああかりさん。早速これでお素麺茹でてあげるね」

 

「わーい。ゆかりさんのお[[rb:御髪素麺 > みぐしそうめん]]だー!」

 

ドタドタとゆかりの部屋へ侵入していく二人。

まだ現実に追いつかず固まったままのゆかりに、その肩にポンと手が置かれた。

振り返ると、そこには哀愁漂わせるオネが居た。

 

「ありがとう、ゆかり。お陰で家計は大助かりだよ」

 

そう言ってオネも部屋へ入っていく。

片方のもみあげを突如として失ったゆかりは、しばらく呆然としてから再起動を果たした。

 

「え……え、ッええぇえええ!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

クタクタと茹だるお湯。

その中を漂う紫の髪の毛──……いや、素麺を、エプロン姿のイアは慣れた手つきで菜箸でくるくるかき混ぜていた。

その隣でワクワク顔で待っているあかり。

その背後で壁に背を預け、したり顔でただ待つオネ。

そんな中でひとり、ゆかりだけがただただ困惑していた。

 

「え。ちょ、皆さん本気ですか?本気で私の髪の毛を茹でて食べる気なんですか?」

 

髪の毛を切られたショックも然ることながら(ARIAパワー手刀で切られたこと自体はもう驚かない)、ゆかり以外誰一人として髪の毛素麺に異を唱える者が居ないこの現状。

 

イアは……まぁたまにおかしくなるから仕方ないとしても。

 

あかりも……まぁ腹ペコになると若干暴走するにしても。

 

普段は敵対的だが、それでも常識人枠なオネだけはマトモで居て欲しかった。

ゆかりは縋る思いで再びオネに話し掛けた。

 

「あの、オネちゃん?私の髪を食べるなんてウソですよね?なんでアナタは後方彼氏面腕組み待機してるんですか?」

 

「イアのエプロン姿、イイよね……」

 

ダメだコイツ、話が通じない……。

イアのエプロン姿には激しく同意するものの、質問に対して全くと言っていいほど返答を得られていない。オネは姉イイネbotと化していた。

グツグツと煮える熱湯。

 

「うーっイアさーん!あかりはもう待てません!もうそのままでいいから食べさせて下さい!」

 

「えー?もう少しだから待って、あかりさん。……そうだ!ゆかりさん」

 

イアがちょいちょいとゆかりを手招きする。

ゆかりは不安を覚えながらも、その可愛らしい仕草に抗えずまんまと近付いた。

 

ニコッ、と破顔するイア。

 

しかしその手は切られた方のゆかりのもみあげの髪留め──通称メタルマカロンを掴み、スルリと外した。

それをそのままあかりに手渡す。

 

「はい、あかりさん。どうぞ」

 

「わーい。ゆかりさんのメタルマカロンだー」

 

「え。ちょっ」

 

そうしてあかりはガジガジと髪留めを食べだした。

金属質であるはずの髪留めは食べられるわけはないのだが、本当にマカロンを食べるが如くあかりはムシャムシャ食べていく。メタルマカロンの紫の光が哀しく光り、次第にその光は失われていった。

 

……おかしい。

如何にあかりが腹ペコ怪獣でも、これは流石におかしい。

 

ゆかりは非現実的なこの光景に、もう何がなんだが分からないと気が動転した。

それでも何とか喉から声を絞り出す。

 

「……そ、それ、食べ物じゃないですよあかりちゃん……?っというかそれなら、あかりちゃんも同じ髪留めしてるじゃぁないですか。自前のを食べてくださいよ……」

 

「え?何言ってるのゆかりさん。メタルマカロンは食べ物じゃないですよ?」

 

あかりの三つ編みの先端にも同じ形状の髪留めが付いているのだが、それは食べられないと申す。

ゆかりはもうお手上げだった。

グラグラと沸騰する水。

 

「はい。お素麺出来たよ」

 

あかりがメタルマカロンをすっかり食べ切った頃、イアが冷水で締めた素麺をザルに移して持ってきた。

オネはいつの間にか人数分のつゆを作っており、リビングのテーブルに配膳済みだ。ただの後方彼氏面腕組み妹ではなかったらしい。

 

「わーい!いっただっきまーす」

 

あかりが満面の笑顔で食卓につき、イアとオネも手を合わせて「いただきます」と箸を手に取った。

ずるずるずる。

紫の(かみ)が彼女たちの口の中へ消えていく。

イアは麺を上手く啜れないので、ちゅるちゅるひと口ずつ口に運んでゆっくり食べる。

オネも「うん。美味しい」と後方(略)で満足気に頷く。

あかりは「ウマーい!」と叫んでパァン!と柏手だ。

最後にイアが、その細くて白い喉をコクンと嚥下してから吐息を吐いた。

 

「ふぅ。ゆかりさんは美味しいね!」

 

「うん、うん。おいしい」

 

「オイシイ。ゆかりさんは……オイシイ!」

 

瞬く間に結月ゆかりのもみあげひと房を平らげた三人。

事態についていけぬゆかりは最早、その場に呆然と立ち尽くすしかなかった。

お腹が満たされ至福の表情を浮かべる三人。

そのままコタツでのんびりするのかと思われたが、その視線がグルリ、とゆかりを捉えた。

ヒッ、と喉が引き攣る。

 

「あれー?まだゆかりさんが残ってる」

 

「まったく、お残しはダメだよ。きちんと食べ切らないと」

 

「ゆかりさんはご飯によく合うんだよ!ご飯を炊こう!」

 

途端に動き出す三人。

オネが米を研ぎ、あかりが炊飯器のスイッチをオンにし、イアがARIAパワーで一瞬で炊き終わらせる。

どこから出てきたのか人が乗れるほど巨大な茶碗が突如テーブルの上に出現し、炊飯ジャーから無限に米が溢れ出て、巨大茶碗に米が山のように盛られる。

わっせわっせとゆかりは三人に担ぎ上げられ、その米の上に寝そべらされた。

 

「あ、あの?皆さん???」

 

金縛りにあったかのように動けないゆかりの前で、合掌するあかりたち。

 

「それじゃぁゆかりさん、いただきます」

 

「「いただきます」」

 

三人の箸が近付いてくる。

いつの間にかゆかりとご飯茶碗は普通サイズにまで縮み、ゆかり視点では超巨大なイアたちの箸がゆかりとご飯を持ち上げた。

 

「は、はわわ……っ」

 

「いぃたぁだぁきぃまぁあす」

 

間延びするボイス。

キラリと光る犬歯。

ゆかりはイアたちに食べられることにちょっとだけ暗い興奮を覚えながら「わ、わっ、私は食べ物じゃないですよぉおお!?」と絶叫を上げて、その意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

「ッは!?」

 

自室の見慣れた天井が目に映る。

ゆかりはリビングのコタツの中で、仰向けで寝ていた。

じんわり暖かさが伝わってくる、掛布団の中の下半身。

天板裏に付いたコタツのヒーターの、ジーーッ、と乾いた音が静かな部屋に木霊する。

 

「……」

 

固まったまま現状確認していくゆかり。

コタツを出すのは面倒くさかったが、寒波到来とあり頑張って展開したのだ。

しかし、そんなコタツの魔力にやられ、どうやらうたた寝して悪夢を見たらしい。

もう悪夢の内容は薄らぼんやりしてきたが、身体中がじんわりと汗ばんで不快だった。

 

「………………夢。っ良かったぁ……!」

 

安堵のため息を吐くゆかり。

ちょっぴり涙ぐんでいるゆかりのすぐ横から、愛しのイアの声が響いてきた。

 

「あ。ゆかりさん起きちゃった」

 

「ああ、イアちゃん。……ッて、メチャクチャ近くないですか?」

 

横を向くと文字通り、目と鼻の先にイアの顔があった。

コタツのテーブルは正方形。

一片の広さは一人分が適正な大きさだ。

頑張ればこうして二人分入れなくもないが、お陰でイアの整い過ぎてるご尊顔がゼロ距離だった。もはや同衾。

 

「えへへ。ゆかりさんが寝てたから、お隣にお邪魔しちゃった」

 

無邪気に微笑むイア。可愛い。

この笑顔を前に狭いなどと文句は出ようはずもなかった。

しかしそれを加味しても、身動きが取れないほど体が動かせない。

ゆかりはふと、反対側にも体温を感じて顔だけ捩って振り向いた。

 

あかりが居た。

 

スピスピと気持ち良さそうに寝ながら、ゆかりのもみあげをモグモグ齧っている。

テーブルの一片に三人。狭いを通り越してギチギチである。

真ん中に挟まれたゆかりが悪夢を見るほど寝苦しくなるハズだ。

ゆかりは天井を仰いだ。

 

──……両手に花なのは嬉しいが、ガチめに動けない。

 

すやすや涎を垂らすあかりに、ニコニコと寝そべるイア。この二人は狭苦しくないのだろうか?

 

「あの、イアちゃん?さすがに狭くて苦しいので、ちょっと脱出しませんか?」

 

「え、苦しかった?ごめんねゆかりさん、今どくから」

 

イアはスルリと、なんの抵抗もなく抜け出した。

ギッチリ詰まっていたはずだが、イアの細身によるものかARIAパワーなのか、判断に迷うところだ。

ともかく、スペースが出来てゆかりも「よいしょ」とコタツから抜け出そうとして……。

もみあげがピンと伸びて、中腰の姿勢で止まった。

あかりに食べられているもみあげが引っかかったのだ。

 

「ちょっとあかりちゃん?私のもみあげは食べ物じゃないですよ」

 

あどけない妹分のおでこをデコピンする。

あかりは「んへぁ!?」と素っ頓狂な声を上げて、微睡みから覚醒した。

 

「……あれぇ?ゆかりさんのお御髪素麺セット2600円/箱は???」

 

「何言ってるんですかあかりちゃん?人の髪の毛を素麺に見立てて食べよう、なんてトチ狂った変な企画を立てないで下さいよ。正気の沙汰とは思えません。ね、イアちゃん?」

 

「え?そうだね……?」

 

寝ぼけ眼で変なことを言うあかりに、彼女の腹ペコ具合には困ったものだ、と呆れ果ててイアに同意を求めるゆかりだった。

不可能を可能にするARIAパワーを抑止しておかねば、悪夢の惨劇を実現されかねない。ゆかりはもみあげをギュッと握った。

と、そこで当たりをキョロキョロ見渡した。

 

「あれ?そういえばオネちゃんが見当たりませんね?」

 

「オネならご飯を作ってくれてるよ。あ、ちょうど出来たみたい」

 

「さっきまで大人しく寝てたのに、今は何騒いでんの?」

 

4つの椀が乗るお盆を両手で持った、エプロンに三角巾も付けているオネがキッチンからやってきた。

気まぐれシェフ、オネ。

彼女は皆が寝てしまったから仕方なくエプロンを巻いたのだった。

 

コタツの魔力に呑み込まれたゆかりとあかり、それに戯れて横になったイア。

 

混ざる気はさらさら無いが、蚊帳の外になったオネはゆかり宅の戸棚を無断で漁り、勝手に調理してきたワケである。

ちなみに勝手に自宅を漁られた家主は「うたた寝してたら自動でご飯が出てきたウヒョー」と内心喜んでいた。彼女たちは仲が良い。

 

「ま、起きたんならちょうど良かった。はい配膳して」

 

オネからお盆を丸ごと渡されたゆかり。

だがそのメニューを見て、ゆかりは思わず「ヒョエッ」と変な声が出た。

その横で寝起きから完全に覚醒したあかりが目を輝かせる。

 

「あ!素麺だー!」

 

「今日は寒いから、温めてにゅうめんにしたよ。……?、どうしたの、ゆかり」

 

「あ、いえ……何でもないです。ご飯の用意ありがとうございます、オネちゃん」

 

ゆかりは自身のもみあげの存在を確かめるように触る。

大丈夫。ある。

素麺もスタンダードな白だ。決して紫色ではない。

落ち着いたゆかりは逆に考えた。

 

「……これは、イアちゃんのお御髪素麺という事ですか!?」

 

「は?いきなり何キモいこと言ってんの?」

 

オネが心底軽蔑した表情でドン引きする。

ゆかりは慌てて訂正した。

 

「ちょっ、勘違いですよオネちゃん!この白い素麺がイアちゃんのストレートロングヘアーに似てて、イアちゃんの名前で売り出したら売れるだろうなーとか考えてただけですって!」

 

「100%思った通りを超えて更にキモい考えを上乗せしないでくんない?」

 

ゴミを見る目になるオネ。

あぁ……もうオネからの信頼は取り戻せないレベルまで亀裂が入ってしまった。

それもこれも、あんな悪夢を見たせいである。

ゆかりはイアとあかりに苦言を呈した。

 

「イアちゃん、あかりちゃん。人の髪の毛は食べ物じゃないんですよ?分かりましたか?」

 

「「?、んー?」」

 

二人は既ににゅうめんを食べ始めており、麺を啜りながらコテンと首を傾げた。

可愛いのですべてを許すゆかりだった。

それよりもコタツのうたた寝には気を付けよう、と思うゆかりだった。

 

 





キャラモチーフの食べ物って食べ時失いがち
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