ARIA星人イアちゃんと出会った結月ゆかりの青春模様   作:へるしぃーぼでぃ

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かぐや様は告らせたい、9巻83話『白銀圭は話せない』を若干パロ。


閑話:オネちゃんは姉に甘えたい。~姉妹たちの親愛頭脳戦~

 

オネがコーポ『ふぁ〜すとぷれいす』に住み始めて、早くも一ヶ月の時が経とうとしていた。

愛しの姉と再開して、結月ゆかりという隣人とも仲良くなる(本人たち(オネ・ゆかり)は否定)という順風満帆な地球生活を送っていたオネだが、しかしここで問題が発生した。

 

(……ヤバい)

 

時刻は夕暮れ。

姉であるイアの部屋にお邪魔し、晩ご飯を食べ終えた後。

ソファーで並んでまったりと食後のチョコレートをつまんでいた時、唐突にその発作(・・)に襲われていた。

 

(今、お姉ちゃんにものすごく甘えたい……!!)

 

オネは無表情でテレビを見るふりをしながら、隣で無防備にチョコを齧る姉に向かってそんな想いを抱いていた。

 

(今すぐ力の限り抱きついてほっぺスリスリして、髪を梳かしてもらって頭を撫でてもらって、猫なで声で「お姉ちゃん♡」って呼んだ後その胸に抱き締めて貰ったあと膝枕して耳かきしてほしい……!!)

 

溢れる煩悩が濁流の如く胸中に流れる。

だがオネはそんな素振りなどおくびにも出さず、黙ってテレビをガン見していた。

しかし隣からポリポキと、イアのちっちゃなお口の中の歯が頑張ってチョコを砕く気の抜けた音が聞こえる度、それだけでオネの精神が身悶える。

 

──姉妹仲は良好。なれど、プライドの高いオネは素直に自分をさらけ出すことに抵抗があるお年頃。

 

ここで我慢できず唐突に「お姉、お姉、ギュッてして?」などとガツガツいけば、まるでシスコン!!

今までのクールな性格との整合性が取れなくなる。

 

それはオネにとって……、とても恥ずかしい事だった!!

 

如何に恥をかかない方法で姉に甘えるか、オネはARIAで鍛えた優秀な頭脳を巡らせる。そして導き出された結論は……

 

「ねぇ、イア」

 

「うん?どうしたの、オネ?」

 

「なんかこの部屋、寒くない?」

 

誘導風質問!!

この質問に対してイアが「寒いねー」等と返せば、「じゃあ、くっつく?」と自然な流れ(?)で姉と抱き合うことが可能。これが妹の出した結論であった。

 

だがこの作戦には懸念があった。

 

上着を持ってこられたり、エアコンで室内温度を上げるなど等、幾つもの選択肢がある事だ。

その中からどうやって『妹と抱き合う』という選択を姉にさせるか……、ここからが庇護対象とされる妹としての腕の見せどころだ。

オネが「うーん…」と頭を悩ませる、その矢先。

 

「確かに、ちょっと寒いね。……えい!」

 

むぎゅ、とイアが抱きついてきた。

オネは理解が追いつかずポカンとしたが、直ぐに絶叫を上げた。

 

「はああああ!?ッね、姉さっ!?!?!?!?」

 

「わ、オネちゃん暖かぁい」

 

荒ぶるオネを、イアはその細い腕でぎゅーっ♡と包みこみ、あまつさえそのまま頬と頬もくっ付けて頬ずりしてきた。

計画通りと言えば計画通り。

 

だがしかし──!

 

予想を遥かに超える姉の怒涛のスキンシップにオネの理性(ライフ)がみるみる溶けていく。由々しき事態であった。

そんな妹の耳元に、姉の蕩けるような声が耳元で囁かれた。

 

「ふふ、これなら暖かいね」

 

「う、うん……」

 

もはや熱くて暑い。

すっかり茹でダコになったオネは素直に頷いた。

 

「本当は上着を羽織ったり、エアコンを操作しようかなと思ったんだけど、なんだかオネちゃんにくっつきたくなったんだ」

 

姉妹だから思考が被ったのだろうか。ともかく、オネの当初の目的は見事達成された。

だからこれ以上くっついていたら気がおかしくなってしまいそうなオネは、僅かに残ったなけなしの理性で離れようともがいた。

 

「イ、イア、もう離れ……」

 

「お姉ちゃん」

 

「へ?」

 

「昔みたいに……、お姉ちゃんって呼んで欲しいな」

 

ここへ来てまさかのおねだりである。確かに昔はそんな風に呼んでいたが、何故このジャストタイミングで強請(ねだ)ってくるのかっ。

オネは沸騰した頭で反射的に声を荒らげた。

 

「そ、そんな子供っぽい呼び方、ッ恥ずいし!!」

 

「……そっか」

 

しょぼんと分かりやすく落ちこむイアに、オネの胸がチクリと痛む。

つい反射で否定してしまったが、甘え盛りのついた今のオネなら余裕で呼べた。というかとても呼びたい。呼ばせてほしい。金払うから。

しかし否定してしまった手前、そのミッションはインポッシブルになってしまった。オネは千載一遇の機会を逃したと激しく後悔した。

 

「……」

 

「……」

 

姉妹は抱き合ったまま、部屋が沈黙に包まれる。

オネは抱き着かれる心地良さと姉の体温が気恥ずかしく、ずっと天井を見つめ脈打つ鼓動を必死で抑える。

この時間が永遠に続けと思う気持ちと、恥ずかしくて死にそうだから離れてほしいという相反した想いがオネの頭をグルグル回る。

そんな天国と地獄の時間が数分続いた時、こつん、と柔らかい何かがオネの鎖骨に当たった。

見れば、愛しの姉がオネの鎖骨の窪みに鼻を埋め、すーすーと寝息をたてているではないかっ。

 

(ぅっおおおあおおあぉああおお!?!?!?!?)

 

心のオネが厳つい絶叫を上げる。

無理もない。愛しの姉の寝顔をゼロ距離で拝んだのだ。

その寝息だけでご飯三杯はイケるオネは、しかし再びの鋼の精神でなんとか理性的な行動をとった。

 

「ッね、姉さん!風邪ひくから布団で寝よう!」

 

「っん……んぅ」

 

緊張からつっけんどんな言い方になってしまったオネだが、対してイアは目をこしこしと擦るだけで反応が鈍い。

相当おねむの様だ。夕飯を食べて、お腹いっぱいで気持ちがいいのだろう。

だから次の瞬間、イアはそのままオネの膝へとその身を崩してきた。

 

(っおっおねぅぇえええええ!?!?!?!?!!!!!?)

 

声に出して叫ばなかったのは奇跡に近い。

姉に甘えたいと思った矢先、その姉が自分の膝を枕にしてきたのだ。えげつないカウンターである。

バクンバクンと心臓が高鳴る。

自分は今、猛烈に姉に甘えたい。そして膝の上には無防備に微睡むその姉が。

プライドと甘えたい欲が葛藤し、直ぐに決着がついた。

 

「……ッ」

 

オネはごくりと唾を飲み込む。

 

「……イア、寝た?」

 

恐る恐る声を掛けるが、すーすーと可愛らしい寝息が返ってくるのみ。

イアが完全に寝ている事を確信したオネは、意を決して姉の耳元に唇を近づけると、そっと呟いた。

 

「…………大好きだよ、お姉ちゃん」

 

言い終わった途端、オネの耳がみるみる真っ赤に染まり顔を両手で覆ってしまった。

言った言葉に嘘偽りはないが、しかし恥ずかし過ぎたのだ。好意を口に出して言う事の、なんと恥ずかしいことか。

だが後悔はなく、それより普段素直になれない分、妙な達成感すらあった。

もうこうなったら行けるところまで行くしかない、と覚悟を決めたオネは、顔を覆っていた手をどけた。

 

その時。

 

ぱっちりと開かれた碧眼と目が合った。

時が止まるオネ。

微笑むイア。

 

「ふふ、くすぐったいよオネちゃん」

 

「ッッッ!?!?!?」

 

耳から顔から体から、全てが真っ赤に染まるオネ。

 

「お、お、お姉ちゃっ、今のっ聞いて……!?」

 

口をパクパクするオネに、イアは柔らかく笑って、ただこう答えた。

 

「私も大好きだよ、オネちゃん」

 

「ッッッッッ!!!!!」

 

聞かれていた告白とストレートな好意のタブルパンチを受け、オネの中の何かがぷっつんと切れた。

 

「きゅう」

 

「オネちゃん!?ふぎゅっ」

 

恥ずかし死と尊死による気絶!!

オネはそのまま前のめりに倒れ、膝枕されているイアへと倒れ込んだ。顔面にオネの胸部が覆いかぶさり、イアから変な声が出る。

オネサンドイッチされたイアはなんとか脱出すると、今度はオネを自らの膝に寝かせた。「うぅ、お姉ちゃぁん……」とうわ言を言うオネの頭を愛おしそうに撫でると、実に楽しそうに微笑んだ。

 

「ふふ、オネちゃん可愛い♪」

 

と、その時、ガチャリと扉の開く音が後方から響き、姉妹空間に誰かが入ってきた。

 

「ふー、イアちゃんオネちゃん、お風呂上がりましたよー……って、どうしたんですか?」

 

ほかほかと湯気を立ち昇らせ現れたのは、パジャマ姿の結月ゆかりだ。今日はこの三人で晩ご飯を食べていて、ゆかりは一番風呂に浸かっていたのだ。

イアは彼女に振り向くと、「しー」と人差し指を立てた。

察したゆかりが足音を立てずに近づくと、イアに膝の上でぐるぐる目になっているオネを覗き込んだ。

 

「どうしたんですかオネちゃんは?だいぶ幸せそうに目を回してますが……」

 

「うん、ちょっとコレが合わなかったみたい」

 

イアが人差し指で示したのは、テーブルの上にあるチョコ菓子、ウイスキーボンボンだ。

彼女たちが食後のデザートとして食べていたものである。

 

「なるほど。オネちゃんはアルコール類に弱い、と。ところでイアちゃんは大丈夫なんですか?」

 

姉妹だからイアちゃんも弱いのでは?と心配したゆかりだが、イアの表情を見てドキリとした。

 

「うん。私は大丈夫だよ」

 

そんな返答と共に、イアは妖艶な微笑みを浮かべていたのだ。いつものぽわぽわした雰囲気とは違う、妙に色っぽい仕草だった。

これはアカンと思ったゆかりは人差し指を立てると、恐る恐る聞いた。

 

「イアちゃん、この指何本ですか?」

 

「んー?」

 

誰でも即答で一本と答えられるこの質問に、何故かイアは真剣な顔でじーっと注視する。

その様子を見てゆかりが「あ、これ酔っ払ってますね」と確信した、その時。

 

「あむっ」

 

ぱくりと指先が咥えられた。

ゆかりは何が起きたのか分からず、目を見開い(宇宙猫になっ)て固まる。

 

「もぐもぐ、……ちゅ」

 

イアが指に舌を這わせた瞬間、電撃が走ったが如くゆかりが発狂した。

 

「ッちょイアちゃァァァあぁぁぁあ!?!?!?」

 

バターン!と勢いよく倒れるゆかり。

じわりと鼻血が広がり、人差し指で『いあちゃん』と血文字まで残す始末。職人の技である。

 

「……?」

 

シンと静まり返る部屋で、首を傾げたイアが一人、ぽつねんと残された。倒れた二人を見下ろしていたイアはしばらくすると、ゆかりをソファーに寝かせ、ベッドルームから掛け布団を持ってくると、自身を真ん中にして寝転んだ。

両手に花状態のイアはご満悦の様子で、布団の位置を正すとやりきった顔で眠った。

 

 

 

 

なお後日、朝を迎えた三人は誰も昨夜の記憶を覚えていなく*1、血文字の『いあちゃん』を発見してサスペンス編に続く(続かない)。

 

 

*1
酔い×2、出血多量により

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