謎の強キャラムーブがしたい少年は願望機に愛される   作:上位存在愛されもの好き

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負けヒロインちゃんの心情描写パートです
創がどんなことを軽薄にしでかしているかご覧ください


百合系作品の主人公・百合園華江の過去と現在

 

 私、百合園華江にとって高勢創先輩は、一言で言えば恩人である。

 あれは私が中学に入学してすぐ、友達が1人も作れず、なんならハブられ始めた頃のことだ。

 昼休みにみんなが仲良くおしゃべりをしているのを見ていられなくて、私はたびたび教室を飛び出してた。あちこち彷徨ったあげくたどり着いた学校の隅で何をするわけでもなくただ時間を潰し授業直前に教室に戻る、そんなことを繰り返していた。

 そんなある日のことだった。

 

「お前、こんなところで何してんだ?」

 

 誰も来ないと思っていたそこに、先輩は現れた。

 

「……あ、あなたこそなにしにきたんですか。こんな場所に」

「俺はこの校舎に隠された秘密があるんじゃないかとこっそり探索をしてたわけだが……そっちはどうなんだ?」

 

 なに言ってんだろうこの人。最初の印象はそんな感じだった。これが中二病ってやつか。ちょうど学年もあってるし。

 そんな馬鹿な人にしか見えなかった先輩に、この人なら別にいいだろうと私は事情を説明した。

 

「……なるほど。話し相手がいないのが惨めだと、そう思ったわけだな」

「そこまでは言ってませんけど……まあそうですね。こんな友達の1人も作れない自分がひどく惨めです」

「そうか、なら俺が友達になれば解決だな」

 

 先輩はなんの躊躇いもなしにそう言った。自分で言うのも何だが、当時は髪がボサボサに伸びていて、ろくに顔のケアなんかもしていなかった見た目も心も陰キャまっしぐらであった私に。

 

「え……えっ?」

 

 当然、すぐにその話を飲み込むことはできなかった。でも、すぐに気がついたのだ。その目には一切の哀れみも邪念もなく、ただ単にこいつと友達になりたいという思いだけがあったことに。

 ……まあ、今考えてみるとこれも先輩にとっては非日常への入口になればいいな、くらいの気持ちだったのかもしれないけど。

 

「どうだ?なるか?」

「な、なります!」

 

 こうして、私と先輩は友達になった。

 それからは毎日のように話をした。といっても基本話す話題など持っていない私が先輩の話に相槌を打っているだけだったが。それでも楽しかった。先輩の好きなものも知れたし。

 ある時、先輩と途中まで帰る道が同じだと知った私は、先輩と一緒に帰りたいと思った。最近話していた内容が学園もののラブコメだったので、それに引っ張られたのかもしれない。

 先輩の暮らしはもちろん把握していたので、帰りの会が終わるとすぐに居心地の悪い教室を抜け出して先輩のもとへ急いだ。

 その時の私は気づいていなかったのだ。普段の先輩がどんなふうにしているのかを。それでも少し考えれば予想はついたはずだ。こんな私にすら優しくしてくれる先輩が、クラスでどんな扱いを受けているのかなんて。

 

「……あっ、せんぱ」

「おい高勢!一緒に帰ろうぜ」

「オッケー、にしてもひさびさに聞いたなそのセリフ」

「だってお前最近俺らと遊んでくんないじゃん?特に昼休みはいっつもどっか行ってるしよ」

「そーだよ!私らだって話したいことあるのに」

「あー……悪いな。ちょっと用があってな」

「えー、用って他クラスの子とでしょ?自分のクラスはどうでもいいの?」

「いやーそういうわけじゃねぇんだけどな……」

「そんな子より私を選んでよー、なんちゃって」

「俺は俺が選びたいものを選ぶ派だからなぁ」

「まあお前がそうしたいならそれでいいけどよ。とりま今日は俺らと一緒な!」

 

 教室から複数人を連れて出ていく先輩を、私はただ眺めていることしかできなかった。

 その後私は気を抜くと溢れそうになる気持ちを無理矢理抑え込むように全力で走って家に帰った。

 

 

 そうだ、わかってたことじゃないか。先輩はいい人だ。そんな人がクラスでいいポジションにいないわけがない。そんなことに、気付かないふりをしてたのは他でもない私だ。醜くて、ともすれば先輩を独り占めできるんじゃないかなんて思ってしまった薄汚い私だ。

 先輩が同性の友達と話すたびどこか胸が痛かった。

 先輩が異性の子とじゃれ合っているのを見てそこは私のものだったはずなのに、なんてそんなはずないのに思ってしまった。

 私は悪い子だ。先輩を困らせてしまった。だったら私がすべきことは……

 

「……明日、先輩にもういいですって言わないと……」

 

 また1人に戻るだけだ。あれはきっと一時の夢だったんだ。だからなにも寂しくなんてない。

 そう言い聞かせていないと、今にも胸から苦しさが溢れてしまいそうだった。

 

 

 次の日、いつも通りやってきた先輩は、これまたいつも通りラノベの続きを持ってきて話をしようとしてくれた。

 

「……先輩、もういいんです」

「……?どうした急に」

「もうこんな私に付き合わなくたっていいって言ってるんです」

「だからそれがどういう意味かわからんのだが……」

「先輩はクラスに仲のいい人がいますよね?」

「ん?まあいるが」

「だったら、今後はその人たちと仲良くやってください。もうここには来なくて結構です」

「ま、待て百合園!俺がなにかしたか?だったら謝るから……」

 

 ああ先輩。違うんです。これは私の贖罪なんです。なのにどうしてあなたは……そんなに百自分が悪いみたいな顔をするんですか?

 そんなことされたら私は……

 

「もう嫌なんです!」

 

 自分で思ったよりも大きな声が出た。

 

「先輩は私のものじゃないのに、一瞬でもそう思ってしまった自分が!先輩がクラスの人たちと仲良くしているのを見てそんなところにいないでほしいなんて考えてしまった自分が!私と先輩は違うのに、少しでも同じだと思ってしまった自分が!私は嫌で、嫌いで、どうにかなりそうなんです……!だからもう、こんな私に関わるのはやめてください……」

 

 先輩は、黙って私の叫びを聞いていた。

 

「……そうか、俺は馬鹿だな。お前のことを、友達になることで救ってやれていたと思っていた。楽しんでいたのは俺だけだったのに。お前の気持ちを何も考えられていなかった。……ああ、そうだよな。こんなことすらできないやつが主人公になれるわけがない。大事な後輩1人の心も救ってやれない俺なんかが……かっこいいわけがない!」

 

 先輩は思いっきり壁を殴りつけた。わからない。なんでそんなに先輩が思い詰める必要があるんですか?

 

「……なあ、百合園。俺はな、お前といて楽しかったんだよ。こういうオタク的な話をできるやつとクラスじゃ関わりがなくてさ。だから嬉しかったんだ。お前がこんな話を面白いって言ってくれて。共通の話題で盛り上がれて。なあ、お前はほんとはどうだったんだ。俺といて楽しかったか?」

 

 そんなの……そんなの!

 

「楽しかったに決まってます!こんな私と一緒にいてくれるだけでありがたいのに、本も貸してくれて、感想も言い合えて……こんなことをしたかったんだって気づかせてくれて!そんな時間が楽しくなかったなんて嘘でも言いたくありません!」

「……そうか、そんな風に思ってくれてたのか。なら百合園、さっき言ったこと全部忘れろ」

「え?」

「俺はお前と一緒にいたい。お前が自分のことが嫌いでも、俺は好きだから」

「……こんな私でも、いていいんですか?」

「ああ、いい。またいつも通り、2人で楽しもうぜ、百合園」

 

 先輩が私に手を差し伸べる。その手を私は……

 

「私も……私も先輩のことが好きです!だから一緒にいさせてください!」

「ああ、もちろんいいぜ」

 

 両手で抱きかかえるように取った。

 

「……あぁぁ……ぜん゛ばーい……!」

 

 その後、私は先輩の胸の中で思いっきり泣いた。

 その時気づいたんだ。私は……先輩のことが、恋愛的な意味で好きなんだって。

 

「ほら、泣けよ、好きなだけ。今は許してやるからさ」

 

 これは私がちょろいのか?いやこんな優しい先輩に惚れないのとか逆に無理だし。もうこれは責任取ってもらうためにも告白するしかないよね?

 そう思いながら悩むこと……()3()()。未だに告白ができない小心者の私のもとに、あいつはやってきた。

 

「創の彼女のエキナです!」

 

 始めは気付かなかった。それでも何か違和感を感じ、そこをじっと見たらそいつはいた。

 ぱっと見は小さな女の子。でもそれだけじゃないってことがなんとなくわかった。まあこの際正体なんてどうでもいい。本題は……そいつが先輩の彼女を名乗っていたことだ。なるほど、これが私が先に好きだったのに(WSS)ってやつか。……それで納得ができるとでも?

 しかし、やたら張り合ってくるそいつに対抗しながら先輩と夜電話する予定を得られたのだ。これはもう私の勝ちと言って差し支えないだろう。ざまあみろバーカ。

 これで先輩と関わる大義名分ができた。ならあいつから先輩を略奪することだってできるだろう。躊躇も尻込みもしてやるものか。先輩の隣にいるのは私だ……! 

 

 

 

 

 

 

 話は変わって先輩と電話デート(これはれっきとしたデートである)した翌日の放課後。私は学園の王子様、明月先輩のお家にお邪魔させてもらっていた。私の魔法の修行のためだ。私としては先輩の気を引く道具くらいにしか考えていないこの魔法の才能だが、彼女が言うにはこれはどうにか制御しないと危ないし、下手をすれば悪人に狙われることになるらしい。

 

「というわけで今日も練習を始めようか、華江」

「はい、わかりました、明月先輩」

 

 学校ではなにかと私にアプローチを仕掛けてくる彼女もここでは真面目になる。元々切り替えの上手い人なのだろう。

 

「では、昨日教えた浮遊魔法を見せてもらおうか」

 

 浮遊魔法、文字通り宙に浮く魔法で、昨日先輩に見せたものだ。

 

「いきます」

 

 何も呪文を唱えずに、つまり無詠唱で飛ぶ。それも数ミリとかいうレベルではない。明月先輩の三階建ての大きなお屋敷、それのさらに上に高速で向かう。

 

「なっ!昨日の今日であれほどの完成度に……!やはり、彼女の才能は……」

 

 ちなみにこれも先輩のアドバイスのおかげだ。

 

『とりあえず動くもの、要はアニメとかを見た方がいいんじゃないか?その方がイメージも掴みやすいだろ』

 

 と言われたのでそういう描写のある教えてもらったアニメを見てみた。その結果がこれである。これだけ見せれば満足してもらえただろうか。なんならこれを使って今度先輩と空中散歩でも……

 

「華江!降りろ!」

 

 明月先輩の声が聞こえると同時に目の前が爆ぜた。

 

「え?」

 

 なにが起こった?いや、まずは下に降りよう。

 1秒もかからずに地面に降り立つと、さっきとは打って変わって焦った表情をした彼女がいた。

 

「明月先輩、今のは」

「ああ、キミを狙う者だろう。私が前を張ろう。援護を頼めるかい?」

「もちろんです」

 

 先輩以外に捕まるつもりはない。誰だか知らないが、とっととお帰り願おう。

 

「てめぇが例の……こっちに来てもらおうか」

「お断りします」

「彼女は私の大事な人でね、キミのような男に渡すわけにはいかないのだよ」

「そうか……ならちょっとおねんねしててもらおうか!」

 

 外にいたのはガラの悪い男。こんなのでも上空の私を正確に狙ってきたから油断は禁物。……すっごくかませ犬っぽいけど。

 そいつが放ったのはバスケットボールくらいの火球。このくらいなら……

 

「消火しないとね」

「なぁっ⁉」

 

 一瞬で炎が消える。この程度なら楽勝だ。

 

「良い援護だ。チェーン!」

 

 明月先輩の手元から鎖が伸びて男を狙う。

 

「させるかよっ!」

 

 再び現れた火球が鎖を弾く。さっきから全部無詠唱。それなりに強い人なのかもしれない。

 

「少しはやるようだね」

 

 彼女もそれを感じ取ったらしい。場の空気が一段と張り詰める。一触即発の空気感。それを壊したのは、この場にいる誰でもなかった。

 

「うしろから……ど~ん!」

 

 聞こえてきたのはまだ若干舌足らずな幼い声。その体躯は昨日会った自称彼女よりもさらに小さく、恐らく小学校低学年程度。そんな小さな体に似合わぬ巨大な大槌を男に叩きつけた幼女は、にこっと笑うとこちらに話しかけてきた。

 

「おねーちゃんたち、こんにちは!」

「……ああ、こんにちは」

 

 明月先輩が挨拶を返す。やっぱり切り替えが早い。私はまだ混乱してるのに。

 

「キミは……誰だい?」

 

 何を聞くか迷った結果そう聞いた彼女に、幼女はこう答えた。

 

「わたし、リリィ!おしごとしにきたの」

 

 お仕事、ねえ。てことは指示してる人がいるのか?

 

「はやくかえらなきゃだから、わたしかえるね。ばいばーい!」

 

 そういうとその女の子は男を引きづって何処かへ行ってしまった。

 

「……追いますか?」

「いや、深入りはやめておこう。得体が知れなすぎる。彼女は一体何者なんだ……?」

 

 今考えてもわからない気がする。本当にあの子は何なのだろうか。

 その答えを私はいずれ知ることとなる。でも、それはまだ先の話だ。




 百合園華江

 先輩に対する好感度は限界突破済み
 ”先輩”呼びは創に対する時だけ
 エキナに対しては敵愾心バチバチ


 創

 コミュ力の高い男
 書いててなんだけどこれで主人公になれないってマジ?
 なお彼の好きはライクの方な模様
 というかそもそもライクとラブの区別がついていないわりと子供な精神をしている


 エキナ

 恋敵(双方にとって)
 流石に消すような真似はしないがその内打ちのめすつもり


 謎の幼女

 イッタイナニモノナンダロウナー
 ゼンゼンワカラナイナー






過去編を書いてたらどんどん創が有能になっていく不思議
次は彼のターンです
今回も高評価・感想待ってます
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