呼吸が荒い、あちこちが痛い。
鼻血は止まったけど、下半身がピリピリする。
Gを殺しきれなくて血の巡りが少しおかしくなったんだ……
どこか……降りないと……降りて休まないと……
志条もちょっとヤバい。
強がってたから分かりにくかったけど、苦しそうな色をしてる。
ごめん、付き合わせてしまって……
「シルフ……あとは頼むよ」
私は自立飛行に設定して、目を閉じた。
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病院っぽい匂いがする。
ぱたぱたと誰かが歩き回る音がする。
少し、眩しい?
「目が覚めたかい?」
女の人の声がして目を開けてみると、胴の辺りを何だか締め付けてる感じがした。
固定? されているの?
「動いちゃダメよ。あばらが折れて内臓を引っ掻きかけてたから」
内臓!?
えっちょっ内臓ってどういうこと!?
兎に角起きて状態を痛"ッ"!!
その看護師さんに支えられてゆっくり体を戻すと、私の引きつった顔は戻っていった。
看護師さんは……「ほらな」って感じの色で、言葉にし難いな。
「だから言ったじゃない。折れてるって。あとは高機動によるGで体をやってるからしばらくはキツイわよ」
こんなに胴が固定されているので分かります。
でも、その前に。
「えっと、何か色々してもらって、ありがとうございます。志条、どこにいますか?」
「君のボーイフレンドはちょっと体が頑丈だったから君よりかは軽傷ね。あちこと痛めててめちゃくちゃヒドイ筋肉痛みたいだけど。……今更感凄いけど英語ペラペラじゃん。自衛隊組にバトンタッチする事もなかったわね。習った?」
「学校の授業だけはちゃんとしてたので。……え、自衛隊?」
「そう、自衛隊。あーその辺の説明はした方がよさそうね。ちょっと上の人呼んで来るから待ってなさい」
そう言うと、とってもガタイの良い女性の看護師さんはどこかに行ってしまった。
……英語が難なく通じたって事はアメリカ人? イギリス?
でも自衛隊って……日本?
横のベットを見てみると、志条が眠っていた。
落ち着いている様でなんだかとても安心した、自分の薄い胸に目をやると綺麗な桜の色が灯っていた。
あらま……この色が出ているって事は……
「目覚めたようで何よりです」
うわ日本語、保原さんと同じような日本人……じゃない、迷彩服を着ている。
でも名札がローマ字になっててさっきのガタイのいい看護師さんが付けてたやつと同じだ。
じゃあここは、米軍なの?
アメリカは生きていたの?
「まずは色々混乱しているかもしれませんが、自己紹介からさせて頂きます。元海上自衛隊三等海尉。超国家軍ピースリキャプチャー医療軍団の松原伊織少尉といいます。同じ日本人です」
そういうと、松原さんは綺麗な敬礼をした。
胸がきゅっと締め付けられた。日本……私が知ってる日本はもう鎖国の檻だったのに。
というか、超国家軍って何?
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「そうか、目覚めたのか」
「命に問題はありません。ガンダム・シルフの過負荷駆動で身体の複数個所に打撲、左ろっ骨を折る負傷をしていましたが、会話等反応にも問題ありませんでした」
そう報告する松原の声は安心を乗せていた。
報告の相手は米海軍の制服____サービスドレス・ブルーを着た大佐で、もう片方は陸上自衛隊の作業服装に一佐を示す階級章を付けた人物だった。
「ガンダムに助けられた少年少女達、か」
「民間人をこのように保護できたのは嬉しい事です。とんでもない機体付きというのは予想外ですが」
「我々米軍組としても予想外だ。しかも脅威にもなり得る。でも取り決めだからね、ガンダムとは何なのかを関係者と他国組にも共有するよ」
「よろしくお願いします。機体の方は?」
「それが問題なんだ……あの機体、ガンダム・シルフには戦闘知性体……かなり高度な軍事AIが実装されていてある程度の自立行動が可能になっている。だからなのか、その2人の安否をしつこく聞いてきて、警戒を解こうとしない」
「まるで子供を預けた母親ですね」
「整備軍団は冗談抜きでそう例えているさ。兎に角、ガンダムを兵器として扱わない方がいいだろう。松原君、そのAIにパイロットの容体を伝えて欲しい」
「了解です」
米軍組の大佐にそう指示を受けると松原は士官室を後にした。
米海軍軍人と陸自隊員が並んで立っているのは異様に見えるだろう。
だが、ピースリキャプチャーではとっくに慣れた光景だ。
「米軍、自衛隊、イギリス軍、中国人民解放軍、オーストラリア国防軍、ドイツ軍、イタリア軍、フランス軍、ロシア軍……寄せ集めでしかなったこの集団も、8年あれば軍隊として纏まったんだ。結束を解く事は出来ない」
「だからこそ、我々は進まなければならないんです」
窓から見える駆逐艦、護衛艦と海を眺めながら、2人は軽く拳をぶつけた。
ここは超大型空母オーバー・ザ・ホライズン、東シナ海だ。
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オーバー・ザ・ホライズン MS格納庫
全長360m、かつて米国が建造した巨大空母の甲板には各国仕様のMSと航空機が並び、艦橋上部はは参加軍隊の国旗を風になびかせていた。
そのすぐ真下、MS格納庫にも定期偵察から帰ってきた機体がメンテの為に運ばれてきたが、その一角で人だかりが出来ていた。
「ですから、パイロットの2人は無事なんです。容体も安定して言葉も話せてます。今、貴方にカルテデータを送信しました」
[
[
「……AIが感謝してるぞ?」
「それだけ入れ込んでるって事だ。俺達がシルフを作った時からもうだいぶ経ってしまったけどこうしてまた見てやれるとはな」
慎重にメンテナンスハッチを開けると整備士達がタブレットを繋いで各部関節、フレームの状態を確認していく。
さらにプラズマジェットエンジンを手慣れた様子で取り外して超伝導場の発生装置も外して確認を始める。
その1時間後、およそ半数の整備士の顎が外れた。
「レイフもセットでここまで飛べるとかどうなってんだよ」
「動作ログ見ろよコレ。超伝導場を気持ち悪いくらいに強めて足場にしてやがる」
「シルフもすごいことになってるな。あの学生パイロットを受け入れてるぞ」
「で、そのシルフがピースリキャプチャーを一時的に信用してると。こいつ今も心配してるぞ少し。嬢ちゃん、会わせてやれねぇのか?」
「男の子の方は出来そうですけど、女の子の方は肋骨が折れてて全身に痛みがあるみたいでまだ動いちゃダメなんです」
「でトップは?」
「一先ず日米で。状況がまとまり次第各国代表にも共有します」
____________
動かない方がいいのに、反射的に動いてしまう人が入ってきた。
……志条もビックリしてフリーズしてるし、ブルースクリーンでてないよねw
「医療軍団の方から面会の許可がようやく下りた。ああそのままでかまわないよ」
何処かだ!
服についてる階級章を自分で確認してから言い直してください!
志条が処理落ちで固まってるぞ!
「ピースリキャプチャー戦闘軍団、ドナルド・ホールデンだ。第7艦隊の司令をしていた」
「同じく戦闘軍団、荒川宗次だ。陸上自衛隊第1空挺団に所属していた」
……志条が、ブルスクになってる。
おーい戻ってこーい、ぺちぺち。
ちょっと肋骨が痛いけどガマン、ぺちぺち叩いてやれ。
「ハッ……纏、ここはどこだ?」
「ピースリキャプチャーの超巨大空母の中、でしたっけ?」
「70点だな。私の祖国が最後に生み出してオーダー99で奔出した艦艇、ウィリアム・マッキンリー改めCVFR-102 オーバー・ザ・ホライズンだ」
オーダー99?
オーダーって注文という意味だけど、ホールデンさんが言いたい意味って、「命令」だね。
それも雰囲気的に最上位命令的なアレだ。
「ドナルド、自慢の艦艇の話は耳に胼胝が出来る程に聞いたぞ。本題に入ろう。……ああ硬くならないでほしい。戦闘軍団とは言ったけど軍隊と一概には言えないし、尋問じみた事はしない。強いて言うなら軽めの取り調べ程度だ。で……どこから来た?」
荒川さんは……嘘は、言ってないみたい。
状況が呑み込めないけど、目の前に陸自と米海軍の結構な佐官が並んで椅子に座ってる。
しかも仲はいいように見える。
「沖縄の、名護市です」
「名護……ドナルド、多分アレだよな。2日前に聞いたアレ」
「ああ、シュワブの秘匿機体だ。ガンダム・シルフは、キャンプシュワブで君が見つけたんだね?」
「……シルフをどうするつもりですか?」
「危害は加えない。というか、加えられないんだ。ちょっかいをかけたら多分格納庫で暴れるから、今は君達の安全の確保を証明した上で整備を受けさせている。君達もシルフもボロボロだ」
「で、だ。どうして君達がここにいるのか、事の顛末を説明しておこう」
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約48時間前
オーバー・ザ・ホライズン 艦橋
「前方50000mより救難信号を確認」
「救難信号? どこの機体だ?」
「分かりません。局所的な電子妨害が発生しているようで……あ、解除されました。機体名、ガンダム・シルフです」
「ガンダム……まさか、あの機体なのか?」
「ご存知なのですか?」
「……ああ。そのガンダムに呼びかけてみてくれ」
通信士が無線通信の周波数を切り替え、国際救難チャンネル、近接用通信バンド、軍用プロトコルを順に立ち上げて通信波の解析に入った。
ホロディスプレイに通信波が踊り、ノイズ塗れの音声が徐々に鮮明になっていく。
「こちらはピースリキャプチャー、旗艦オーバー・ザ・ホライズン。所属不明機に告ぐ。直ちに所属を明らかにせよ」
「……反応無いな。無人機か?」
「いや、ガンダムは有人型だ。AIは搭載しているけど操縦は人がメインでやるように調整されているはずだ」
『
『
『
「……喋った」
「喋らないのか? そのシルフとかいうAIは」
「喋らない。文章を出力する機能はあるが、誰も文章生成機能は付けてない。しかも、女の声だ」
『
『
『
救難信号から流れ続ける声は合成音声ソフトで出力したような奇妙な音の繋がりがあるが、「誰もそんな機能を実装していない」事がさらに奇妙さを上乗せしていく。
しかし、どこか必死さを乗せている。
AIに人格は宿らないのに、一体何が起こっているのかがまだ把握しきれない。
「ドナルド、ガンダムとは何なんだ?」
「……ここでは秘密もクソも無いか。うちが作った戦域支配MSだよ。日本のクーデターによって搬出不可能になって、シュワブに置き去りにするしかなかった亡霊さ。……こいつが何で飛んでいるのかは分からないが、人を乗せている事は確かでAIが救助を要請しているのは確かだ。攻撃する意思もない事も確かだ」
最大望遠で映るシルフは、マウントされていた小銃と短刀を捨てほぼ丸腰の状態になった。
海賊もいるというのに非武装状態になる事を、策略とは考えにくい。
ホールデンは艦内放送用マイクを取った。
「これよりオーバー・ザ・ホライズンは、民間人搭乗機の受け入れ準備に入る。各空母に下令。万が一に備えてMSを甲板に置け」
ホールデンの声が艦橋に静かに響く。
命令は簡潔で、しかしそこで働く誰もが背筋を伸ばした。
数秒の隙間のあと、艦内は一斉に動き出す——機材が起動し、通信が交わされ、人が走る音がデッキに重なる。
「甲板、注意。周囲航行船舶に対して警戒線展開。同時に救難チャネルを監視。ドローン群を先行させて、周囲三百メートルをクリアにする」
通信士が短く報告し、ホロスクリーンに映る海面は小さな白い点線で囲われていく。
各国のMSが甲板に移動をはじめ、折り畳まれたブレードや格納式アームが静かに展開する。
国旗がはためく甲板上に、機体の影が次々と伸びる様は圧巻だが、近寄れば油と金属、薄いプラズマの匂いが鼻を突く。
「まずは非武装確認だ。レーダーと光学で再確認。接触の際は必ず二重保安で。外装に異常接合や爆発物があれば即時隔離」
荒川の声には自衛隊の訓練による厳密さがあった。
だが彼の口元には、どこか興味深げな翳りも残る──“現場”にいた者だけが持つ、古い仲間への安堵だ。
無線が再び割れ、低い合図音とともに格納デッキへの着艦許可が降りる。シルフの通信は相変わらず断続的だが、はっきりとした文が繰り返される。
『
「ガンダム、こちらOver The Horizon。着艦経路を指示する。燃料状況は?」
と、ホールデンが返す。
『
『
「マジかよ……ミートボール用意」
Over The Horizonの甲板の光学着艦装置が点灯した。
ホールデンの予想通り、シルフは元軍用機だ。
ならば、米国式の空母で採用されている光学着艦装置は識別できるはずだ。
「反応あり、軌道修正に入っています」
「暗視頼りじゃ厳しいからな。甲板空いたか?」
『アングルドデッキも空けさせました。どこに降りても大丈夫です』
「よし、整備軍団と医療軍団に話付いたか?」
『こちら医療軍団、ICUの準備も念の為完了しています。民間人の搬送次第全身のチェックと適切な処置を行います』
『整備軍団より艦橋へ。機体情報が少ない、手さぐりになってしまうが何とかします』
「こちらが持っている機体情報はすべて渡す。すまないが何とかしてほしい」
既に医療軍団の一部がストレッチャーとAEDをもって艦橋の根元で待機していて、その場での救命処置が出来る準備が整っている。
艦載機用エレベーターに最後の機体が乗って艦内格納庫に降りたのを確認すると、ホールデンは通信を入れた。
「ガンダム、甲板上の機体の退避完了、受入用意完了」
[
いつの間にか滑らかになっていた合成音声に驚きながらもホールデンは夜闇に灯るプラズマの光を双眼鏡で見た。
水色なのか桃色なのか分からない怪しい光が2つ、3つ、4つ。
ミサイルではとても出せないMSの色だ。
その色が、不意に消えた。
「アラカワ! 腰のジェットがダメになってる!」
「ここで落ちるなよ……! 荒川から下令、シャルルドゴール待機の機体を出せ、抱えさせろ!」
ピースリキャプチャー所属の原子力空母「シャルルドゴール3世」から待機MSが緊急発艦した。
電磁カタパルトで押し出されるとプラズマジェットがさらに機体を押し出し、よろめくシルフに向かって飛び出した。
腰のジェットからプラズマが漏れ出して危険を感知したのかシルフは腰のジェットを切り離し、バランスを大きく欠いた推進で何とか進もうとする。
それを受け止めようと救援機が飛ぶとシルフは一瞬警戒するが、危害を加える様子は無いと自己判断すると警戒を解き、両腕部を救援機に向かって伸ばした。
救援機はシルフの腕部を器用に掴むとGがかからない様に優しく吊り下げるとオーバー・ザ・ホライズンに運搬すると甲板上に丁寧に降ろした。
「着艦を確認。多分大丈ッちょっと待ったァ!」
「はぁ!?」
シルフが自分のコックピットハッチを抉じ開けようと四苦八苦し始めてしまった。
パイロットの事が心配なのはわかるが、手段が強引過ぎてまた別の騒動が発生してしまった。
「ガンダム、止まれ! 一旦仰向けになってくれ! その状態でハッチを解錠して救出するから兎に角やめろ!」
金属が軋む音が止むとシルフは声の主がいる方向に顔を向ける。
収音マイクか何かを使って音の方向をを理解している様で、無機質なデュアルアイが荒川を見つめている。
「お前の役割はここまでだから人間に引き継ぐんだ! 無理に開けるな!」
[……
慎重に仰向けになるとシルフは機能をスタンバイモードに移して人間を受け入れた。
慣れた様子でよじ登った整備軍団がコックピットハッチの解錠コードを探すとすぐに見つかり開放すると、パイロットスーツ姿の纏と志条がぐったりと座っていた。
安全ベルトとコックピットとスーツの接続端子を何とか外すて整備士が支えて何とかコックピットから運び出した。
気を失っていても呻く声が聞こえ、ちゃんと息がある事が分かった。
「おーし嬢ちゃんと坊主は生きてるぞ。医療軍団に引き渡すぞ」
救命救急士がストレッチャーに何とか寝かせるとパイロットスーツを脱がせて聴診器を服の内側に入れた。
耐G用のインナースーツではなく私服を着ていた事に驚くが、心音と呼吸音を確認すると救急士の表情はほぐれ、指で丸を作って整備士に伝えると2人はそのまま艦内に運び込まれていった。
__________________
現在
「シルフが……?」
「ああ。自分で音声を使って救難信号を流していた。その時は分からなかったけど、深浦君、君の声をサンプリングして使っていたようだ」
「うわぁ……シルフがどんどん進化してて怖い」
「こちらも同じ反応だ。自分でコックピットハッチを抉じ開けようとするMSなんて見たことが無い。でも、システム的に開ける事を思いつかない程切羽詰まっていたのだろう。AIらしくないが、君達の事をかなり心配していた」
「シルフの状態は?」
「左腰部のジェットが丸ごと無くなっている。あとは各部関節の磨耗とコックピットハッチの若干の歪み、その他君達が個人で直した部分の損耗。動けはするけど個人での修復では、な」
「整備したのは僕です。腕とかも光ファイバーが切れていたので変換器を噛ませて一部をワイヤ方式に直してます」
お、技術的な質問になると志条が復活した。
そうそう、自分達で直したんだよね。
いやー大変でしたって、九州まで行ったりハンセンに忍び込んだり。
「……どうやって部品を集めたかは聞かない方がいいな」
「忘れ物を拾って有効活用したんだなワカッタワカッタ」
あ~あー聞こえなーいって感じの顔と色してるww
柔軟な人で助かる、実際放棄されたって事は米軍のものでもなくなってるからね。
それでシルフも飛んだし、戦闘も出来た……戦闘してしまったし
……ほの暗い色が胸に灯ってた。
「ドナルド、済まないが少し外してくれないか?」
「聞かれちゃマズイ事かい?」
「そういう訳じゃないんだが……頼む」
何だろ、ホールデンさんと荒川さんの色が複雑になってる。
遠慮、何だろ、ごちゃごちゃしてる。
別に私は後ろ暗いことなんてないよ?
「……オーケイ戦友、今は外しとくぞ」
「助かる」
ホールデンさんは軽く手を振り私たちの病室から出ていってしまった。
私、志条、荒川さん、何だか空気が少し重い。
「……今の日本、どうなってるんだ?」
「え、日本ですか?」
「あぁ、10年前に壊滅を装って飛び出してきてから知る手立てがない。列島から脱出した人に会うのは初めてだから、生の情報が欲しい」
「そういうことなら……志条、いいよね」
「僕からもお話しします。今の日本を」
━━━━━━
「何だって?」
「だから、クーデター後にインフラとかがスゴい勢いで整備されて一気に便利な時代になったんです」
「便利な時代か……多分、深浦くんのいう『便利さで目眩ましをしている』のはあながち間違いじゃないな。それに徹底的な情報統制と監視、領海の拡大と先制的自衛権……」
ショックは……受けてなさそう。
あまりの変わりように飲み込む時間が必要なだけだね。
「いいか? 俺達自衛隊は、世界混乱期で戦力を国外に脱出するように命令されたんだ」
「世界混乱期?」
「あー教科書には流石に載ってないか……分かった。今から、この世界の現状を話しておこう」
_____________
聞けば聞くほど悲惨過ぎで、まずアメリカ合衆国は消滅している。
でもピースリキャプチャーが戦力を陸上に展開して西海岸とエリア51を持つ事が出来たので、そこは「世界でも少ない安全地帯」となっている。
そして今この軍に参加している部隊の母国は軒並みダメになっていて、法治国家として成り立っているのは日本だけだという。
さらにさらに、2113年に通信関係が死んだ。
オンラインになってた物は軒並みダメになったらしくて、今生き残ってるのは、国内イントラネット化した日本国内の端末と、当時オフラインだった端末や物らしい。
そして、通信が死んで情報が行き来しなくなった理由はマジで分かってないらしい。
1つ疑問なのが、これを日本政府は知っているのかどうかなんだよね。
もし知っているなら、日本は台湾沖のアレみたいに何回か国外調査をやってて、鎖国をしながら荒れ果てた世界を調査していた事になる。
「この船、どこに向かっているんですか?」
志条、それ気になるんだよね。
「東太平洋艦隊との中継基地、ハワイはホノルルだ」
……思いがけず、目的地だ。