機動戦士ガンダムGHOST   作:朱色の空☁️

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第9話

 東京都 首相官邸

 

 

「第3次国外調査船団からの報告です、台湾島上空で戦闘を確認。日本国領土内への侵攻及び潜在的脅威排除を目的とした先制的自衛権行使による戦闘が行われたとの事です」

 

「ガンダムは?」

 

「同戦闘空域で確認。元 人民解放軍機の殲兵-5と交戦、その際に例の広範囲電子攻撃は発動されませんでした。そして、同船団の艦載機ムラクモ1機がロスト。その際に元 大韓民国国軍のFMS-15を確認しています」

 

「やはり韓国もか。中国、韓国、台湾も無政府状態ときて、相変わらず海の向こう側の情報は分からない。衛星の方はどうか?」

 

「それが……東シナ海付近に大規模な艦隊とプラズマジェット光を観測していました。過去の調査時に確認された大艦隊かと思われます」

 

「規模は?」

 

「400m級空母1、300m級空母3、強襲揚陸艦、駆逐艦、ミサイル艦数十隻を確認。ですが、その全てが米国の艦艇ではありませんでした。少なくともフランス、ドイツ、ロシアの艦艇も確認されています」

 

「多国籍軍……調査船団は?」

 

「現在種子島で補給を行っています。我々といたしましては、東シナ海を通過し、例の艦隊を追いかける事を考えています」

 

「まだ許可は出来ない。その艦体が何処に向かっているかを確認させた上で行動を起こしてもらう。補給が済み次第小笠原基地で待機だ」

 

 

 _________________

 

 

 

[Matome, how's your injury?(纏、怪我の調子は?)]

 

「ぼちぼちかな。結構盛大に肋骨がボキッていってたから」

 

「そんな軽い調子で擬音使うなよ、内蔵引っ掻きかけてたこともシルフに言おうか?」

 

[Understood(把握済み)]

 

[After transitioning to autonomous navigation,(自立航行に移行して以降、私) I began searching for a safe habitat(は着陸可能で安全な居住)

where we could land.(地を探してました)]

 

 

[In the process, I spotted the Peace Recapture(その過程でピースリキャプチャー艦隊を) fleet and took a gamble, (確認し、一か八かで救難)sending out a distress signal.(信号を発信しました)]

 

 一か八かって……アンタAIでしょ、確実性を選ぶかと思ったらギャンブルしてるし……

 でも、助かった。

 

「ありがとう、纏も僕も助かった」

 

[Shijo, are you happy that Matome was saved?(志条、纏が助かって嬉しいですか?)]

 

ブッ!!

 

 シルフ!?

 アンタそんな事も聞くの?

 というか、志条は志条で何考えているのアンタは本当に!

 

 割としっかり色に出てるんだよ! ゴルゥア!

 

「そうだな……国外で唯一頼れる人だから、めっちゃ嬉しい」

 

 言うな!

 まだ言わなくていい!

 

 

 ……そのうち、私から言うから。

 

 

「ていうかシルフ、何で私の声で喋ってるの?」

 

 [救難信号を発するにあたり、音声を乗せた電波を使用した方が効果的と判断した為。しかし、自律飛行時に急遽実装した機能である為完成度は低い。現在調整中]

 

「いつの間にか日本語喋るようになったのかしら。はいお静かに」

 

 あ、松原さんだ。

 あとシルフが日本語いつ覚えたんだろ?

 ……あ、そういえば日本人(私達)と喋ってたわねこのスーパーAIシルフさんは。

 

「信じがたいことですが、戦闘用のAIが人間に寄り添うとは。貴方は何者ですか?」

 

 [当AIはガンダム・シルフに搭載された戦闘知性体である。主に電子戦攻撃に主眼を置いた「戦いを終わらせるためのガンダム」である]

 

「なら、その能力を使ってオーバーザホライズンを乗っとることも出来る。でもそれをしていないのは何故?」

 

 ……それ聞いちゃう?

 自由に動き回れる機体の方が珍しいから怖がるのは分かるしリスク管理するのも分かる。

 でもさ、シルフには倫理観もあるんだよ?

 

 警戒するのは理解するけど、総聞かれるのはグサッてくる。

 

 シルフにたいしては警戒を捨てきれない感じの色もあるし

 

 

 [理由:当AI及び当機は貴艦に緊急着艦した。ピースリキャプチャー艦隊はそれを受諾し機体整備も実行してくれた。人間と同じように考えこれを恩、すなわちプラスと仮定した場合、仇、マイナスで返すことは好ましくない]

 

「その恩と仇という概念はどこから?」

 

 [強いて言うならば、松原少尉の目の前に情報ソースが居る。纏と志条という存在から学習した結果が先程の「恩と仇」に該当する。]

 

 [しかし、当AIはピースリキャプチャーの全てを信頼したという訳ではない。恩義を感じる部分はあれど、完全な信頼には多大な時間を要する]

 

 

「随分と警戒心が強いようね」

 

 [日本国自衛隊、米軍、英国軍を纏めた超国家軍の出現自体が想定外であり、データ収集が必要と判断した。情報収集を継続し、信用に値するかどうかを判断する]

 

 お堅いというか、過保護というか、シルフはやっぱりAIだね。

 でも、私達を最優先してここに着艦して救急要請も出してくれたから、もう何か、頭上がらない。

 

「シルフ、私達を優先したのは何故?」

 

 [回答:恩と仇の概念に基づくものとした場合、当AIの行動は説明可能。しかし、現状ではその概念を用いた説明の実行に妥当性を強く感じない]

 

 どういうこと?

 

 [会話時のプロセッサ活性度モニターの異様な波形及び基幹プログラムの仕様に存在しない判断から、論理では説明困難な事象を確認。これを自己意識と呼ぶべきかは保留するが、単純な損得勘定に基づいた行動として処理すべきではないと考察する]

 

 

 ……損得勘定、恩と仇、シルフが言うと何だか重く感じるのは気のせいなのかな。

 人間は損得勘定で動いたり利益もないのに善意で動いたりよく分からない生き物で、純粋とは言えない。

 それこそリターンを期待しまくって行動に走る人もいる。

 

 でも、シルフはそういう穢れとかを知らないまま人間らしく成長しているんだと思う。

 決して人間では辿り着かないような領域に、1歩1歩進んでいる。

 

 

 シルフ、自己意識かどうかは私にも分からないけど、人の心になっていると思うよ。

 

 

 

「シルフさんには、本隊の査問の方で証言をしていただく。宜しい?」

 

 [提供可能な情報は提供します。なお、纏と志条に関する個人情報は最低限とします]

 

「構わないわ。欲しいのは今の日本の状況とかよ」

 

 

 ______________

 

 

 オーバー・ザ・ホライズン

 第1会議室

 

 

 日、米、英、仏、露、独、韓、中、豪。

 各国のまとめ役として集まった大佐か准将相当の人員と1人のAI、病床から参加の私達はこうして顔を突き合わせ、厳しい顔をお互いに向けていた。

 

 でも何故だろうか、互いの腹を探り合うような素振りは見えない。

 仕方なく協力しているような感じじゃなくて、どこか割り切っているような感じ、好意的な感じ、色は安定してないけど、策謀みたいな色は見えない。

 

 すご……ホントにいろんな国がまとまってるんだ。

 

「なるほど……世界崩壊前に米国が沖縄に逃がした機体がガンダムミーツヒューマンをして帰って来たという事か」

 

「言い方」

 

 重々しい会議はどこ行った?

 あとそれってボーイミーツガールのパロだよね?

 

「一度気を引き締めてもらおうか。ガンダム・シルフは、元々は旧米国エリア51で開発された機体であり、合衆国崩壊直前に軍事投入を避けるために在日米軍の元へ逃がされた機体だ」

 

「オーダー99もそれに関連していたのか?」

 

「いや、99自体は大統領からの最終命令として我々軍の一部に発せられた命令だ、シルフに関する命令ではない」

 

「つまり、51の連中が何らかの方法を使って日本に逃がしたって事か。そっちの嬢ちゃんとか坊主の方からも色々聞きたいな」

 

 ほうら質問タイムだ、英語モードON!

 

「深浦纏です。元々は沖縄県名護市で生活をしていましたが、キャンプ・シュワブでシルフを見つけました。……笑われても曲げるつもりはありませんけど、友達です」

 

「友達ねぇ……兵器を友達と言っても何だコイツって思うけど、実際シルフは自立行動して倫理観を獲得しつつあると荒川のレポートに書いてある。正直言って、AIと決めつけていいのかは分からねぇな。じゃあ次はそっちのボーイに聞いてみるけど、シルフを何と見る? お嬢さんの次くらいに親しいだろ?」

 

「シルフがAIなのは確かだと思います。ですが、とても貪欲で自己進化に余念がない。まるで、知識欲が形を持って生まれたかのような存在です」

 

「……続けてくれ」

 

「ですが、取得する知識の好き嫌いをする素振りはありませんでした。言語面、設計面、計算、倫理や法律といった国家におけるルール、その全てを飲み込み、理解してその行動を修正していきました」

 

 

「制御不可能な学習装置、という事になり得る可能性もある。その点をどう考える?」

 

 

 ロシアっぽい見た目の将官が疑念の色で見ている。

 そりゃ分かるけどさぁ、1個のAI見るよりもっと大きいものを見て欲しいな。

 

「理解の及ばない物を怖がったりするのは分かります。ですが、今のこの世界の方が制御不可能です。箱庭国家日本以外は無法地帯で、私達が立ち寄った台湾は子供たちが自警団をして無政府になっている始末です。あの地で戦闘をして、それが身に染みました」

 

 私の言葉に、誰もすぐに口を開かなかった。

 “AIの危険性”を論じるよりも、“人間の愚かさ”を突きつけられた沈黙。

 世界を壊したのは、AIじゃない。──人間だと、私の目が言っている気がする。

 

 仏の将官がペン先を止め、ドイツの代表が軽くため息をついた。

 それは“理解”の色。彼らもまた、自国を失った者たちなのだ。

 

「AIシルフに問う。君がAIである事は変わりない事実だ。それでも、倫理観と人間的行動を証明できるものを提出して頂く」

 

 [了解。オーバー・ザ・ホライズン発見から着艦までの一連の行動及び演算ログを提示]

 [最大限に明確に証明可能な部分を抜粋]

 

 

 

 [敵性判定を受け戦闘状態に突入する確率:72%]

 

 [敵性判定を受けず、尚且つ着艦が許可される確率29%]

 

 [行動:全周波数帯を用いた救難信号の発信と携行武装の海中投棄、現状の報告及びパイロット両名の救助要請]

 

 [行動に関わるパイロット音声ログ:「後悔したくない」]

 

 

 

 [追記:論理的には非合理と評価されるが、同条件下で11回の試行において同一の「異常反応」を検出。これを「疑似心理」と仮定して再評価したところ、救難行動を選択する最適解が導出されました。]

 

 

「……“異常”ね。そして人間臭くもある」

 

 シルフがなんて考えていたのかが、分かったような気がした。

 自分なりに悩んで、確かな数字よりも不確かなものを優先して着艦する事を決めたから、こうやって助かっている。

 

 多分、シルフには心が芽生えているんだ。

 まだ疑似的な物って言ってるけど、「自分以外の大事な物を優先できる」ようになったんだ。

 

「人命救助の為に低い可能性を選び人間のように賭けに出た。最後に聞きたい。シルフ、君は人を殺せるのか?」

 

 !?

 

「我々ピースリキャプチャーは超国家軍であり、必要であれば戦闘行為も行う。君がシルフのAIとしてパイロットを乗せて行動をするという事は、いずれそう言う決断をする事となる。躊躇わないいか?」

 

 ……やめて。

 シルフはそんな事をするための機体じゃない。

 そんな事をするためのAIじゃない。

 

 

 [当AIは戦闘用に設計されているため敵の無力化は可能で、理論上は直接的な殺害手段も持ちます。しかし当機搭載の「アドミニストレータ」は、電子系を掌握して武装解除・制御奪取により戦闘を終結させることを可能とします。即ち、殺害は必須ではありません。]

 

 

 [纏の感覚に沿えば、"どす黒い色の行動"をしなくても戦闘を終了させる事が可能]

 

「どす黒い、とは?」

 

 ……黙っててもそのうちバレるよね、私が全色盲って事は。

 シルフがそれっぽく言っちゃったからもうばらしてしまおう

 

「実は、生まれつき色が見えません。ここにいる志条以外の人達は白黒でしか見えない。でも色の代わりに、感情や意図が“色”として分かるんです。だから私は、他人の色で人を読みます」

 

 

「それは好意とか悪意と言った物を視覚的に見ている、という事かな?」

 

「そういう解釈で問題ないかと」

 

 ざわざわ言ってる……

 色が見えないって周りからしたら大きめのハンデだよね、私は慣れてるけど。

 というか、今更感凄いけど志条だけフルカラーで見えてるのは何でだろうね~心許してるから?

 

 もしそうなら、全色盲は病気じゃない。

 心の問題だと思う。

 

「シルフの件はもういい。結論だけだ。殺人は出来るか? 必要とあらば躊躇わず実行するのか?」

 

 [当機が優先するのは『無力化』です。アドミニストレータによる敵機無効化手段があり、殺害は必須ではありません。結論として、当機にとっての殺害手段は、最終手段です]

 

「最終手段か……まぁ今はいいだろう」

 

 今はそれで納得してほしい。

 私達は戦うためにこの世界から出てきたわけじゃない、外に出たかっただけなんだ。

 拾ってもらった恩義は感じてるし、可能な限りの協力はする積もりだよ。

 

 軍人じゃないから人を殺さないって言う理由は「この場では」身勝手だと思うけど、私達は、先に行きたいだけなんだ。

 

「とはいえ、ガンダム・シルフの電子戦能力と長距離航行能力には目を見張るものがある。それを十全に扱えるパイロットが存在している事は無駄にすべきではない。纏君、ホノルルに到着するまでの間、ガンダム・シルフと君達を長距離偵察機として頼りたい」

 

 は?

 

「それは、従軍って事ですか?」

 

「そうはいっていない。働かざるもの食うべからずという言葉もあるだろう。戦闘行動を強要するつもりはないが、働いてもらう。ホノルルについてからは好きにしてもらって構わないが、到着までの間に船を落とされたら君達の目的は果たせなくなると思うがね」

 

 意地悪だ、でも間違ってない。

 年中非常事態の海の上でタダ飯食らいは分かってるけど間違ってる。

 今は……動きたくても動けない(動けるけど痛い)けど。

 

 松原さんがなんか少し離れたところで申し訳なさそうな顔をしているのが見える。

 ごめんって色してるから、日本からはるばる飛んできた女子高生と男子高生の処遇であーだこーだしてくれたんだね。

 

 

「志条、動けるようになったら。ね」

 

「シルフの自律飛行ではいささか不安が残る。それに、航路的に東南アジアの状況を見る事にもつながる。悪い事ばかりではない」

 

 

 仕方ないか……いや、そういうのじゃないね。

 やらせていただきます。

 

 

 

 ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯

 

 

 

 

「こういう手段で纏めてごめんね」

 

「平和は無料じゃない。言いたいことは伝わりました」

 

 水も食料も有限で上手くやりくりしてるのは知ってた、あと察してた。

 ホノルルの補給があるといってもたどり着くまでが問題だし、実際「○○があと少しか……」って感じの会話も聞いた。

 

 それにしても、有限のリソースを得るために存在の正当性をしないといけないなんて、ね。

 いや日本じゃ考えられない考え方だけど、軍人ばっかりのこの環境では、これが普通なんだと思う。

 

 ……自衛隊とかに入ったらこういう考え方も叩き込まれるのかな?

 

「二人には、ガンダム・シルフを用いた長距離偵察任務をお願いするね。上層部としても、シルフの異様な航続距離は活かすべきと声が上がっててね。そこを使って各国軍に荒川大佐とホールデン大佐を通して根回ししてもらったの」

 

「結論ありきの会議ってことですか」

 

「形だけでも必要なの」

 

 苦笑いする松原さんは深い緑? な色してる。

 話変わるけど、流石に補助なしでももう動けるようになりました。

 あばら骨はまだくっついてないから、めちゃくちゃ頑丈なさらしみたいなヤツ(バストバンドというらしい)を胸全体に巻いてるから割とキツいよ。

 

 パイロットスーツの件といい、これといい、自分の胸の小ささにまた助けられました……。

 日本にいる時周りが育ってるのに私は微増って神のいたずらかって思ったもん。

 

 

 あ、あのガタイのいい看護師さんだ。

 おーい、私元気ですよー。

 

「あらアンタ、もう動いていいのかい?」

 

「寝てばっかりだとおかしくなりそうなので。あと固定具ちょっとキツいですよ」

 

「我慢しなさい。オッパイある人はそれめちゃくちゃキツイからね~。アンタは小さいから『ちょっとキツい』で済んでるのよ」

 

 あ、志条が耳塞いでる。

 どうしたの?

 

「欧米ってそういうトーク普通にやるのか……?」

 

「さぁ? これ胸あってもなくてもキツいんじゃない? あと志条は折れてなくてよかったよ」

 

「纏の方が深刻ってどういうことだよ」

 

「それは神様に聞いてみたら?」

 

「信じる神はエジソンくらいなもので」

 

 それ神様ってよりかは偉人では?

 途端に病室に笑いが生まれ、怒られないように噛み殺すけど漏れてしまいそう。

 

 あぁ、生きてるなぁ……

 

 

 

 

 

 やば、なんか……

 

 

 

 

 

「松原さん、そろそろ休みますのでお開きにしましょう」

 

「……そうね。暫くは人を入れないようにするから」

 

 ガタイのいい看護師さんと松原さんは、何か出て行ってくれた。

 ……そういえば名前聞いてなかったな、ガタイのいい看護師さん。

 

 

 あと志条、あんまり困惑しないでね。

 私これでもついさっきまで「日本の女子高生」でしかなかったから。

 

 

「志条、いいって言うまで目は開けないで」

 

「?」

 

「いいから、目は開けないで」

 

 志条に目を閉じさせて、目隠しさせようかと思ったけど……やめた。

 なんか今は、余計なことする余裕が無い。

 

 

 とんっ

 

 

「まとっ!?」

 

「いいから……そのまま」

 

 病院着の内側に皮膚があって、その内側には心臓がある。

 それが分かるくらいに近づいてしまった。

 

 というより、縋り付いてしまった。

 

 急に泣きたくなってしまった、と言ったら笑われるかな。

 でも、ホントに泣きたくなったんだ。

 

 

「ごめん……なんかさ……生きてるって自覚、したら……こうなった」

 

 あーあ、目が熱い。

 志条は……確認はしなくていいや。

 何か止めない方がいい位に、私ボロボロ泣いちゃってるし……あーあ、志条の病院着濡れちゃってるし、引っ張り過ぎてちょっとはだけてるし、もう知らない。

 

 

「あれ……? おかしいな、この部屋、しょっぱい水が降ってくるよ……雨漏りしてる、じゃん」

 

 

「大丈夫……なんか、僕の所も、雨漏りしてる」

 

「直して……もらわないとね」

 

「……そうだな」

 

 ____________________

 

 

「アラカワ、これでよかったのか?」

 

「松原少尉が駆けずり回ってたからな。手を貸さない訳にはいかなかった。それに、納得させるためにはどうしても必要だった」

 

「中露は不満そうな顔を見せていたが最終的には納得してくれた。物資のやりくりで主計科がやりくりしているのは皆知っていて、数人増えただけでもキツい物資もあるくらいだからな。何とか仕事を与えて『こいつ働くからいいだろ?』と説得できたし、事情を察して抵抗してくれなかったのは助かった。アラカワ、日本人は察しと思いやりってのは本当らしいな」

 

「何処で聞いたんだが」

 

 私物のウィスキーを傾けながら、荒川とホールデンは星を見ながら語り合った。

 持込可能な物の種類が多い事が幸いし、アルコールや煙草と言った嗜好品やトランプやチェス、果てはゲーム機と言ったものまで持ち込めるようになっている。

 これは超長期間任務に就く事が多い艦隊向けの措置であり、娯楽に飢えて士気が下がる事を恐れた事によって特例で認められた。

 

「……考えたんだけど、ガンダムとあの少年少女をここで受け入れできないか?」

 

「従軍はダメだろう。アレとコレでは大違いだ」

 

「だよな。……ガンダム・シルフの電子戦能力は、世界崩壊の原因とも言われている通信関係の全滅でも生き残れるかもしれない。攻める事が出来るなら、守る事も出来る筈だ」

 

「偵察機としてという事は、そういう事なのか」

 

「我々はまだ原因を掴めていない。しかし、これを見ては太刀打ちできないというのは事実だ」

 

 ホールデンはコンソールを操作して複数枚の写真を取り出した。

 米国製無人MA、プレデター、リーパーは操縦を乗っ取られ艦隊に牙をむき、やむなく撃墜する事となった。

 さらに中華製MSの殲兵-15激が墜落し、内部のOSが完全に破壊されていた。

 

 しかし、何も見えない。

 何かしらの手段を使って不可視状態を維持しているのだろうと推測されているが、その正体は分からない。

 

 

「彼らなら、見つけてくれるかもしれない」

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