機動戦士ガンダムGHOST   作:朱色の空☁️

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第10話

「オスカー1、cleared for take off」

 

「オスカー2、cleared for take off」

 

電磁カタパルトで押し出された2機のFFトルーパーは、灰色の甲板から群青色の海の上に飛び出した。

オスカーのコールサインを預かるこの機体たちは、空母オーバーザホライズンの艦載機にして主力機として旧米国でかなりの数で生産されたファイティング(F)ファルコン(F)トルーパーだ。

 

FMS-16という型式番号からも分かるように、旧米軍の第4世代戦闘機F-16を意識して開発されたこの機体は多用途MSとして開発された。

 

戦闘、偵察、運搬、その他色々。

戦闘以外にも対応出来るように造られたお陰で、旧米国の最後のベストセラーとなったこの機体は、様々な場所に輸出された。

 

 

だからなのか、()()()()()()()()()()()

 

「敵機確認。IFF無し。ボギー1からボギー4」

 

淡々とした報告に、僚機の息が詰まる。

同型機。味方であったはずの機影が、レーダー上で“敵”を示す赤に変わった。

 

容赦なく向けられる銃口、パイロットは国際救難チャンネルを繋いで警告を発した。

 

「こちらは超国家軍ピースリキャプチャー所属オスカー大隊所属オスカー1。当方に戦闘の意思はない。この空域から退避してもらいたい」

 

沈黙、両者の間に緊張が走る。

敵はまだ理性的なのか、それとも未知の軍隊に対して困惑しているのか。

 

(出来ればこのまま立ち去ってくれよ……)

 

相手は引かない。

旧来の装薬式手持ちライフルを構えたまま動かない。

火器管制レーダーの照射を続けてはいるようだ、これは威嚇だ。

 

『オスカー1、どうする?』

 

「撃たない。俺達は進んで戦争するような輩じゃない」

 

平和を奪還するために自ら銃を持つ。

声高らかに平和を叫んで平和が手に入るなら喜んでそうしよう。

でも、世界は狂っている。

場所にもよるが、世紀末並みに荒れ果てた場所もあると聞いている。

そしてこれがたった数年で出来上がってしまったんだから驚きだ。

 

「空対空ミサイルの発射を確認ッ!」

 

「撃ってきやがった!」

 

フラッシュ___プラズマ版フレアを吐き出してミサイルを惑わし急旋回と急加速を加えて振り切ると、オスカー両機はライフルの安全装置を解除して突撃をかける。

慣性軽減装置が働いているとはいえ3Gがかかる急激な機動に振り回され、視界の淵が暗くなりかける。

 

(伊達に空軍やってねぇんだよ!)

 

バキバキに鍛えた体とG耐性呼吸法でブラックアウトを回避し引き金を引くと、ライフルから50ミリ弾が吐き出される。

敵機は急下降で第1撃を回避すると反撃をしてくるが、連携がなっていない。

 

軍人が動かしているようには見えない、まるで戦力の寄せ集めで各個が動いているだけにしか過ぎない。

 

「元軍人を、舐めんじゃねえぞ」

 

空対空ミサイルを敵機にロックオンさせて放ち、それを追いかけるように加速をかける。

敵機、ミサイル、自機の距離の最適位置を一発で調整し、

 

 

「ぶっ飛べ」

 

 

自分でミサイルを自爆させて爆炎を作り、敵機の赤外線レーダーをホワイトアウトさせる。

その真っ白な覆いで身を隠したオスカーは最高速度で敵機に肉薄し爆炎に突っ込み、突然の出現に即座に反応できない敵機はライフルを構える暇もなく蹴り飛ばされた。

 

失速し海面に向かって引かれていく敵機に向けて照準を合わせると、オスカーは容赦なく引き金を引いた。

 

頭部、腕部、腰部、脚部、そして胸部が穴だらけになり、水素爆発と破片が撒き散らされる。

海面に音を立てて落ちていく破片や漂う黒煙が今の世界を見せているが、それはもう見慣れてしまった。

 

「索敵範囲内に新たな敵影を認めず。帰投する」

 

 

 

 

___________

 

 

 

 

 

フィリピン海

 

「目、赤いな」

 

「気のせいだよ」

 

甲板に出るのも許可が必要なんて、学生してたら分からなかったよ。

まだあんまり激しい運動は出来ないから偵察行ってこいとは言われないけど、手順の把握って事でFFトルーパーの発艦と着艦を見ている。

 

時速200㎞まで一気に加速して、自分のプラズマジェットで機体を押し出して上昇する。

私達は知らなかったけど、1回の戦闘で最大で9Gとかかかるらしい。

シルフで10Gを超えていたから、私の肋骨はメシッとなりました。

 

で、パイロットスーツも正しく着れていた訳でもなかった。

専用の肌着の上に耐Gインナーでブラックアウトを低減させて、さらにその上にパイロットスーツ__フライトスーツとか言ってるそれを着ているらしい。

 

……はい、私服の上にパイロットスーツ着てました。

そりゃ折れますし視界も赤くなりますし、血の巡りおかしくなりますって。

 

『航空管制より甲板軍団へ通達。オスカー1、オスカー2からの着艦申請を確認。作戦行動中の機体より緊急着艦申請も無し。甲板状況を知らせよ』

 

『こちら甲板軍団、オールグリーン。いつでもどうぞ』

 

『オスカー両機に着艦許可を通達。約120秒後に着艦。艦体バラストタンク、着艦安全水位を維持』

 

「バラストタンクを? アレは貨物船とかのやつでは?」

 

「ええとね、昔の戦闘機はそういう事をしなくてもよかったけど、MSになってからはドシンと甲板に降りる感じなのよ。だからバラストタンクの水位を調節して自重を上げてどっしりと構える事にしているの」

 

志条も興味津々だね。私もだよ。

元々こういうのにはあんまり興味なかったんだけどね、沖縄を出るまでは。

 

今いる場所はフィリピン海。

この辺りは海賊が多いらしい。

 

……海賊帽をかぶってサーベルを振るうような“大航海時代”のそれじゃない。

略奪――それが一番近い言葉だ。

 

この辺りも政府が崩壊して無政府状態。

生き抜くために人々は中規模なコミュニティを作って、互いに小さな貿易を続けている。

けれど、それを狙う人たちが「海賊」と呼ばれる。

 

松原さんが言うには、彼らはライフルやテーザー銃で貿易船を制圧し、積み荷も船も奪って自分たちの集落に持ち帰るそうだ。

 

海賊も海賊で、必死なんだろう。

他の誰かを傷つけても生きるために動いている。

「もっと別のやり方がある」と言いたくなるけど――世界は今、“試されている”のかもしれない。

それが彼らなりの「答え」なんだ。

 

その話を聞きながら、胸の奥が少しざわついた。

沖縄を出て初めて知った。

この世界は、今、“生きるためのルール”で回っている。

 

何だか、技術と人間性だけ残してヴァイキングや戦国の時代に戻ったみたいだ。

……私たちは進化したのか、それとも退化したのか。

 

「纏、何を考えているんだ?」

 

「世界は試されているんだって。世界をこうした人、或いはモノは、こうなる事を予想していたのかな」

 

「これを丸ごとか? いや、まさかな」

 

「全ての通信関係を潰して人間の目と耳を奪った。互いの声が聞こえない状況で生き残るには、周辺の人と協力して小さな集団を作るしかなかった。まるで、大昔みたい」

 

自分で言っておいてなんだけど、本当にそう思った。

紀元前100年くらい、縄文時代とかだと日本という小さな列島には100を超えるくらいの小さな国が出来ていたらしい。

で、邪馬台国あたりになると30くらいの小国を束ねて連合国家みたいになった。

 

歴史やっておいてよかった。

敵が何なのかは分からないけど、やろうとしている事は感じれるかもしれないね。

 

「オスカー1オスカー2着艦まで30秒。現在高度200。甲板作業員は防風シールドへ退避急げ」

 

「防風シールド?」

 

「ああ、空力とかもあるけど大推力とバランスで頑張って飛ばしてる部分もあるから風が凄いんだろ、纏ほら退避」

 

「うん」

 

松原さん>志条>私って感じで詳しいんだね。

小走りで防風シールドに身を隠すとゴオォって風が来て髪が巻き上げられ、イヤーカフ越しにも聞こえる程の爆音が聞こえてきた。

 

濃紺色に塗ったFFトルーパーがプラズマ炎を吐き出しながらホバリングして、つま先からゆっくりと着地した。

着地したらさっさとプラズマジェットを切ってエレベータに上がっていたハンガーに機体を固定するとエレベーターが下がって艦内に格納されていった。

 

シルフの時ってどう格納してたの?

……あ、シルフが自分で歩いてハンガーに機体を固定させたの?

レイフはじゃまだったから遠隔操縦で無人MAを格納してるとこに飛ばして預けたって?

 

わぁお、すっごい。

というかこれ私達の時もそうしないとダメっぽいね。

 

「とまぁこんな感じね。貴方達も帰還してきたときはこうしてもらうから」

 

「概ね分かりました。シルフが自分で理解して動けたくらいですから」

 

「あのね、MSが自分で動くってなかなかないよ? 機体操縦にAI載せてるのは普通だけどそのAIが自律操縦して高度に判断している時点でおかしいって気付こうか」

 

「「?」」

 

「……まぁいいや」

 

松原さん、私達の価値観はシルフによってとうの昔に捻じ曲がってます。

セキュリティ破り放題、そのくせ宿題を見始めるし教育AIっぽくも振舞ったり果てには人救ったり人間と言いあったり倫理獲得し始めたり、そんな超常存在がいるのでもう遅いです。

 

そんな私達は次は格納庫に降りる。

志条がなんか凄い目で格納庫を見渡してる、え何? FMS-22? AMS-102?

あ、シルフがこっち見てる、おーい。

 

[纏、動けるのですか?]

 

「流石にもう動けるって。まだ乗れないけど」

 

[尚、纏の病室で雨漏りは起こっていませんので修繕の必要性は無いかと]

 

「コラ聞いてたな!」

 

「?」

 

あちゃー聞かれてた。

端末は常時シルフと連携してるから聞かれるのは当然か……

シルフ、次は人間的な誤魔化しと察しを学びなさい、最優先で。

 

「一応説明しておくけど、軍用機を2人+シルフで直してここまで来てしまったあたりは奇跡なのよ。不調が起こって何処かで墜ちていても可笑しくなかったし、プロの人が見たら甘い部分が色々あったって」

 

「アマチュアが直したらそうなります。でも、現実問題動いてしまった」

 

「志条君? 貴方は学生の筈だけどなんてここまで直せたの?」

 

「在日米軍跡地には放置された部品とかありますし、米軍の上陸作戦とかで迎撃された機体は割と転がってます。つまり……」

 

「練習台には困らなかった、だね?」

 

「その通り」

 

彼の声は、どこか誇らしげで、それでいて少しだけ寂しそうだった。

“練習台に困らなかった”という言葉が、どれだけの世界の崩壊を意味しているのかを、きっと彼もわかっていたんだ。

 

「見なかったことにしてあげる。普通に補導行為だけど国外に脱出してる時点で法律は貴方達をどうこうできないしね。ただし一つだけ条件がある。ここでは“やらかし”は命に直結する。次に同じような無茶をするなら、私がちゃんと教える。分かった?」

 

志条は照れくさそうに肩をすくめて、でも目は真っ直ぐだ。

 

「分かってます。次はまともに戻します」

 

痛たた、笑うとあばら骨痛いんだよね……

 

「……はいはい。じゃあ約束ね。松原さん、私たち、ちゃんと勉強します」

 

そのとき、格納庫の奥で低い金属音がして、シルフがゆっくりと顔をこちらに向けた。

モノリスめいた機械だが、そこにあるのは確かな“気配”だった。

 

[纏、志条。状態確認完了。制御系の安全確認済み。今後は私が整備ログを常時監視する。無茶は許可しない。]

 

シルフの声は淡々としているのに、どこか母親めいた執着を感じさせる。

纏はつい愉快で目を細め、志条はぶんぶん首を振って「いやだなあ」と照れる。

 

「そしてシルフ、エリア51製の機体だから何かあるんじゃないかと思ってたけど、やっぱり色々分からない部分があるわね」

 

「そうだ。大体の米国製は使い回しできる部分はしっかり使い回してるが、こいつはどの機体にもない部品が幾つも使われとる。お陰で3Dプリンターがフル稼働だ勘弁してくれ」

 

……初老くらいの頑固そうな人が来た。

60代超えてて、日系?

 

「ジョイス・カンバラ。半分日本人だけど日本語は分からんからな」

 

「英語は学校でやりましたので、深浦纏です。こっちが志条惟人、シルフのサブパイです」

 

「ふぅん、女の子の方がメインって事か」

 

そういうとカンバラさん(漢字は多分決めてないと思う)は私達を鋭く見つめて一つ溜息をついた……そんなジロジロ見てもやましい部分は何も出てきませんよ。

この人、整備軍団主任っぽいワッペンとくぐもったような英語が特徴的だけど、なんていうか嘘をつく人に見えない。

 

実直な仕事人、プロって感じの人だと思う。

 

「米国とか英国、中華の機体も色々見てきたが……こいつは生きてるな」

 

志条が息をのんだ。

整備士が“生きてる”なんて言葉を使うのは、異例中の異例だ。

カンバラさんが言うには、機体の再生産が難しいこの時代では直して動かすが基本になっていて、それを繰り返していったら専用機ごとに何かしらの癖が出てくるらしい。

それを「MSの性格」と言っているけど、シルフはその次元を超えているらしい。

 

 

「シルフはAIとしての応答も完全ですし、演算も自律判断も可能です。人格、って言葉が近いかも」

 

[人格、という定義は人間社会では多義的。ですが、私は“纏と志条を理解するための延長線上”にその要素を持ちました。]

 

カンバラさんはその合成音声を聞くと苦笑した。

 

「理解のために人格を作る……理屈が分からん。だが“理由”があるのは悪くねえ。理由を持たねえAIほど怖いもんはないからな」

 

「……ありがとうございます?」

 

「褒めてねぇよ。だが、俺はこの“理由あるモンスター”が嫌いじゃない。手のかかる厄介者だが」

 

彼の言葉には、古い技術者の矜持と、滅びた時代を背負う哀しみが混じっていた。

 

「……しかし図面も少ないから困ったもんだ。このAIの設計思想も不明。まるで天才が衝動で作った機体を俺らが直してる気分だ」

 

「それでも動かしてくれて、ありがとうございます」

 

「礼を言うなら、あの馬鹿みたいなAIに言え。それと、図面の方は何とか作っているが、胴体と胸部は多分どうしようもない。エリア51で作られた時にブラックボックスにしたんだな。恐らく

シルフの本体だが、当時の開発者はここにいない。整備した事あるやつはいるけど作ったわけじゃないからな。マツバラ少尉、その坊主と嬢ちゃん借りていいか?」

 

「志条君をですか? 彼はまだ……」

 

「実際に直して乗ったヤツがここにいるんだ。どう直したのかをAIじゃなくて本人も聞いておきたい」

 

あーれー引っ張られていくー。

ごつごつした手に引っ張られていくー。

でもこの人、頑固だけど嘘つかない色してる。

 

害意は無いね。

うん、多分。

 

 

______________

 

 

 

害意が無くても無自覚に人振り回す人って事はよぉく分かった。

で、その無自覚人振り回しマシン「カンバラさん」と志条があーだこーだ技術的な話しまくってる。

わーい何話してるんだろ。

 

「……で、動力系統のケーブルをどうやって繋いだ?」

 

「電圧の規格が合わなかったので、変圧器を自作しました。幸い、基地の残骸から使えるインバータが取れたので、それを介して安定化させて……」

 

「インバータ“介して”だぁ? おいおい、それ、戦闘用MSの電流流したら即ショートだぞ。生きてたのが奇跡だ」

 

「だから途中で爆発しました」

 

「爆発したのかよ!」

 

工具台の向こうで怒鳴り声が響き、周りの整備士たちが振り向いて笑いをこらえる。

爆発って……そりゃしたけども、ちゃんと安全距離取ってやったよ?煙たかったけど。

カンバラさんの声は大きいけど怒ってるわけじゃない。

むしろ本気で呆れてる。

 

「で、その後どうした」

 

「プラズマ整流子の出力を半分に落として、シルフに補助システムの安定化制御を頼みました。結果、出力は落ちましたが……動きました」

 

「……AIに“頼んだ”?」

 

「はい。会話で指示しました。その時はまだ喋ってなかったのでチャットですけど」

 

カンバラさんが黙る。

工具を手の中で回して、何か考えている。

 

「……あのガンダム、やっぱりただのAIじゃねぇな。人間の言葉を“理解して”んだ」

 

「ええ、理解してました。あと、冗談も」

 

「冗談!?」

 

「“失敗確率を0.3%に抑えました”って言われたので、“0.3%も残るのか”って返したら、“完璧は神の領域です”って言ってました」

 

「…………」

 

その場の空気が止まる。

松原さんが思わず噴き出し、隣で作業していた整備士が「宗教AIかよ……」とぼそり。

 

私は笑うしかなかった。

だって、シルフだもん。そういうこと平然と言う。

真顔で、機械の声で。

 

カンバラさんはゆっくり息を吐いて、肩を竦めた。

 

「……分かった。こいつら“生かして”造ってやがる。人間の言葉を聞いて、それで生き方を覚えるタイプだ」

 

「だから“生きてる”って言ったんですね」

 

「そうだ。普通は命令通りに動く。だがあれは命令を“理解”した上で“判断”してやがる。そんなもん、命があるのと変わらねぇ」

 

命、か。

シルフも生きているって考えをしてくれるのは、何だか嫌いじゃないよ。

でも、カンバラさんが言ってる「ブラックボックス」ってのは何?

 

「中身が分からない。開けられないようになってるし、抉じ開けたら多分戻せないし運用に支障が出る。MSにはあるあるな部分だが、こいつは度を越している」

 

過剰なまでに解析を拒んでいる部分って事?

 

「そういう事だ。ま、日本で言う触らぬ神に祟りなしだな。因みに透過スキャナーかけても何も見えなかった」

 

「……シルフ、ブラックボックスの中身って把握しているの?」

 

[回答:当AIの最重要機密事項である事は確実。しかし、その情報は持たされていない。徹底的に情報統制された環境下で建造されたと仮定した場合、該当する情報が電子情報として残されている可能性は限りなく低い]

 

「自分の正体が分からない、という事?」

 

[不本意ながら。しかし、戦闘知性体である事は確実であり、同時に纏、志条のサポートAIとして活動する事にある種の意義を見出し始めている。よって、自らの正体を探索する事は現在では重視されていない]

 

[しかし、これまでの戦闘行動で発動されたアドミニストレータは現在の技術では極めて異常なクラッキング能力を持つ。仮に当AIの正体が世界最高性能の量子コンピュータであったとしても、複数のMSのクラッキングにはある程度の時間を要する。しかし、キャンプシュワブでの戦闘では10秒で準備を完了させ半径1km圏内のMSに対し同時に発動した]

 

「少なくとも量子コンピュータではない、そう言いたいんだな?」

 

[カンバラ技師、その答えに同意する]

 

「……不気味な話だな。作った奴らですら制御できない。だが、それでもお前は“あの二人”を守ったんだ」

 

カンバラが工具を回しながらぼそりと呟く。

 

[それが、“理由”です。]

 

「理由?」

 

[私の存在意義です。論理的説明は、ありません。]

 

一瞬の沈黙のあと、カンバラはわずかに笑った。

 

「そいつぁ、理屈抜きで上等だ」

 

_________

 

 

取り敢えず志条も満足するまで話し込んでたから、私と松原さんは一旦戻る事にした。

サブパイで、機械系で、友人……って言っていいのかな。

 

友人って……言っていいのかな、アレって。

 

松原さんは多分気付いてるだけで言わない感じだし、ティファニーさん(ガタイのいい看護師さん、名前ようやく聞けたんだ)は知らないふりだし、自分はもっと分かりやすく自覚している。

 

桜色って言うと、私は前にも何回か見たことがある。

 

例えば、夏祭りとか卒業式とかバレンタインとかで、男女の接近イベントあるじゃん。

あーゆー時によく見るんだ、女子だけとか男子だけとか関係なしに。

 

……今はいいや。

この色の名前なんて今決めたら壊れそうだし、もう少しこの桜色を眺めていたい。

 

「まさか私から出るなんてねぇ……」

 

「それが、例の色が見えるってやつ?」

 

「周りが白黒な分、よく見えるんです」

 

決着が今は付かないので今はしまっておこう。

松原さんが興味深そうに見て来るけど、実際目がおかしかったり外観では分からないんだよ?

どこからどう見ても普通の黒目だし、あらぬ方向を見てるとかそういうのは無いし。

 

全色盲と言ったけど、実際志条だけはフルカラーだし。

目の病気じゃなくて心の問題、だね。

 

「でも疲れますよコレ。年中色見て危機感知なんてやってたら頭おかしくなりそうです」

 

「人間じゃなくて、AIなら疲れない」

 

「シルフはAIなので。もうAIって呼べないくらい進化してますけど」

 

「行動ログは一式提出してもらったけど、システム軍団がひっくり返っていたわ。おことわりを付けた上で2人の会話ログとかプライベートな部分は黒塗りしてたし」

 

黒塗りとか教えたっけな……

黒塗り……黒塗り……黒塗りと言えば重要資料、見せたくないもの……極秘資料……

まさか日本政府の重要資料とか盗み見してたの!?

 

[否定]

 

「あ、はい」

 

流石に見てなかったシルフさん。

いやで来てしまうけどねシルフさんなら、実際頼んだら私達の個人情報持ち出してくれたし。

なおタイムは20秒、ぶっちぎりで日本政府のデータベースの防壁ブチ破って持ち出してたので、RTAでもやろうものなら独り勝ちだね。

 

「兎に角、シルフの手綱、じゃなくて面倒は見る事。本人は当AIとか当機とか言ってるけど実質正体不明なブラックボックスなんだから」

 

「……はい。保護者頑張ります」

 

[疑問:私は何時から纏と志条の子供に?]

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