「深浦、何寝ているんだ」
……またか。
「深浦」
うるさいな。
「深浦さん、木元先生怒っててヤバいって」
そんな小声で言わなくても分かるって。寝かせてよ。
「深浦ッ!」
あー、もう、ほんと騒がしい。
ドロドロした色で汚いのに、声まで汚いのか。
「……何?」
「お前、いっつも授業中寝てて恥ずかしくないのか?!」
「提出物もテストも、全部やってるでしょ」
「そういう問題じゃないんだ!」
木元、また赤と黒を頭から噴き出してる。
血みたいで見苦しい色だ。
「そんなにカッカしないで。──ほら、今日の授業範囲、もう解き終わってるし理解もしてるよ。試しに確認してみて?」
……ほら、驚いてる。
だって私は木元が授業でやろうとしてた問題まで、全部先にやってるんだから。
まぁ、眠たいのは──シルフと話してたからなんだよね。
分かってる。悪いのは私だ。
昨夜もシルフとくだらない話をしてた。時間を忘れるくらい。だから眠いのは当然だ。
「ちょっと夜更かししちゃって、一応寝る前に問題は全部終わらせたけど、あってる?」
クラスは何だかんだ言って、もう“コレ”に慣れてる。
入学から卒業までクラス替えは無し。皆、最初から私を見てきたから免疫がある。
男子の一部はオレンジや黄色みたいな色を浮かべて、にやにや笑ってる。
「またやってる、面白ww」って感じ。女子は水色の軽い波紋を広げながら、視線すら寄越さない。
「……勝手にしろ」
「あ、不当に内申下げてやろうと思っているならバレますので」
釘を刺しておく。
すると先生は私に深く干渉しなくなる。
周りの学友たちは“見世物”を見たような顔をして、何となく笑う。
──まぁ、そういう色に囲まれている限り、私はここでも一人だ。
私にとっての友人は、シルフだけ。
だから学校はひどく退屈で、色の洪水はますます目障りに見える。
チャイムが鳴り、教室の空気が少し沈んだ。
________
歴史の授業。先生の声は淡い灰色で、眠気を誘う。
「えー、じゃあ続けるぞ。10年前の2110年、自衛隊の一部勢力が発起し、陸・海・空の統合非正規部隊がクーデターを起こした。これを俗に──」
「4.25事件」
「……当てる前だったぞ」
一瞬だけ、先生の灰色が濃く揺れた。驚きの色だ。
「ああ、その事件で当時の井澄内閣はアメリカ合衆国に亡命。防衛出動に動いた自衛隊の複数の部隊が壊滅した。その後擁立された絹本政権により、この国は運営されているが……」
私はノートの端に黒い文字でその言葉を書き込んだ。
──『4.25事件』。私が生きている監獄の、始まりの名前だ。
民間人への被害が出なかったのは、あの連中の心がまだ“自衛隊”だったから。
もし最初から完全に化け物みたいな軍隊だったら……民間人だろうと関係なく踏み潰していたと思う。
……まぁ、そのとき私はこの教室にいないんだけどね。
それから日本は鎖国体制。
いや江戸時代かよって思うかもしれないけど、マジで。
究極の食糧自給体制とメタンハイドレート採掘と核融合発電所によるエネルギー確保、経済の大改造。
貴重資源の究極のリサイクルと代替資源の急速な開発と民間への供与。
結果、日本は他国の支援も受けずに、何とか“安定”を保っている。
──でも、それは監獄としての安定。私にとってはね。
閉塞感が常にまとわりつく私には、ただの息苦しい
「現在の日本は絹本政権によるかつてない安定を保っている。結果、このクーデターは最初は良くなかったが、結果的には国が良くなったという意見もある。これが現代史のもっとも新しい1ページだ」
──こんなトンデモ事件でも、1ページになってしまうんだから。歴史って分からない。
でも、私には退屈だ。
___________
魔女。そうあだ名をつけられている私は、基本的に教室にはいない。
いじめられているわけじゃない。正確に言えば、誰も「私をいじめられない」ってことだ。
中学までは違った。全色盲を理由にからかわれ、陰口を叩かれた。
ある日、そのうちの一人に──強烈なイメージを見せてしまった。
黒い炎に焼かれる幻覚。心を抉るほどの錯覚。身が激痛とともに崩れる感覚。
その子は発狂して倒れ、幼児退行の症状で精神病棟に運ばれたと、風のうわさで聞いた。
それ以来、私は「魔女」と呼ばれるようになった。
……多分、あの一件で相当な傷を残した。
でもそのおかげで今は誰も私をからかわない。
代わりに、私はずっと一人だ。
屋上の浄水器のパイプに腰掛け、総菜パンをかじる。風が少し冷たい。
フードの紐を弄ってると誰かと話したくなって、スカートのポケットから携帯端末を引っ張り出した。
この端末は何の変哲もないけど、私の話し相手だ。
「ねぇ、シルフ。今日も授業つまんないよ」
携帯端末に英語で打つと、相手は返事をする。
英語しか応えないのが玉に瑕だけど、成績はそこそこ良いから困ってはいない。
[
「今日、国語の榎本が休みで木元が代わりに数学だったんだけど、寝ちゃったよ」
[
「いやだ。あなたと話すと落ち着くんだ」
[Q:
「全色盲で感情の色ばかり見てると疲れちゃうの。あなたからはそういうのが見えないから、楽なの」
[
シルフの無機質な返答に、私は小さく笑った。機械をからかうような心地よさがある。
[
「機械らしいわね。そんな貴方が気に入ってるけど」
パンの端を噛りながら私が屋上の柵にもたれていると、校舎の背後から足音が近づいてきた。規則的な靴音。人ではなく、機械整備の匂いが先にした。
「そこ、空いてる?」と、低めの声。
振り向くと、見慣れない制服の少年が立っていた。
目は眠そうで、けれど真っ直ぐ私を見ている。
袖が少し汚れていて、工具箱の端が覗いていた。
どこかで見たような……いや、見てないはずだ。
だが何かが違う……色が、ほんの少しだけ淡い灰色に滲んでいた。
人の色とは違う。好奇の色だ。
「いいよ。座ったら?」
私は端末をしまい、パンをもう一口かじってから答えた。
彼が座ると、屋上の風景に──小さな波紋が広がった。
珍しいな、淡い灰色って。
奇異の色ではなくて、興味の色だ。
「君って、テレパシーとか出来るの?」
「出来るんだったらこうして口で喋ってないけど? あ、深浦纏。で、誰?」
「志条惟人、工業科の2年で、機械いじりが好き」
「あーそんな見た目してるわ。何、アンタも浮いた感じの人?」
私の視界に、彼の高位は淡い灰色からジワリと密色に染まった。
甘い訳じゃないけど、興味とほんの少しの警戒、微妙な色かな。
目は眠たそうだけど、視線はしっかりしている。
真面目不器用さんで、手元、かな、日ごろから作業してるって感じ。
多分、学校以外でも。
「普通に馴染めないタイプって事。で、ここ立ち入り禁止だけど、何でいんの?」
うんまぁココ人いないから私が来てるんだよね。
柵あるし、カメラはシルフに誤魔化してもらってるし、普通だったら入らないし。
私の声は冷めてるつもりだけど、志条とかいうメカニックマンは平然と膝を折って座った。
「今日は、ちょっと逃げ場が欲しかっただけ」
言葉に節とか変な枝が無い。
自分の事を飾らない真っ直ぐさんだ、これ下手したら表裏も影もあるか怪しいぞ。
「君は、誰と話していたんだい?」
「女の子のヒミツに踏み込みたいの?」
「ちょっそんなんじゃないからな!」
ほぅら、ちょっとからかっただけでこうなった。
純粋だ。色も鮮やかにころころ変わるし、何より面白い。
この人は、見ていて飽きないし、ちょっとの付き合いなら大丈夫かもしれないな。
「なんてね。まぁチャットボットみたいなものよ。メチャクチャ頭良くて向上心の塊」
コイツくらいには見せても大丈夫か。
私は端末の画面をちょっと表示させてちらっと見せる。
「英語? イマドキのやつって日本語堪能で人みたいだろ?」
「あーちょっとコイツは訳アリでね、今は私の話し相手になってもらってる」
端末に保管してある写真を小さく表示すると、惟人の眉がぴくりと動いた。画面の中で、金属の破片と焼けた配線がくっきりと映る。
「……本物か?」彼は囁くように言った。風に運ばれてきた声は、本当に低くて、屋上の空気を震わせる。
「本物。放置されてたのを見つけて、治す準備は進めてはいる」
私の返事に、彼は工具箱の端を軽く叩いた。
その仕草が妙に落ち着く。
機械好きというのは、本当にそういう無駄のない所作をする。
「興味がある。直してみたい」
彼の言葉は軽いけど──目が真剣だ。淡い灰色が、じわりと濃みを増す。
「今はまだ秘密にしてる。部隊に見つかったら大問題よ」
でも、心のどこかが跳ねるのを感じた。誰かに──機械以外の誰かに、この存在を理解してほしいという気持ちが。
「じゃあ、屋上のことは内緒にしてくれ。で、その代わり──週末、基地跡まで案内してくれよ。ちゃんと見たい」
彼の言い方は約束みたいだ。私はパンを囓りながら、少しだけ笑った。
「いいわよ。ただし一つ条件」
惟人は首を傾げる。軽くて、訝しげな色。私は携帯を見せて、淡く笑った。
「シルフのこと、本気で黙っててよね」
彼の目が一瞬だけ驚きで明るくなる。そこに、なんだか新しい波紋が広がった。
____________
学校が終わると私は家に帰る。
台所に置かれた弁当箱の蓋に家族の痕跡が残っているだけで、夜は勝手に私のものになる。
食器を片付け、いつもの黒っぽいスウェットに着替えるて、その上から制服とセットで来ているフード付きパーカーを羽織ると私はもう別人だ。
端末とPDAをポケットに突っ込むと、玄関から出て夜の闇に溶け込む。
名護の旧キャンプシュワブに入ったのは、高1の夏のことだった。
ヤンキーたちの肝試しに便乗したんじゃない。
確か……瓦礫の滑り台で足をすべらせ、埃と金属の匂いが混ざった暗がりへと落ちたんだった。
光はほとんど無くて、ただ金属の断面がわずかに反射するだけ。
そこで見つけたのが、鋭い輪郭を持つ機体だった。
人の姿を模しているようで、しかし人ではない──膝の部分に亀裂、腕部で何か焼けたような跡が幾つかあったし、塗装は剥げ、ラベルは風化している。
だけど、そこだけは私の目がすっと静かになる場所だった。
機体の顔に触れると、冷たかった。
指先に伝わるのは金属と、かすかな残響──記憶のようなものだった。
目の代わりに、私の中に色が溜まる。
人間の色ではない、空虚で澄んだ灰色。
安心。私が初めて感じた“無色の安心”だ。
「……君は誰?」
[
自分の端末の小さなスピーカーが微かに震え、ビープ音のあとに英語が返ってきた。
無機質で、でも確かに“返事”だ。
それが私とシルフ____ガンダム・シルフとの、最初の会話だった。
_______
私のとても大きくてとても大事な秘密の友達、ガンダム・シルフ。
帰ってから調べたけど、モビルスーツという軍用兵器の一種らしい。
「らしい」って言うのは、日本で閲覧できる軍事系フォーラムサイトでは同じ機体が1機も見つからなかったからなんだ。
シルフが言ってたけど、米軍機って言うのが結論かな。
実際シルフは英語で会話で来てるから、シルフは外国製AI。
あ、でもAIにとって扱いやすい言語は英語だから、仮に日本製でも英語使うのかな?
破れたフェンスを潜り、こっそり作ったヒミツの道を通って、重たい金属の扉を開け、ひび割れたコンソールにPDAを接続して起動させる。
ここまでが何時ものルーティン、週2日3日くらいのペースでここに帰る時の慣れた手順だ。
ここは電源系統が生きている区画で、シュワブが吹っ飛んで以降も人知れず生き延びている。
知ってるのは多分私だけだ、だって地下フロアにしか電源を回していないんだから。
重たい扉を閉めると、外の世界の色は一切遮断される。
階段を下りるたび、ざわざわとした色は消えていき、代わりに灰色の静けさが濃くなる。
地下フロアのコンソールにPDAを接続すると、古びた端子がカチリと噛み合った。遅れて蛍光灯が一列だけ点り、淡い光が金属壁に揺れる。静かな空間にシルフの存在が満ちる。
[
端末に流れる英文は、何度見ても不思議と疲れない。
感情の色が一切混ざらないからだ。
私は小さく「ただいま」と答える。
誰も知らない場所で、誰にも見られずに「おかえり」と言ってくれる相手がいる。
その事実だけで、私は一日の汚れた色を少しだけ忘れられる。
___________
シルフがモビルスーツだってわかってから、私は必死に知識を詰め込んだ。
今の自衛隊が使っている最新型を調べて、シュワブに転がっていた旧クーデター軍の残骸を分解して(上手く出来なかった)、町の図書館で工学書を漁った。
コードの書き方も分からなくて、夜更けまで端末に向かってシルフに質問を浴びせた。
[
[
シルフは淡々と訂正してくる。
まるで教師みたいで、でも教師よりずっと正確だった。
私は黒スウェットの袖を油で汚しながら、少しずつ理解していった。
──でも、限界はある。
知識の上では「こうすれば直せる」と分かっても、私の手は実際の溶接も旋盤もできない。
専門の工具もないし部品もない。
シルフの脚部に手を置いて、私はため息をつく。
「ここから先は、私ひとりじゃ無理だよね」
[
返事は短文だった。
無機質なのに、まるで私の弱さを見透かして黙っているようで、胸が少し痛んだ。
でも、志条とかいう面白工学生──あいつなら、きっと分かってくれる気がした。
屋上で見た工具箱の端、袖口に染みついた油、あの仕草。
口下手なくせに、機械の話になると色が澄んでいた。
興味と集中の灰色が、濁らずに揺れていた。
私は膝を抱えて、暗い地下フロアの中で考える。
志条をここに連れてきたら、全部が変わる。
秘密を打ち明けるのは、自分をさらすのと同じこと。
彼が笑うかもしれない。裏切るかもしれない。
でも──シルフを動かすためには、どうしても「手」が必要だ。
コンソールのログが一行だけ走った。
[
「……やっぱり、そう言うんだ」
私は乾いた笑いをこぼした。シルフは人間じゃない。だから裏切らない。
でも同時に、彼ひとりでは立ち上がれない。
志条。
次に屋上で会ったら、試してみよう。
彼が本当に“使える”人間かどうか。
「シルフ、あなたは動きたい?」
[
「……分かったわよ」
《ちょっと屋上に来なさい、浄水装置のとこのパイプで待ってる》
どうやってアドレスをゲットしたかは分からないけど、呼び出しを受けたから教室を抜け出して屋上にやってきた。
昼休み、お弁当を持って屋上に上がり、さらに上って立ち入り禁止の鎖を跨ぐと、彼女がいた。
「今日は弁当なんだ」
「シルフに寝るように要求されてね。おかげで弁当を作る余裕ができた」
浄水装置のパイプの上で器用に胡坐をかいている纏は、スカートの下に体操着の短パンを履いていた。
ちらっと目に入って、俺は一瞬視線を逸らす。……なのに、纏の口元がにやけている。
「ふーん、えっちじゃん」
「ちょっ!?」
「『短パン履いてるだけでこうもオープンになるのか』って言いたい顔してたよ。女子は大体そんな感じ。というか痴漢冤罪吹っ掛けたり、援交する子もいるし。幻想は捨てた方がいいって」
……女子ってそんな生き物なのか。噂では聞いたことあるけど。
「まぁ一部の子だけだけどね。全部そうだったら、さすがの私も直視できないよ」
彼女の声は軽くても、目の奥に揺れる色は冷めた灰。
からかわれているのに、なぜか嫌じゃなかった。
むしろ、不思議と心地いい……Mじゃないからな。
「で、さ。治せるの? シルフは軍用機だと思うけど」
直せないなら最初から断りに来てる。
前に直して動いたやつの写真はちゃんと保存してあるんだ。
「これ、何か分かる?」
「米軍系の推進器でしょ、流石に分かるって」
「じゃあ、これ」
「……は?」
驚いてる驚いてる。
そりゃあそうだよな、個人でこんな事をする人何でなかなかいないよな。
「米軍系の推進器は、水素をマイクロ場で加熱するタイプのプラズマジェットだろ? それを直して、完璧に動かしたんだよ。電源が無かったから辺野古の補助電力を拝借して稼働テストしたけど、ピンクがかったプラズマ炎がきれいに出てた。初めてでこれで大体一か月くらいかな。あと掌部の稼働テストとか。腕部や脚部はでかすぎてまだ手付かずだけど、力にはなれると思う」
「アンタさ、最初からシルフ触るつもりでここ来たでしょ」
「だってさ、生きてるモビルスーツなんて初めてだよ。動かない残骸なら廃棄基地に転がってるけど、まだ“生きてる”機体はこの辺じゃ滅多にないだろ?」
その時、少しだけ彼女の雰囲気が変わったように見えた。
驚きから……満足感、だと思う。
「出来るの?」
「米軍系なら見れるかもしれない。というかその辺どうなんだ?」
「日本製じゃないのは確かね。米軍系かもと思ったけど、落ちてる米軍MSとも違うのよね。特殊規格かも」
「調べてみない事には何ともな。分解とかは?」
「……だからアンタの手を借りたいの。知識と技能はイコールにならないから。外装は生きてるクレーンで何とか外したけど」
「大型重機もあるのか。ならハードルは少し下がったな」
僕は考えをまとめて頷いた。
誰かに背中を押されたみたいに、心が少しだけ前に出る。
「ただし約束ね。誰にも言わない。見つかったら大事になるから」
「口は堅いよ」
_______________
《Matoi,Are you ready?》
「うん、今夜は人を連れて来る」
[Q:
「米軍系MSのプラズマジェットを分解して直したのよ、彼」
[
「貴方にも驚くときはあるんだね」
[
[
「たまたまあなたに遭遇した私もすごいんじゃないの?」
[
[
「良くない事だけど、結果的には良かったってことね。お陰で私は寂しくなくなったし」
[
[
「よかったじゃん」
[
「あ、いた。こっちこっち」
半袖のツナギを着た男がこっちに走って来た。
暗がりでよく見えないけど、多分志条だ。
「何が必要になるか分からなかったから、取り敢えずプラズマジェット直した時のやつを持ってきた」
「へー。あ、これは見た事ある、シルフのいるとこにも放置された工具とかあるんだよね」
「つまり放棄されてからそんなに経ってないって事か」
「ん、多分。あ、こっち」
大きな工具箱を抱えてこれまた大きなリュックサックを背負ってまた重そうなこと。
でもなんで倒れないの?
いつも通り重たい金属の扉を開けて、ひび割れたコンソールにPDAを繋ぎ基地のブレーカーを立ち上げるとさらに地下にくだり、広々とした真っ暗な空間が広がっている。
「……ほんとにここにあるのか?」
「見たら信じるよ、きっと」
レバーを上げると全ての照明が一気に点灯して、灰色の空間に眠るシルフが現れる。
私にとっては見慣れてるけど、志条にはインパクト強いよね。
志条の息を呑む色が見えた。
「……これが……」
「ガンダム・シルフ。私の大事な友達」
私はそう紹介する。機械に友達なんて──普通なら笑うところだろう。
でも志条は笑わなかった。工具箱を置き、真剣に機体を見上げている。
その背に浮かぶ色は、驚きと敬意の混ざった濃い灰。
[
端末のチャットに新たな一文が流れた。
志条は目を見開き、私を見た。
「……喋った」
「そう。だから、秘密にしてほしいの」
私は静かに言った。心の奥で、何かが少しだけ温かくなるのを感じながら。
オリジナルでガンダムを書いてみましたが、思ったより書けるんですね。
じゃあ次の話、書いていきますね