機動戦士ガンダムGHOST   作:朱色の空☁️

5 / 16
第3話

「戦略機動自衛隊横須賀基地第21モビルスーツ小隊、伊坂義治一尉以下10名。只今をもって普天間基地に着任しました」

 

「歓迎する。ようこそ普天間へ」

 

互いの敬礼が滑走路上で交わり、互いに敬礼を解くと固く握手をした。

二酸化炭素排出ゼロが実現されたとはいえ赤道に最も近い県の暑さは応える物で、儀礼的行動もそこそこに小隊は基地の中に案内された。

 

「首都に近い横須賀の部隊がここにやってきた理由は相川君から聞いている。その命令書の事もだ」

 

「沖縄に、米軍の残した機体が存在すると」

 

「幽霊のように静かに動き、領域を跨ぐ適応力を持つ機体。あちらの国では頭文字をとってガンダムと呼んだそうだ。だが米軍でも情報統制を厳重に行ったうえで建造したそうで、こちらとしても情報があまり残っていないのが現状だ。分かっているのが、元駐日米軍基地にあるという事くらいだ」

 

「しかし、10年のクーデター時に米軍は撤退時に自国の基地を爆撃したと記録にあります」

 

「基地を破壊してでもガンダムを秘匿したかったのだろう。理由は分からないが、『戦場を覆す可能性のある機体』と政府は推測している。何をもって戦場を覆すのかは、分からないままだが」

 

「一般人に露呈しない様に行うのであれば、ムラクモは出せないかと」

 

「君達は他国での潜入を想定した訓練も受けている。ここは国内だ、一般人や警察に扮して情報を集める事も出来るはずだ」

 

司令官の言葉に、隊員の一人が唇を噛んだ。

 

「仮に、あれが――我々の想定を超える何かだとしたら」

 

伊坂は一度言葉を切り、真っ直ぐに隊員たちを見た。

 

「我々の最優先は被害の限定だ。民間被害を出す訳にはいかない。だが、事実を放置する訳にもいかない。解析できるなら解析、無理なら封印。封印も無理なら最後は破壊。順序はそれだ」

 

技術参謀が端末をスワイプし、航跡図や古い衛星写真を表示する。

画面上には、クウェート章候のように点々と残る旧基地群、爆撃の痕跡、そして不鮮明な熱源の残滓が並ぶ。

 

「モビルスーツ小隊にとっては慣れない任務になるが、諜報と機動兵器を併存させられる我々でなければならないとの事だ。任務開始は明後日1200よりとする。各自所持品を借用した部屋で開封し、今日は休息を取れ。任務に必要な物があれば小官に報告を。申請を行い借用、または現地での調達が可能になるように取り図ろう」

 

 

__________

 

 

 

プラズマジェットの光って、初めてこの目で間近に見たかもしれない。

理科室のガスバーナーでもなく、旧世代のジェットエンジンの炎でもなく、水色とピンクが併存する奇妙な光だなって思った。

 

ただものすっごい暴風と爆音出てるけど!!

 

「さすが大気依存式ッ……! 吸気がえげつない!!」

 

「だからってこんな爆音するの!?」

 

志条が言うには、普通に効いたら耳がぶっ壊れるレベルの音がするらしい。

だから前に米軍MSのプラズマジェットを直した時は最低出力でとても分厚い耳当てを付けてギリギリセーフだったらしい。

 

「で!! これ成功してるの!?」

 

「出来てる!! 分厚い壁越しでも聞こえるくらいには元気に動いてるし正常だ!! これで1時間ブン回してみる!! シルフもフルサポートしてくれているから大丈夫だ!!」

 

[Stable output at 30%.(出力30%で安定。) Intake efficiency and plasma efficiency are 78%. (吸気効率、プラズマ化効率78%。)Code adjustment is necessary for further efficiency.(更なる効率化の為のコード調整の必要性アリ)]

 

1時間!?

何かこの爆音耳じゃなくて身体とか骨にも響いているんだけど!?

そりゃシルフは冷静だけど人間にこの爆音は効くって!!

何か蛍光灯とか退避させた工具がカタカタ震えてる耳キーンとしてきたけど!?

 

________

 

その1時間後、私の耳はキーンとしてる。

志条は満足そうにデータを見てニタニタしてる……ちょっとキモいかも。

でも男子ってこういうの好きなんだよね、兵器とか工業とかメカメカした物とか。

否定はしないけどさ、もうちょっとさ、何かやりようあったんじゃないかな。

 

「よしよし調整方法も分かって来たからもう片方のプラズマジェットも直せるぞww」

 

「その前に耳痛いし、シルフってマジでヤバい機体なんだね」

 

 

「前に直した米軍MSのモノとは大違いだ! それにシルフ由来の高度な電子戦能力と特異点レベルの自立思考能力はまさに次世代と言ってもいいくらいだ!!」

 

「え、ええ……」

 

その言葉を待っていたかのように志条の口からバルカンの弾みたいに言葉が飛び出してきた。

その言葉の圧に私はのけぞりそうなってしまった。

 

「見たところ武装は外されているけど、基地に残っていた50㎜バルカンとムラクモの短刀だけでも十分かもしれない。でも……望まないんだな」

 

「出来れば過度な武装させたくないね。許可なし勝手に飛ぶことになるから最低限の自衛武装は必要だけど、敵を撃墜できる程の力はいらない」

 

もしかしたら、監視ドローンを手玉に取ったシルフならMSを止める事も出来てしまうかもしれない。

例えば……そう、制御を乗っ取って強制的に陸に降ろしたりかな。

銃でもナイフでもなく頭脳が、シルフの最強の武器って事かな。

 

シルフが本気を出したら「MSの1機や2機くらいは平気で自爆させられる」かもしれない。

 

そんなシルフの大きな力に真剣に考えていると、志条はまた別の設計図をタブレットに出していた。

うん、これシルフの腕だ。

 

「米軍MSと同じオペレーションバイライトだ。ただ……これホントに光ファイバーか? 民間のやつも柔軟だけどこれ数値見たら頭おかしいくらいに柔軟だぞ」

 

「切れないって事?」

 

「ゴムホース並みにグニグニ動く。はいこれ、シルフの光ファイバーと同じくらい曲がるやつ」

 

そういって志条はゴムホースを手渡してきた。

試してみろって言痛げな顔と色が見えたのでちょっと曲げてみるとビックリ!

こんだけ曲げても大丈夫なの!?

もしかして米軍系は全部これなの?

 

「志条、米軍系は大体これなの?」

 

「いや見たことが無い。多分国外の軍事系企業で特注で作ったやつかも。日本はオペレーションバイワイヤでほぼ無遅延目指してたからライトは実戦に出してないと思う。切れてなければいいんだけど……右腕、肘から下が断線してた」

 

「げ、右丸ごとワイヤにするの?」

 

「いや、低遅延メリットは可能な限り残してやりたいから、切れてる部分に光電気変換モジュールを組み込んで、肘から下をワイヤにしておこう」

 

光電気変換モジュールは、光信号を電気信号に置き換える所謂アダプターだ。

本来は光ファイバーの通信を電気信号に変換してテレビを見たりネットを繋いだりするけど、やってる事は同じだからシルフにも組み込めるはずなんだけど……米軍基地ってそんなものあるの?

 

「流石に基地にはないかも……22世紀の頭には米軍機はワイヤじゃなかったから。ホームセンターのはほぼ確で合わないし……」

 

じゃあ作るしかないのかな……なら、設計してしまえばいいんだ。

そうだ! PCでの設計くらいなら私にもできる! 何のための知識だってやつだよ!

 

[Recommended: Part production using(推奨:多素材高細度3Dプ) multi-material high-resolution 3D printers(リンターによる部品製作)]

 

「流石に個人で手に入る様な機械じゃないからな、学校にもない……大学とかならもしかしたら」

 

「沖縄大学?」

 

「いや工学部が無い。だとすると……あ、あった」

 

志条が言うには、ちょっと遠出しないとダメらしい。

沖縄を飛び出し、九州へ渡って九州リニア新幹線で福岡へ。

その福岡大学ならこの距離で一番大きな工学部があって、3Dプリンターも望みがあるという。

 

「後はプリンターが“使えるか”だな」

 

「そこは、任せて。ちょっとイイ事思いついた」

 

私はわざとらしく胸を張る。

ふっふっふ、もうすぐ夏休み。

つまり――何があるって?

 

そう! 大学見学!

 

真面目な進路イベントの顔をしたまま堂々と校外に出られる、合法的で便利な口実!

こんな牢獄みたいな国の制度でも、ちょっと頭を捻れば抜け穴くらいいくらでも見つかるんだよ。

志条は呆れたように眉を下げて、でも声は少し笑っていた。

 

「……お前のそういうとこ、ちょっとだけ羨ましい」

 

「高2の夏休みは“オープンキャンパス”の季節でしょ。見学って名目で正々堂々行けるから、これを使わない手はないじゃん♪」

 

この時、自分でも自覚できるくらい悪い笑みを浮かべていた。

 

___________

 

 

 

「福岡大学工学部、か。……深浦、そっちに進むのか?」

 

「この辺でMSがバンバン飛んでたら、興味くらいは持ちますよ」

 

担任に提出した進路希望票。意外だったのか、先生はちょっと目を丸くした。

けどまぁ、外の環境がこうなんだから仕方ないよね。

沖縄じゃ、昼間は教室の窓からムラクモが飛んでるのが見える。

旧時代の米軍みたいに民家に墜ちることはないけど、MSが日常の風景になってるのは、基地持ち県の特権だからね。

 

「似たような理由で工学部に興味持つ生徒、何人もいるらしいぞ。お前もか……」

 

「態度は良くないけど成績は狂ってるからな。5教科で460なんてそうそういない。射程圏内だろ」

 

担任は溜息をつき、それから肩をすくめて笑った。

私は笑いもせずに答える。

 

(安心してよ先生。進路希望なんて“手段”だから)

 

「あ、あと先生、推薦状って出せたりします?」

 

「推薦状? 出せはするけどさぁ……。で、何したいんだ?」

 

「ちょっとPCでパーツ作ってて。多素材プリンター使えそうなの、あそこの工学部くらいなんですよ」

 

「あー……研究室の機材の使用許可的なアレか」

 

担任は納得したように頷き、それから私をじっと見た。

 

「一応、成績上位者向けの推薦状だからな。……お前、普通に使えるぞ」

 

(ラッキー♪ 勉強やってて良かった!)

 

私は心の中でガッツポーズ。

反抗的なのはどうしても抜けないけど、勉強はちゃんとしてるのだ!

 

学年全体で150人! 5クラスあって1クラス30人!

その中で私はクラス1位! 学年3位!

 

ほらね、数字だけなら完璧優等生だ!

 

_____なお反抗的だから教科担任のsan値はゴリゴリ削れる。

下げようにも下げられない成績評価と日々の胃痛との戦い!

 

多分、職員室では「魔女」とか「バケモン」とか言われてるに違いない。

……でも数字は正直だから誰も文句は言えないよ。

 

ピロンッ♪

 

「切っとけよー」

 

「すみません、ちょっとメールが来て……わお」

 

 

[Nickname registered as "Witch from Okinawa"(ニックネームを「沖縄の魔女」にしました)]

 

「あのバカ」

 

……よりによって“公式記録”とかマジやめろ。

 

 

 

______________

 

 

 

 

戦略機動自衛隊 普天間基地

 

「ドローンの異常か?」

 

「故障というわけではないんですが、こちらの領域、22日前の深夜あたりの赤外線観測データに、奇妙な連続性が見つかりました」

 

「偶然じゃないのか?」

 

「それにしては規則的すぎます」

 

電子線オペレータがドローンの赤外線観測データを重ね合わせると、映像は寸分の狂いもなく一致した。まるでコピーを貼り付けたように、同じ熱パターンが何度も繰り返されている。

 

「おかしいだろ。赤外線観測ってコンマ01単位の精度があるはずだ。これが全く狂いないって、どういうことだ?」

 

「データがループされていますね。痕跡は明白です」

 

「ボートを一隻出せ。あのドローンを回収して解析に回す」

 

――――――――――――――

 

「3秒だと? たった3秒でやられたのか?」

 

「間違いないです。微小な痕跡は残っていました」

 

「発信先は特定できるか?」

 

「そこが厄介でして……日本国内のサーバーとオンライン状態のネット端末を大量に経由させ、ダミー経路らしきものも無数に展開しています。海外に残ったノードも混ぜて経路を作成しておりアルゴリズムが異常に複雑です。復元解析には膨大な時間が必要で、推定では解析完了まで365日。冗談にもならない状況です」

 

「……人間じゃない」

 

「今、何と?」

 

伊坂は、自分の口から零れた言葉に妙な確信を感じていた。

海上自衛隊が配置した最新鋭の監視ドローンに僅か3秒で侵入させ、データをループのダミーに書き換えた。

追跡を避けるために、あらゆる経路にダミーの中継ノードを敷設し、海外の残存ノードまでも使っている。

作られたルートとアルゴリズムは、凡そ人間の手になるとは思えない精妙さだった。

 

間違いない──人外の仕業だ。

 

「人間じゃない。そう言ったんだ」

 

「人間じゃない!? どういうことですか、一尉」

 

「AIだAI。人工知能……だが、ここまで高度なものが実在するのかどうかは分からない」

 

オペレーターの指が震える。自分の操作しているモニターに、理解不能なログが並んでいるのを見ているからだ。

 

「私達……いったい何とやり合っているんですか?」

 

伊坂は答えなかったが、胸の奥に広がるざわめきが、自分の直感を裏付けていた。

これは人間ではない。

しかも、ただのプログラムでもない。戦場を支配できる何かだ──。

 

「……相川将補から戦幕長に報告を上げる。この任務相当にヤバいかもしれない」

 

______

 

 

「海、いいねぇ」

 

推薦状も無事にok出されてオープンキャンパスへの旅開始!

まぁ実際は行く気ないんだけどね、プリンター貸して~ってだけだから。

親にも話付けて福岡大学の件言ったら「いいんじゃない? 貴方頭だけはいいから」と言われたからまぁいいんじゃないかな。

 

でもさ、高校卒業するまでにシルフで国外に飛ぼうって思ってるから、親との事も何とかしないとなぁ。

多少は悲しませると思うけど、いきなり蒸発して自衛隊とか警察とかもっとおっかないのが来たら大変だからさ、何か考えないとね。

 

そんな私達は本州連絡船に載って九州に向かって北進中。

飛行機代が捻出できなかったから船でのんびり揺られての旅……なんだけど、志条が酔った。

 

「大丈夫そう? 風あたる?」

 

私が肩を貸すと、志条はへなへなと手すりにもたれかかり、白い顔で笑った。

 

「吐き気は引いたから……ちょっと動ける。2回くらい出したから……多分、大丈夫」

 

「弱すぎ」

 

「機械なら直せるけど、胃袋は直せないんだよ……」

 

ちょっと吹き出しそうになる。普段はシルフ治しでガンガン動いてるのに、船の揺れでこのザマ。

でも、そんな志条がいるから私はここまで来れてるんだと思う。

潮風に髪をなびかせながら、ふと空を見上げる。

 

「推薦状は?」

 

「学校からゲット。福岡着いたらその西宮教授ってのに渡せば通れるって。データはこれに入ってるからあとはプリント。初めてやる事だから5個くらい欲しいかな」

 

「ああ……光電気変換モジュールはあんまり扱った事ないから、数があると助かる」

 

「左の確認もまだだからねぇ。はい水、少しでも飲む」

 

志条は水をちびちび飲みながら、まだ青ざめた顔で「ありがと……」と漏らした。

その目が、少しだけ驚いたように私を見ている。

 

「なんか、手慣れてる?」

 

「ん? 酒好きだった父さんがさ、たまに飲みすぎてゲロ吐いてて。こういうのは慣れてる」

 

「……大変そうだな」

 

「もう慣れたよ。あの時は小学生だったけど、今は“慣れた”って笑って言えるくらいにはね.

まぁ、2年前に死んじゃったけど」

 

その父さんってのは、酒で肝臓やったんだけどね。

母さんは泣いてたのか呆れてたのかは分からないけど、その頃からうちの家は静かになってしまった。

 

本当に“慣れた”のか、それとも“諦めた”のかは、自分でも分からない。

でも、こうやって志条を介抱していると、少しだけ“慣れてて良かった”って思ってしまう。

それがまた、なんだか変な話だ。

 

「それより、志条。鹿児島についたらどうするんだっけ」

 

「新鹿児島中央でリニアの自由席取って福岡入り。名目上はオープンキャンバスだからそれっぽく振舞わないと」

 

「逆だけどね、私達にとっては」

 

二人して同じタイミングで笑った。

船酔いが少し和らいだ様で、志条の顔もちょっと血色よくなってきた。

私、志条にだんだん心を開いてきているのかな。

 

灰色の波と空が視界を埋め尽くしているのに、志条の感情の色が波に溶けて見える。

 

 

____________

 

 

船に揺られて5時間。

――と言っても、私たちがのんびりしてた訳じゃない。

 

デッキから沖合を見れば、白い航跡の上空に黒い影が浮かんでいる。

双眼鏡で見なくても分かる、水色だかピンクだか分かり難い推進光はムラクモだ。

“民間船舶護衛”って建前で飛んでるけど、実際は監視かもしれない。

 

「……俺たち、丸見えなんだよな」

志条が吐き捨てるように言う。

 

「うん。だからこそ“普通の学生”でいないとね」

 

私はカバンからプリントを引っ張り出し、わざとらしく赤ペンを走らせた。

テスト勉強、進路調査票、見学のしおり。

“優等生の仮面”は牢獄をすり抜ける一番の武器だ。

 

船が港に着けば、そのままリニア新幹線。

21世紀から引きずり続けてる弾丸特急で、青色吐息で九州縦断を成し遂げた路線だ。

……だけど、速いのは鉄道じゃない。監視網の更新速度の方だ。

 

車内モニタに流れるニューステロップ。

“福岡都市圏での検問増加”

(ほらね、見てるんだ。日本っていう監獄は、息つく間も与えちゃくれない)

 

 

_____________

 

 

 

「纏、ここは空港税関か?」

 

「間違っても空港じゃない。いや港ではあるけど」

 

船に揺られて20時間。

やっと着いた九州なんだけど、九州入りするだけで一気に強化された感がある。

多分、隣国とかからの不法入国者を見つけ出す目的もあると思うけど、おおかた監視目的もあるだろう。

 

荷物の透過スキャンと国民識別番号カードの提示とメンドクサイ事をしていって、身体の赤外線スキャンとかいうプライバシーのプの字もない機械を通る事となった。

離島からの移動に不法入国者がまぎれるとか何とか言ってるみたいだけど、身体のラインまで見えるような機械置くなんてもうちょっと配慮しなさいよ。

 

……こんなくだらない所でシルフがクラッキングしてスキャンした私をわがままボディにする何てアホな事は起こらない方がいいからね。

まぁ起きなかったし。

 

で、通過。

今は何にも後ろ暗い事無いからね、今は。

あ、ハンセンから部品を譲ってもらった(盗った)時はノーカンにしておこう、バレなきゃノーカン。

 

そこからは比較的スムーズだった。

渡航理由とか聞かれて推薦状とかオープンキャンパスとかの書類出したら通過してはいオッケー。

正式な書類って強いね__バーカ。

 

「ほら切符、自由席2枚、つばめ2の8乗号9番線」

 

「128号だ」

 

分かる人には分かる2の累乗ボケでリニアに乗って北上。

22世紀でも駅弁という物はあるからちょっと一服して食べて、だらだらしてたらもう着いてしまった、福岡だ。

 

そこでちょっと観光。

福岡って豚骨ラーメンが人気って言ってたので食べて見たけどちゃんと美味しい。

ソーキそばと良い勝負してるじゃない、合格! 

 

で、一泊という事になった。

ぶっちゃけ船移動が長いから日帰りは無理なんだよね、だから泊まる。

お金節約で志条と相部屋にしたらそわそわしててあーかわいい事で。

 

別に私気にしないよ?

どうせ景色は灰色濃淡ワールドだし肌とか下着とか色的に気にならないけど、志条が色々ダメそうな色してたからちょっと配慮。

でもさ、志条は立ったり座ったり荷物を置いたり忙しい事で。

 

「……そんなに緊張しなくてもいいでしょ。ただの宿で一泊するだけ」

 

「いや、でも男女で相部屋って……」

 

「私は気にしないよ。色の濃淡しか見えないし、志条が顔真っ赤なのだけは分かるけど」

 

「だからそういうの実況するなって!」

 

私は小さく笑って枕を叩き、窓際に背を向ける。

からかうように言ったけど――ほんとは、志条が隣にいるだけで心が少し落ち着くんだ。

 

翌日。

私はというと、ベッドの上でシーツぐちゃぐちゃ、枕も床に落として、頭と足の位置が逆転した典型的な「寝相最悪」状態で目を覚ました。

 

「……よく落ちないな、こんな寝方で」

 

志条が半分あきれた顔と声で立っていて、思わず笑ってしまう。

 

「起こすの難儀したでしょ?」

 

「……まあな」

 

「朝からお疲れさま。ちょっとはだける程寝相悪いのは考え様ね」

 

軽くからかって、寝癖のままコンビニに立ち寄って朝食をとる。

おにぎりと缶コーヒーを片手に、目的の大学へ向かう道を並んで歩き出した。

 

いざ往かん福岡大学(3Dプリンター)だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。