【魔法美容師(マジカルエステ)】を得た転生者は栄耀栄華の夢を見るか   作:好きな念能力は4次元マンション

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第5話

 個性把握テストを終え、教室へと戻った念治たち1年A組。”特待生”については教室へ戻る道すがらリカバリーガールのような治癒個性持ちを雄英高校へ入学させるためのものである事、試験内容は公安から口外を禁じられている事などを話した。

 ”特待生”に興味を持たなかった轟や、用事のある蛙吹梅雨、道中の説明で満足した爆豪などを筆頭に大半のクラスメイトは早々に帰宅した。教室に残っているのは蛙吹と麗日以外の女子全員と瀬呂範太、上鳴電気の男子たち。

 

「掘須磨大付属!? すっげえ……」

「毎年雄英合格者出してるって話だもんな」

「去年は1人だけ。今年は僕と百ちゃんの2人だね」

 

 既にお互いに自己紹介を済ませた面々。男子たちは念治の出身校について雑談していた。その中でおもむろに口を開いたのは芦戸三奈。ピンク色の肌を僅かに上気させた彼女は、美男美女同士で距離感も近い八百万と念治の関係に興味津々だった。

 

「じゃあ改めまして! 八百万と修善寺の関係聞きたーい!」

「俺も気になる! お前らすっげえ距離感近いもんなあ」

 

 芦戸に続いたのは上鳴。八百万と念治はお互いを見合う。お互いの関係をどう答えたものかと思案しているだけなのだが、それぞれ高校生離れした美貌のためにただ見合っているだけで映画のワンシーンのような光景となっていた。

 唐突な恋愛映画クライマックスのラブシーンのような空気を醸し出した(当人たちを除く)教室。

 念治はそんな空気を敢えて無視して八百万との馴れ初めを語りだす。

 

「僕と百ちゃんは小1からの幼馴染でね。入学したての時、隣の席同士で僕が挨拶したのがきっかけで友達になったんだ」

「懐かしいですわ。あの時、念治さんを見た衝撃は今でも忘れられません」

「え、どんなだったの?」

「ウチも気になる」

 

 八百万の言葉を受け、興味深々に続きを促す女子一同。

 

「初めて学校へ行く時、凄く緊張してしまって集合時間より随分前に到着してしまいましたの。両親は入場手続きで私とは一緒に居られず、1人で教室へ向かいました。初めての学校生活が上手くいくか緊張している中、教室のドアを開けて視界に飛び込んできたのが念治さんでした。

 隣の席に座った私に念治さんは優しく話しかけてくれて……。とても美しい方だと思いましたわ。まるで精巧なお人形が等身大になって動いているようでした。それでいて私に向けてくださる笑顔は優しく、柔らかくて……」

「おお……」

 

 雄弁な八百万の言葉で場面を想像する芦戸たち。目の前の超絶美人が自分を気遣って話しかけてくれ、笑顔で楽しくおしゃべりもしてくれたと。

 八百万から念治に向けて相当大きな矢印が向いているという事を悟った一同。そして成程。2人の思春期の男女とは思えない距離の近さはここからきているのだな、と思った。

 当時を思い出して念治をべた褒めする八百万に、流石に気恥ずかしくなったのか念治は頬を僅かに染めて「ちょっと恥ずかしいな」とはにかんだ。

 

「わあ……」

「めっちゃカワイイ……」

「顔が良い……」

 

 念治の笑顔を見て、芦戸、葉隠、耳郎は同じかそれ以上に顔を赤くした。はにかんだ念治の笑顔はまさに傾国。ユニセックスな見た目は性別を曖昧にし、目が眩むほどの美貌を携えていた。

 出身学校や立ち振る舞いから八百万を良家のお嬢様だと認識していた一同は、世間知らずのお嬢様がこんな笑顔を受けたらそりゃあそうなるよと内心うんうんと頷いた。

 

 八百万の語りは留まることを知らず、とあるサポート会社の社長令嬢が受けていたいじめを念治が止めさせたという武勇伝の話になっていた。このままだと念治に関する自慢話が無限に続きかねないと悟った空気の読める男、瀬呂範太はあえて多少強引な話題転換を試みた。

 

「体力テストの時に思ったんだけど、修善寺って滅茶苦茶個性強いよな。それって独学? それとも、リカバリーガールに鍛えてもらったりしたのか?」

「うん。訓練を見てもらってたよ」

「念治さんは小学校入学以前からリカバリーガールの指導を受けていらしたんですよ」

「そんな小さい時から!?」

「やっぱ有名ヒーローの家は違えなあ」

「あはは、僕がリカバリーガール……おばあちゃんに無理言ってお願いしたんだ。当時から憧れだったからね」

「修善寺はリカバリーガールに憧れてヒーロー目指してんのか」

 

 そんな話をしていると、突如クラスの扉が音を立てて開いた。

 

「もう下校時刻だ。話が盛り上がっている所悪いが、解散しろ」

「すみません!」

「もう帰りますんで!」

 

 イレイザーヘッドこと相澤消太が念治たちに注意を飛ばす。相澤の機嫌を損ねる訳にはいかないと、瀬呂や芦戸などが慌てて帰り支度を始める。体力テストの際に相澤が発した”除籍”の言葉は噓だと分かった後でも恐怖の象徴だった。

 バタバタと荷物を纏めて教室から出ていく芦戸たち。念治も帰宅しようと教室を出た時、相澤に声をかけられた。

 

「修善寺、ばあさん(リカバリーガール)から伝言だ。『今後雄英で治癒した者について生徒・教師含め報告するように』との事だ。今日緑谷に行って貰った治癒については俺から報告しておいた。今後は修善寺から報告するように」

「わかりました。ご連絡ありがとうございます。相澤先生」

「じゃ、気を付けて帰りなさい」

「はい。さようなら、先生」

 

 ポケットに手をつっこみ猫背で職員室に戻る相澤に頭を下げ、念治も帰宅した。

 

 

────────────────────────

 

 

 入学2日目。ヒーロー科とはいえ、それのみを学ぶ訳ではない。数学英語などの授業は午前中に実施され、ヒーロー科特有の授業は基本的に午後の授業で行われる。

 そして昼休みが終わり、1年A組の教室に()がやって来る。

 

「私が普通のドアから来た!」

 

 HAHAHAとアメリカンな笑い声と共に教室へ入って来たのはNo.1ヒーロー・オールマイト。

 彼が教職となった事はすでに在校生、新入生らには先んじて周知されていた。そして新学期が始まった日には新聞、テレビなどで報じられ、国民全員が知る事実となっていた。

 No.1ヒーロー・オールマイトの姿にクラスのテンションは最高潮となった。

 

「私の担当はヒーロー基礎学! ヒーローの素地をつくるため様々な訓練を行う科目だ」

 

 早速だが今日はコレ! とオールマイトが突き出した手に握られていたのは『BATTLE』のカード。

 

「今日は戦闘訓練を実施する。それに伴って……入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた戦闘服(コスチューム)!」

 

 おお! とクラスメイトの歓喜の声が沸く。

 教室の壁からせり出してきたそれぞれの出席番号が記載されたケースを受け取る。

 

「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」

 

 

────────────────────────

 

 

 オールマイトが説明した今回の戦闘訓練内容は、ヒーロー側と(ヴィラン)側に2対2で分かれての屋内戦闘訓練。(ヴィラン)側は核を所持。ヒーロー側の情報としては核が隠されている敵アジトのビルの見取り図と(ヴィラン)が2人であるという事のみ。

 制限時間は15分。ヒーロー側の戦闘勝利条件は制限時間以内に対戦相手2名を『確保テープ』というテープを巻き付けて『確保』するか、核へのタッチ。

 (ヴィラン)側勝利条件は制限時間までに相手へ『確保テープ』を巻き付けるか、核を守りきる事。

 

 ……カンニングペーパーを見ながらの説明で、彼が教職に慣れていない事が窺えた。

 

 俺のヒーローコスチュームはシンプルに医者の恰好だ。リカバリーガールと同じデザイン会社に作成してもらったようで、彼女の装備とほぼ同じ。

 変わっているところと言えば、俺のコスチュームの方が少し色合いが濃い目で落ち着いている事と、両手の手袋の中手骨の部分に銃口を模した飾りがある事、白衣(ドクターコート)の下に()()()()()()()()()()ところ。

 

「先生、A組は21人です。コンビでは1人組めない人間が出てしまいますわ」

「それは大丈夫! 修善寺少年にはコンビが出来た後にクジを引いてもらう。そこで引いたグループに入って演習を行ってもらうからね」

 

 そうしてコンビができた後俺が引いたのは”G”。上鳴と耳郎のチームだ。

 

「よろしくね、2人とも」

「よろしく」

「よろしくな!」

 

 八百万のチームは……あの頭にブドウの房みたいなものを付けた奴か。名前は峰田とか言ったはず……いやなんだあいつ。一切視線を外さないで八百万の胸や尻ばかり見てるぞ。チラ見じゃない。ガッツリだ。確かに彼女のコスチュームは『個性』の都合で肌面積が多く露出しているが、それでもあからさま過ぎるぞ。

 

 俺が峰田の対処に悩んでいると、初戦の組み合わせが発表された。緑谷・麗日のAコンビはヒーロー。爆豪・飯田のDコンビは(ヴィラン)……。

 初戦から入試1位か。お手並み拝見だな。

 

 

 

 ……初戦が終了した後、戦闘が行われていたビルは半壊していた。爆豪のサポートアイテムを用いた大規模爆破攻撃に加えて、緑谷の『OFA』による破壊が合わさった結果だ。

 緑谷は火傷と右腕の負傷で重体だ。流石のオールマイトも戦闘訓練が終わっていない俺に重傷の緑谷を治させる事はせず、ハンソーロボによって保健室へ搬送された。

 

 しかしこれで、オールマイトが緑谷に対して個性訓練を施していない事がほぼ確実になった。放課後にリカバリーガールに言ってオールマイトを呼び出して貰おう。

 

「さて、講評の時間だ! ……つっても今戦のベストは飯田少年だけどな!」

「なな!?」

「さあ、何故だろう? わかる人!」

「ハイ、オールマイト先生」

 

 手を上げた八百万による講評が始まった。爆豪の私情丸出しの独断専行や大規模破壊を窘め、緑谷も爆豪同様だと指摘。麗日については中盤に飯田を見て吹き出した事によって飯田に発見されてしまった気の緩みと、緑谷の『OFA』で破壊したビルの柱とコンクリートの破片を利用した攻撃を核に対して行った事……。

 

 飯田の行動は核の争奪を念頭に置いていて適切だったためにAチームの最後の攻撃──麗日曰く彗星ホームラン──に対応できなかっただけ。Aチームの勝利は『訓練』だという甘えから生じた反則のようなものだ──。

 

 これら八百万の指摘は的確すぎて誰からも反論がないまま、オールマイトが「正解だよ!」と締めた。

 

 続く第2試合はビルを変えて実施された。個性把握テストで使用していた轟の氷結から戦法を予想した俺は八百万に白衣を脱いで羽織らせた。

 

「百ちゃん、これ羽織ってて。多分轟くんの『個性』で寒くなる」

「成程、氷結で……。ありがとうございます。念治さん」

 

 障子・轟のBチームがヒーロー。葉隠・尾白のIチームが敵チームで開始されたが、語るほどの描写もなかった。障子の『複製椀』の個性でビル内部を探索し、轟の氷結でビル全体を凍結させて決着だ。

 轟は八百万同様、推薦合格者。それに加えてあのNo.2ヒーロー・エンデヴァーの息子……。この個性出力も納得だ。

 

 訓練が終わって戻ってきた尾白と葉隠に凍傷や、氷を融かした熱による火傷がないか確認した。尾白は問題なかったが、素足で攻撃を受けた葉隠の方は『透明』の個性で体が見えないため触診したところ、僅かに皮膚の怪我と火傷を負っていたようなのでクッキィちゃんで治癒を行った。

 

「ありがとう修善寺くん!」

「どういたしまして」

「ありがとう修善寺少年。さて、第3戦は──Gチームがヒーロー! Fコンビが(ヴィラン)だ!」

 

 Gチーム……俺たちのチームだ。Fコンビは異形個性1人と、体格の良い、恐らく近接主体が1人。統計的に見ても、2人は近接主体のコンビだろう。

 

「さあ、(ヴィラン)側は準備を開始してくれ! ヒーロー側は5分後にスタートだ!」

 

 

 演習ビル前。Gチームはお互いの『個性』のすり合わせを行っていた。

 

「ウチの個性は『イヤホンジャック』。このジャックを相手に突き刺して心音で攻撃したり、サポートアイテムで離れたところに音波攻撃もできる。けど、索敵の方が得意かな。足音の反響とかでこのビルくらいだったら敵の位置がわかると思う」

「俺の個性は『帯電』。溜め込んだ電気をぶっ放せる! ……以上!」

 

 耳郎の説明と比較してあっさりした上鳴の説明に耳郎が言う。

 

「じゃああんたの『個性』この演習じゃ使えないじゃん」

「え、なんで!?」

「なんでって……。聞いてたでしょ。ウチらが奪取しなきゃならないのは”核”兵器なんだよ? 上鳴の電撃がどれ程の威力かはわかんないけどさ。今までの試合内容から見ても、多分相手は核兵器の前で守ろうとするでしょ? 敵痺れさせるにしても、そんなところで電撃なんて使ったら核兵器が爆発して皆お陀仏じゃん」

 

 轟だって炎使わずに氷結で解決してたでしょ? と付け加える耳郎。

 

「役立たずかあ、俺……」

 

 耳郎の正論で説き伏せられ、しょぼんと落ち込む上鳴。

 

「確かに、核兵器のフロアで個性が使えない上鳴くんと、耳郎さんもサポートアイテムで指向性があるとはいえ、音波攻撃も万が一にも当たったら振動で核を爆発させかねないからまずいかも。つまり、2人の個性は今回の設定では戦闘に不向き。だから僕が敵を倒すよ。作戦は────」

 

 2人に作戦を説明する念治。耳郎と上鳴は作戦を聞いて一瞬驚いたものの、すぐに頷いた。

 

『さあ、GチームとFコンビの屋内対人戦闘訓練スタートだ!』

 

 

────────────────────────

 

 

 オールマイトが戦闘開始を告げる前。5分の準備時間にて。

 モニタールームでは、先の個性把握テストで2位という好成績を出した念治がどのように戦闘を行うのかが話題になっていた。

 

「やっぱりあのとんでもねえ身体能力でゴリ押しじゃねえか? シンプルながらこれが一番だろ」

「でも、砂藤も口田も結構体格良くない? 修善寺も凄かったけど、そんな単純にいくかなあ」

 

 切島と芦戸が話している中、無言でモニターを見つめる八百万に葉隠が声をかけた。

 

「八百万ちゃんはどう? 修善寺くんが勝つと思う?」

「ええ、勿論。そしておそらく、勝負は一瞬ですわ」

「一瞬……?」

 

 

「さあ、GチームとFコンビの屋内対人戦闘訓練スタートだ!」

 

 

────────────────────────

 

 

「2人は……5階かな。大きく動いてないけど、微かに足音がする。他の階には物音しないから、ほぼ間違いない」

「おお……すっげえな、耳郎」

 

 ビルの1階入り口で耳郎は壁に自身の『イヤホンジャック』を突き立て、音を感知していた。

 

「ありがとう、耳郎さん。作戦通り、4階へ行こう」

「OK」

「うし!」

 

 4階へ向かう俺たち。道中に罠などはなく、すんなりと4階の部屋へ到着できた。俺は4階の部屋に入り、上鳴と耳郎にはドア付近を念のため警戒してもらう。

 

「よし。じゃあここからは任せて」

 

 そう言って俺は懐から2丁の銃*1を取り出す。フルサイズほどの大きさのそれを構え、オーラを充填する。

 俺の”発”、<砲刃矢石(ファイアアーム)>。俺が銃と認識しているモノから念弾を放出するシンプルな能力。念弾をそのまま指から撃つより、銃弾として撃った方が強いという思い込みを能力とした。

 ”制約と誓約”は銃で撃たない場合の念弾威力の低下*2

 

 しかしこれは同等のオーラを込めた場合の話で、倍のオーラを込めれば<砲刃矢石(ファイアアーム)>使用時と同等の威力を出せる。個性把握テストで出した記録はこの方法で出した。

 

「──”円”」

 

 俺を中心に半円を描くようにオーラが広がる。”練”と”纏”の応用技、”円”だ。このオーラの中に入った物体や人の形を感知することができる。”円”の中の物体情報は視覚で捉えられないものまで感知するからなのか、相当に神経を削る。あまり使いたくない技の1つだ。

 

 耳郎の『イヤホンジャック』での索敵通り、砂藤と口田は5階に居る。核の前で俺たちが来るのを待っている状態だった。

 

「──充填・狙(バレット・シュート)

 

 ”円”に入った砂藤たちが行動を起こす前に狙撃する。

 放たれた念弾は速度特化。5階の床を超えて正確に2人の顎に命中し、脳を揺らしてその場で倒れた。

 

「2人が倒れたよ!」

「よっしゃ、タッチだ!」

 

 元気よく返事した上鳴が走り出し、核にタッチした。

 

『ヒーローチーム、WIIIIN!!』

 

 俺は2人とハイタッチして、砂藤たちを治癒しに5階へ向かった。

 

 

「さあ、講評の時間だ。ベストは修善寺少年だ!」

「ありがとうございます」

 

 念治はぺこり、と頭を下げる。オールマイトは念治がベストだった理由をA組に問う。

 はい、と手を上げたのは蛙吹。

 

「修善寺ちゃんがベストなのはチームメイトの個性を十分に活かして、お互いに損耗なく終わらせたから。響香ちゃんの『個性』を上手く使って口田ちゃん達が居る階層を割り出したのだろうけど……正確な位置や場所まで把握できたの?」

 

 蛙吹が耳郎に尋ねる。耳郎は首を横に振り、「ムリ」と答える。

 

「ウチにできたのは足音を拾って敵側の居る階層を割り出す事だけ。その後は修善寺がやったんだ」

「僕の技の1つに”円”ってのがあってね。それを使ったんだ。

 僕の個性は自分の活力とか生命力みたいなものをエネルギーにしてる。そのおかげか、僕は個性使ってると人の生命力が可視化されるんだ。この能力の応用なんだけど、探知範囲を一気に広げると人や物の位置や形が分かるようになる。ちょっと反動があるけどね。

 それで口田くんたちの位置と姿を把握して階下から狙撃したんだ。耳郎さんや上鳴くんの個性じゃ核の前で戦えなかったから」

「ケロ……なるほどね」

「素晴らしかったぜ、修善寺少年! 耳郎少女も見事だった! 個性でできることをやれたからね。上鳴少年は電撃のぶっぱだけではこういう共闘の時、妨げになってしまう事がわかったね。味方や保護対象を巻き込まないようにするには、電撃のコントロールやピンポイントへの攻撃手段が必要だ!」

「ウッス!」

 

 わかったね、と優しく言うオールマイト。流石No.1ヒーローと呼ばれるだけあり、瞬時に上鳴の足りない点を指摘している。

 

「口田少年と砂藤少年は残念だったが、こういう事もある! 全ての(ヴィラン)が正面きって戦闘してくれるとは限らない。今後の授業でそれを学んでいこう」

「はい!」

「……っ」

 

 元気よく返事する砂藤と、無口ながらも勢いよく頷く口田。

 

「さあ、続いて始めるぞ!」

 

 

 

 その後は大きな怪我人もなく初めてのヒーロー基礎学は終了した。

 ちなみに八百万・峰田コンビは芦戸・青山コンビと敵側で戦った。

 核の部屋入り口に『もぎもぎ』のトラップをしかけ、触れない状態にして芦戸と青山にドアを壊す事を強要した。青山がドアごと『もぎもぎ』を破壊した瞬間、『もぎもぎ』が付いたドアを重しとして仕掛けられたトラップが起動。八百万特製ゴム弾*3がそこかしこのアサルトライフルから放たれて青山がダウン。そのまま驚いて固まった芦戸も八百万のアサルトライフルから発射されるゴム弾でダウン。えげつない勝利だった。

 

「お疲れさん。緑谷少年以外は大きな怪我もなし! 初めての訓練にしちゃあ皆上出来だったぜ! すまないが、修善寺少年は着替えたら保健室まで来てくれ!」

 

 私は緑谷少年に講評を聞かせねば! と言って凄い勢いで走っていったオールマイト。

 

「多分緑谷くんの治癒絡みかな。着替えて行ってくるよ」

「わかりましたわ」

 

 

────────────────────────

 

 

「入学間もないってのにもう3度目だよ!? 何で止めてやらなかったオールマイト!」 

「申し訳ございません、リカバリーガール……」

「私に謝ってどうするの!? ……疲労困憊の状態だったけど、点滴入れて治せるギリギリまで治癒を進めた。後は念治に体力回復させてから再度治癒をする」

「はい……」

 

 リカバリーガールがオールマイトを叱責する。

 先の戦闘訓練では爆豪の大規模破壊行為で戦闘を中断することはできた。しかし、弟子である緑谷の成長に必要な”過程”だと思い、戦闘を止めなかったためだ。

 オールマイトが口を開こうとした時コンコン、とドアを叩く音が聞こえる。

 

「リカバリーガール、修善寺です。オールマイトに呼ばれてきました」

「入ってきな」

「失礼します」

 

 ドアを開けて入ってきたのは修善寺念治。リカバリーガールの孫だ。

 

「修善寺少年、昨日の今日で申し訳ないのだが……緑谷少年を治してくれないだろうか」

 

 懇願するオールマイト。それを見た念治は深くため息をこぼした。

 

「治癒は問題ないですが、オールマイト。緑谷くんについて質問させていただきます」

「な、なんだい改まって」

「──緑谷くんを1年間かけて育てたと仰ってましたが、”個性訓練”は実施していましたか? 貴方から譲渡された『OFA』……。個性出力が突出していて体が壊れるのなら調整すればいい。しかし、今日の戦闘訓練でも緑谷くんにはそんな兆しがなかった。どういうことですか?」

「え、い、いやあ。それはその……」

 

 歯切れの悪いオールマイトをリカバリーガールも訝しむ。リカバリーガールと念治の鋭い視線の中、オールマイトが重い口を開いた。

 

「緑谷少年は心意気はヒーローそのものだったのですが、体が全くできておらず。入試までの10か月は体づくりに費やしておりまして。み、緑谷少年に譲渡したのはヒーロー科入試当日でして……、今まで個性訓練を私から行った事はないです……」

「────呆れた。よくそれで弟子だなんだと言えたもんだよ」

「緑谷くんはそんな状態で入試、個性把握テスト、今日の戦闘訓練をこなしていたわけですか……」

 

 深いため息を吐くリカバリーガールと念治に恐縮するオールマイト。他の雄英出身者の例にもれずリカバリーガールには頭が上がらない。そして念治は6年前にAFOとの決戦で負った負傷の手術に携わって命を救ってくれた存在。さらにはそれ以降、念治は『個性』を使うことができない体となってしまった経緯もある。負い目があるのだ。

 

「おばあちゃん、今週末は緑谷くんに時間を充てるよ」

「ああ。お前が良いならそうしなさい。……オールマイト!」

「は、はい!」

 

 リカバリーガールの大声にオールマイトは大きな体をビクッと跳ねさせた。

 

「今週末、緑谷の親御さんに許可を取れたらウチの訓練施設を使って良い。緑谷の個性を見てやんな」

「え!? い、いえしかし。私にも副担任としての仕事が……」

「念治の桃色吐息(ピアノマッサージ)を使えば寝る時間は30分で済む。それで仕事は片付けな! まさかよちよち歩きのヒヨコにすらなっていない状態で放置しているとは思ってもなかったよ。自分の弟子なんだ。責任もって”調整”できるようにしてやんな!」

「は、ハイ!」

 

 

*1
全長220mm。見た目はフルサイズのオートマチック拳銃そのものだが、銃弾を入れるマガジン部分は取り外し不可で実弾は撃てない

*2
ルールを満たさずとも使えるが、ルールを満たすことで十全に威力を発揮出来る

*3
八百万が既存のゴム弾を独自改良した特製。既存品より速く飛ぶ上非殺傷性に磨きがかかっている。

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