杖と呪文の組み合わせ! 〜呪文が400もあるんだってさ〜 作:クッミタス
気がつくと、俺は洞窟の前に立っていた。
腰には二本の杖と一本のポーション。
服はなぜかローブを羽織っている。
目の前には木の立て札がある。
「帰りたくばクリアせよ」
なんだこれ? 夢でも見てるのか? いやそれにしても変な夢だな。
何がなんだかわからんが、ゲームクリアが目的ってことか?
どうやったらクリアなんだ?
あたりを見回しても看板以外には何も手がかりはない。ただの木の看板がある。それだけだ。
まあ夢だしな。
先に進めばいいんだろう。
改めて周りを見渡せば、目の前には山。見える範囲は何百メートルもの高さがある。歩いて登れなくはないだろうが、かなり苦労するだろう。
後ろは丘が遠くまで続いている。高低差がえげつない感じの丘がいくつもあり、視界を途中で遮っている。
まあさっさと中に入って、ゲームクリアを目指すか。
洞窟に入ってしばらくすると、ジメジメとした雰囲気になり、鍾乳石が天井に見えた。見ているとポタリ、ポタリと水が一滴ずつ落ちている。雰囲気あるな。
あたりを見回していると、壁になにかが刻まれている事に気づく。文字だ。日本語ではない、アルファベットでもない。しかしじっと眺めていると、なぜか意味が頭に伝わってくる。「移動しろ。右に左に空に」「杖は四本。道具も四つ」さすがは夢だな。
まずは移動を確認。さっきから歩いて右に左に移動できているが、空とは……? 試しにジャンプすると、そのままフワフワと飛べることを発見。
おお……飛べる……空を飛ぶのは人類の夢……。
感動したが、飛べるのは十数秒くらいが限界らしい。速さはランニングくらい。高さにして50メートル弱ってところか。これは低いところでホバリングしても、全力で上を目指しても変わらない。
ついでに試している時に気づいたが、50メートルから落ちてもなんの衝撃も感じない。試しに外の山で飛び降りてみたが、落下ダメージはないらしい。……強いて言うなら、高いところから落ちるとちょっと怖かったくらいだな。
移動について試せたので、今度は杖について調べる。杖を手に持つと、ぼんやりとなにかが伝わってくる。
杖1
呪文:スパークボルト×2
シャッフル:なし
同時詠唱数:1
詠唱遅延:0.18秒
再装填時間:0.38秒
マナ最大値:108
マナ回復速度:30
呪文スロット数:3
拡散:0度
杖2
呪文:ボム(3)
シャッフル:あり
同時詠唱数:1
詠唱遅延:0.05秒
再装填時間:0.03秒
マナ最大値:106
マナ回復速度:7
呪文スロット数:1
拡散:1度
杖にはそれぞれの能力があるようだ。そして一本目の杖にはスパークボルトの呪文が二つ、二本目にはボム(3)の呪文が一つセットされている。
スパークボルトの呪文のデータはこう。
呪文名:スパークボルト
タイプ:放射
マナ消費:5
ダメージ:3
スピード:800
詠唱遅延:+0.05秒
拡散:-1
クリティカル:5%
ボムの呪文のデータは
呪文名:ボム
タイプ:放射
残数:3
マナ消費:25
爆破ダメージ:125
爆破範囲:60
スピード:60
詠唱遅延:1.67
……ふむ。
つまり杖と呪文の組み合わせで戦い方が決まるわけか。だんだんわかってきたぞ。
試しに一本目の杖のスパークボルトを撃ってみるか。
杖を壁に向けて一発撃つ。パシュッ。
次に二発連続で撃つ。パシュッ、パシュッ。
三発だとどうなる? パシュッ、パシュッ、、パシュッ。
ふーんなるほど。俺はそのまま何発も撃ち続け、杖の使い方を調べた。
まず、呪文を使うと杖の中のマナが減ることがわかった。マナは時間とともに回復するが、使い切ると呪文は発動しない。
次に、二発連続で撃ったときと三発連続で撃ったとき。呪文を撃つ間隔に差があった。これは詠唱遅延と再装填時間の違いだろう。スパークボルトを一発撃ったとき、二発目を撃つまでにかかるのが詠唱遅延。この杖だと0.18秒。いや正直速すぎて本当に数値通りか分からないんだが。スパークボルトの呪文にも詠唱遅延があり、0.05秒が加算されているのだろうが、これもわからん。
そして三発撃つ時。これは言い換えれば、杖の中の呪文を撃ち尽くし、なおも呪文を使う時ということだ。この杖はスパークボルト×2だからな。
杖にセットされた呪文を撃ち尽くすと詠唱遅延ではなく再装填時間が必要になるのだろう。
現状わかるのはこんなところか。あとは新しい杖だの呪文だのを手に入れてからの比較が必要だな。
そして、さらに一つわかること。
つまり敵を倒して進むゲームなんだろう。
なぜならスパークボルトもボムもダメージが設定されている。きっとこの二本の杖で敵を倒し、新しい杖と強力な呪文を揃え、最後はボスでも倒すんだろうな。
ポーションもきっと最初の一本目は回復用に……回復……。
「水のポーション」
……?
ワインのようなコルクの栓がしてあるが、ひねると簡単に開いた。匂いはない。試しに舐めてみたが、味もない。体に変化が起きる様子はない。
……え、本当にただの水?
他の情報がないか左右に回したり上下を確認するが、「水のポーション」としか俺の頭には浮かんでこない。いや正確には「水のポーション:99%」になった。さっき舐めた分が減ったのだろう。
う、うーん……。まあきっと何かに役立つだろ……。
洞窟を進むと足元が石畳になり、天井の鍾乳石にランタンが吊るされていた。道案内の目印のつもりだろうか。そう考えていると、道は急勾配の下り坂になる。数メートルも進むとランタンの光は届かなくなるが、不思議と自分の周りに何があるのかがわかる。これもゲームの仕様か。
やがて下り坂は終わり、崖が現れた。下を覗くと湿った土の匂いが鼻をかすめる。
ここからがスタートということか。
俺は深呼吸をして崖に飛び込んだ。
~第一層 鉱山~
途中で空を飛んで減速しながら地面に降り立った。やはり周りは暗いままだが、数秒であたりの様子が分かる。ところどころに壊れた木の支柱や、傾いたトロッコの線路がのびている。奥まで続く道には時折つるはしが落ちている。鉱山の跡地……というステージか。
そっと一歩踏み出すと、視界の端にふと揺れる影が見えた。
「……っ!」
とっさに身を引く。
小柄な人影がうずくまっていた。小さなヘルメット。くたびれた作業服。
――ヘイッコフルッタ。なぜか名前が分かる。あれが敵か。
俺はゆっくりと息を吸う。
右手に握った杖が、かすかに光を帯びる。
撃つなら――今!
パシュッ。
軽い音とともに眩い火花が一直線に飛び、フルッタに当たって弾けた。
直撃。
「ギッ……!?」
ちっ。一撃で倒せないのか。俺はそのままスパークボルトを撃ち続ける。
2発、3発。さらに4発目を撃とうとしたが、フルッタが動かないことに気づいてやめる。
いつのまにかフルッタの体のそばには手のひらサイズの金のような輝く粒が床に落ちている。どうやら敵を倒すと手に入るらしい。
触ってみると、チャリン、という音とともに金は消える。そして俺の意識の中に「$10」という項目が浮かんできた。へえ。敵を倒すと金がドロップされるのか。
俺は慎重に立ち上がり、周囲を見渡した。
まだ奥には闇が広がっている。――進まなきゃ。
これは夢で、ゲームなのだから。
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