杖と呪文の組み合わせ! 〜呪文が400もあるんだってさ〜 作:クッミタス
臭い肉や蠕虫の血も食べ放題の飲み放題で最高です。
気がつくと、俺は洞窟の前に立っていた。
腰には二本の杖と一本のポーション。
目の前には木の看板がある。
俺は看板を全力で蹴り飛ばした。
「くそぉぉぉ!」
飛んでいった看板の元まで走り、もう一度蹴り飛ばす。
看板は洞窟の奥まで飛んでいき、鉱山への穴へと飛び込んでいった。
「フーッ、……フーッ……フーッ」
荒くなった呼吸をなんとか落ち着けていく。
大丈夫。失敗はしたが、次は上手くやる。やってみせる。
俺は落ち着いて三層の失敗を思い返していた。
〜 第三層 雪の深淵 〜
俺は三層への穴へ飛び込んだ。もちろんまた毒池がないか確かめながら、慎重にだ。
最初に見たのは普通の水の、浅い水たまりだった。
これなら大丈夫。そう思って飛び込んだが、水が冷たい。
周りを見れば雪と氷で覆われていた。どうやら雪のエリアらしい。一層、二層が鉱山に由来するエリアだったから、これはまったくの予想外だった。
とはいえ冷たいとは感じるが、HPも減らないし、俺自身は普通に動ける。
この辺は「さすが夢の中」というか、なんというか……。
頭を振って雑念を追い出し、俺は池から出た。そして雪の地面までの数メートルを飛び降り、辺りを確認した。
天井から氷柱が生えていたが、その向こうに何かの影が見える。
現れた敵はヤーティオ。頭蓋骨の周りに青いオーラをまとってゆっくり空を飛んでいる。しかもそれが二体。
俺は杖を構え、ある程度近づいたところで撃った。
ボンッ!!
ヤーティオは死んだ。そしてその体から四方八方に何かが飛び散った。
火力十倍は伊達じゃないな。まさか一撃で二匹とも倒せるなんて。
俺は呪文の強さに酔いしれ、ヤーティオから飛び散った何かを無防備にくらってしまった。
……えっ? なにこれ、体が動かなくなったぞ……?!
そう、ヤーティオは死んだ後に冷気を撒き散らすモンスターだった。
俺がそれに気づいたのは、無防備に冷気をくらい、体が凍結して動けなくなってからだった。
ヤバイヤバイヤバイ! なんだこれ!!
気分はロボットアニメで燃料が切れて動けなくなった主人公。なんとか動こうと力を入れるが、何も反応がない。動け、動け、動け!
そしてそんな時に限って現れる次のモンスター。ウッコ。
そいつは一階層のステンダリを青くした姿をしていた。色違いモンスターかよ。
鉱山で出てきたステンダリは火の玉を撃ってきた。なら雪のステージで出てくるウッコは何を撃ってくる?
答えは、俺の体より大きい雷の球だった。
氷じゃねえのかよ。
動けない俺に、ウッコはゆっくり狙いをつけて、雷球を飛ばし。
セーフルームで全快しHPが120になっていた俺だが、一撃で死んだ。
〜 第一層 鉱山 〜
理不尽だ。あまりにも理不尽な死に方だ。まさにクソゲー。殺意高過ぎんだろ。……はぁ。
ヤーティオは死んでも危険。はい。覚えました。
ウッコの雷球は当たると一撃で死ぬ。はい。
俺は無心で一階層の敵を狩っていった。
一階層の敵も大分慣れてきた。辺りに注意し一匹ずつ相手にすれば、ダメージを受けることも少なくなる。
今まではすぐに一階層の底を目指していたが、今回は下に降りるより周辺の探索を優先しても良いかも知れない。
そう思って奥へ奥へと進んでいくと、土や石とは違う、赤い岩の壁にたどり着いた。ここが鉱山の端ということだろうか?
試しに爆発を投げてみたが、爆発の煤で黒くなるばかりで、全然掘れない。やはりここが端のようだ。
岩の壁に沿って下に降りて行くことにした。
上側の敵は倒しているし、岩側からは敵が出てこない。警戒する方角を絞れると効率がいい。これからはまず岩壁を目指すほうが安全かも知れない。
……そう思いながら降りて行くと、広い空間に出た。残念ながら壁を背にする作戦はもうおしまいのようだ。
〜 溶岩湖 〜
広い空間に出たわけだが、何があるのかと奥へ向かえば、見渡す限りの赤い液体の湖だった。
溶岩だ。溶岩の湖が広がっている。
……いや、本物の溶岩を直に見たことがないから、これは溶岩ぽいナニカの可能性はある。いやきっとそうだろう。コポコポいって粘性の高そうな泡が弾けているし、熱で蜃気楼が発生しているがきっとそう。
試しに水をかけると、水が蒸気になるのと引き換えに溶岩はすぐに固まった。杖でつついても呪文を撃っても固まったままだ。うん、これはゲームの溶岩だな。本物ならこんなに簡単に固体に変化するとは思えない。
……試しに触ってみるべきだろうか?
毒液はだんだんとHPを減らすだけで、即死するようなものではなかった。溶岩がどういう性質を持っているのか、確認したほうが良いだろう。怖いけど……。
俺は結構な時間をためらったが、ちょっとだけ溶岩に足をつけた。
すると足元から体中に火が噴き出して、俺は火だるまになった。
あっち、あっちぃ!!
いや熱さはないけど、HPが減る!
水、水ぅ!
今回は初期装備に水のポーションはなかったが、ここに来るまでに水たまりが何箇所かあったおかげで、しっかりと水は持っている。頭から水をかぶるとすぐに鎮火された。
あー驚いた。火だるまになる経験なぞ、二度とないことを願いたい。
それにしても……わかってはいたが、この世界は本当に夢の中だな。
水で溶岩がすぐに固まるし、溶岩に足をつけても火が付くだけですんだし、火だるまになっても水をかぶれば火傷にもならない。何もかもがゲーム的な物理法則で動いている。
まあ死に戻りなんてのが現実にあったらたまらないからな。ゲームだから死ぬ事に耐えられる。現実のようにダメージやら毒やらで苦しい思いをするなら、俺は先に進めなかったろう。不幸中の幸いだ。
俺は溶岩湖の真ん中に水をチョロチョロと撒きながら道を作り進んだ。こういったエリアの先は何か特別なものがあるのがお約束だ。行くべきだろう。
チョロチョロ……ジュッ。チョロチョロ……ジュッ。
何度、溶岩を固めただろう。気がつけば水のポーションの中身は残り20%ほどになっている。
……ふと、『無限ループ』という単語が頭に浮かんだ。
マップの端からは空間が無限ループになり、先に進めない仕様のゲームはよくある。
振り向けば溶岩が固まった道は残っている。だが先を見ればなんの代わり映えもない風景だ。
初めて見た時は溶岩の湖に感動したが、労力を払って進んでも大した変化がないとなると飽きてくる。
うーん……この先に何かアイテムはあるだろうか?
……帰るか。
ポーションを使い果たすと面倒だしな。
名残惜しく一度振り返ったが、溶岩湖の先に何があるのかはやはり見通せなかった。
一つ息を吐くと、俺はグツグツ煮えたぎる溶岩湖を戻っていった。
〜 鉱山 〜
鉱山のエリアに戻った俺は、エリアの底を伝って溶岩湖の反対側に向かうことにした。反対側も溶岩湖なのか確認しておこうと思ったからだ。
レンガで組まれた窪地の上に紫色の転移ポイントがあり、そこを通り過ぎればまた同じ様にレンガで窪地が作られ、転移ポイント。
3つ、4つと転移ポイントを越え、途中で敵を倒していく。
5つ越えたところで、初見の敵がいた。
〜 崩壊した鉱山 〜
どう見てもカエル。いやカエルにしてはデカい。体高50センチくらいか? コンナ、という名前が浮かんできたし、こいつも襲ってくるのか……?
大きさを除けば地球の生物と同じ姿に悩んだが、倒す事にする。むやみに命を奪う事になるが、今更だしな。
杖を向けて、撃つ。三発、四発、五発。……妙に硬いな? だが遠距離攻撃をじっと耐えるだけのコンナはそのまま倒れた。そしてその後には金塊が一つ。
良かった、やっぱり魔物だった。……防御特化の魔物だったのかな?
その後は今まで見てきたTNTを投げてくるタップラヒーシ、ショットガンを撃ってくるハウリッコヒーシなどが出てきたが、どちらも硬かった。
ひょっとしたらここは敵が硬いエリアなのか?
この先にはいったい何が……?
壁でした。
エリアの端と思われるところにあったのは、石の壁。
うーん……近くに寄るとゲーム的な知覚が発動して、壁の向こう側は水でいっぱいになっているのはわかる。溶岩湖の反対側の端だから水なのか?
まだ爆弾の呪文の回数が残っていたので、仕掛けてみる。
人が楽に通れるほどの穴を開け、そこから水がドバドバと流れ出てくる。
そう、ドバドバと……ドバドバと……ドバドバと……ドバドバと……。
……。
……。
まだ流れるのかよ!
窪地の転移ポイントを水没させるほどの水量を吐き出して、ようやく壁の向こうから出て来なくなった。小学生のプール2杯分くらいはあったか?
さて。
ようやくマップの端が確認できるようになった。
壁の穴の向こうには何があるのか?
暗闇があった。
今までは遠いところは暗いが近づくと知覚できていたのに、穴の向こうは暗いままで一向に知覚できない。
……これは、いわゆるダークゾーンってやつか。
今のままじゃ危険だな……。
うーん……。
今回はこの辺りにしておいてやるか。
溶岩湖とダークゾーンがマップの端にあるってことはわかったしな。
俺はザブンと水に潜り、転移ポイントに入った。