病室に差し込む朝の光は、いつもよりも柔らかかった。
侑の枕元で夜を明かした俺─────桐生誠也は、握った手の温もりが変わらずそこにあることに安堵しつつも、不安で押し潰されそうだった。
ツンツンと澄ました態度なんて、もうどこかへ消え失せていた。
ただ、必死に願った。
目を覚ましてくれ、と。
そして─────その時が訪れた。
侑「……せい……やくん……?」
かすれた声。
侑の瞼が震え、光を帯びた瞳がゆっくりと俺を捉える。
誠也「侑っ……!」
その瞬間、胸が張り裂けそうなほどの喜びが込み上げた。
涙が溢れ出し、俺は彼女の手を強く握りしめる。
誠也「……よかった………生きてて……ほんとに………!」
嗚咽混じりの声が病室に響いた。
ツンツンした俺の面影はもうなく、ただ愛しい人を失いかけた俺だけがそこにあった。
─────数週間後。
侑は五体満足で退院できることになった。
誠也「退院おめでとう、侑」
侑「ありがと!誠也君のおかげだよ」
誠也「……俺なんか何もしてねぇ。守れなかった」
侑「そんなことない。誠也君がずっとそばにいてくれたから、私……頑張れたんだよ」
侑の言葉は、俺の胸に温かく染み渡った。
そして、もう誤魔化すことはできないと思った。
─────夕暮れ。
病院の屋上から見える街並みは、茜色に染まっていた。
風に髪を揺らす侑を前に、心臓が激しく脈打つ。
誠也「……侑」
侑「なに?」
俺は深呼吸し、心の奥底から言葉を吐き出した。
誠也「俺は………お前が好きだ。幼馴染とか関係なく、ただ一人の女の子として─────ずっと一緒にいたい」
侑の瞳が大きく見開かれる。
そして、頬を赤らめて─────笑った。
侑「……やっと言ってくれたね」
誠也「え?」
侑「私もずっと……誠也君のこと、好きだったよ」
視界が涙でにじむ。
俺は震える手で彼女を抱きしめた。
誠也「………もう二度と離さない─────絶対にだ」
侑「うん………」
互いの鼓動が重なり、長い沈黙が甘い約束へと変わった。
付き合い始めた俺は─────正直、自分でも驚くほど変わった。
かつてのツンツンはどこへやら。
誠也「侑、ちゃんと水分取ったか?転んでないか?疲れてないか?俺から離れすぎるなよ」
侑「も、もう!誠也君、心配性すぎ!」
誠也「当たり前だ!この前みたいにお前を失いかけるなんて、二度とごめんだ!」
過保護を通り越し、半ばヤンデレ気味の愛情。
それでも侑は、呆れながらも幸せそうに笑ってくれる。
侑「誠也君って………ほんとわかりやすいなぁ」
誠也「うるせえ!俺は本気なんだ!」
俺の頬は熱く、侑の笑顔は眩しくて。
失いかけたからこそ、今この瞬間がたまらなく愛おしかった。
そして─────時は流れた。
大人になり、互いに仕事を持ちながらも、毎日を共に過ごした。
やがて結婚をし、式の日には幼馴染だった頃の友人たちが涙ながらに祝福してくれた。
誠也「侑……俺と結婚してくれてありがとう」
侑「こちらこそ………ずっと一緒にいようね」
指輪を交わし、誓いのキスをした瞬間、胸に刻まれたのはただひとつ。
二度と離さない、永遠に─────
そして、さらに長い年月が過ぎ、俺たちは老いていった。
皺だらけになった手を重ねながら、病室のベッドで侑と並んで横たわる。
侑「誠也君……」
誠也「侑……」
互いの瞳には若い頃と変わらぬ愛情が宿っている。
出会った日の笑顔、事故の日の涙、告白の夕暮れ、すべてが心の奥で光っていた。
侑「最後まで……一緒にいられてよかった」
誠也「当たり前だろ─────約束したんだからな」
ゆっくりと目を閉じる瞬間まで、手は決して離れなかった。
寿命を迎えるその時まで、俺たちは愛し続けた。
─────幼馴染から始まった恋は、永遠の誓いとなって結ばれた。
というわけでハッピーエンドです!
ヤンデレですが、純愛の方のヤンデレというやつ、そして超ハッピーエンドだったので安心してください(笑)
高咲侑と男主の恋愛はあまり見かけなかったので、僕が作ろうと思ったのが本作のきっかけです。
そして、長らく更新していない《虹色の始まり》は必ず完結しますので、どうかそちらもお願いします!