短小編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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今話は、以前に投稿しました『異世界迷宮のある世界』(原作:異世界迷宮でハーレムを)の「後日談」に成ります。


Re:異世界迷宮のある世界(原作:異世界迷宮でハーレムを)

『原作』の挿絵を頼りに、どうにか「彼」を見付けた俺は『原作』通りの問答の末、無事に出番(?)を全(まっと)うした。

これで役目は終わった。後は「今世」を寿命まで生きるだけだ。そう思っていた。

 

その後も、1人密かに観察していくと「彼」は順調に『原作』を進行させている様だ。

冒険者ギルドの壁から現れる度に『原作』通り着実にパーティーメンバーが増えて行っている様だった………。

 

……。

 

…ところが『原作』に書いて無かった事件が起こった。

 

その日も俺は、何時も通りに職務を果たして帰宅しつつあった。

その帰り道で魔物に襲われたのだ。

いや”ここ”がクーラタルである以上、街の何処にも魔物は出現する。

だが、出現するのはコボルトLV1の筈だ。

しかし、俺を襲ったのは芋虫だった。

 

グリーンキャタピラーは、初心者の探索者を苦しめる拘束系の魔物だ。

探索者でもない俺は、アッサリと自力での抵抗を諦めた。

そもそも俺には主人公補正も無ければ、回避名人のメインヒロインでも無い。

潔く逃げて助けを求めた。

俺の警告とも悲鳴ともとれる大声に集まって来た、そこら辺の探索者が総がかりでグリーンキャタピラーは倒された。

 

確かに1階層以外の魔物が稀に迷宮の外へと出現することもあるだろう。

だが其れは、かなりの低階層の魔物の筈だ。

クーラタルの迷宮では、グリーンキャタピラーの出現する階層は、そんなに低くない。

11階層の筈なのだ。

ここはクーラタルであって、2階層でグリーンキャタピラーの出現するベイルの迷宮では無い。

それに芋虫を目撃したのは、俺だけでは無かった。

 

こう成ると可能性が高いのは、1階層にグリーンキャタピラーの出現する迷宮が新たに生まれた、という事態だ。

直ちに、騎士団を通じて領主に報告が上げられ、領主から命令が下された。

 

成程、クーラタルの街は迷宮の存在を前提に成立している探索者の街だ。

街の中央に在る第1迷宮を討伐しようと言う者は居ない。

だが、新たに生まれて来る子の迷宮まで放置しておく謂(いわ)れは無い。

間もなく、新しい迷宮の入り口が発見された。

 

探索者ギルドと、俺の務める冒険者ギルドにも、討伐への協力が要請された。

もっとも、これで何時もより活気付いたのは、もっぱら探索者ギルドの方だった。

元々、クーラタルは探索者の街だ。

冒険者ギルドよりも探索者ギルドの方が立派なくらいなのである。

それに冒険者の中には、迷宮での修業はリタイアして、専(もっぱ)ら輸送などで生計を立てている者も少なくない。

そんなこんなで、それほど冒険者ギルドは活気付いたとは言えなかった。

 

むしろ、ドロップアイテムの買取が少し減った。

何しろ、グリーンキャタピラーの落とす糸は、初心者の鍛冶師がミサンガを作る修行に使うくらいにしか需要が無く、その鍛冶師も修行を兼ねて自分で迷宮に行って調達して来る。

そして其のミサンガも買取の価値は無い。

そのくせ、初心者には危険な拘束系ときているから、グリーンキャタピラーは若い鍛冶師以外には人気が無いだろう。

 

それでも迷宮が生まれた以上は、討伐しなければ成らなかった。

ところが………。

 

……。

 

…ここで『原作』補正としか言いようの無いことが起こった。

 

迷宮討伐の証拠として、ギルド神殿を持ち込んできたものが居たのだ。

インテリジェンスカードに記された名前は、ミチオ・カガ。

それっきり、街中への芋虫の出現はピタリと止まった。

 

流石は「主人公」というべきか。

もっとも、もうクーラタルには領主が居るから、これで貴族に成れるわけでは無い。

その代わり、タップリと報奨金をもらった様だ。

おそらく奴隷たちの分も含めて、もう税金の心配など無用なくらい。

 

やれやれ。これが「主人公」とモブキャラクターの格差なのかね。

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