短小編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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あの部隊への配属(原作:サクラ大戦シリーズ)

太正時代、陸海軍の士官はエリートとされていた。

その陸軍と海軍の、将来の士官を教育する課程の大きな違いが、課程途中での部隊配属にあった。

 

海軍では、卒業まで1貫して学校で教育を行い、卒業後、遠洋航海を経てから部隊に配属した。

片や陸軍では、課程の途中で(多くは故郷の歩兵連隊など)の部隊に配属し、新兵としての経験を積ませてから学校に戻して、卒業後に見習士官と成っていた。

 

その生徒もまた、部隊への配属を目前としていたが、彼はとある部隊への配属を希望、いや熱望していた。

それは、欧州大戦に参戦しなかった帝国陸軍では稀な、実戦での武勲に輝く部隊だった。

こともあろうに帝都を襲った異形の敵から、帝都市民を守護した其の部隊。

何故か、当時の若き陸軍大臣を取り巻く派閥からは邪険(じゃけん)にされている。

だがしかし、ちょっと捻(ひね)くれたところもある彼には、武勲に輝く部隊への嫉妬とも受け取れていた。

 

いよいよ、配属について達しがある筈の日、何故か教官に呼び出された。

呼び出された部屋に待っていた三隅とかいう大佐から、如何にも秘密めいて渡された辞令には、こう記されていた。

 

「右の者

以下の部隊への配属を命ず。

帝国華撃団、隠密行動部隊「月組」

部隊との合流の為、浅草花やしきに向かわれたし」

 

飛び上がりたい気持ちを抑え、辞令を受け取ると、学校を後にした。

 

さて、やって来た「花やしき」なる遊園地は、今日も老若男女の帝都市民で賑(にぎ)わっていた。

その中で、軍服姿の自分に場違いな感覚を微かに覚えつつ、さてウロウロしながら誰かを探していた。

しかし、誰を探せば好いのか?

そんなことを思っているとき、近付いてくる誰かが居た。

その人物は、擦れ違いざまに耳元に囁(ささや)いた。

「帝国華撃団・月組副隊長、宍戸光星だ。付いて来い」

 

連れていかれた先は、銀座にある大帝国劇場だった。

訳も分からないまま、支配人室の前まで連れていかれると”副隊長”は姿を消した。

困惑しながらもドアをノックする。

「へぇれ」

そこには、服装こそ違え、学校に在った写真で見知った顔が在った。

米田一基。

日清、日露戦争で活躍した英雄の1人であり、陸軍きっての戦略家と教えられていた。

その英雄が、劇場支配人の装いで酒を飲んでいた。

 

「好く来たな、と言ってやりてぃところだが」

英雄(?)は、そう切り出した。

「ここは秘密部隊だ。

そして、おめぇが配属されるのは、隠密行動部隊だ。

先ずは、その軍服を脱いでもらうぞ」

少しは驚いたが、全く覚悟はしていなかった訳でも無かった。

 

何時の間にか現れていた月組隊長(一般人の姿だが実は海軍少尉だと伝えられた)に連れられて、先ずは事務室で着任届を書かされた。

次いで、何処とも分からない場所に連れていかれ、軍服を着替えされれた。

これからは、平時は此の劇場の黒子として働くという。

それだけでは無い。

主力である迎撃部隊「花組」も平時は少女歌劇団として舞台に立っているのだ、と聞かされた。

 

「それだけでは、疑うかも知れんからな」

そう言われて連れていかれた地下の格納庫には、噂に聞いた、そしてこの部隊への配属を希望させた高性能の人型蒸気(正確には霊子甲冑というらしい)が並んでいた。

それを見て、やはり自分は帝都を守護する実戦部隊に配属されたのだと、実感出来た………。

 

……。

 

…あわだたしく日々は過ぎ、黒子としての仕事にも慣れてきた頃。

 

「月組」本来の任務である情報活動に於いて、不審に思うことがあった。

何故か、陸軍大臣を取り巻く派閥から、目の敵にされている事だった。

現に帝都を攻撃してくる謎の組織から、市民を護っているのだ。

それなのに何故か支援するどころか、妨害すらしている様だ。

まるで、あの謎の組織を擁護でもしているかの様に。

 

自分の様な新兵にすら感じられることを、上層部が気付いていない筈が無い。

どう考えても、不審だった。

 

「太正維新」などと称するクーデターは、目前に迫っていた。




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