俺こと加賀道夫は、昨今悩んでいた。
この異世界で生きることを選択して、早くも数年が過ぎていた。
迷宮を討伐した。貴族にも成った。
だからこそ、悩ましいのだ。
なまじ、相続させることの出来る地位とか財産とかが出来てしまったから、誰に相続させるかが悩ましいのだ。
普通ならば結婚して、生まれてきた子供に相続させるだろう。
だがしかし、その結婚相手は……
何度考えても、ロクサーヌしか思い浮かばない。ロクサーヌしかない。
もしもロクサーヌに子供が生ませられるならば、迷わず奴隷から解放して妻にするだろう。
だが、本当に人間族と狼人族では、子供は生まれないのだろうか。
俺は、何度も何度も自問した。しかし、答えは出なかった。
また、幾ら物知りで調べもの係でも、セリーに相談も出来なかった。
勿論、他の奴隷たちにも。
例えば、ルティナなどに相談したら
「貴族の習いです」
とか言われて、何処かの人間族で貴族の娘を推薦されそうだ。
そんなのはいやだ。俺にとってはロクサーヌしかない。
成程、俺はまだまだ若い。
だが、迷宮に挑む日々を送っていること、なまじ貴族なんかに成ったために其の義務もむしろ重く成っていることを考えると、いつ何が起こるか知れたものではない。
それに、他の奴隷たちは死後解放と遺言してあるが、ロクサーヌだけは俺が死んだら殉死のままだ。
何時の間にか、俺自身が死ぬことよりも、そのことの方が恐ろしく成っていた。
さんざん、悩んだり迷ったりした挙句、俺はベイルの奴隷商人アランに相談してみることにした。
藁にも縋(すが)る積もりで。
「ほほう、それはそれは。ロクサーヌも愛されておりますな。
彼女を勧めた者としては、誇らしくもありますが」
アランは感心した様な、呆れた様な態度だったが、俺が真剣であることを察したのか真面目な態度に成った。
「ミチオ様の様な悩み事を持った御方は、初めてでもありません。
そこでですが、私も確信の在る訳でも無いあやふやな話ですが……」
「何でも好い」
「実は、不確かな噂話ですが、色魔ギルドには其の場合の秘伝が伝わっているとも言われています」
1瞬、ヒヤリとはした。
色魔のジョブは、5人を相手にする為に、毎度の様に使ってきた。
もしもあのジョブに、そんなスキルがあったとしたら、今頃は恐ろしい事に成っていたかも知れない。
しかし1方では、それでも好い様な気もしていた。
それだけ俺の奴隷たちは愛(いと)おしいのだ。
何より色魔ならば、ロクサーヌを妻に出来るかも知れない。
そのことが俺には重要だった。
俺は、大袈裟な程アランに礼を伝えて、商館を後にした。
俺は色魔ギルドを探してみることにした。
確か以前、クーラタルの商人ギルドに、ジョブ色魔の仲買人が居た筈だった。
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