その為、アニメ以外での其れ以降のストーリーから乖離(かいり)していきます。
星間国家アルグランド帝国で悪徳領主を目指す、リアム・セラ・バンフィールドは、今や大切なパートナーと思っているアンドロイド天城を“人形”と蔑(さげす)んだ、現世での「元」家族を叩き出した処であった。
「ふん。(前世も今世も)俺の家族を名乗る奴らはクズばかりだ。
俺の家族といえるのは、天城だけだ」
そう吐き捨てて、傍(かたわ)らの天城を振り返ると、何故か複雑な様子をしていた。
微妙な変化だが、今のリアムには分かる。
「どうした?言いたいことが在るのなら言え」
「旦那様…旦那様には、何(いず)れ新しい御家族が必要に成ります。
旦那様と共に伯爵家、いいえ、もっと家格が上がるかも知れない御家を支える御方。
そして、その御家を継ぐ後継者と成る御方が」
「そんなことを言うな。俺を支えてくれるのは天城だ。
命令だ。俺から離れるな」
そう言った後から、何か寂しい気持ちが、心をよぎる。
「お前に子供が生ませられるなら、他に誰も要(い)らないのに」
そう口に出てしまったとき、また天城が微妙で複雑な様子を見せたのに気が付いた。
「繰り返すが、命令だ。言いたいことが在るのなら言え」
人工知能らしくなく躊躇(ためら)った末に、天城は告白した。
「私には、交わった相手と自分との特徴を受け継いだクローン人間を作り出す機能が備わっています」
「何故、早く言わなかった。それなら御前が居れば好い」
「ですが…何れ旦那様には、旦那様に相応しい御方が…」
「何度も言わせるな。お前は…お前だけが、俺の家族だ」
そう言い切った時のリアムには、幼年学校で関わった何処かの公爵家の一人娘のことは、全く意識から消えていた。
この時のリアムは、絶望のどん底だった前世から今世に転生させてくれ、天城と巡り会わせてくれた案内人に心底から感謝していた。
*
悪徳領主を公言しながら、リアムの本性は前世からの全くの善人である。
しかしリアム本人は、自分は悪徳領主だから、残酷でエグいことも出来ると思い込んでいる。
例えば、ゴアズ海賊団の死に損ないたちに対する後始末だ。
海賊団の首領の悪趣味によって異形に変えられ、死んで解放されることすら願っていた女騎士たちは、リアムに救出され元の姿に戻された。
以後、リアムに絶対の忠誠を抱くとともに、海賊どもへの復讐心を抱いてきた。
その女騎士たちに、リアムは海賊団の死に損ないたちを与えた。
その結果、どのように因果応報の結末を迎えさせたかは(「残酷な描写タグ」をクリックしていませんので)自粛とする。
この様に、悪徳領主らしいことが自分には出来ると思っているリアムだった。
*
その海賊どもの絶望を喰らいながら、だがしかし、時空の何処かで案内人はまだ満足出来なかった。
本来ならリアムこそ、案内人を満足させてくれる程の絶望を味あわせてくれる筈だった。
だがしかし、案内人がリアムを不幸にしようと画策すればする程、リアムの幸運と幸福という結果に繋がってしまう。
挙句の果てには、リアムの真っ正直な感謝の心が、謎の光に成って撃ち込まれダメージを受けている有様だ。
リアムが前世で飼っていた子犬が、まるでリアムの守護神の様な力と行動によって、案内人に反撃しているとは知る由も無かった。
「そうだ。絶望と言えば、あいつらが居る」
それはリアムの前世に於いて、彼を裏切り、罠に嵌め、絶望の内に転生させた「元」家族と其の共犯者たちだった。
犠牲者の不幸の上に、自分たちの幸福を謳歌(おうか)していた筈が、擦り付けた筈の犯罪を暴かれ逃亡者と成って、絶望の心を案内人に味あわせていた。
「あいつらは、私の思うがままに踊ってくれた。もう1度、味あわせてもらおう」
逃亡者の1家は、突然、異世界の星間国家に送り込まれた。
そして、自分たちが不幸にした筈の犠牲者が、転生し絶対権力を持つ悪徳領主に成っていることを案内人から知らされていた。
リアムは引き出されてきた、そして復讐を恐れ絶望を案内人に味あわせている「元」家族と共犯者たちを前に、しかし心の何処かで復讐すら価値が無い様にも思えていた。
それが、自分は悪徳領主と思い込んでいるリアムの、前世から受け継いだ本性だった。
何より”今”のリアムには、大切な「家族」が居た。