本年も宜しく御願い致します。
俺こと加賀道夫は、パーティーメンバーたちとあちらこちらの迷宮に入りながら、異世界の日々を送っていた。
ある時、新しく出来た若い迷宮の討伐への協力を求められた俺たちは、順調に各階層の攻略を進めていた。
そんなある時、魔物とのエンカウントが途切れた際、ふと俺はメンバーたちに話しかけた。
「なあ、ここでも他の迷宮でもいいが、もっと低い階層で銅や板をドロップする階層を周回してみないか」
「どうしてですか?」
日頃、俺が慎重に1階層ずつ攻略していることもあって、時々、俺のパーティーメンバーたちはイケイケな意見を述べることがある。
「もう、この迷宮では50階層を突破して、しかも誰も攻略したことの無い、情報無しの階層に挑んでいる」
「どんな魔物とエンカウントするか分からない、未知の階層は慎重に、ということでしょうか」
「それもあるんだが…」
「もう何時、例えば今この階層が、この迷宮の最後の階層ということだって在り得る」
流石に、この指摘にはメンバーたちが緊張した。
「確か、迷宮最後のボスは装備を破壊するスキルを持っている筈だ。
帝国解放会で聞いた話では、だから使い捨てにしても惜しくない武器や防具を多数用意するパーティーも在ると聞いた。
だから、銅の剣とか、木の盾とかを持てるだけ用意しておくのも有りかと思ってな。
セリーには、鍛冶師として頑張ってもらうことに成るが」
「そういうことでしたら、頑張ります」
他のメンバーたちも、頷(うなづ)いた。
「ご主人様。そういうことでしたら、帝国解放会でも調達できるかもしれません」
「そうだな。セバスチャンにでも聞いてみるか」
後日、解放会で確かめてみると、実際にラスボスに挑むパーティーのために使い捨て用の装備を多数用意してあるとのことだった………。
……。
…そんな会話を交わして何日か。
更に数階層を攻略し、その階層もボス部屋に辿り着いた。
煙が固まり、ボスが現れる。
「行きます」
何時もの様にロクサーヌがボスの正面に回り、獲物の片手剣を突き刺そうとしたが…その剣がポキリと折れた!
ボスの反撃は彼女だけの早業で回避したが、こいつは…
「ラスボスだ!アイテムボックスを開け。装備を惜しむな」
俺はメンバーたちに指示を飛ばすと同時に、デュランダルで慎重に切り付けた。
(いっそのこと、LV99でカンストしてくれれば、1発で片付くボーナス呪文が在るのに)
そんな雑念が1瞬入った為か、多少甘めに切り付けたデュランダルが破壊された。
「ご主人様!」
誰かが悲鳴を上げた。
特に低階層や低LVの頃はデュランダル頼みだった。
その”チート”武器が破壊されたのだ。
だがしかし、俺は直ぐに冷静さを取り戻した。
キャラクター再設定で1旦ボーナス武器を消し、続いて武器6を選択する。
”無傷”の聖剣デュランダルが出現した。
「これは?!」
「俺と”この”剣だけのスキルだ。内密にな。それより、気を散らすな」
再び、更に慎重にデュランダルを振るう………。
……。
…使い捨ての装備は使い果たし、遂に何時もの装備を使う様に成った頃、とうとうラスボスも煙に成った。
後には、何時ものドロップアイテムでは無く、何時かインテリジェンスカードの鑑定の時にも見たギルド神殿が残された。
同時に、迷宮の景色が歪み始めた。
「迷宮が消える。急いで外に出るぞ」
ギルド神殿を抱え、急いで迷宮の外へとワープした………。
……。
…さて、このギルド神殿をどうするか?
実はこの迷宮は、もう領主の居る領地に新たに出現した迷宮だった。
したがって、討伐しても貴族に成れる訳では無い。
代わりに此の神殿を討伐の証拠として持ち込めば、報奨金が貰える筈だった。
クーラタルの町の中心には帝国最古の迷宮が存在し、その存在を前提に町が成り立っている。
その為、この第1迷宮を討伐しようとする者は居ないが、新たに生まれる子迷宮までは話が別だ。
したがって、クーラタルの領主から探索者ギルドと冒険者ギルドを通じて、街の探索者や冒険者にも迷宮討伐への協力が要請されていたのだ。
そこで俺は、討伐の証拠となるギルド神殿をクーラタルの冒険者ギルドに持ち込んだ。
その時、ギルド職員の1人が微妙な様子をしていた。
何だか「やれやれ」とでも、言いたさげな様な。
今話のラストは以前の投稿と、少しだけ引っ掛かりが在ります。
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ご意見ご感想をお待ちしております。
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年末年始の間に、少しばかり書き溜めの様なものが出来ました。
この為、暫くは連続投稿も可能とも思います。