短小編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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この短編は、時系列的には『原作』書籍版の11~12巻辺りに当ります。
尚、以前に投稿しました『ひと時の帰郷』『Web版に続きがあったなら』とは、直接の関係はありません。


主と侍女の間接交流(原作:理想のヒモ生活)

カープァ王国の後宮を預かる責任者であるアマンダ侍女長は悩んでいた。

所謂(いわゆる)「問題児3人組」に絡んだことである。

ただし今回だけは3人はどちらかと言うと被害者の立場かも知れない。

更に言えば、直接の被害者は彼女たちの実家の方だった。

 

侍女としての彼女たちにしか接していない、そして異世界から来た主の善治郎・カープァなどは自覚していないかも知れないが、後宮侍女たちの殆どは(何人かの例外を除いて)貴族の御姫様たちである。

ある意味当然だ。この王国最高の貴人の傍近くに使えるのだから。

 

「問題児3人組」の1人フェーに至っては「宰相」レガラト子爵の令嬢なのだ。

後宮での問題児振り、お転婆振りを見ていれば信じがたいだろうけれども。

しかし、後宮の外の貴族たちの認識する彼女は「宰相」という権力者の娘であり、王都の旧領主という由緒正しい名家の令嬢であり、しかも王配ゼンジロウという最高の貴人のお気に入りなのだ。

 

当然の様にレガラト子爵の元には、雨あられの様に名門または大貴族からの縁談が降り注いでいた。

フェー・レガラトだけでは無い。

「3人組」の他の2人、ドロレスとレテの実家にも縁談は舞い込んでいた。

貴族とはいえ、爵位を持たない騎士貴族であるドロレスの実家にまで、名門貴族家からの縁談が舞い込んでいたのだ。

この縁談攻勢に3人の実家の方では、この世界での結婚適齢期としても未だ少し若い、という理由で返答を先延ばしにしている状態だった。

 

だがしかし、アマンダ侍女長は知っている。

何と言っても後宮ですら「問題児3人組」なのだ。

とてもじゃないが、名門貴族の夫人として送り出せるタマじゃ無い。

3人の実家からの情報を得て、侍女長は頭を抱える思いだった。

 

(まったく、ニルダのことだけでも頭が痛いのに)

後宮侍女ニルダことニルダ・ガジールは、ガジール辺境伯家の妾腹の次女である。

物心つくまで村娘として育った彼女の貴族教育のため、辺境伯の従妹にあたるアマンダに預けられた。

その為、侍女長であるアマンダの目の届く様に後宮侍女に入れられた、筈だった。

だがしかし「問題児3人組」の汚染を受けたか、現状その本来の天真爛漫さに拍車がかかっている有様だった。

 

そうで無くとも、王家の側が大戦でのドサクサによる失態を犯したとはいえ、貴族として登録された「名簿」が紛失し、宮廷貴族の居並ぶ前で「名簿」を女王に書き直してもらうという有様を晒したのだ。

この上、今の汚染振りでは、とてもではないが辺境伯家に相応しい嫁入り先などには嫁がせられない。

アマンダ侍女長には、悩みが尽きない。

 

(いっそ、1生後宮から出さなければ)

そうもいくまい。

もう間も無く適齢期と成る若い娘であり、しかも其れなりの貴族の出身なのだ。

何れは、後宮を退き嫁に行く。

まあ、レテだけは調理担当責任者のヴァネッサから後継者に望まれているらしいが。

それはそれで、また問題がありそうだ。

 

とはいえ”あの”3人をこれから叩き直すのも困難だろう。

何より、後宮の主である善治郎が”あの”緩い3人を気に入っているという現実もある。

 

(兎に角(とにかく)ゼンジロウ様が居ないうちに何とか)

北大陸への航海に出ている善治郎に付いて行ったドロレスはどうしようも無いが、フェーとレテ、そしてニルダだけでも、あの緩い主の留守中に少しは何とかしよう。

決意を新たにするアマンダ侍女長だが、彼女をしても、これは簡単には思えない。

 

悩みの尽きないアマンダ侍女長だった。

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