短小編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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この短編は、ぴょんすけうさぎ様から頂いた御感想より、新たな妄想を思い付きました。


異世界に於ける観光事情(原作:日本国召喚)

日本国が異世界に転移してから、あれほど元の世界で繰り返し襲ってきた天災からは、何故か解放された様な日々を送っていた。

まるで何者かが、全てが都合好く成る様にして”召喚”したかの様に。

 

季節が1巡りする間には台風あるいは其れに類(たぐい)する発達した低気圧は襲って来ず、この惑星のプレートテクトニクスがどう成っているのかは分からないが、地震や火山災害も全く止まっていた。

 

そのこと自体は歓迎すべきことだっただろうが、だがしかし火山活動が全く止まってしまったことに因り、窮地に立たされた人々も居たのである。

それは、温泉リゾートを含む観光業界だった。

 

無論、転移直後は、観光業界だけが混乱した訳では無い。

何せ、全ての貿易相手国が消失してしまったのである。輸出も輸入も全て途絶えた。

新たに此の世界で国交を結んだクワ・トイネ公国やクイラ王国から食糧や地下資源を輸入出来る様に成り、その対価としてインフラその他の科学文明の産物を輸出出来る様に成って、国内経済も立て直せるまでがテンヤワンヤだったのだ。

 

そんなテンヤワンヤが落ち着くと、観光業界や旅行業界も、この世界の新たな観光資源を開発しようとした。

例えば、フェン王国は武士時代の日本の様な文化が現代日本人の郷愁を呼び、有力な観光資源と見なされた。

尤も、その結果としてパーパルディア皇国に因る虐殺事件が起こってしまったが、皇国が敗亡すると以前よりも安全な観光旅行先と成った。

 

こうして、この世界に順応しようとしていた業界だったが、国内に於いては大打撃を受けていた。

何と言っても、殆どの温泉が冷泉に変わってしまったのだ。

これは、もはや深刻な失業問題とすら成っていた。

窮地に立たされた彼ら温泉リゾート関係者は、この世界における海外に活路を見出そうとし、国交を結んだ国々で必死に温泉が探された。

 

豊饒の神に愛されたとまで言われたクワ・トイネや地下資源に恵まれたクイラにも見つからなかった温泉だったが、流石にロデニウス大陸の大国であり広い国土を持つロウリア王国には火山地帯もあり、幾つかの温泉が発見された。

日本国に敗れ、殆ど国家解体に瀕(ひん)していたロウリアにしてみれば、ようやっと日本国に対して”輸出出来る産業”が見つかったことに成った。

 

尤も、その温泉の内の幾つかは、今や半独立していたと言って好い封建諸侯の領地内に存在した為、日本人観光客の恩恵が王国の直接の収益には成らないという結果も生じたが。

 

更に又、フィルアデス大陸に於いても温泉は探され、発見された。

この大陸は、かつては其の殆どが皇国と其の属領だったが、今や全ての属領が独立を回復していた。

日本人が求めていた温泉は、そうした旧属領の幾つかの国家で発見された。

これらの国家は、温泉を求める日本人観光客という新たな需要に恵まれることに成り、敗戦と国土の縮小に喘(あえ)ぐ旧皇国は、それを指を銜(くわ)えて見守るしか無かった。

 

こうして開発された海外の温泉リゾートには、日本国内での事業継続に困難をきたしていた温泉業者や従業者たちが、海を渡って行った。

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