時系列的には『原作』第13巻の時点に成ります。
『2人の姫君』
時系列的には『原作』第11巻の時点に成ります。
この2人の絡みは『原作』にも在りませんでしたが、想像してみると、少なくとも片方にはかなりの屈折が在っても不思議でも無いでしょう。
『侍女は何人?』
少しだけ『原作』に突っ込み処が在ります。
第1巻で、後宮侍女たちが自己紹介する場面です。
侍女長の下に、部門責任者が4人、実労働力と成る若い侍女が9人と紹介されていますが、その後、4人の部門責任者の下で3人1組と成ってローテンションで働いている、とされていました。
それならば、4×3=12、で実労働力の侍女は12人居なければならないのですが、その後も訂正された痕跡が在りません。
『主と侍女の間接交流(異世界の料理)』
主人公が持ち込んだレシピを侍女たちが再現しようとしている描写、それから『3人組』の1人が調理責任者から後継者に臨まれている描写は『原作』にも在りました。
エリク王子の驚愕:
ウップサーラ王国第1王子エリク・エストリゼン・ウップサーラは、南大陸カープァ王国への訪問から、カープァ王国の王配である善次郎・カープァの『瞬間移動』の魔法によって帰国した。
帰国後のあれこれとした用件を済ませるなり、エリクは善治郎の『成人の証』に同行した5人の猟師たちを呼び出した。
善次郎がどうやって『成人の証』を達成したかの詳細を聞き出すためである。
心境は複雑だった。
カープァ王国への訪問の前だったら、何か失格とさせてやる様な難癖をつけてやりたいと思っていたかも知れない。
だがしかし、カープァ王国の女王アウラから告げられた「真相」を知ってしまえば、それどころで無かった。
そして、腹心でもある猟師たちから聞かされた『成人の証』の結果は、驚愕させるものだった。
「風の魔法で、突進してくる大イノシシを断崖の下に突き落としただと」
「はっ。
正直に申せば失礼ながら、エリク殿下であってもゼンジロウ陛下に勝つためには、魔法を使う間もない、不意打ちで仕留めるしかありませぬ」
それは、善次郎を「武人でも無い軟弱者」と見下してきたエリク王子の認識を、根底から覆すものだった。
そして、女王アウラから告げられた「真相」
公衆の面前で、他国の王族(それも既婚者だ)に事実上の交際の申し込みと言っても差し支えない、結婚式のパートナーをねだった妹を、カープァ王国側が受け入れてくれているから「ちょっとしたハプニング」で済んでいるのだ。
本来なら善治郎は、自分たちが反発した、あの場で此の「真相」を暴露していれば『成人の証』に挑む必要さえなかったのである。
その上、善次郎には自分を例えば1騎打ちの試合でもして打ち負かせる手段が在った、と知らされてエリク王子は困惑していた。
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2人の姫君:
カープァ王国を訪問したシャロワ・ジルベール双王国のブロイ侯爵家の令嬢(ということに表向きは成っている)ルクレツィア・ブロイと、先年からカープァ王国に滞在している双王国のボナ王女とは、同じ王国の王女と侯爵令嬢の礼節を保ちつつも、何処かがよそよそしかった。
その理由は、事情を知っている者には想像出来るものだった。
ルクレツィアがボナ王女に持っている、複雑な感情に因るものだと。
実はシャロワ王家の直系に生まれながら、王家の血統魔法である付与魔法に覚醒しなかった為に、侯爵家の養女に出され、王家に使える身分にされたルクレツィア。
方や、下級貴族の次女に生まれながら、隔世遺伝的に付与魔法に覚醒した為に、王族として迎えられたボナ王女。
ボナ王女の側は兎も角(ともかく)ルクレツィアがボナ王女に対して、複雑な感情を抱いていても不思議では無かった。
まして現状では、カープァ王国の王配である善次郎・カープァの側室入りを競うライバルと見なされていた。
例えボナ王女に其の気が無い、とう言うには、善次郎とボナ王女は互いに気安そうに見える。
尤も、ボナ王女と同時にカープァ王国入りした双王国のフランチェスコ王子に言わせれば、
「気性の穏やかな草食動物が2匹、寄り添って日向ぼっこしている」
などと言われる感じなのだが。
結局の処、それは異世界の1市民ながら女王に召喚されて王配と成った善治郎と、下級貴族の出身から王族と成ったボナ王女の、互いに生まれもつかない王族として迎えられた者同士の親近感なのだろう。
だがしかしルクレツィアにしてみれば、王族である善治郎への輿入れを決めることでシャロワ王家の籍に公式に復帰する、その悲願に立ち塞がる存在に見えていた。
そのルクレツィアの感情がいわば冷戦から熱戦へと表面化する前に、肝腎の善治郎には北大陸への航海という大事が持ち上がった。
ここでルクレツィアは決意する。
北大陸へ航海する『黄金の木の葉号』への乗船を申し出たのである。
無論ルクレツィアとて、北大陸へ行ったきりに成る積もりは無い。
だがしかし、ボナ王女も居ない航海の中でどれだけ善治郎との距離を縮められるか、そこに”この”冷戦の行方はかかっていた。
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侍女は何人?:
カープァ王国の後宮に使える侍女たちは、侍女長の下、4人の部門責任者の下で3人1組と成ってローテンションで働いている。
したがって実労働力となる若い侍女たちの合計は、4×3=12、で12人必要である。
その中に『問題児3人組』ことフェー、ドロレス、レテの1組が居た。
『問題児』と呼ばれる様に、勤務態度は危ない1線を越えない際どい処を守っている状態なのだが、その『3人組』こそが後宮の主である王配善次郎のお気に入りなのだから分からない。
そして、善次郎が持ち込んだ様々な道具の使い方に習熟し、遂にはそれらを使った特別任務に就くまでに成っていた。
結局の処、元々善治郎は異世界から召喚された1市民である。
したがって此の世界の王族としては本来は常識外の主である善治郎に、最も「汚染」されているのが此の3人だった、ということだった。
そして、危ない1線は越えていないのも、主である善治郎が最も気を許せるのも彼に「汚染」されている此の3人であることも真実だった。
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主と侍女の間接交流(異世界の料理):
『問題児3人組』と呼ばれるそんな3人でも、後宮侍女としてのスキルは身に付けている。
特に3人のうちの1人レテは、調理担当責任者ヴァネッサから後継者教育を受けている程だ。
その教育の1環として、ある時に任された任務があった。
主である王配善次郎が、故郷から持ち込んだレシピの再現である。
王族である善治郎が、自ら調理という下働きをすることは推奨されない。
したがって、善次郎のレシピを再現する責任者もヴァネッサということに成る。
その責任の1端を今回任されたのだった。
そうでなくても「試食」を楽しみにしている3人である。
大張り切りで再現に取り掛かった。
再現される料理とは「ハンバーグ」更には「ハンバーガー」だった。
勿論この世界、特に南大陸に牛は居ない。
家畜とは竜種、つまり爬虫類である。
南大陸に於いて食肉とは、肉竜と呼ばれる善治郎の世界のトリケラトプスに似た草食竜を家畜化したものの肉か、使役竜としては廃竜に成った竜の肉である。
当然にレテたちも肉竜の肉で「ハンバーグ」を再現しようとしていた。
さて、焼き上がった「ハンバーグ」の試食の時が来て、その味に素直に驚いた。
実の処、失敗しても惜しくない、王宮で使用するには中級品の肉を使ってみたのだが、それでも此の”異世界”の料理は美味かったのだ。
更に「ハンバーガー」のレシピにしたがって、丸く作ったパンに挟んでみる。
齧(かぶ)り付いた食べ心地は、後宮勤めで舌の驕(おご)った彼女たちも満足する者だった。
早速、更に上等の肉とパンで、主に提出する料理に取り掛かる、その前に…
南大陸には、哺乳類の家畜は居ない。
だがしかし、北大陸出身の側室が持参した山羊が既に繁殖させられていた。
その山羊の乳で作った乳製品を使うレシピも既に再現される様に成っていた。
そして、主の「汚染」著しい『3人組』は既に乳製品にも馴染んでいた。
完成させられたのは「チーズバーガー」だった。
その「チーズバーガー」に主の善治郎は、大喜びで齧り付いた。
ところが、未だに乳製品に慣れない女王は結局の処「チーズ」抜きの「ハンバーガー」で夫に相伴した。
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