短小編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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最近、ずっと読んでいなかったタイタニアの最終巻を電子書籍で購入し、1気読みしました。
その結果として以前、第3巻の後ずっと第4巻を待っていた頃に、別サイトに投稿した短編のことを思い出しました。

時系列的には、第2巻の途中辺りに当ります。


とある歴史家の論文下書(原作:タイタニア)

タイタニア4公爵の1人、ジュスラン・タイタニア公爵曰く、

「タイタニアは2流の人材の巣窟である」

無地藩王府の資料室に勤務する此の歴史家も其の1つの例だろう。

 

尤も、どこかの同業者の様に「タイタニアはいかにして滅亡するか」という研究課題の為にテロに奔(はし)るよりは、ずっと穏やかにタイタニアを研究対象にしていた。

その為にタイタニアに仕官し、資料室に勤めている。

 

この日も歴史家は、定められた勤務の合間に、自らの研究課題について考察していた。

と言うのも、つい先日にイドリス・タイタニア公爵が「従兄弟」たちの評価について公言するのをふと耳に入れたのである。

 

イドリスがザーリッシュ・タイタニア公爵を評して曰く、

「ザーリッシュは豪勇だが、それだけの男だ。

青銅器時代なら地球上に1国を打ち樹(た)てる事が出来ただろう。

だが現在は青銅器時代ではないからな」

アリアバート・タイタニア公爵に関しては、

「善意の時代に生まれていれば、名君と言われるだろう。

だが、善意の時代など、人類が他の生物の上に君臨する様に成ってから、1度も無かった」

ジュスランについて問われると、

「どいつもこいつも、奇妙にあの男が気に成ると見える。

だが実際のところ、奴がどれだけ他人を驚かすにたりるような奇功を立てたというのだ。

すくなくとも、おれは知らんぞ」

 

歴史家としては、ザーリッシュについては同意、アリアバートとジュスランについては所謂(いわゆる)突っ込み処があった。

ザーリッシュの取り巻きたちが、日頃いかにもタイタニアらしいと思っているのだろう、好んで口にする豪語の中に、歴史知識からすると失笑を我慢するものがあった。

「タイタニアにあらずんば人にあらず」

 

歴史上に於いて初めて「○氏にあらずんば人にあらず」と言ったのは、中華帝国第2王朝の初代皇帝だと伝えられる。

第1王朝末期の動乱に乗って田舎侠客から成り上がった此の皇帝は、自らの子孫以外に対しては皇帝はおろか地方を分権する藩王すら許さぬ、としたのだ。

では、この皇帝に取り巻きたちは主君を重ねているのだろうか。

 

残念ながら、この皇帝では無く彼のライバルだった覇王こそ、輪廻転生と言うものを信じるならばザーリッシュの前々生でも在り得るぐらいに相似したキャラクターだった。

この豪勇の覇王は皇帝の使いこなした部下たちによって、勢子(せこ)に追い込まれる猛獣の様に追い込まれて…

 

そして、勝者と成った皇帝は言い放った。

「自分には、優れた戦略家、政治家、名将が居た。

自分は、それぞれの分野に於いて、彼らには及ばない。

だがしかし、彼らを使いこなした。

これが、天下を手に出来た理由だ。

あやつは、老軍師1人すら使いこなせなかった。

これが自分の虜(とりこ)に成った理由だ」

 

ザーリッシュも又、策士や曲線的思考を嫌い、取り巻きは「少ザーリッシュ」が多い。

そこまで、似ていた。

 

それでは、アリアバートとジュスランについては…

確かに善意の時代は無かったかも知れない。

だがしかし「善意の名君」を名君として全うさせる事を己の目的とし、その為「悪意」の部分を引き受け、その結果として後世に己の名を残す事を「野望」としたものは居た。

そして、後世の人々を感動させ、永くその名を伝説に残す事には成功した。

もし、そんな「野望」の持ち主がアリアバートに付いたら、そして其れがジュスランでは無いとは言い切れるだろうか。

 

どうも、イドリスのジュスラン評は、この歴史家には空振りしている様に感じられる。

人は、他人を理解するのに自分の縮小再生産であれば理解しやすい。

「豪勇」に限らず。

おそらく、イドリスはタイタニア4公爵であれば、無地藩王こそ唯一の目的と思っている。

少なくともイドリス本人はそうなのだろう。

だがしかし、ジュスランはイドリスでは無い。

彼の「野望」はもしかしたら…

 

だからといって、イドリスに忠告ないしは諫言する「義理」までは、この歴史家には無かった。

藩王と成った者に忠誠を誓う「義務」こそ在りはするが。

 

結局、歴史家は自分の脳内だけにこの考察を留め、次のテーマに移った。

「古代ローマのジュリオ・チェーザレと皇帝アウグストゥスの「父子」と、ネヴィル・タイタニアとヌーリィ父子の対比について」

これもまた、中々興味の存在しそうな課題だった。

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