「令呪をもって命ずる。セイバー、円卓の騎士を召還せよ」
第4次聖杯戦争も最終決戦が近い。
その決戦の場と成るであろう地点への出陣を目前にして「魔術師殺し」ことアインツベルンの傭兵、衛宮切嗣はサーヴァント・セイバーに2度目となる絶対命令を下した。
「キリツグ。何を」
戸惑うセイバーだったが、命じたマスターは勝利の為の戦術を冷徹に選択していた。
「王の問答の際にライダーが見せた。お前も軍を率いた王ならば、同じ切り札が使える筈だ」
令呪に因る命令は絶対だ。要する魔力も聖杯が供給してくれる。
”それ”は起こった。
魔力と霊力が光の粒子と成って集まり、次々とブリテンの騎士たちが姿を現して、セイバーいや彼らの王アルトリア・ペンドラゴン の前に膝をつく。
「サー・ケイ、サー・ガウェイン、サー・ベディヴィア……サー・パーシヴァル。
サー・モードレッドまでも。
皆、本当に来てくれたのか」
だがしかし、騎士たちの中に異形が居た。
「バーサーカー!何故、貴方が此処に居る」
その漆黒の甲冑に素顔を隠した異形の騎士は、何かを呻こうとした。
「ア…アー…」
騎士の1人、何時も遠慮無く言葉を発するアルトリアの義兄が指摘した。
「貴様、ランスロットか」
「アー…サー…」
セイバーいや円卓の王は、声を絞り上げた。
「サー・ランスロット…貴方が私に敵対したのか」
狂化のサーヴァントは、初めて明確な言葉を発した。
「王…私は…貴方を裏切った…」
更に呻く様に続ける。
「そして…今の私は…貴方とは異なる主に召喚された…」
「サー・ランスロット…」
絶句するセイバー。だがしかし、彼女のマスターは冷徹だった。
「丁度好い。このままバーサーカーを間桐から奪え。それで厄介な陣営が1つ潰せる」
「キリツグ!!」
セイバーはマスターに対して声を荒げた。
そして、バーサーカーいやランスロットは尚も立ちつくしていた。
「私は…王に…罰して貰いたかった…のかも知れない」
*
その頃、間桐雁夜は戸惑っていた。
バーサーカーとのラインが、突然に切れたのだ。
「何が起こった?」
魔術師としては未熟にして急造、肉体は瀕死その状態で只、遠坂時臣への妄執だけで聖杯戦争に参戦して来た。
そして今、瀕死の心身を引き摺りバーサーカーとのラインを取り戻そうとして、力尽きた。
*
「マスターが……」
バーサーカーもラインの異常を感じた。
「マスターが…倒れた。私は…もう現界出来ないかも…知れない。
王…貴方が…私を罰する機会も…もう無いかも知れない」
「サー・ランスロット。貴方は座に戻るのか」
「王…」
漆黒の騎士は、現界から消失…しなかった。
只、漆黒の甲冑のみが消えて、居並ぶ円卓の騎士と同じブリテンの紋章の甲冑を纏っていた。
「私は…又、円卓の騎士として認められたのか?又、アーサー王の騎士として戦えるのか?」
そのランスロットにセイバーいやアーサー王が語り掛けた。
「貴方が裏切ったのでは無い。私が王として至らなかったのだ」
それから居並ぶ騎士たちを見回す。
「この至らぬ王の騎士として、未だ忠誠をくれるのか?」
アルトリアの義兄が、率先して片膝をつき、首(こうべ)を垂れた。
「王よ。我ら円卓の騎士、今更迷いませぬ」
他の騎士たちも、次々に其れに倣う。
「私は…私は、未だに王なのか」
セイバーは感慨を込めて、首を垂れる騎士たちを見返した。
だがしかし、彼女のマスターは冷徹だった。
「出陣だ、セイバー。騎士たちに命令しろ。自分に従い戦えと」
今の自分は聖杯戦争に召喚されたサーヴァントだ。
それを思い返す思いのセイバーだった。
セイバーは、ゆっくりと騎士たちを見渡した。
「……皆、顔を上げてくれ。
今はブリテンの戦では無い。
だがしかし、今は王として命じる。
共に戦って欲しい」
「サー・ランスロット」
セイバーは彼の名を呼んだ。
「貴方が共に戦ってくれるなら、私は……この戦いを恐れない」
ランスロットは深く頷いた。
「キリツグ」
セイバーは振り返った。
「私は王として命令する。けれども、それは貴方の望む戦い方とは違うかも知れない」
衛宮切嗣は無言で頷いた。
「出陣する!」
「「「応!」」」
アーサー王の檄に円卓の騎士たちが応じる。
第4次聖杯戦争その最後の決戦が始まろうとしていた。
切嗣がセイバーに対してしゃべり過ぎている、と御思いの方もいらっしゃるかも知れませんが、『原作』の「3度しか語らなかった」にはツッコミ処が在るかも知れません。
例え、手駒として使い倒すにせよ、最低限のコミュニケーションは必須でしょう。
特に、中継役のアイリが倒れて以降は、どうしていたのでしょうか。