短小編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

65 / 65
裏切りの騎士(原作:Fate/Zero)

「令呪をもって命ずる。セイバー、円卓の騎士を召還せよ」

第4次聖杯戦争も最終決戦が近い。

その決戦の場と成るであろう地点への出陣を目前にして「魔術師殺し」ことアインツベルンの傭兵、衛宮切嗣はサーヴァント・セイバーに2度目となる絶対命令を下した。

 

「キリツグ。何を」

戸惑うセイバーだったが、命じたマスターは勝利の為の戦術を冷徹に選択していた。

「王の問答の際にライダーが見せた。お前も軍を率いた王ならば、同じ切り札が使える筈だ」

令呪に因る命令は絶対だ。要する魔力も聖杯が供給してくれる。

”それ”は起こった。

 

魔力と霊力が光の粒子と成って集まり、次々とブリテンの騎士たちが姿を現して、セイバーいや彼らの王アルトリア・ペンドラゴン の前に膝をつく。

「サー・ケイ、サー・ガウェイン、サー・ベディヴィア……サー・パーシヴァル。

サー・モードレッドまでも。

皆、本当に来てくれたのか」

 

だがしかし、騎士たちの中に異形が居た。

「バーサーカー!何故、貴方が此処に居る」

その漆黒の甲冑に素顔を隠した異形の騎士は、何かを呻こうとした。

「ア…アー…」

 

騎士の1人、何時も遠慮無く言葉を発するアルトリアの義兄が指摘した。

「貴様、ランスロットか」

「アー…サー…」

セイバーいや円卓の王は、声を絞り上げた。

「サー・ランスロット…貴方が私に敵対したのか」

 

狂化のサーヴァントは、初めて明確な言葉を発した。

「王…私は…貴方を裏切った…」

更に呻く様に続ける。

「そして…今の私は…貴方とは異なる主に召喚された…」

「サー・ランスロット…」

絶句するセイバー。だがしかし、彼女のマスターは冷徹だった。

 

「丁度好い。このままバーサーカーを間桐から奪え。それで厄介な陣営が1つ潰せる」

「キリツグ!!」

セイバーはマスターに対して声を荒げた。

そして、バーサーカーいやランスロットは尚も立ちつくしていた。

 

「私は…王に…罰して貰いたかった…のかも知れない」

その頃、間桐雁夜は戸惑っていた。

バーサーカーとのラインが、突然に切れたのだ。

「何が起こった?」

魔術師としては未熟にして急造、肉体は瀕死その状態で只、遠坂時臣への妄執だけで聖杯戦争に参戦して来た。

そして今、瀕死の心身を引き摺りバーサーカーとのラインを取り戻そうとして、力尽きた。

「マスターが……」

バーサーカーもラインの異常を感じた。

「マスターが…倒れた。私は…もう現界出来ないかも…知れない。

王…貴方が…私を罰する機会も…もう無いかも知れない」

 

「サー・ランスロット。貴方は座に戻るのか」

「王…」

漆黒の騎士は、現界から消失…しなかった。

只、漆黒の甲冑のみが消えて、居並ぶ円卓の騎士と同じブリテンの紋章の甲冑を纏っていた。

 

「私は…又、円卓の騎士として認められたのか?又、アーサー王の騎士として戦えるのか?」

 

そのランスロットにセイバーいやアーサー王が語り掛けた。

「貴方が裏切ったのでは無い。私が王として至らなかったのだ」

それから居並ぶ騎士たちを見回す。

「この至らぬ王の騎士として、未だ忠誠をくれるのか?」

 

アルトリアの義兄が、率先して片膝をつき、首(こうべ)を垂れた。

「王よ。我ら円卓の騎士、今更迷いませぬ」

他の騎士たちも、次々に其れに倣う。

「私は…私は、未だに王なのか」

セイバーは感慨を込めて、首を垂れる騎士たちを見返した。

 

だがしかし、彼女のマスターは冷徹だった。

「出陣だ、セイバー。騎士たちに命令しろ。自分に従い戦えと」

今の自分は聖杯戦争に召喚されたサーヴァントだ。

それを思い返す思いのセイバーだった。

 

セイバーは、ゆっくりと騎士たちを見渡した。

「……皆、顔を上げてくれ。

今はブリテンの戦では無い。

だがしかし、今は王として命じる。

共に戦って欲しい」

 

「サー・ランスロット」

セイバーは彼の名を呼んだ。

「貴方が共に戦ってくれるなら、私は……この戦いを恐れない」

ランスロットは深く頷いた。

 

「キリツグ」

セイバーは振り返った。

「私は王として命令する。けれども、それは貴方の望む戦い方とは違うかも知れない」

衛宮切嗣は無言で頷いた。

 

「出陣する!」

「「「応!」」」

アーサー王の檄に円卓の騎士たちが応じる。

 

第4次聖杯戦争その最後の決戦が始まろうとしていた。




切嗣がセイバーに対してしゃべり過ぎている、と御思いの方もいらっしゃるかも知れませんが、『原作』の「3度しか語らなかった」にはツッコミ処が在るかも知れません。
例え、手駒として使い倒すにせよ、最低限のコミュニケーションは必須でしょう。
特に、中継役のアイリが倒れて以降は、どうしていたのでしょうか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。