聖杯戦争に参戦したマスターは、契約したサーヴァントの生前の記憶を夢に見ると言う。
衛宮士郎も又、サーヴァント・セイバーの記憶を夢に見た。
その結果、マスターにすら隠してきた真名がアーサー王だと知ったのだが。
「アーサー王って、女の子だったのか」
そんな驚きも在ったが、ある晩の夢では何かがゴチャゴチャに成っていた。
目覚めた士郎は、セイバーに問い質してみた。
「なあ、セイバーって2重人格に成ったことは無いよな。
それに、その2つの人格の2人のセイバーがバラバラに行動している様な、変な夢を見たんだ」
セイバーは暫し考え込んでから答えた。
「シロウ、おそらくそれは、第3次聖杯戦争の記憶だと思います」
私は、冬木の聖杯戦争の度にセイバーとして召喚されました。
だがしかし、第3次聖杯戦争の時は、事情が複雑でした。
第3次聖杯戦争での私を召喚したマスターはエーデルフェルト家の姉妹だったのです。
「姉妹?」
士郎は其の言い方に引っ掛かりを感じた。
そうです。
エーデルフェルト家は、1子相伝の筈の当主の座を代々姉妹で継承して「天秤」のエーデルフェルトと呼ばれた魔術師の家系でした。
第3次聖杯戦争の時代の当主も、双子の姉妹だったのです。
姉妹は「天秤」の家系の魔術師だけの裏技を使いました。
本来1人だけが受け取れる令呪を2分割し、元々は1人の筈の英霊を両面から召喚したのです。
その結果、元は1人の英霊が2騎の異なる側面を現すサーヴァントとして、分裂して召喚されたのです。
「それじゃ、セイバーが2人に成っていたんだ」
「そうです」
「セイバーが2人なんて、メチャクチャ有利だったんじゃ無いか」
「ですが…」
セイバーは、何処か遠くを見る様な視線を漂わせた。
あの双子は、エーデルフェルト家の伝統に逆らうかの様に姉妹仲が好ろしくありませんでした。
折角(せっかく)本来は7人中の1人の筈の参戦枠に2人掛かりで参戦した、というのに冬木でも別々に邸を設けてまで、完全に別行動したのです。
「何でさ。それじゃあ、意味無いじゃ無いか」
「全くでした」
結局、あのエーデルフェルト家の双子は、自分たちの仲違いも手伝って敗退しました。
私も座に戻りました。後のことは分かりません。
「何でさ」
ここで、士郎は夢を少しだけ詳しく思い出した。
何だか、2人のセイバーの性格が物凄く違うような気がしたんだが。
1人は、今ここに居る様な、俺の知っているセイバーの様だったんだが、もう1人は何と言うか…黒かったんだ。
「あれも私でした」
私の中に居た、もう1人の私でした。
どれだけ拒絶しても、あれも私の本質の1つであることは否定出来ません。
それでも……あの私が、士郎を傷付けることは希望していません。
「セイバー、俺は君があんなに成るとは信じたく無いよ」
この世界線のセイバーが黒化したか、それは衛宮士郎の選択次第だった。
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