短小編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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第3次聖杯戦争の前日譚(原作:Fate/シリーズ)

(…ああ、又、始まった…)

 

日本史ならば「昭和戦前」と呼ばれた時代、倫敦。

「時計塔」と、とある人々には呼ばれる場所で、遠坂継彦は何度目かのことを内心で思っていた。

 

継彦は、魔術師だった。

日本の地方都市である冬木で既に3代を重ねた魔術師の家系の継承者だ。

遠坂家の初代、遠坂永人は武家時代の隠れキリシタンの武道家だったが、とある由縁在って宝石翁キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグと名乗る「魔法使い」の弟子と成り、魔術師と成った。

その遠坂の継承者として継彦も、魔術協会の本拠地であり、時代の魔術師を育む学園でもある「時計塔」に留学していたのだが…

 

「全く、東洋の猿と、何時も仲好くつるんでいる誰かさんの気が知れませんわ!」

「その「お猿さん」に「余裕を持って優雅たれ」などと言われているのは何処の誰かしら?」

(好い加減にして欲しいな。「天秤」の家の伝統に反しているだろうが)

継彦の目前で、もはや恒例の様に思える”姉妹喧嘩”を繰り広げているのは、フィンランドから、やはり「時計塔」に留学に来ていたエーデルフェルト家の双子姉妹だった。

 

エーデルフェルト家は「天秤」の家系と呼ばれる。

それは、魔術師の家系の多くに於いて1子相伝とされる当主の地位を、常に姉妹で受け継いできたことに因った。

ヘルミとルヴィアゼリッタことルヴィアの双子姉妹も、双子の姉妹でエーデルフェルト家の当主を務め「時計塔」にも姉妹で送り出されていた。

だがしかし、当代の双子当主はエーデルフェルト家の伝統には珍しく姉妹仲が好ろしく無いらしい。

そして、何故か妹のルヴィアが東洋から来た、そして自らの家系と同じく宝石翁を祖とするツグヒコ・トオサカに興味が在りそうな様子を見せると、それも姉妹喧嘩の格好のネタにされているらしかった。

 

「ミキモトの養殖真珠の方がマシですわよ」

フィンランド語に於ける「ヘルミ」という女性名は「真珠」に由来するらしい。

「我が妹は、何時から東洋カブレに成ったのかしら?」

「姉ぶってますわね!たった30分先に生まれただけのくせに」

 

口喧嘩のうちはまだしも、格闘技に秀でている家系だからか、何時手が出るか知れない。

それどころが、ガンドの魔術でも飛びかねない。

 

つい口を出した。

「私のことで争う必要なら、もうすぐ無くなる。私は帰国する」

これには「えっ?!」というべき反応をした。

「隠すまでも無い。もう直ぐ”60年目”がやって来る」

 

120年前。

遠坂家の初代、遠坂永人は他の”2人”の魔術師と共に「万能の願望機」たる「聖杯」を求めて魔術儀式を行った。

以来、この”3人”を受け継ぐ魔術師の家系は「御3家」と呼ばれ、60年周期の魔術儀式を繰り返す。

 

それは「聖杯戦争」

”戦争”とは大げさでは無い。

参加する魔術師は、英霊とされる存在を召喚して戦わせ、自らも魔術を競う。

遠坂継彦も「御3家」の1つを継承する身として、60年目に開催される第3次聖杯戦争に参戦するのは宿命と言えた。

 

だがしかし、先程までの喧嘩も忘れた様に肉食獣の微笑みを見せる双子を見て、継彦は聖杯戦争に言及したことを後悔した。

「天秤」のエーデルフェルトの別な異名は「地上で最も優美なハイエナ」

尤(もっと)も「横取り」などという意味で此の異名を使ったら、ハイエナという生き物に失礼かも知れないが。

それは兎も角(ともかく)「万能の願望機」などという美味しい話に飛び付くことも在り得た。

 

冬木の聖杯戦争には「御3家」以外の外来の魔術師を含めて、計7つの陣営が参戦する。

その外来4陣営の1つに成る気が満々だった………。

 

……。

 

…エーデルフェルトの双子姉妹に憮然とした感情を残しながらも、継彦は冬木への帰郷の旅についた。

 

母国へと旅する船上で、継彦は1人の知己を得る。

言峰璃正。

魔術協会と教会の妥協の結果として、教会から派遣された監督役だった。

 

表向きは冬木教会の司祭として帰国する璃正の旅は、偶然か必然か、継彦と重なった。

監督役としての中立の立場からは踏み外したりせず、だがしかし、聖杯戦争という秘匿すべき困難に立ち向かうべく帰国する境遇を共有する者同士の共感が自然に育った。

2人を乗せた船が母国の港に着くまでには、所謂(いわゆる)「タメ口」を使う仲に成っていた。

 

この時の縁が、第4次聖杯戦争での遠坂家の子孫との関わりにまで続くことに成る、とは予言者ならざる身では知るよしも無い。

 

……冬木に帰り着くまでは聖杯戦争も始まることは無い、と継彦も璃正も思い込んでいた。

だがしかし、帝国陸軍とナチス・ドイツの介入に因って、冬木への経由地の筈の帝都で第3次聖杯戦争は早くも開戦と相成った………。

 

……。

 

…結局、エーデルフェルトの双子姉妹は参戦した。

それも「天秤」の魔術師だから可能な、1陣営の参戦権を姉妹2人で分割して、1体の英霊を2体に分身させるという裏技まで使って。

 

だがしかし、姉妹で参戦したにも関わらず自陣営の仲違いも手伝って敗退した。

姉のヘルミはフィンランドに逃げ帰り、妹のルヴィアはやはり参戦していた遠坂継彦の虜と成ってその子を産んだ。

これを屈辱としたエーデルフェルト家では、代々日本嫌いに成ったという。

 

ちなみに、ヘルミの曾孫にエーデルフェルト家には決して名誉であったとも伝えられていない妹のルヴィアゼリッタの名が受け継がれ、遠坂継彦とルヴィアとの子孫とライバルに成るとは、魔術師ではあっても予言者でも無い以上は知る由は無かった。




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