その作品を楽しんだ記憶を頼りにオマージュをしてみました。
その為に設定が似ているかも知れませんが、基本的に作者オリジナルであり、あくまでもオマージュです。
もしも、オマージュ元に成った作品を発掘される方などおられましたら、違いを楽しんで頂ければ幸いです。
桜の季節。
ここ「聖應女学院」でも卒業生が送り出された。
「宮小路瑞穂」も其の1人だった。
”彼女”は全校生徒の投票にて選ばれ、全校生徒の手本となる最上級生「エルダー・シスター」に選ばれて、全ての在校生から「お姉さま」と呼ばれた。
その「お姉さま」の役目を全うして、今日この卒業を迎えたのである。
正直、ホッとしていた。
少数しか知らない秘密を抱えて「お姉さま」の役目を務める日々も、ようやっと終わったのである。
その想いと卒業証書を抱えて学園を後に家路を急ぐ瑞穂の前に、突如としてアヤしい銅鏡が出現して光り輝いた。
驚く暇も無く、瑞穂の姿は其の光に包まれて消えた………。
……。
…瑞穂が気付いた時、そこはまるで中国の山水画の様な光景が地平線まで広がっていた。
瑞穂の理解が追い付かない間に、妙な奴らが近付いて来た。
まるで古代中国のコスプレの様な風体に、頭に黄色い布を着け、未だ「聖應女学院」の制服姿の瑞穂に対してニタニタと厭らしい笑いを浮かべている。
「へ、へ。結構、上玉じゃねえか」
身の危険を察した瑞穂は、正当防衛の決意をした。
見かけは「お姉さま」でも文武両道、剣道・空手・合気道・薙刀の心得も在るのだ。
3人組の中の兄貴分と見なした奴との間合いを詰めると、ジャンプそのままに顎先に飛び膝蹴り。
同時に、ギロチンとばかりに肘撃ちを落とした。
兄貴分が大地に転がると、怯む残り2人を構えを解かないままに睨み付ける。
「そいつを担いで逃げるなら、今のうちだぞ」
顔を見合わせ躊躇う2人だったが、そこへ介入して来る者が居た。
「お見事」
そう言って来たのは、これも古代中国の武将風のコスプレ(?)の、どうやら女性らしい。
後ろに数人の兵隊を従えている。
それを見るや、急に慌てだした奴らは、伸びている兄貴分を抱えて脱兎のごとく逃げ出した。
逃げた奴らを見送ると、武将(?)は瑞穂に向き直った。
「お見事だったが、ここで何をしている」
瑞穂は、適当なことを言っても誤魔化しようもないと思った。
「僕にも分かりません。何時の間にか此処に居ました。ここは何処でしょう?」
ちょっと驚いた風をしてから、応答する。
「ここは江東だ。呉とも言うな」
江東?呉?何を言っている。
「僕は宮小路瑞穂です。貴女は何方ですか?」
「孫堅文台」
「え?!」
ゲーム『三国無双』などのキャラクターと目の前の女性が、咄嗟には結び付かなかった。
孫堅って女性だったの?
いや、それよりも、ここは三国時代?
「みやのこうじみずほ、か。珍しい名だな。どんな字を書く」
孫堅(?)から次の質問をされて説明すると、
「姓が3字で名が2字か。異国の名の様だな。やはり「天の国」か」
「てんのくに?」
「兎に角(とにかく)付いて来い」
と孫堅に言われて連れて来られた城の広間らしい部屋には、孫堅に似た桃色の髪と褐色の肌の若い娘が3人居た。
その姉妹は孫策に孫権そして孫尚香と名乗った。
そればかりでは無い。
居並ぶ武将文官が『三国志』で瑞穂でも知っている名を名乗るが、女性ばかりだ。
何がどうなっている?
瑞穂が戸惑っている間にも、孫堅は語り始めた。
後漢の世は乱れ始めている。
政治は腐敗し、黄色い布を着けた妙な奴らがウロウロし始めている。
そんな時に孫堅は、とある予言を聞いた。
「天の御遣い」
疑ってもみたが、まるで予言そのままの様に青天白日なのに流星が落ちてくるのを目撃した。
そこで、流星の落ちた、と思える辺りを見に行ってみて瑞穂を見付けたのだ、と言う。
「そんな、僕が「天の御遣い」だなんて」
瑞穂にしてみれば、そんな予言のことなど知らない。
「だがな」
孫堅は、どこか面白そうだ。
予言の通りに異国の者が現れた。
それだけでも、我ら孫呉には大きな意味が在る。
元々、長江の賊退治から成り上がり、ようやっと江東の名士たちに迎えられたばかりの孫呉には「天の御遣い」は、大きな大義名分と成る。
そう言って孫堅は、少し複雑そうな顔をした。
「それでも、女だったことは残念だがな」
どういう意味だろう。
居並ぶ武将たちも、孫堅たち孫氏1家も女性ばかりなのに。
「出来れば、大義名分を強固にする為にも孫呉には「天の血」を入れたかったのだがな。
子を得るには、女の方が負担がかかる」
瑞穂にも意味は理解出来た。次の瞬間、つい言葉に出てしまった。
「家の命令で、女学校に入れられて今日卒業したばかりですから、こんな制服ですけれど…」
決定的なひと事を出した。
「僕は男です!」
それぞれにハッとしたり、ギョッとしたりという反応をして、孫堅たちは瑞穂を見詰め直した。
だがしかし、どう見ても、艶やかな長髪に母親譲りの美貌の瑞穂は美少女にしか見えない。
中には疑わしげに見る者もいた。
「ですから」
遂に瑞穂は、制服の中から胸を誤魔化すために入れていたパットを取り出して見せた。
「ハッ、ハッ、ハッ!」
孫堅が笑った。
「その姿で男とはな。流石に「天の御遣い」よ。
だがしかし「天の血」を入れるには男の方が都合が好い。
尤(もっと)も、我が孫呉の女どもを見事に口説いて見せればだがな。
そうだろう。雪蓮。蓮華。小蓮」
今までとは聴き慣れない呼び方で、孫堅は娘たちを読んだ。
真名という初見殺しについては、後で聞いたが。
雪蓮と呼ばれた孫策は母親そっくりの笑い方をし、蓮華と呼ばれた孫権は顔を赤らめ、小蓮と呼ばれた孫尚香は面白がった。
何か気まずく成った瑞穂は、何か話題を変えられないか、と思い、
「…そもそも、僕が知っている『三国志』は…」
つい、言ってしまった。
「三国?どういうことだ?」
孫策の傍らに控えていた、周瑜と名乗った少女が問い詰めた。
「…それは…」
失言だったかも知れない。だがしかし、もう孫堅を筆頭に居並ぶ女性たちが視線を向けていた。
「僕が僕の国で知っている話では「黄巾の乱」を切欠に、後漢の天下は群雄割拠の乱世に成ります。
そして、その群雄の中から3人の英雄が勝ち残り、天下を3分します」
「その3人とは?」
孫堅が問い詰めて来る。誤魔化せない。
「曹操。劉備。孫権」
「曹操は聞いたことが在りそうだな。劉備とは聞かんな。劉、ということは漢の血筋か?」
孫堅は小首をかしげてから、大笑した。
「蓮華が!こいつは面白い」
ひとしきり笑ってから、瑞穂に向き直る。
「やはり、お主は「天の御遣い」を此の呉でやってもらうぞ」
どうやら、瑞穂の運命は決まった様だった。
いや、あの銅鏡に出くわしたときから、決まっていたのかも知れない。