例えば『原作』で有人の哨戒機による偵察の危険を冒す様な状況でも、現在は「グローバルホーク」等の無人機が其の任務を果たすことが出来ます。
その時ークワ・トイネ公国の誰もが、遥かな「高空からの眼」に視られているとは知らなかったー
日本国防衛省の奥深く。
この時ここでは、無人偵察機「RQ-4 グローバルホーク」が収集してきたデータがAIと人間の専門家によって解析されていた。
この時の直前、日本列島の全土を何処が震源とも推定出来ない振動が襲うと同時に、全ての国外との通信が途絶えた。
この異常事態に、先ず何が起こっているかを把握する為、航空自衛隊のグローバルホークが三沢基地より発信させられた。
全くの未知の事態。
有人機による強行偵察での犠牲者の可能性を冒すことも無く、高度な情報を収集出来るグローバルホークの特長が注目されたのだった。
「これは…」
グローバルホークが収集し、AIと専門家が解析した情報が、判断と決定を行うべき日本国政府の中枢に提出されていた。
だがしかし、その内容は信じたくないかも知れないシロモノだった。
在るべき処に在るべき隣国が存在せず、在るべからざる処に在るべからざる陸地が存在する。
そして、その陸地の上に存在するのはー
まるで中世ヨーロッパの如き石造りの都市と田園の光景、そしてファンタジー世界の様に飛び回る飛竜だった。
情報は、日本国が異世界に転移したことを示していた。
信じ固い。だがしかし、入手出来た全ての情報は、それが事実と示していた。
事実と真実を認識せざるを得ない以上は、その事実に基づいて判断と決定を行わなければ為らない。
既に日本国は、海外から輸入する食料と資源に国民の存立を委ねて久しい。
何としても此の世界に友好国を見付け、国内の需要に応える供給元を確保しなければ為らなかった。
「外交使節を派遣しなければ為らないだろうな」
異存を唱える者は居なかった。
「ですが、領空侵犯の件はどうします?」
これに対しては、
「そもそも、侵犯されたことに先方は気付いていない可能性が在ります」
グローバルホークは現代のスクランブル体制でも迎撃困難な高空を飛ぶ。
人間を乗せていない、したがって気圧の減少を案じる必要の無い無人機ならではの高空を。
中世相応の文明では、探知も迎撃も出来なかったかも知れなかった。
実の処、飛び回っていた飛竜が迎撃の為に向かって来た兆候も無かった。
「だからと言って、知らぬ存ぜぬは外交上の誠意では無いだろう」
侵犯については謝絶した上で、誠意を以って国交を申し出る、という方針に決まった。
次いで、派遣する外交船団の編成に議論は移った。
軍事力に因る砲艦外交などする積りも無い以上、代表はシビリアンの外交官が適切だろう。
乗せて好くフネも、非武装のチャーター船が誠意だろう、とされた。
そして、出来れば先方の代表団を連れ帰る可能性を考えて、クルーズ船のチャーターが望ましいとされた。
無論、引き受けてくれる商船会社が在ればだが。
とはいえ、未知の異世界に派遣する以上は、全く丸腰で護衛も付けない訳にもいかないとの指摘もされた。
だがしかし、海上自衛隊の自衛艦を派遣すれば砲艦外交に成ってしまう。
海上保安庁の巡視船が適切では、と纏まりそうに成った。
それでも、万に1つ、との意見も出た。
砲艦外交に見えずに強力な護衛を、との問題に、潜水艦なら見えないのでは、と提案する者が居た。
「好いだろう。外務省、海上保安庁、海上自衛隊に命令を」
政府の決断は為された………。
……。
…クワ・トイネ公国のワイバーン騎士は相棒と共に哨戒飛行中だった。
近年「亜人殲滅」を標榜する隣国ロウリア王国の侵略意図は露骨に成っており、海上を迂回しての侵略に備えてのことだった。
その竜騎士が海上に見付けた。
それは恐れていたロウリアの艦隊では無かった。
だがしかし”それ”はロウリア以上に在り得なかった。
白い、見たことも無い程に巨大な船が帆も張らずに波を切って公国の方角へと進んでいた。
周囲を取り巻く様に、魔導砲らしきものを備えた数隻の軍船らしきものが、やはり帆も張らずに波を切っている。
数舜だけ唖然とした竜騎士は、我を取り戻すと警告の魔導通信を送った………。
……。
…通信を受けて出撃した公国海軍は、白い巨船に圧倒される内心を隠して、魔導通信で呼びかけた。
更に、魔導で拡声した大声を送ると、軍船らしきものの1隻から、やはり拡声されたらしい返答が返ってきた。
「我々は、日本国海上保安庁の巡視船です。
我々が護衛して来たクルーズ船には、貴国と交渉する為の外交官が乗っており、貴国との外交交渉を希望しています。
どうか、貴国への入港を認めて頂きたい」
日本国?
聴き慣れない国名に戸惑いながらも案内した公国の港に入り切りそうも無い巨船から、より小型の船が降ろされ、これも帆も櫂も使わずに波を切って岸壁に到着した。
そして、見慣れない服装の使者らしい人物を上陸させた………。
……。
…異世界から国家まるごと転移して来た、などという途方も無い口上に戸惑いつつも、先ずは領空侵犯についての謝罪は受け取った。
とはいえ、侵犯された実感も無い。
そして、公国内での議論の末、兎に角(とにかく)公国からも日本国へ誰か派遣しよう、との取り敢えずの結論には成った。
本心では、ロウリアの脅威に直面していて此れ以上に敵対国家を増やしたくない、出来れば味方が出来れば、という思いだった………。
……。
…日本国の巨船に同乗した公国の外交官と軍人は、余りの「科学」に驚愕していた。
この世界にも「ムー」という科学文明の列強国は在る。
だがしかし、目撃する全てが伝え聞くムーを超えていた。
極め付けは、日本国の代表が如何にも申し訳なさそうに告げた時だった。
「申し訳御座いません。貴国が武力行使に及ぶ可能性を捨て切れませんでした」
それはそうだろう。お互い未知だったのだ。
「それで、万に1つに備えて、見えない護衛を付けていました」
見えない護衛?
「潜水艦です」
潜水艦?何それ?
「もう御覧に入れるべきでしょうね。それが誠意だと思って下さい」
海面を割って黒い異形が姿を現した。
海面の下に潜(ひそ)むことが出来る軍船だと?!
この世界には、潜水艦という概念すら無かった………。
……。
…公国に帰国した代表団は、日本国から手渡された「たぶれっと」とか言う科学道具を手に報告と復命をした。
次々に映し出されれる映像と口々に報告される証言は、公国の誰もの想像をも超えていた。
信じ難い。だがしかし、信じられるならば、ロウリアの侵略に対抗出来るかも知れない。
幸い、公国には日本国が望むものを提供出来た………。
……。
…日本国はクワ・トイネ公国そして其の仲介に因って隣国クイラ王国と国交を樹立し、クワ・トイネの食料とクイラの地下資源に因って国民の存立を実現した。
だがしかし、その結果としてロウリア王国の侵略に直面することに成るのである。