念のためですが、性転換キャラではありません。
どこに『恋姫』があるかは、本文をお読みください。
それは繁栄の陰で矛盾と衰退の兆(きざ)しが、後世の歴史家の視点からは密かに忍び寄りつつあった時代。
しかし繁栄の表面には未だ現れず、多くの同時代人が繁栄を楽しんでいた時代だった。
そして、名山の奥から108星の魔王が解放されてから、赤子が成人に成るほどの歳月が経った頃だった………。
……。
…大宋帝国の帝都、開封は繁栄していた。
漢や唐の帝都が極言すれば皇帝があるがゆえの「政治都市」としての繁栄だったとすれば、宋代の開封は庶民の繁栄の1面を色濃く見せていた。
昼は「芝居」や「講釈」の「寄席」が、夜は妓楼や酒楼が賑わう。
そんな帝都の人々の中にあって、若き武官「大刀」の関勝は少しばかり、憂鬱だった。
後年『水滸伝』の名で伝えられる、1連の騒動はまだ始まっていない。
だから開封の繁栄には、いまだ乱世の兆しは表れていない。
自分が妖魔108星の第5星「天勇星」の生まれ変わり、という自覚も無い。
そんな事とは無関係な、ある意味他愛も無い理由で憂鬱だった。
問題は「彼」の尊敬する“ご先祖”にある。
逞(たくま)しい胸に垂れる美髭も「大刀」の2つ名の由来となった得意の得物も、乗っている赤馬も、皆“ご先祖”にゆかりのものだ。
だが“ご先祖”がこの開封でも「芝居」にも「講釈」にも取り上げられるほど有名になった事が、心境としては微妙なのである。
「講釈」はまだ好い。
なんで「芝居」だと、後年いうところの“少女歌劇団”の類(たぐい)が得意演目にするのか。
いや、美人の花形女優が“ご先祖”を演じてくれるのは、むしろ誇らしい、だが……。
しかし悩んでも、当時の関勝もまだまだ若い。
結局、その晩は妓楼に泊まる事にした。
さて関勝の美髯やら、用心棒にあずけた「大刀」やら、厩(うまや)番にあずけた赤馬やらを見て、妓楼の側は当然“ご先祖”の名前を出して、一応、客に対する言葉使いながら「この方」に憧れての事かと訊(たず)ねた。
客の「好み」に関係するかとでも思ったか。
それに対し、基本的には隠すつもりも無い関勝の方は“ご先祖”だと、むしろ堂々と告げる。
成程、と相手は納得したようだったが、その次に言われた科白(せりふ)に思わず突っ込みたくなった。
これが最近の関勝にとって、憂鬱の原因なのだ。
「では、相方は何人にいたしますか」
「おい?何人だと。俺は種馬じゃない」
「ですが、あの「天の御遣い」様の御種なのでしょう」
その通り「大刀」関勝は、関羽こと真名愛紗と「天の御遣い」こと北郷一刀との子孫なのである。
原典『水滸伝』でも「大刀」関勝は関羽の子孫という設定で、ほぼ『演義』の関羽通りのキャラとして登場します。
108星での順位の割には余り活躍する方でないのですが、あえて私見を申しますと関羽をゲスト出演させている感じとも見えます。