もしも、もしもの話だ自分の友人が毒虫になったとして、そんな時自分はその友人に何かしてやれるだろうか?助けてやる。なんて、口でいうのは簡単だ。だけど実際にその状況に出くわしたとして、それを実行出来る奴が一体何人いるだろうか。…少なくとも俺には無理だ。俺にそんな強い意志はない。そもそも、そいつの気持ちなんて同じ土俵にたった奴にしかわからないんだ。なら同じ土俵にすら立っていない奴がそいつの助けになることなどできる訳が無い。
だから、もしも、もしも俺がまだ普通の人間だったとして、その状況で雪乃が喰種だったとしったら、どうしていただろうか。俺には強い意志はない。同じ土俵にすら立っていない。なら、きっと俺は……。
だけど、俺は毒虫になった。
今俺は雪乃と同じ土俵に立っている。
記憶の中の雪乃が俺に微笑む、しかし開いた目は真っ赤に染まっていた。
そんな雪乃をみて、俺は、俺は………。
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「ん………?」
目を覚ますと、そこには見慣れない天井があった。
暫く寝ていたらしい。いまいち頭がはっきりとしない。しかし、周りを見渡すとここが自分の家ではない事は分かった。
…そうか、俺はあの後雪乃に助けられたのか。
2度目…なんだな、あいつに助けられるのは。最も一度目は雪乃とは分からなかったが。
よくよく考えてみれば、すぐにわかる事だったんだ。陽乃さんが喰種なら、妹である雪乃が喰種出ない筈がないではないか。そんな事にも考えが行き着かなかったのは、自分の事で精一杯だったからか………いや、俺は無意識に考えない様にしていたのだろう。雪乃が喰種だと認めたくないがために。
「喰種だったのか…。雪乃。」
俺のつぶやきは誰にも受け止められることなく、部屋の中へ溶けていく。雪乃が喰種だったことはショックだった。しかし、俺は何故か、その事をしって…。
そこで、部屋の扉がガチャと開かれる。
「起きたのね。ハチ君。」
入って来たのは雪乃だった。その手にはコーヒーの乗せられたトレイがもたれていた。
「………。」
俺は雪乃の言葉に返事をする事ができない。まだ気持ちの整理がつけられずにいたからだ。しかし、雪乃はそんな俺に構わずそのままこちらへ歩いてくると、ベットの横に置かれていた椅子へ腰をかけた。
「飲む?コーヒー。」
そういい雪乃は俺へコーヒーを差し出してくる。しかし、俺はコーヒーを飲むような気分ではなかった。そんな気分にはなれなかった。
「…いや、いい。」
それがようやく俺の口からでた、雪乃への返事だった。寝起きだからか、それとも話している相手が雪乃だからなのか、その声は酷くかれていた。
「そう………。」
雪乃は短く返事をすると、そのコーヒーを自分の口へと運んだ。
そんな雪乃の姿を俺は直視する事ができない。どんな顔をして雪乃と顔を合わせればいいのか、俺には分からなかった。
「失望したかしら…。」
その声に俺ははっと顔を上げる。
雪乃は物憂げな表情で、手元にあるコーヒーカップを見つめていた。
「それとも怖かった?私が喰種としって。」
「………。」
俺はその雪乃の問いかけに答えることができなくて、そんな自分が後ろめたくて、雪乃から目を逸らした。
「…高校生の頃、私は嘘はつかないと言ったわ。…でも、本当は初めから嘘をつき続けていたのよ。あなたにも、結衣にも。」
雪乃は俺の返事の有無に構わずに話し続ける。
「だって言えるわけがないじゃない?自分は…喰種です。なんて…。」
話し続ける雪乃の声は段々と勢いがなくなっていく。しかし、うつむく俺の視界にうつるのは、雪乃の手元に置かれたコーヒーカップだけで、その表情までは分からなかった。
「ハチ君。あなたは以前言ったわ。毒虫の気持ちなんて、同じ土俵に立った奴にしか分からない…って。でも、私には想像する事ができたわ。私が毒虫だと知った時のあなた達の顔が。同じ土俵にいない、あなた達の。」
そう言い、雪乃はコーヒーカップを机に置くと、俺の手にそっと自らの手を重ねた。その手は夏だと言うのに、冷えきっていた。
「ねえ、ハチ君。こうして私に触れられるのは嫌…?私はずっとこうしたいと思ってた。けど怖かったの…、いつかバレてしまうのではないかと、あなた達が私の身体に染み込んでいる血の匂いに、気づいてしまうんじゃないかって………。そう思うと、私は人と関わる事が怖くなって…だから………!」
そう言う雪乃の声は震えていた。顔を上げると目を湿らせた雪乃と目が合う。
「でも、ハチ君。あなたは毒虫になったわ。」
そう言い雪乃は俺から目を逸らす。申し訳なさそうに、そして後ろめたそうに。
「あなたが喰種になったと知ったとき、私は悲しむべきなのか…喜ぶべきなのか、分からなかったわ…。嫌な女よね。大切な友人が喰種なったのに、その事を悲しむべきなのか悩んでるなんて…。」
そこで、重ねられた雪乃の手へ涙が1つ零れた。雪乃の顔は酷くゆがんでいて、目からは涙が溢れていた。
「でも…っ、でも嬉しかったの……!隠しきれなかった………っ、他でもないあなたが………同じ土俵に来てくれたのが………!嬉しくて………。」
…初めて見る表情だった。いつも気丈に、凛と振舞っている雪乃がこんなふうに泣いているのを俺は初めて見た。
そして、俺は雪乃の手をそっと握り返した。
そして重い口をあけた。
「俺も…俺も嬉しかったんだ。」
「え…?」
俺のその言葉に雪乃は何故といった表情を浮かべる。
「俺は陽乃さんが喰種だと知ったとき、ショックだったんだ。もちろん、陽乃さんが喰種だった事もそうだった。たけど、ほんとにショックだったのは陽乃さんの先にお前の顔が浮かんだからだったんだ。」
そう、俺は受け入れられなかったんだ、雪乃が喰種だと言うことが。雪乃の事をそんな風に思っている自分が。だからずっとその事について考える事を無意識に避けてきた。
「だけど、自分が喰種になって、その事に気づいて、一人きりでずっと悩んで、苦しんで…。そんな時にお前が喰種だと知ったんだ。」
「俺は嬉しかった。」
そう、雪乃が俺の前に喰種として現れて、ずっと避けてきた事から逃げられなくなって、向き合って俺が感じたのは喜びだった。
「自分が喰種になって…不安だった、誰に頼れば良いのか…孤独だったんだ。これまでもずっとそうだと思ってた。けど、ちがった、前は小町や家族もいてくれたんだ。けど今回はちがう。俺はほんとに孤独になったんだ。だから、雪乃が喰種ってしったとき、俺は嬉しかった。」
「そう…。」
「嫌な奴だよな、人間の時はお前が喰種だと言うことを拒否して、喰種になった途端、お前が喰種でいてくれて良かったなんてさ。」
俺がそう言い俯くと、俺の体を柔らかい何かが包んだ。
俺が雪乃に抱きしめられているのだと少し遅れて気づく。
「ハチ君…。ごめんなさい私なんて言ってあげればいいのかわからなくて…。」
「…いや、いい。しばらくこのままでいてくれ…。」
そして俺達は今まで溜めていたものを吐き出すように静かに泣き続けた。
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side 結衣
私が目を覚ますと、そこは知らない部屋だった。
しばらく寝ぼけていたが、意識がはっきりとしてくるにつれて、自分が誰かに襲われて倒れた事を思い出した。あの時はちまん叫んでた。
『逃げろ!結衣ーーーーッ!』
そこで、私の意識が完全に覚醒する。そうだはちまんは!?あの時はちまんはこちらへ走ってこようとしていた。私の後ろには、私を襲った誰かがいたはずだ。はちまんはきっと私を見捨てるなんてことはしない。だとしたら…きっとはちまんは…。
そこまで考えて私はベットから起き上がる。見渡してみてもやはりそこは知らない場所だった。しかし、監禁されたり、そういった感じの雰囲気ではない。
はちまんが助けてくれたの…?
だとすれば、近くにいるのかもしれない。と、私はドアをあけはちまんをさがす。すると、すぐに近くから声が聞こえることに気がついた。この声はちまんと…ゆきのん!
その事に気がついて、私は意気揚々とその声の元へ歩いていく。やっぱりはちまんが助けてくれたんだ!それにゆきのんまで!そして、私が声のする部屋のドアノブへと手をかけたとき…私の耳に信じられない言葉がはいってくる。
「はちまんが…喰種になった…?ゆきのんも喰種………?そんな…うそ……。」
私はドアノブから手を離し自分のいた部屋へと戻っていった。
はい、とりあえず投稿です。
全体的にいそいで書いたのでやっつけ感がしますが…後で編集しなおして、最投稿します!