東京喰種:八   作:平和希

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ウタさん難しいよ。


第十話

「ーーーマスク…ですか?」

 

俺があんていくでバイトを始めてから三日程が経った。その日の閉店作業中に俺は店長と話していた。

 

「そう、マスク。君も持っていた方がいいと思ってね。」

 

「はあ…。」

 

マスク…。マスクって、あの口に付けるやつか?…インフルエンザの予防かなにかだろうか。てか、喰種ってインフルエンザとか風邪とかうつったりすんのかね。しかし、マスクとかつけたら俺完璧不審者なっちゃうんですけど。目が合っただけで通報されるまである。っておい、せめて俺に弁解させてから通報しろよ。…結局通報されんのかよ。

 

「あんた、たぶん違う事考えてる。マスクって顔を隠す仮面の事だから。」

 

そんな一人コントをしていた俺を霧島はそういいジト目でみてくる。なんだよ…普通マスクっていわれてそっちの方でてこねーだろ。

 

「はぁ、仮面ね。一体なんでそんなもん…。」

 

「素顔を隠す為だよ。…喰種捜査官からね。」

 

俺がポツリともらしたその疑問に芳村店長が答える。喰種捜査官…か。人間だった頃は俺達を守る存在だったが、今は警戒すべき存在なんだな。

 

「…イカれたクソ野郎共。私達を殺したくてウズウズしてる…。」

 

店長の言葉に霧島は憎々しげにそう続ける。こいつ…なんか喰種捜査官に恨みでもあんのか…?いや、喰種なんだから当然…か。でも、それにしても霧島のはかなり深いというか、そんな気がする。

 

「そいつらと素顔晒してやりあって、もしも決着がつかなかったら面倒な事になんのよ。」

 

…だからマスクを着ける。と、霧島は続けるとそっぽを向く。…なるほどなんとなく分かった。

 

「顔と正体を一致しないようにする為か…。」

 

「うん、その通りだ。…というわけでトーカちゃん。」

 

「…はい?」

 

「次の休み、比企谷君のマスク作りに付き合ってあげてくれない?」

 

「はっ!?」

 

店長のその言葉に霧島は心底嫌そうな顔で驚く。そして俺の方を睨みつけ、店長に反論する。

 

「なんで私が休日にわざわざこんな奴と…!」

 

そういい霧島はビシッと俺を指さす。…どうも、こんな奴です。まったく、こいつは礼儀ってもんがなってねーな。年上は敬えって教えられなかったのかよ…。しかし、まあ霧島の意見には俺も賛成なのだが。

 

「…こんな奴で悪かったな。…店長俺も一人の方が気が楽なんすけど。」

 

俺は店長の方を向きそう告げる。しかし、店長は困ったように笑うと。

 

「比企谷君一人じゃ迷子になるだろうし…、ウタ君と二人きりじゃ彼も怖がっちゃうでしょ。」

 

「…た、確かにそうですけど…。」

 

え、そこで押し負けちゃうのかよ。もっと粘ろうぜ?そんなにウタ君って人怖いの?行きたくなくなってきたんだけど…。

 

「…でも、それなら雪乃さんにでも頼めばいいじゃないですか。」

 

「それが…、四方君から聞いた話なんだけど…、捜査官が二人ウチの区にきたらしくてね、雪乃ちゃんは四方君とそっちにあたってもらってるんだよ」

 

「………!!」

 

店長のその言葉に霧島は驚愕の表情を浮かべる。しかし、それは俺も同じで店長の言葉に衝撃をうけていた。

雪乃が…捜査官の対応にあたっている………?まさか、捜査官と戦ったりしているんじゃ…!

 

「店長、雪乃がそうさ「もやしぃ!」…うへぁ!?」

 

俺が店長に雪乃の事について聞こうとすると、横から入った霧島の怒声に遮られてしまう。…変な声出ちまったじゃねーか、てかもやしって…。

 

「土曜4時半に新宿駅東口…。遅刻したらぶっ殺す。」

 

「…………………了解。」

 

そういいぎろっと睨んでくる霧島に、俺はそう答えるしかないのだった…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……………おせぇ。」

 

土曜新宿駅東口。

 

俺はため息混じりに時計を確認する。すると既に時刻は5時を回っていた。…クソ、あいつバックれやがったな………。

こんな事なら店長に場所聞いとけば良かった…と俺がもう一度ため息をついた時、不意に後ろから嫌な気配がする。咄嗟にその場から立ち退くと、さっきまで俺がたっていた場所を何かがぶぉんと、音を立てながら空をきる。

 

「ッチ、クソ、生意気。」

 

そんな声がし、そちらへ顔を向けるとそこには霧島が立っていた。こいつ…遅刻した上に蹴りかまそうとするなんて、性格悪すぎだろ…ぜってー友達いねぇな。

 

「…おせぇよ、もう集合時間過ぎてんぞ。」

 

「…うっさい。」

 

俺がジト目で霧島にそう言うと、霧島はバツが悪そうにそっぽを向き歩き出す。

 

「…なんなんだよ。」

 

俺はまたもやため息をつくと、霧島のあとを追いかけるのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…ここ。」

 

霧島の後をついていき、街の路地を奥へ奥へ進むこと数十分、俺達は目的の店へたどり着いた。…なんかすごく怪しいんですけど。

 

霧島は趣味の悪いーーー独特なデザインのドアノックで扉を叩くとドアを開ける。ギィと音をたて開かれた扉の先にあったのは…。

 

「なんだここ…。」

 

黒と白のチェック柄にタイル敷き詰められた床、仮面のかけられている壁、そして、マスクをつけられた骸骨…。まるで、悪魔の城の一室ような、そんな不気味な雰囲気の漂う空間だった。

 

「ウタさーん?いますかー?」

 

そんな雰囲気にあてられ入るのを躊躇う俺。しかし、霧島はそんな俺に構わず店の中へと入っていく。…魂くわれたりしねえよな。

 

俺は霧島に続き店内へとはいる。霧島がウタさんとやらを探している中、俺は店内を見て回る。

 

「………ん?」

 

そんな俺の目にローブのかけられた何かが目に留まる。…なんだこれ?なんでこれだけローブなんか…。

俺がその何かへと顔を近づけた時だった。バッ!とローブから何かが飛び出す!

 

「うおおおお!?」

 

俺は突然の事に思わず尻餅をつく。イテテ…と目を開けると誰かが俺の顔を覗き込んでいた。

 

「………何やってんですか………ウタさん。」

 

その誰かを霧島はジト目で見つつ、そういう。…ってこの人がウタさんなのか?…一体何の為にこんな事を。

 

「………………ビックリさせようと思って…。」

 

「…………。」

 

………さいですか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ウタさん。喰種のマスク作ってくれる人。」

 

「ウタです…。」

 

俺は改めて霧島にウタさんを紹介される。そのウタさんという人物はピアスにタトゥー…と、すごい見た目をしている人物だった。そして、わざとなのか知らないがその両目には赫眼が出っぱなしにされている。…ほんと悪魔かなにかみたいな感じなんですけど…。

 

「比企谷です。…よろしくおねがいします。」

 

俺がそう自己紹介すると、ウタさんは俺の顔を覗き込んでくる。

 

「君が芳村さんが言っていたコか…。」

 

ウタさんはそういうとクンクンと、俺の匂いを嗅ぐ。…って、なんだっ、ほんとに食われたりしねーよな!?

 

「…匂い、変わってるね。」

 

ウタさんはビビる俺に構わずそう告げる。に、匂い…?元人間ってバレたら食われたりしねーよな…。ってさっきから俺そればっかだな…。

 

「ウタさん…怖がるんで。」

 

「ああ…ゴメンゴメン。」

 

霧島のその言葉にウタさんは俺から体を離す。おお、霧島助かったぜ。今回は感謝してやるぞ。

ウタさんはそのまま作業台のような所へ向かい、カチャカチャと道具のようなものを用意しつつ、口を開く。

 

「…彼のマスクがいるんでしょ?トーカさん。」

 

「はい…。ウチもちょっと警戒しなくちゃいけなくなったんで。」

 

「…捜査官が彷徨いていたらしいね。蓮示くんが見つけたって。」

 

「ああ…ハイ。四方さんが…。店長に聞いたんですか?」

 

「うん。」

 

二人の会話に俺は耳を傾ける。なにか、情報を得られる気がしたからだ。

 

「20区は大人しいからあの人たちも放置気味だったのに…。」

 

20区が…大人しい…?

 

あの20区が大人しい…のか?そんなバカな。

俺はその事について訪ねようとしたのだがその後の二人の会話に声を詰まらせる。

 

「やっぱりリゼさんの影響かな…。」

 

「だとしたらホントあの女最悪ですよ…。」

 

「でも、リゼさんは陽乃ちゃんに倒されちゃったのにね。」

 

「ええ、でも…陽乃さんも………。」

 

「待ってくれ!」

 

俺は二人の会話に思わず声を荒らげる。そんな俺をウタさんと霧島は不思議そうに見てくる。

 

「陽乃さんの事…知ってるんですか………?」

 

俺のその質問に霧島は目を逸らし、ウタさんは…。

 

「とりあえず、座ってサイズ測ろうか。」

 

そういい椅子をポンポンと叩くのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いくつか質問。アレルギーはある?ゴムとか金属系…。」

 

あの後椅子に座り顔のサイズを測り終えた俺は、ウタさんにマスクを作る上での必要な資料という事でいくつか質問をうけていた。

 

「いえ特に…。」

 

ウタさんはふむ…というと俺の顔をまじまじと観察し始める。

 

「君…。面白い目をしてるね。」

 

「そうっすかね…。」

 

ただ濁っているだけですけどね…。と俺はウタさんから目を逸らす。

 

「うん、孤独を知っている目だ…。それだけに強い意思を感じる。だけど…。」

 

「寂しがりやの目でもある。」

 

「………ッ!」

 

俺はウタさんのその言葉に息を呑む。俺が…寂しがりや………?そんな事はないはずだ。俺はずっと一人で過ごしてきたのだから。あの二人に…出会うまでは。

 

「うんうん、いいね。インスピレーションが湧いてきたよ。」

 

「そう…ですか。」

 

「陽乃ちゃんの事だったっけ?」

 

「…ッ、はい。知っている事を教えて貰いたくて…。」

 

突如振られたその話題に俺は思わず食いつく。まさか、こんなところで陽乃さんについて情報を得られる機会が来るなんて…。

 

「…恋人かなにか?」

 

「いえ…そんなんじゃないです。」

 

「…ふぅん。でもね、陽乃ちゃんについてはぼくもそんなに知っているワケじゃないんだ。」

 

「そう…ですか。」

 

「ぼくなんかよりも、芳村さんや雪乃ちゃんに聞いた方がいいと思うけど。」

 

「…確かにその通りなんですけど。」

 

店長には一度聞いた事があるのだが、今はまだ知らなくていいとやんわりと断られた。…雪乃には…正直この話題を出してもいいのか分からずに聞けずじまいだった。

 

「陽乃ちゃんもね…最初はあんていくで働いていたんだ。」

 

「陽乃さんが…あんていくで…。」

 

「人気のウェイトレスだったよ。その見た目や人当たりの良さも相まって…ね。彼女は僕が作る前からいくつもの仮面を持っていた。外側ではなく、その内側にね。…彼女はその仮面を使い分けて、東京(ここ)でも上手くやってたんだ。ただ…。」

 

「リゼさんが20区に来てからそれが変わった。」

 

「リゼ…さん?」

 

リゼさんって…誰だ…?

 

「リゼさんは大食いと呼ばれ、凄く強い喰種だったんだ。そんなリゼさんが20区にきて、食い場が荒らされるようになった。…陽乃ちゃんは、そのリゼさんを倒したんだよ。…たった一人でね。」

 

「…そんな事が。」

 

陽乃さんが…そんな事を。

 

「ただね、それだけじゃないんだよ。」

 

「………え?」

 

「陽乃ちゃんはね、食べたんだ。リゼさんをね。」

 

「………っ!」

 

陽乃さんが…喰種を食った?てか、喰種が喰種を食うなんて、そんな…。

 

「まあ、ただの噂なんだけどね。」

 

「そう…ですか。」

 

だから、二人であんていくに入ったとき…。

 

「比企谷君。君のことは芳村さんから聞いたよ。…陽乃ちゃんの臓器を移植されて喰種になったって。」

 

「………はい。」

 

「そっか…。ただね、僕興味があるんだ。」

 

「興味?」

 

ウタさんのその言葉に俺は首を傾げる。…一体何のことだろうか。

 

「うん、君が陽乃ちゃんの臓器で喰種になったとして…、君の中にいるのは一体…。」

 

「どっちなんだろうって。」

 

「………?」

 

そのウタさんの言葉を俺は理解することが出来なかった。どっち…?誰がいるって…一体。

 

俺の中に何がいるっていうんだ………?

 

 

 




第十話でした…。

いやぁ、地の文がとても難しいです。てか、リゼ出さないとか言ってたのに結局出すっていう…。謎が深まるばかりで正直俺もついていけてないんですけど………。

と、まあ弱気はここまでにして。今回はウタさんとの話でした。そして、八幡のマスクを作る話でもありました。八幡のマスク…どんな風になるんだろ。俺の中では固まってるけど上手くかけるかな…。

そして、お気に入り件数が120突破致しました!皆さんほんとにありがとうございます!
これからどうぞ、御愛読をよろしくおねがいします!
それではまた次回!
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