東京喰種:八   作:平和希

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まだ、月曜ではありませんが....、
今週の更新が遅れた分もう更新しちゃいます!


第五話

「はあ....。」

 

東京20区…。俺は帰路につきながらため息混じりに携帯をみる。時刻は既に11時を回ろうとしてる。

....すっかり遅くなっちまったな。

 

あの後、結衣と小町とカラオケに行った俺はなんと8時間以上も拘束され、その後結衣と、もう千葉へ帰らなければならない小町の二人を駅まで送り、改札口のむこうへと消えていく姿を見送った時には、現在の時刻に至っていた。

 

「....はぁ........。」

 

まったく、この前襲われたばかりだというのに....と俺はもう一つため息をつく。もっとも、あの二人は俺が喰種に襲われたという事を知らなかったのでーーー二人は俺が怪我をして手術をしたということしかしらなかったので、俺も適当に茶を濁らせたーーー文句の言いようがないのだが。

とにかく早く帰らないとな、と思ったとき、自分が久々に一人だという事に気づく。

そんな俺の頭の中で様々な思考がめぐる。あの夜の事。陽乃さんの事。自分の身体の事。そんな中でもっとも俺の脳裏をよぎるのはあの夜の陽乃さんの姿だった。

陽乃さんについては、俺は未だに気持ちに整理を付けられずにいた。なぜなら様々な感情が、俺の中でごちゃごちゃになっているからだ。

…俺を襲ったこと、今まで隠していた事への憤りや、そんな感情を持っている自分への自己嫌悪。陽乃さんが死んだ事への悲しみ。自分の知り合いに喰種がいたという事実へのショック。様々な感情が俺の中ごちゃまぜになっていた。そして俺を一番惑わせているのは、あの夜月明かりに照らしだされた陽乃さんが見せた、儚げな表情だった。

....あの夜の陽乃さんの行動には、きっとなにか理由があるはずだ。俺はその理由を知りたい、知らなければならない。…そんな気がする。

どうすればいいのかは分からないが…。

 

と、そこで俺の腹がグウウウと低くなる。

 

「…はら、減ったな。」

 

こっちもどうにかしねぇとな…。と、俺は腹を撫でる。食いもの…か、なんとかなんないものか。いつまでも干し肉をもらい続けるわけにもいかねーし…。

 

「ん....?なんだ、この匂い....。」

 

空腹に頭を悩ませながら歩いていると、どこからともなく漂ってきた匂いが俺の鼻を刺激する。この匂いは....。

 

「うまそうな....匂い........!」

 

俺は、自分がその匂いへ食欲を感じている事に気がつくと、喜びに身を震わせる。

この匂いの元に俺が食べられる何かがある....!

そう考え至った時には、既に俺の足は早足でその匂いの元へと向かっていた。

 

「はあっ....はあっ........」

 

いつの間にか走り出した俺は、走っているうちにどんどんと、匂いの元へと近づいているのを確信する。

 

あの角だ、あそこを曲がった先に....!

 

「えっ............?」

 

角を勢い良く曲がった俺は立ち止まり、自分の目に飛び込んできた光景に呆然とする。てからは、パサっと干し肉の入った袋が落ちるが、そんな事構ってられない。

 

俺の目に飛び込んできたのは、まず肉塊....バラバラに切り刻まれた人の死体。そして、それを貪る、人間の姿だった。

 

....いや違うあれは....。

 

「んん....?なんだぁ....?」

 

そう言い振り向くそいつの目は真っ赤に染まっていた。

あの夜の陽乃さんと同じ........。

 

こいつは........喰種だ............!

 

「くっ...。」

 

くそっ、まさか喰種と出くわすなんて…!どうすればいい…?!

俺はなるべく喰種を刺激しないように2、3歩後ずさりし、この場を脱する機会を伺う。

 

「なんだぁ、てめぇ?人間か....?いや、けど微かに違う臭いが....ん?」

 

そんな俺の事を上から下へと観察していたその喰種はある1点でその視線を停める。

その視線の先にあるのは俺の持っていた干し肉だった。なんだ....?あの干し肉が気になってるのか?その喰種はスタスタと干し肉に近づくとーーーその喰種が近づいた分俺も後ずさりするーーー干し肉を拾い、クンクンと匂ったあと、干し肉をひと切れ丸呑みする。

そして、しっかりと吟味した後、それを飲み込む。そして、眉に皺をよせ言い放つ。

 

「なんだ、これ....。人間の干し肉じゃあねえか........。て、ことはお前も喰種か?」

 

「………は?」

 

え............?こいつ、なんていった?

あの干し肉が....人間の肉............?そんなバカな....。だって、だって、俺はあの干し肉を普通に........。

 

瞬間、俺の中でこれまで感じていた疑問へ次々に解がだされる。

ーーー『 ここからは、真偽の程は定かではないのだが....面白い話があってね....。彼ら、舌の作りが我々と違うから....食べ物がめちゃくちゃ不味く感じるらしい。 』....『不味い....』....『やっぱり俺の味覚....おかしくなってるみたいです』ーーー

カチ、カチとハマっていくピース。

そうかそうだったのか………。

 

「あ、あぁ............。」

 

あの新聞にのっていた記事…、俺に移植されたのは陽乃さんの臓器………。俺の倒れていた近くで、鉄骨が降り注ぐという事故にあって、死んでしまった女性。つまり....俺の腹に移植された臓器は....陽乃さんの臓器だったんだ............。

 

「あぁ....あああ........っ」

 

異常なまでの回復力、おかしくなった味覚............そうか、そう言う事か............俺は、俺は............。

 

「そんな…そんなことって………!」

 

............喰種に、なってしまっていたのか............っ!

 

「俺が…喰種?そんなバカな…!」

 

あまりのショックに俺はその場に崩れ落ちる。

ありえない、人間が喰種なるなんてこと…!そんなことが………!

 

「はぁ?何言ってんだてめえ、どっかで頭打って記憶とんだか?」

 

目の前の喰種が何か言っているが。俺はそれに構う余裕などない。俺の思考はショックで完全に停止している。

 

「....っチ、無視かよ。この糞ヤローが。俺の食事邪魔しやがったんだ。お前さ、死ねよ?」

目の前の喰種が陽乃さんの触手と似ている、尻尾のようなものを腰のあたりから出現させる。その矛先は俺へとむいていた。

しかし、俺はもう、目の前の喰種の事なんて頭になかった。頭では逃げろ、と警鐘がならされている。が、足が動いてくれない。ただその光景を傍観するだけの俺。

 

「じゃあな、クソったれ....っ!」

 

「....ッ!........え....?」

 

そして、目の前の喰種が尻尾を俺へ振り下ろした時…。

俺の視界を黒が埋めつした。月明かりにさえも飲み込む程の艶やかな....黒が........。

 

「ガハッ?!」

 

その黒は先程まで俺を殺そうとしていた喰種を思いっきり蹴っ飛ばす。そのケリにあっけなく喰種は吹っ飛ばされてしまう。

 

「な………。一体何が…。」

 

俺は改めて目の前に現れた存在に目を見やる。こいつも....喰種なのだろうか。いや、そうなのだろう。こんなありえない身体能力、普通じゃない。

俺を助けた....のか?いや違うな、こいつも俺を殺すんだろう。喰種なんて....結局そういう存在なんだ。

 

と、その時。その喰種が黒髪をなびかせながら、こちらを振り向く。

俺は自分を殺す奴の顔くらい拝んでおこうとその顔を見て、そして、「へ....?」と素っ頓狂な声を漏らす。

 

「は....?パンさん........?」

 

その喰種は顔にパンさんのマスクをつけていたのだ。

....いや、いやいやいや、は?パンさん?え?なにそのギャップ。目の前に現れた喰種が、喰種を蹴っ飛ばして、んでそいつはパンさんで....?

 

あまりのギャップに、戸惑っている俺へ、目の前のパンさんは拳を振り上げ、そして、俺の意識を刈り取るのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

以前、俺達がまだ高校二年の時のことだ。

雪乃とこんな会話をした事があった。

 

その日、結衣は三浦たちと遊ぶとかで部活には来ていなくて、俺と雪乃は2人で静かに読書にふけっていた。いつも通りなら部活が終わるまで特に会話もすること無く、黙々と読書をするだけなのだがその日だけは違っていた。

 

「比企谷君。」

 

「んぁ?」

 

あ、やべ。変な声出た。

 

いつもとは違い、結衣がいない部活。そのせいか、静かな時間が流れている部室で、俺も雪ノ下も黙々と読書に勤しんでいたのだが…。その沈黙を破る声があった。その声の主は意外にも雪ノ下だった。

 

「何だ?」

 

変な声を出してしまった恥ずかしさから、俺は咳払いした後、雪ノ下にそう聞き返す。

 

「いえ、大した用事があると言うわけではないのだけれど、ただ、その比企谷君が読んでいる本…。」

 

そういい、雪ノ下は俺の手元にある本に注目する。

俺は読んでいたページに栞を挟むと、本を閉じ、雪ノ下に表紙が見せてやる。

 

「これか?」

 

「ええ…。やっぱり、カフカの毒虫よね。」

 

やっぱりって大体わかっていたのかよ。さすが学年主席。その実力は折紙つきだ。

 

「そうだが…。」

 

俺はそういい、それがどうかしたか?といったニュアンスをもたせた目で雪ノ下をみる。

 

「なぜ、その本を?」

 

「いや、なぜって………。」

 

俺は、その雪乃の質問に答えあぐねる。

恐らく雪ノ下の質問は、俺が何故その本を読んでいるのか?と言う意味だろう。って、何だよそれ。俺がカフカの小説読んじゃいけねーのかよ。

 

「…ただ、前に読んだのが中学の頃だったからな。また読みたくなったからってだけだが…?」

 

「そう…。」

 

「なんだよ、カフカ嫌いなのか?」

 

俺のその質問に雪乃は目を伏せると、気まずげに答える。

 

「いえ…、そういうわけではないのよ。ただ…その本だけは、内容があまり…。」

 

「そうか、…意外だな。お前にも本に苦手な物があるなんて。」

 

「ええ…。どうしても毒虫になった少年と自分を重ねてしまって。」

 

「あぁね。」

 

確かにお前めっちゃ毒吐くもんな。まあ、かくいう俺も昔はもし自分が毒虫になったら…と、暗い想像をしたもんだ。まあ、毒虫になった自分の状況を想像したら現状とたいして変わらなかったんですけどね。ははは、…わらえねー。

 

「ねぇ、比企谷君はもしも自分の友人…はいなかったわね。知人が毒虫になったらどうする?」

 

「うるせえよ、質問に混ぜて巧妙にディスるのやめろ。…知り合いが毒虫になったらねぇ。」

 

これは新しいタイプの質問だ。自分でなくて周りの人間が毒虫になったらか…。

 

「…そんなもん、何もできるわけねーだろ。そいつの気持ちなんて、同じ土俵にたってる奴にしかわからねーんだ。なら、同じ土俵にすら立っていない俺がそいつの助けになれるとは思えん。」

 

「…そう、よね。ごめんなさい、おかしな事を聞いて。」

 

そういい、雪ノ下は俺から目を逸らすとそっと本を開く。

 

「別に構わんが…。」

 

俺はそんな雪ノ下の態度を訝しみながらも、再び本を開き読み出すのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ん....んん........うっ........。」

 

朝、俺は鈍い痛みのする頭を抱えつつ、目を覚ます。

懐かしい夢をみた....。なぜ今になってあの時の事を....。

 

だるみを感じつつ身体を起こし、周りを見渡すと、ここが自宅だということにきづく。あれ....?俺は、昨日退院して....結衣や小町とカラオケにいって....それから....。

 

そして思い出す。あの悪夢を。

 

「....喰種になっちまったんだな........俺。」

 

そう言えば、どうして俺は生きているのだろうか、昨日の最後の記憶は....。

 

「パンさん....何者だったんだ。あいつ。」

 

俺をここまでパンさんが運んだのだろうか。なぜここを知っているんだ....?もしかして、俺の知り合いなのか....?

 

そう考え、俺は頭をふる。これ以上身内に喰種がいてたまるか。多分、無意識に自分でここまで帰ってきたのだろう。

そう結論づけると、俺はその事について考えるのを止めた。

 

ベットから身体を起こすと、腹が鳴る。....そう言えば昨日の朝から何も食ってなかつたっけか....。

しかし、俺は食事をする気にはなれなかった。当然だろう、もう俺は....人間の肉以外、何も食べられないのだから....。

 

ともかく、だるい頭をさっぱりさせたいと思った俺は、洗面所に顔を洗いにいく。

 

「............クソッ!」

 

しかし、洗面所につき、鏡で自分の顔を見た瞬間、俺はその顔を殴りつける。鏡がパリンッ!と割れ、俺の拳が傷つくが....その傷もあっという間に塞がってしまう。

 

「…なんだってんだッ………!」

 

あぁ....ついに俺は....頭の片隅にあった、昨日の事が全て夢なのではないか....という淡い期待さえも、打ち砕かれてしまった。

 

鏡には....左眼だけが赤く変化した毒虫(おれ)が映っていた....。

 

 




八幡が遂に自分が喰種なっていると気がつきましたね…。
干し肉は完全にオリジナルです。
ちなみに今回出てきた喰種は錦です。別に隠すような事でもないのでいっちゃいます。笑
パンさんの方はまだ秘密です!まあ、おそらくほとんどの人が気がついているとおもいますが…。
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