目が覚めたら禪院直毘人 作:余裕T
真希が恵から遊雲を受け取り、いよいよ4人で取り囲むことになった。
俺がフリーズし、フリーズ中のところを残り3人でめった打ちにするというなんとも残虐性の高い構図が出来上がる。ただ奴の方も黙っているのではなく反撃してくるのだが、恵がその全てを汎用性の高い影で阻止してくれていた。
しかし、その状況も長くは続かない。
なにか背筋が凍るような視線を一身に受け、身動きができない。
瞬間、背中に強い衝撃が走る。
「グハッ なんなんだ今のは」
背中が物凄く痛い。
10mほど吹っ飛んだが、空気をフリーズすることで衝撃を抑えることでギリギリ致命傷には至らなかったようだが。
一体誰がこんなこ、、、
確認をするために顔を上げるとそこには伏黒甚爾が立っていた。
、、、嘘だろ、、、どうゆうことだ?
なんで伏黒甚爾は俺にむかってきた?
奴は俺が想定外の事態に動揺している隙を見逃さずに腕を治癒して掌印を結んだ。
「領域展開 《
周りの風景が南の孤島の浜辺みたいな場所へと切り替わる。
「これが奴の領域か」
案外暑いな、てか普通に遊びに来たいぐらい良いビーチじゃん。
いけない、いけない。思わず現実から目を背けようとしてしまった。
今目の前に伏黒甚爾がいて、対峙しているんだからネ。あははは。
だがしかし、そうすると俺の実力は陀艮の実力を上回っているということ、、、だよな?
未だにそんな実感が湧かないが、もはや腹を括るしかない。
両者の間に沈黙が流れる。
片方は相手の動きを探るように、もう片方はそれを興味深そうに見つめる。
瞬間、轟音が空気を揺らし、砂が舞い上がったのを合図に戦いの火蓋は切られた。
俺は左からくる蹴りをバックステップで躱し、詰め寄ってくる甚爾の突きを宙に舞って避ける、未だに攻撃は仕掛けず隙を伺う。
フリーズをかけるにしても接近しなければならず、直毘人の術式に対応できる甚爾を相手にそれをするのはあまりにもリスクが高すぎる。
術式を使ってようやく対等に動けてる感じだけど、速すぎないか甚爾、、遠距離攻撃をする暇もないな。
対する甚爾は戦うことへの愉悦を感じる満面の笑みでを追いかけてくる。
その戦闘狂っぷりが怖いよ、、、
俺にとって幸いなことに恵が領域展開してくれているおかげで領域に付与された必中効果の影響を受けない。
ただ、恵と陀艮は現在、領域の押し合いをしている状態なのでその均衡がいつ崩れるか分からないため、早く甚爾との決着をつけなければならない。恵が領域の押し合いで勝つことはほとんどあり得ないのだから。しかし、真希とナナミンが護衛しているようなので術者本人が叩かれることはまずないだろう。
俺は一旦海上に逃げてみるが、甚爾は0.1秒単位で足を動かし、海面を蹴って追いかけてきた。
えぇ、どんな身体能力してんの?ほんとに。
なお、理論的に直毘人も術式によって1/24秒単位で足を動かし、海面を走っているので同じようなものである。
こんな鬼ごっこをしていても全くもって意味がないので、落花の情 [身体中に呪力を纏いその呪力に触れてきたものに対してオートでカウンター呪力攻撃をするという禪院家相伝の秘技なのだが、やってみたらなんか使えた]を発動しながら反転してひと息に間を詰める。
一か八か、通用してくれ!!
甚爾と並行に走り、ついに拳が飛んでくる。だがそこで術式を解除し、落花の情を一か所に絞り最大限練り上げた。
(カウンターを喰らわせることができれば、腕を傷つけることができるし、もしできなくても隙はつくれるはず。)
次の瞬間、視界の左端に足が見えたと同時に目の前が暗くなった。
(死んだのか、、、やっぱり勘づかれてたな。
この世界に転生して数時間で死ぬとか、、思えば生きているっていう実感も湧かなかったな。まぁこんな地獄みたいなところにいきなり放り出されたのが1番意味わからんけど!!
最後まで見届けたかったなぁ
死にたくない死にたくない死にたくない!)
さっきまでゲーム感覚でやってたが、急に生への執着が湧いてきた。死んでからでは遅いのに。
(前世はふわふわ流れで生きているだけで、ただの社会の歯車だった。取り替えの利く部品、、、人生の最後にこんな夢を見ることができて良かったよ。)
勝手に諦めムードになっていたがその時奇跡は起こった。
突如前方が明るくなったかと思えば、白い光を放つ球体に二重のオーラついたような物体があった。
(これは、、魂? つまり、これが俺の呪力の核心か!)
触れてみると溢れてくる呪力の実感、真髄をほんの少しでも理解できたきがした。
(この二重のオーラは禪院直毘人と俺の魂が重なっているということか?
だから術式が苦もなく使えて、呪力にも抵抗を感じなかったのか。)
身体がみるみるうちに再生されてゆくのを感じる。
そして俺は決意した"全力で生きて、楽しんでやる!"と。
どうやら頭をかち割られてしまっていたようだが、反転術式で完全に治し、呪力の核心に触れたことで気分は最高にハイだ。
「天上天下唯我独尊」
「今は最高に気分が良い。絶好調!絶好調ぅ〜!」
生き返った俺を見た甚爾は、まるで新しいおもちゃがきた子供のようにニチャッと顔を歪ませた。
それに応えるように俺の方も笑いかけて、走り出す。
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
甚爾の周りを音速を裕に越える速さで駆け抜け、踏み抜いた大地にはマンホールほどの大きさのクレーターができている。
あの伏黒甚爾ですらついていけない速さ、甚爾は構えの形で攻撃を待つ。
背後から狙うと気配に勘づいて蹴りをいれてきた。
やはりフィジカルギフテッド、さすがだ。しかし、今回はそれが目的。
「術式拡張・投射強制 」
この技は投射呪法を"拡張"することでできた技である。
具体的に言ってしまえば、身体中のどこで触れても相手にフリーズをかけることができ、そのうえフリーズは時間が10秒に拡張され、重ねがけと無限のストックが可能になった。つまり、限りなく永遠に近い時間フリーズすることができる。そのため、触れたら終わりの最強ぶっ壊れチート性能なのである。
ちなみに1秒間に動ける動作の回数も増えて倍の48フレームになった。
いや、チート過ぎるでしょ!?
甚爾がフリーズしたので、高速でちょんちょん指でつつくまじで地味な作業に移った。
外からみたらダサい構図でだ。
これのせいでハイな気分がどっかへいっちまった。
てか甚爾さんニタニタしながら止まってんの怖!?
家の前に置いたら絶対誰も近づいて来なさそう。
そんなくだらないことを考えながらとりあえずフリーズを重ねまくって、俺が術式を解除しない限り数時間は動けないようにした。
簡易獄門疆の完成である。
あらかた片付いたのでまだ遠くで戦ってる真希達を助けにいかなければ。
そう思って駆け出してゆく足どりはとても軽かった。(物理的に)