星に願いを   作:ハレル家

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 遅れてしまって、申し訳ない。

 季節の変わり目になると、毎回体調を崩して風邪を引いてしまう作者です。

 風邪を治して、テンションを元に戻そうと忙しくて見れなかった劇場版チェンソーマン見て、しばらく思考が『デンレゼ最高!』に染まって動けませんでした。


ただ自然と脱げていた

「いやはや、ウチの生徒が迷惑をかけてしまい申し訳ない」

 

 時間にして数十分後、落ち着いたのか教師陣は椅子に座ってイチヤに礼を言う。

 

「いえ、助けてくれたんで大丈夫っすけど……」

「あぁ、アルデバラン少女のことですかな」

 

 しどろもどろになるイチヤ。しかし視線は目の前の学園長やタコの界人の教師ではなく、別の方向――具体的には自分の隣に向いていた。

 

「……生まれ変わったら、貝になりたい……」

「えっと、その」

 

 そこには、下半身は女性の足、上半身はタコの触手が何重にも巻かれて毛糸玉のような球体となったキャトルがいた。オルティナが慰めているが、効果は薄いように見える。

 

「お気になさらず、この一件で自重してくれれば此方側としてもありがたいです」

「彼女は優秀なのですが……好きな物が絡むと良くも悪くも一直線になってしまうので……」

 

 スバルとパスカルがイチヤに気にしない様に言い、イチヤはホラゲーに登場しそうな見た目のキャトルを気にしながら目の前の二人の会話に戻った。

 

「まずは生徒に助力して頂き、ありがとうございます」

 

 スバルとパスカルが頭を下げ、イチヤに感謝する。その様子にイチヤは動揺する。

 

「いえ、そんな、オレ自身、勝手に首を突っ込んでいったようなモノですし……そんな、礼だなんて……」

「謙遜せずに受け取ってください……アナタの行動で引き寄せた結果なのですから」

 

 普段からなのか、素直に礼を受け取れない彼にパスカルは微笑んで受け取るように勧める。パスカルの口元の触手が揺らめくも、彼の声色から喜んでいると察せる。

 

「アナタの噂は生徒達から耳にする事があります……パンイチで動き回る珍獣がいるとか、パンイチで強い変質者がいるとか、パンイチで依頼を解決する変人がいるとか……」

「すいません。何でパンイチオンリー? 他の仕事もしてたと思うんすけど」

 

 訂正、変な噂を思い出して笑ってただけだった。

 予想外の変化球に照れてたイチヤもスン、と無表情に戻って指摘する……パスカルの口から出た噂にイチヤの隣にいたオルティナは二度見し、キャトルは触手の隙間から疑惑の視線をぶつける。

 

「……まぁ……人それぞれ、と言いますし……」

「すいません! 誤解してると思うんですけど違います! 決して露出狂とか、そういう類じゃないです!!」

「違うのですか?」

「全然違います!! よく聞いてください。そして誤解しないで欲しい……いいですか、オレは服を脱ぐつもりはなかった」

 

 スバルがパスカルの言葉を信じてしまった様子にイチヤは異議を唱える。パスカルの指摘を否定し、イチヤは前置きをしてから確信を持って答えた。

 

「……『ただ自然と脱げていた』……オレの言っている事わかりますよね?」

『『『いいえ、微塵も』』』

 

 誰も、イチヤの言い分を理解しなかった。

 残当である。

 

「何故だ!?」

「いえ、こちらの台詞ですよ……どんな経緯があって、そうなるのですか?」

 

 理解してくれない事に大きな疑問と共に叫ぶイチヤにオルティナは呆れた視線で見る。

 

「……ふむ……やはり警察の方が言っていた『要注意人物リスト入りにリーチがかかってる』は聞き間違いじゃなかった様ですね」

「なんですかソレ!? 心当たりはあっても初耳なんですが!?」

「心当たりはあるんですね」

 

 スバル学園長の言葉に驚愕するイチヤだが、心当たりがある事にオルティナは冷静に指摘する。パスカルはイチヤの言葉を未だに宇宙の真理を垣間見た猫のような表情で思考停止してる。

 

「アナタは恩人ですが、我々にも世間体というのがあります……このままだと、アルデバラン少女は『変態に助けられた女子生徒』というレッテルが――」

「指、何本スか」

「早い早い。判断が早いです」

「少しは躊躇しましょう」

 

 スバル学園長の言葉にイチヤは自分の右手の指を左手で掴んで、逆方向に折り曲げようと力を入れようとし、判断の速さにパスカルとオルティナが待ったをかける。

 

「まぁまぁ、落ち着いて聞いてください……ここで一つ、アナタに提案を……」

 

 ノータイムで自分の指を折ろうとするイチヤを宥め、スバル学園長は一つの提案を語り始める。

 

「紡生さん、我が校に転入しませんか?」

 

 沈黙。スバル学園長の言葉を理解するのに暫く時間がかかったこの場の四人は、徐々に理解していき、大きな声をあげた。

 

『『『転入!?』』』

「えぇ、そうです」

 

 四人の反応にスバル学園長はカラカラと笑う。

 

「いや待って、どうして、そんなるんだ!?」

暁月(あかつき)学園長、犬猫を飼う感覚じゃないんですよ!?」

「学園長、ノリと勢いでやると身を滅ぼすだけですよ」

「ちゃんと理由を話してください学園長!!」

「落ち着きなさい。ちゃんと話しますから」

 

 各々の異論に対して、スバル学園長は冷静に解答する姿勢をみせ、四人に落ち着くように宥める。

 

「……そうですね……紡生さんを学園に入れる理由は軽く三つに分けられます」

 

 スバル学園長がオルティナに茶を淹れるように頼み、オルティナが人数分のコップにお茶を作り始める。

 

「一つ、安全を確保する為……今の紡生さんに後ろ盾はありません。黒い星遺物を持つ者や君の願望機を狙う者が多くなるでしょう」

「……願望機を狙うのってキャトルちゃんだけじゃないのか?」

「技術者という視点から見れば、義肢型とは違う形で一体化してる願望機は珍しいですからね……それが星遺物を装填できるとなれば納得です」

「……色々とごめんなさい」

 

 あまりわからないイチヤは近くにいたパスカルに話しかけると、技術者という観点で見ればイチヤの願望機は珍しい部類だと理解し、キャトルが興奮した理由がよくわかった。

 ……キャトルが暴走した自分を恥じて赤面してたが、見て見ぬフリをするのは(なさけ)だと思った。

 

「とはいえ、紡生さんは前の学校で問題を起こしているので、観察保護処分者として我が校に引き取った形になります」

「観察保護処分者って……もしかして界拓者って問題児が多いのか?」

「問題児が多いわけではありませんよ……まぁ、我が強い人達ばかりですが」

「……物は言いようだな」

「否定しませんが、一番あなたに言われたくないと思います」

 

 ここの学園に問題児が多い事を察したイチヤだが、生徒じゃないのにダントツで問題児判定されてる事にオルティナが指摘して、煎茶を入れたコップを置いていく。

 

「二つ、これは我が校側のメリットと言うべき点ですが……様々な依頼を君に斡旋して、君の願望機や星遺物のデータを取らせてもらいます」

「まぁ、そりゃそうか」

 

 学園長の遠回しな『君を実験動物(モルモット)にする』発言に他の三人の表情が強張ったが、イチヤは平然と納得する。

 

「……意外に冷静ですね」

「便利屋してると無料(タダ)ほど怖い物がないんで……やっぱ訂正、色々と怖い物あったわ」

「……台無しですよ」

 

 自信満々に言うイチヤだったが、不意にこれまでの依頼人を思い出して訂正する。少しばかりイチヤを見直した自分に後悔するキャトル。

 

「なるほど……あえて言いましたが、直情的ではないのですね」

「……まぁ、自分の事ですし……それにオレ自身もコイツの事を知る必要があるでしょ」

「ちなみに、女性が対象だった場合は?」

「ここが札幌ケンカ祭の会場になるだけだ」

「極端過ぎませんか? それに札幌は関係無いですし」

 

 ……少しばかり危ういですが、許容範囲ですね。

 

 キャトルの質問に澄んだ瞳で答えるイチヤに呆れを覚えるキャトル……その姿にスバル学園長は何かを危うく見る。

 

「最後にですが、これはとても重要です」

 

 イチヤに前置きを話し、注目するように言う。

 

「……君の星遺物を偽装する事です。時期を見て私から伝えますが、今の段階ではクラスメイトが空中分解する危険性があります」

「そんなに危険な物なのか、コレ?」

「えぇ、かなり危険です」

 

 スバル学園長の言葉にイチヤは白い星遺物を取り出す。白い星遺物は天井の照明に反射して純白に輝き、その様子を見たキャトルとオルティナは目を見開き、パスカルは横長の瞳孔を細める。

 

「白い星遺物……かつて時代を歩んだ先駆者達がそれを見つけ、星域の存在を主張した存在しないハズの星遺物です」

 

 スバル学園長の言葉に呼応する様に、白い星遺物は一瞬だけ輝いた。

 





 なお、キャトルの現状は上半身が触手を何重に巻き付いた毛糸玉よろしく球状、下半身が二足歩行の人間というホラゲーに登場しそうな見た目です。

 キャトルの状態がイマイチ分からない人は【黒神話:悟空】というゲームに登場する最強格の技の一つである【碧塵】を参考にしてください。

 夜道にあんなのが全力疾走してきたら、自分も全力で逃げます。
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