まずは話の流れー。
・セリフだけで文字数2500。
地の文かくぞー。
・セリフと合わせて倍の文字数5500。
最近はこんな感じになるのが多いです……書きたい猫写やシーンが、多すぎる……っ!!
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界拓者には必ず装備しなければいけないモノが二つある。
形は剣や銃のような武器型もあれば、携帯電話やベルトのような装備型など多種多様で大小様々なモノがある。
この二つは界拓者の武器であり、多くの人々の暮らしを支えるモノである。
夕方。空に浮かぶ人工太陽が徐々に下に沈んで下の界層に移動する最中なのか、橙色の夕暮れの空がゆっくりと暗くなっていく。
「ふぅ、これで暫くは大丈夫ね」
「今日も精が出るな」
食堂の仕込みをちょうど終えたタイミングで一界層の探索から帰ってきた年季を感じさせる壮年の男がリオに声をかけた。壮年の男性の右手にはガントレット型の
「お疲れさん、調子どうだ?」
「ぼちぼちだな。今日も少し早く来ちまったが、空いてるか?」
どうやら壮年の男は界拓者らしく、リオの家族が営む店で仕事帰りの一杯を飲もうとしているようだ。
「悪い。今日は料理の仕込みで定休日だよ」
「マジかぁ……行く予定だった店は今夜、大人数の貸切で飲めないから持ち帰りで宅飲みしようと思ったんだが……宛が外れたな」
リオの返答に壮年の男は残念そうな表情をみせて、少し困るようにぼやいた。ふと、リオは男の口から出た言葉に疑問を覚える。
「予定の店って、食堂ありあわせだろ? そんな大人数で予約できる団体なんて、この界層にいたのか?」
「他のやつから聞いた話だと、二界層にいたヤツラが親睦会を兼ねてここに来たらしい」
「親睦会? それこそもう一つ下の三界層が向いてるだろ。なんで一界層で親睦会なんか……」
「さぁな……まぁ、予算的なモンじゃねぇか?」
界層の環境を考えれば、三界層が向いてると指摘しても壮年の男は首を傾げる。金銭的な問題を考えれば妥当だが、何かに引っかかる事にリオは居心地の悪さを感じ始める。
「なんの話してるんだ」
二人の様子を心配したのか、誰かが声をかけてきた。声色から壮年の男は知り合いが来たのか、声がした方向に振り向いた。
「お、帰ってきたか便利屋。少し聞きたいことが……」
そこに、パンイチの変態がいた。
出かける前は服を着て、頭部の頭陀袋を除けば一般人スタイルだったイチヤの姿がそこにあった……彼の近くには少年が距離を置いて佇んでおり、精一杯の他人のフリをしている。
「おっと、野生のポリスメンが!!」
「待て! 早まるんじゃない!!」
言葉を失う壮年の男を余所にリオは素早くスマホを取り出して警察を呼ぶ不思議な番号を押して通話ボタンに指が触れる直前、イチヤがリオの腕を掴んで連絡を阻止した。
「なんでパンイチなんだよ。何があってそうなったんだよ」
「しょうがないだろ。まさか依頼人が変態ショタコンのオオアリクイの界人で、コイツが襲われそうになったから飛び出して戦闘になって、最終的に服が爆散したんだ」
「どうしよう。何一つ分かんねぇし、分かりたくもねぇ」
仕方なく理由を聞いても、何一つ分からない事にリオは頭を抱える。
「マー坊じゃねぇか。変態に襲われた奴ってお前のことか」
壮年の男はイチヤの側にいる少年――マー坊と呼ばれる黒い犬耳と尻尾が目立つ幼い顔立ちの界人に気さくに声をかけた。
「マー坊はよしてくれよ! オレはもう高校生なんだ! ちゃんと大人として対応してくれよな!」
「でも、お前の身長って人間の小学生と同じじゃねぇか」
「豆柴犬の界人だから、これ以上身長がのびねぇんだよ!!」
マー坊は壮年の男に大人として対応して欲しいとお願いするが、身長の事を指摘されて膝から崩れ落ちながら拳で地面を叩く……反応を見るに一番気にしていたようだ。
「まぁ、お前も二重の意味で災難だったな」
「おっさん、それはどういう意味だ? 場合によってはお前の服が爆散するぞ」
「増やそうとするな」
壮年の男のフォローにイチヤが反応し、変な事をしない様にとリオが釘を刺す。
「とにかく早く店に行って来いよ。昼に店主が手を貸してほしいってぼやいていたから、足りないんじゃないのか?」
「え、そうなの……なんか合コン開くって言ってたから行きづらかったけど、手が足りないなら手伝ってくる!」
リオの言葉にショックから立ち直り、急いで食堂ありあわせの方へ向かうマー坊。その様子にリオと壮年の男は苦笑を浮かべる。
「少年! 俺も行くぞ!!」
「「お前は行かんでいい」」
そして行こうとする
「何故だ! 便利屋として、人間として人助けする事は間違いと言いたいのか!!」
「鏡見てから言え」
「狙いが分かりやすいし、流石にパンイチはダメだろ」
まるで無実だと主張する罪人のように大声で言うイチヤだが、リオと壮年の男は呆れた目でパンイチである事を指摘する。
「コレは……そう、俺の勝負服だ! 女性の前に出ても恥ずかしくない!!」
「人として恥ずかしいけどな……変態の勝負服って意味か?」
「バカの勝負服だろ」
言い返そうにも服が爆散した事を思い出し、言葉が詰まるも逆転の発想で返したつもりかドヤ顔するイチヤだが、策士策に溺れる様子に二人の口から渇いた笑いが出た。
「俺は……女性から黄色い悲鳴を浴びてみたい、だけなんだ……ッ!!」
「悲鳴は出るな……ダメな意味でだけど」
「切羽詰まったような声をしてるが、要は女性にチヤホヤされたいって事だろ」
「違う! 全然違う!!」
切実な様子を見せて情を訴えかける作戦に出るも全てが裏目に出て、どんどん不利になっていく……ふと、リオの言葉にイチヤが何かを見つけたのか反論した。
「チヤホヤじゃない! モテモテになりたいんだ!!」
「同じだろ」
「……てか、それだったら『ハーレム作りたい』とか『自分を好きな人に囲まれたい』とかでいいだろ。星遺物も探せば魅惑とか魅了の効果があるやつも見つかるだろうし」
どうでもいいことだった。
開き直るイチヤを養豚場に送られる豚を見るような目で見るリオ……その時、イチヤの願いに回りくどい感じを見抜いた壮年の男が指摘する。
「いや、それはダメだろ」
壮年の男の言葉にイチヤは否定する。先程まで狼狽えていた人物と同じとは思えない反応に二人は少し驚いた。
「急に冷静になるなよ」
「……なんでダメなんだ? 聞いた感じ、同じように見えるんだが?」
「……いや……だって……」
何故拘るのか聞くと、一変してイチヤは落ち着きがない様子になる。視線をあちこちに逸らしたり、口元をモゴモゴと動かしたり、しばらく沈黙が続いたが、観念したのかイチヤが答え始める。
「自分の好きな人ぐらい、自力で見つけたいだろ」
思いもしなかった言葉に、二人は言葉を失った。
「そりゃ、星遺物を使えば簡単に叶うけどさ、願いとか夢とか、そういうのは自力で叶えるから意味があるだろ……モテモテになりたいのは、その、その中から、運命の……自分の好きな人ぐらいは、自分で見つけたいんだよ……」
羞恥から顔が赤くなり、徐々に言葉が尻すぼみするイチヤ。そんな様子を黙って聞いていた二人は口を開けて呆然としていた。
「「…………」」
「……な、なんだよ! 何か言いたい事があるなら言えよ!!」
反応が無い二人に痺れを切らして声をかけるイチヤ。イチヤの声によって意識が戻った二人は色々と言いたい事が渦巻いてるが、一番言いたい事が同じである事を確認して、口を開いた。
「「お前って、マトモな事を言えたんだな」」
「いい加減にしないとマジで泣き喚くぞ」
真顔で謎の脅しを伝えるイチヤ。その瞳には悲しげで静かな怒りに満ち溢れていた。その時、とある飲食店の方角が騒がしくなってきた……三人はとある飲食店――食堂ありあわせの方へ顔を向けると、人影が扉を蹴り開けて出てきた。
「邪魔だぜ負け犬ども!!」
両手に花、というべき控えめで言ってもモテモテのハーレムのような状態で。
「ヴォォォォォォォォォォォォォ!!」
「泣いたぁ!?」
「思ってた以上にガチ泣きだ!?」
膝から崩れ落ち、某不可思議なアドベンチャー漫画に登場する武道家の死に様のような体勢で地面に倒れて泣き始める。
その様子に壮年の男は慰めようと彼の肩を揺すり、リオは大男が地面に五体投地の体勢で泣き崩れる姿が痛々しくて見れず、食堂ありあわせの方へ顔を向ける。
「ねぇ、モディオ様ぁ……何処に連れてってくれるの?」
「ん〜……ここから、ちょっと行った先に僕達の拠点があるんだ。今宵……いや、永遠に君達の愛の巣になるだろう場所でね。さぁ、乗り給え!!」
『誰だよアイツ!! 全員お持ち帰りってアリかよ!!』
『てか、この辺りにそんな場所あったか?』
『憎しみで……人を殺せたら!!』
二枚目のような俗に言うイケメンと呼ばれる男に媚びるような声色で近くの女性が質問すると、イケメンの連れ人の一人が願望機に青い星遺物を装填し、大型のバスを作り出した。
バスに乗り込んでいく女達の様子に見ていた男達から嫉妬と羨望が混ざった視線をイケメンにぶつけるが、イケメンは何処吹く風と笑っていた。
「……ん?」
その様子を見ていたリオだったが、女性達の中に見覚えのある人物が混ざっていた事に気付いた。
……キャトル? なんでアイツが?
そう。店の手伝いを頼まれてたハズのキャトルがバスに乗り込んでいく姿を見た。本来ならイケメンに惚れたのだと微笑むが、リオにとって彼女の行動は違和感を感じるのに充分な判断材料だった。
……一目惚れ? アイツが? 人の恋よりもデザイアに恋してる事に極振りしてるヤツが? 洋服を買いに行ったのに
共に入学して日も浅く親しい間柄ではないが、それでも彼女の人柄を理解するに充分な時間から様子がおかしい事に気付いた。ふと、視界の端でハゲ頭の男に取り押さえられてる少年を見つける。
……店主の弟?
「姉ちゃん! 何してるんだよ!!」
少年――マー坊の冷静を失ってる様子にリオが近付く、取り押さえてたハゲ頭の男は近付いてくるリオに気付くとマー坊をリオの方へ殴り飛ばして、素早くバスの中へ入っていった。
「邪魔だクソガキ!! すっこんでろ!!」
「さぁ、眠れない夜を始めようじゃないか!!」
イケメンの言葉と共にバスが猛スピードで夜に消えていく。その様子に嫉妬の視線をぶつける男達を余所に壮年の男はリオとマー坊の下へ駆け寄る。
「大丈夫か? マー坊」
「止めないと……姉ちゃんが騙されてる!!」
マー坊の言葉に周囲の男達は夜に消えていったバスから少年へと視線を向ける。真剣な表情から冗談ではない事を感じ取った壮年の男とリオはマー坊に語りかけた。
「理由は聞かないわ。根拠だけ教えてちょうだい」
リオの言葉にマー坊は少し躊躇した様子を見せるが、すぐに口を開いた。
「姉ちゃん……デブ専なんだ」
『デブ専』
主に太った女性、もしくはゲイなら太った男性に性的魅力を感じる人の事を指す。
「……で、デブ専?」
「……うん。オレは少し恥ずかしいから、秘密にしとけって言ったんだけどね」
突然のカミングアウトに周囲が呆然とする中、心当たりがあるリオはキャトルとイチヤがいた時に女店主が言ってた事を思い出した。
――『あ、コレは秘密にしとけって弟に言われてたんだった……忘れといてくれ』
――『セイウチの界人でねぇ。ふくよかでプヨプヨな腹部にイチコロさね!』
……確かに言ってたなぁ……
「家に帰ったら惚気話されるから、毎回イヤなんだけど……姉ちゃん、すっごく嬉しそうに話すんだ」
苦笑するリオにマー坊は姉である女店主が今の彼氏に惚れている事を話す……複雑な表情を見せることもあるが、姉が笑顔で話す事を言った時に温かな笑みを見せる様子に嫌いではない事がわかる。
「そんな姉ちゃんが急にアイツにベッタリなんて……騙されてるとしか思えないんだよ!!」
マー坊の力強い言葉に周囲が静かに耳を傾ける。
星遺物の中には魅了や魅惑のような能力を持つ星遺物もあるが、高価な上に使用制限が厳しく定められている……それを考えると、飲み物や食事に一服盛られた可能性が頭をよぎった。
「……急いで自警団を呼べ!! 誰か飲み物を調べられる者はいるか!!」
「飲み物については私が調べるわ。あなた達はすぐに追って!!」
同じ考えに至ったのか壮年の男性が周囲の人に声をかける。
リオの言葉に壮年の男性が頷くと、マー坊の肩に手を置いて声をかける。
「マー坊、お前もついてこい!! 店主の匂いを知っているお前の嗅覚が必要だ!!」
「……わかった! オレも姉ちゃんを助けたい!!」
少年の力強い言葉に頷いた壮年の男性は地面に倒れているであろう大男に振り返って声をかける。
「便利屋! 話は聞いてたな! すぐに奴らを――」
しかし、そこには誰もいなかった。
泣き崩れたショックで地面に倒れた痕があるも、本人は煙のように消えていた。
「――便利屋?」
周囲を確認しても姿は見えず、分かりやすい頭陀袋を被った頭部すら見えない事に困惑する壮年の男性とマー坊。
「……あいつ……どこにいったんだ?」
その言葉は闇に溶け込み、夜風が静かに吹くだけだった。