イタリア人の前でパスタを圧し折るとぶちギレるらしい。   作:薔薇尻浩作

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貧乏人のパスタ。今回も5000〜6000文字で5、6話完結予定です。

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貧乏人のパスタ 1

 

 前回のあらすじ!!

 

 ぬいぐるみのようなファンシーな生き物に導かれたショータくんは勢いに負けて謎の『契約』を結んでしまう。

 

 するとショータくんの身体が光に包まれてまさかの大変身!!

 将来の成長を見越して気持ち大き目にあつらえた真新しい学ランは、フリフリな癖にやけに露出が激しくて可愛らしさとエッチさが同居した大胆なドレス姿に。

 ピカピカで傷一つ無かった新品の学生鞄は先端に大きな宝石のついた幻想的なステッキに変わってしまっていた。

 

 そう! ショータくんは男の子にも関わらず魔法少女……ならぬ魔法少年になってしまったのだ!

 

 

「な、なんでドレス!? スカート!? ボ、ボクは男の子なんだよプニタマァッ!?」

 

「大丈夫プニよショータくん。めちゃくちゃ似合ってるプニ」

 

「女装姿を褒められても嬉しくないよ!? うぅ……あ、足元がスースーして気持ち悪いよぉ」

 

「スカートの裾を握り締めて赤面する女装男子の姿で大盛りご飯3杯はイケるプニ!!」

 

「意味わかんないこと言ってないで元の姿に戻してよぉ~!!」

 

 

 まさかの展開に妖精を名乗るマスコット的存在。『プニタマくん』を握り締めて雑巾のように絞り上げて怒りを表すショータくんだったが、ここで更に急展開!

 

 周囲から建物が崩れ落ちる轟音や悲鳴が響き渡ったかと思えば、なんとボンテージに身を包んだ女怪人が破壊活動を行っているではないか。

 

 

「オーホッホッホ!! 特に確固たる目的とかは無いけど話の展開上、仕方なく街を破壊するわ〜!! オーホッホッホ!!」

 

「ショータくんっ! アレは怪人プニッ。しかもあのやたらエナメルがテカテカしている卑猥なボンテージ姿は悪の組織『おねショタからの逆転展開でショタ攻めになるのは絶対に許さない団』の幹部『スキュラ・レディー』に間違い無いプニッ!」

 

「おね……? 何なのその変な名前?」

 

「とにかくアイツは悪いヤツだプニ。ショータくんが戦って倒すプニッ!」

 

「きゅっ、急展開すぎるよ〜!?」

 

 

 

 あれよあれよとプニタマに急かされる形で半ば強引に悪の組織との戦いに巻き込まれてしまったショータくん。

 とは言え、相手は何人もの魔法少年の貞操を奪って来た歴戦の猛者。対するショータくんは魔法少年に覚醒したばかりで戦闘経験が皆無。

 

 

「あらあら……今日の獲物はまた随分と可愛いらしい男の娘なのネ。食べちゃいたいくらいだワ」

 

「食べっ……!? ボ、ボクは食べても美味しくないぞ!?」

 

「いや〜ん。その初心な反応だけで涎が出ちゃいそう。可愛がって、ア・ゲ・ル」

 

 

 スタイル抜群な上に、やけにテカテカ光る漆黒のボンテージ姿にショータくんは赤面しながらも戦闘開始。

 

 だが蛸の足のような触手を異空間から自由自在に転移させては、巧みに操るセクシーな女怪人スキュラ・レディー(27歳・独身。スリーサイズは上から96・60・94。右目についた泣き黒子がやけに色っぽい。)にすっかり翻弄されてショータくんはあっという間に大苦戦!

 慣れない戦闘を必死でこなしていくものの、5分も経たない内に健闘虚しくショータくんはヌラヌラと妖しく光る無数の触手に捕らわれてしまうのだった!!

 

 

「はーい、捕まえた。お姉さんに挑むにはちょーっと実力不足だったわネ?」

 

「はっ……離せ!! この悪者め!!」

 

「うふふ……絶対にだーめ。せっかく苦労して捕まえたんだもの。たーっぷりと愉しませて貰うわよ。美味しそうな君の身体で、ネ?」

 

 

 スキュラ・レディが甘ったるい言葉でそう宣言するや否や、無数の触手が新たに現れてはショータくんの身体を這い回り始めた。

 

 

「うわああぁぁ! き、気持ち悪いっ、離してよおぉ!?」

 

「安心していいわよ。怖いのは最初ダケ。直ぐに気持ちよくして、ア・ゲ・ル」

 

 

 ドロドロとしてネチョネチョとした触手の感触に気味悪がり、顔を真っ青にしながら身を捩り抵抗していたショータくん。

 だがスキュラ・レディの予告通り。真っ青な顔は次第に火照り初め、数分もしない内に茹で蛸のように真っ赤になっていく。

 

 

「な、なんで……気持ち悪い筈なのにムズムズする……? か、身体が熱いよぉ」

 

「効いてきたみたいね。私の触手には媚薬がたーっぷりと染み込んでるのヨ」

 

「びやく。って、何?」

 

「うふふ……エッチな気分になっちゃうお薬のコト」

 

 

 ショータくんの息はまるで全力疾走した時のように荒くなり、顔だけで無く身体中が熱を帯びていく。

 触手が這い回った箇所がムズムズとしてきて、意味も分からないまま内股になってウズウズとしてしまう。

 

 

「ひゃあっ!? そ、そこは嫌だあぁ!?」

 

「あら? 随分と感度がイイ子なのね?」

 

 

 ヌルリと粘液をまとった肉々しい触手がドレスの中に侵入し、ついにショータくんの身体を直接、愛撫し始める。

 未知の感触にポロポロと涙を零しながら身悶えるショータくんの顔はすっかり惚けきっているではないか。

 

 

「いやっ……へ、変なところ触るなぁっ……!」

 

「あらあら。随分と可愛い声をあげるじゃない」

 

 

 首筋から始まり胸元へ。足首から這い回り内腿へ。

 そしてもっと深く……深く。

 

 さくらんぼのような可愛らしい二つの突起が興奮のせいでピンと立っている両乳首を。それから未だ性のイロハも知らぬ無駄毛の一つも生えていない男の子の象徴を。

 

 掠めるように、ヌルリと愛撫。

 

 

「あっ……! あっ……!? 嫌ぁ……や、やめてぇ。来るぅ、何か変なのが来ちゃうからぁ……」

 

 

 未だ男の快楽を知らぬショータ君は未知の感覚に恐怖を覚えた。

 小学生の頃に習った筈の保健体育の授業は、何だか恥ずかしくなってしまったのでちゃんと聴いていなかったのが悔やまれる。

 

 

「あっ! あっ! 出ちゃうっ……なんか出ちゃうよぉ!!」

 

「イきそうなのネ? いいわよぉ……そのままお姉さんの触手に弄ばれて無様にイッてしまいなさーい!!」

 

「あっ!? ああっ……本当に止めてよぉっ!! も、もう限界だからぁっ!!」

 

 

 ますます身体は熱を高め、鼓動は高鳴り。

 背筋は海老のように反り返り、足先は痙攣したようにピンと伸びていく。

 ショータくんのショータくんは、もはや暴発寸前だった。

 

 

「あっ、あっ、あっ……あぁ!? 何か出ちゃうよ〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

 

 そして未だ若き蕾が今まさに咲き誇ろうとした、その歴史的な瞬間!!

 

 

 

 

プツリ。

 

 

 

 電源を落とされた画面が真っ黒に染まった。

 

 

「はぁ……」

 

 

 いや、もう。何か、アレです。

 うん。純粋に無理だった。

 

 いや、本当に限界だったのだ。何が悲しくて、こんな過剰なエロティシズムと変態的な趣味趣向を垂れ流すアニメ作品なんかを観なくてはいけないというのか。開始3分過ぎた辺りから、ずーっとSM染みた変態触手プレイをねっっっっっとりと放送し続けていたのだから頭がおかしい。

 深夜帯とは言え、これを全国放送していたテレビ局と制作陣は皆頭がパッパラパーに違いない。そんな確信を得てしまう程に今の映像は酷かった。

 

 

「……で?」

 

 

 我ながら驚く程に冷たくて重たい声が出た事に驚いた。

 

 例えばこれが悪ノリしているクラスメイトや女子生徒相手に堂々とセクハラ行為を繰り返す体育教師に対するものならば、違和感は無かっただろう。委員長に対してなんかは日頃からかなり雑な扱いをしている自覚も有るし。

 だが、今こうして私が声をかけた相手は初恋の女性である。声を聞く度に心が暖かくなり、姿を見るだけで胸が高鳴る。

 

 そんな愛しい筈の女性は今。

 私の目の前で。

 

 

「おねがいしゃーっす!!」

 

 

 

 土下座。シンプルに土下座。

 両腕を大きく広げ、両手を床にベッタリと付け。腰をヘッコリと折り曲げて膝までしっかりと折り曲げて。

 これでもかと額をグリグリと床に押し付けている。

 土下座。もはやこれ以上もこれ以下も存在しないだろう土下座の見本市。

 

 そこにはつい先日、年上の余裕と大人の色気を見せて私の心を奪い去った妖艶たる美女の姿は無かった。

 まるであの日の姿は残像だ。とばかりにヘコヘコと頭を下げては時おり、チラリとこちらに媚びるような視線を送ってくる。

 ヤクザに媚びるチンピラでももう少し格好はつけると思う。

 何と言うか、どこまでもダサくてどこまでも醜くて。普通に見苦しかった。

 

 

「……リブさん。貴女はこう言いたいんですね? よりによって私に『コレ』を着ろ。と?」

 

 

 惚れた相手を間違えたかも知れない。

 

 中学生相手に恥も外聞も明後日の方向に投げ捨ててまでの見事な土下座をぶちかましてくれた二十歳の、残念な大人の醜態に頭痛を覚えながら私はリブさんの横に置いてある衣装に目をやった。

 

 ドレスである。フリフリの。それはもう、フリッフリの可愛らしいドレスである。

 

 

「……ふう」

 

 

 きっと私は疲れているのだろう。目を瞑り眉間を指で揉みほぐす。そして、ほんの少しだけ勇気を出して目を開けた。

 

 

「おねがいしゃーっす!!」

 

 

 ドレスである。現実はかくも残酷なのかと目眩がしたが、目の前のフリフリドレスは消えてくれなかった。

 見覚えがある……と言うか、つい先ほどまでアニメの世界で主人公と思われる少年が着ていたドレスである。

 魔法少女をイメージしたデザインなのだろうパステルピンクをベースカラーに、なんだか良く分からない宝石やらフリルやらを随所に散りばめた、それはもうド派手なドレスなのだ。

 

 コレを着ろ。と。

 目の前で土下座をかました馬鹿女……失礼、少々頭脳が間抜けな成人女性は私の性別を勘違いしているのだろうか?

 

 

「今さらの話なのですが、リブさん。私は男です」

 

「へ? そんなん当たり前やん。バンビちゃんは可愛い男の娘やん」

 

 

 なんか発音に悪意というか別種のミーニングが隠された気がしたが、取り合えずスルーした。どうやら彼女は私の性別を勘違いしているわけでは無いらしい。

 嗚呼、良かった。少なくとも恋慕している女性から性別を勘違いされていた。という笑い話にもならないオチにはならなかったようだ。

 私のような未熟な小人がリブさんに釣り合うとは思えないので、きっとこの恋は叶わぬのだろうけど、それにしたって女の子だと思っていました。なんてフラれ方をしたら立ち直れない。

 

 

「ではもう一つ確認したいのですが、この衣装はドレスですよね?」

 

「せやで」

 

「ドレスと言うのは一般的に女性が身に纏うものですよね」

 

「せやな」

 

「良かった。私とリブさんの見解が一致していて」

 

 

 安心した。私の知らない内にリブさんは視神経や脳味噌等に重篤な病や障害を患ってしまった可能性がこれで潰えたからである。

 きちんとドレスという衣服は女が着用するのが常識だと認識しているらしい。

 

 私の性別も男だと理解している。

 ドレスは女性が着用するものだと認識している。

 ついでに言うなら酒精の香りもしないので今日はまだ素面の筈だ。

 

 

 ならばもう安心だろう。ここまでハッキリさせたなら、質問する事はたったの一つだけ。

 

 

「ではリブさん。よく考えてからお答え下さい。性別が男である私が、女性が着る事が常識とされている筈のドレスを着用する。これはどう考えてもおかしい事ですよね?」

 

「何でやねん!? 何一つおかしく無いやろうが!!」

 

「畜生!! やっぱりおかしいのは貴女の頭でしたか!!」

 

 

 私は匙を投げる思いで頭を抱えた。

 何が悲しくて私は初恋の女性から変態的かつ屈辱的女装コスプレを強要されなければならないのだろう。

 

 

「バンビちゃんを一目見た時から思ってたんや!! いつか絶対にこの『魔法少年・ショータ♡ エッチなお姉さん怪人にイタズラされてボクの股間のステッキがフィナーレしちゃうよぉ』のコスプレをして貰おう!! ってな!?」

 

「うん。絶対イヤ」

 

「んな殺生な!?」

 

 

 何やら裏切られた!! とばかりに狼狽しているリブさんだが、何故その頭の悪そうなタイトルのアニメの主人公と同じ服装を私がやってあげると思っていたのだろうか?。

 

 いや、私だって本当は分かっていたのだ。リブさんに半強制的に観せられたアニメの主人公は(強制的に)女装させられた少年で、目の前のドレスはその主人公が着ていたものと全く同じデザイン。つまりはコスプレ衣装である。

 

 

「今期のアニメで覇権取った超人気作なんやで!? 全国のオタク達が挙ってブヒブヒ鳴いて、萌えまくった神作の主人公のコスプレ!! それの何が不満なんや!?」

 

「不満しか無いですし、こんなのが人気になっている今の日本社会が怖いですよ。マジで」

 

 

 ついでに言うなら私は悲しい位に身長が低く、しょっちゅう性別を間違えられる程度には女のような顔をしている。誠に遺憾ではあるのだが、事実は変えられない。

 きっと高校生になる頃には身長もグンと伸びて筋肉モリモリマッチョマンになっている筈なのだから、今は諦めよう。

 

 そして現在進行系で土下座をかましてながらも必死で何やらアピールを叫んでいるリブさんは、そんな私に会う度に尻を揉みしだいてくるわ、耳をハムハムと甘噛みしてくるわ、シャツ越しとはいえ乳首を指先でカリカリと引っ掻いてくるわ。

 

 もう、人として駄目だろうレベルの過剰なセクハラをしてくる変態的な痴女でもあるのだ。

 

 

「おねがいしゃーっす!!」

 

「イヤです」

 

「おねがいしゃーっす!!」

 

「イヤです!」

 

「おねがいしゃーっす!!」

 

「イヤです!!」

 

 

 もう嫌だこの変態ショタコン飲んだくれイタリアン痴女。

 百年の恋も冷める醜態を晒す土下座ウーマンに私は半ば本気で呆れながら、どうしてこうなったのかを回想するのだった。




・早乙女 鹿之助
主人公の中3男子。オリヴィアからはバンビちゃんと呼ばれている。初恋相手のあまりに残念な姿に泣きたくなっている。アニメや漫画はあまり詳しくない。

・オリヴィア
多分ヒロインの女子大生。愛称はリブ。例えドン引きされたとしても譲れないものがある。アニメや漫画だけでなくラノベやエロゲーが大好物の重度のオタク。
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