モテない男、薬で現実逃避をする   作:輝く羊モドキ

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嫌な事があった時は物を壊すと良い。
ガラスや陶磁器を叩き割ると良い音が鳴って気分が良くなるし、硬い木でも壊せればすっきりするだろう。
生き物に当たるのも良いだろう。
肉を殴る快感。皮膚の上から相手の骨を砕く快楽は何物にも替えられない。相手の命に至る力を振るうのは、痛快だ。
形のある物を破壊するのは、とても気持ちがいい。




むしゃくしゃする気持ちは、全部全部他の何かに押し付けてしまおう。


分岐路:ストレスを解消しよう

 時を遡り、数年前。

 一人の元外来人が家出し、人間の里の守護者の下に保護されてから季節がぐるりと回ったある日の事。

 

「気を付けなさい。人里の外は危ないんだから」

 

「ぁ……アリガト、ゴザマス……」

 

「何でカタコト?まあいいわ……ほら、もう人里よ。気を付けて帰りなさい」

 

 一人の少年と少女は運命的な出会いをした。

 人里の外。昼間に活動していた妖怪に運悪く不意を突かれ襲われ、食べられかけていた少年を、魔法を使って華々しく救った魔法使いの少女。

 少年は魔法と、人形のように整った魔法使いの少女に一目惚れをした。

 それから少年は魔法を覚えて魔法使いの少女に並び立つ事を夢見て、日々を懸命に生きた。魔法の存在を知ったその日の内に魔法の訓練を始め、魔法を知ってから一週間も立たずに師匠となる存在を嗅ぎ付け、師と姉弟子が出来た。

 魔法を知ってから一年。少年は人間の魔法使いと呼べる程に魔法を習熟し、それに伴う錬金術、魔法薬の調合、そして新たな魔法の開発に勤しんだ。

 

 そして、魔法の存在を知ってから二年。

 少年の実力は、幻想郷のパワーバランスの一角を担う存在となっていた。

 

「アリス、俺と付き合ってください」

 

 酷い火傷痕の残る腕を差し出す少年、祐希。

 アリスは彼の才能を知っている。自身すら凌駕し、一を聞いて十を知る才覚は規格外と呼ぶに相応しいと。

 アリスは彼の努力を知っている。時に自らの命を懸けて危険な錬金術や魔法薬の調合を行い、新たな魔法を幾多も開発している。

 だが、しかし。

 

「ごめんなさい。貴方とは付き合えないわ」

 

 アリスは、その告白を受け取る事は出来なかった。

 

「ただの人間と魔法使い。生きる時間が違うのよ」

 

 それは紛れもなく本心であった。人間の魔法使いと、種族としての魔法使いは似ているようで決定的な違いがある。その違いを埋められない以上、安易に一緒に生きる事は決してできないとアリスは思っていた。

 

 故に、アリスは振り返らない。少年の熱い想いは、十分自身の心に届いている。少年の強き願いは、自身の心を大きく揺さぶっている事をしっかりと自覚している。

 だからこそ。

 崩れるように地面に蹲る少年を振り返る事は無い。ぽたぽたと地面に落ちる涙の音を聞こえないふりをし、心に揺れる感情にふたをする。

 

 もし。

 

 もし、少年が捨虫の魔法を覚えるか、あるいはどのような手段でもっても人間としての生から逸脱し長命の者となれば……その時に、もう一度告白をしてくれるのなら……。

 

 アリスは、目を閉じる。どうかそうなってほしいと願いながら。

 

 

 アリスの姿が見えなくなって、ようやく。

 物陰からこっそりと親友の告白の様子を窺ってた魔理沙が、地面に蹲る祐希に近づく。

 

「祐希……」

 

「ううっ……ぐすっ……ふぐっ……ううう……」

 

 魔理沙は、その姿が情けないと思えなかった。思いたくなかった。何故なら、その姿はきっともしもの可能性の未来での自分の姿だったであろうから。

 狂おしい程の恋心を抱く相手が、自分以外の相手との恋を成就させてしまった未来の自分。きっと今の彼のように蹲って、這いつくばって涙を流しているだろうから。

 そんな姿なんて人に見られたくない、どうか放っておいてくれと思うだろう。でも、同時に誰かに慰めてほしいとも思っているだろう。よく、わかる。何故なら、もしもの未来の自分ならばそう思うだろうから。

 

 だからせめて、泣く顔なんて誰にも見られないように。魔理沙は自身の、つばの広い帽子を祐希の頭に被せ、背中を優しく撫でた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 祐希が巫山夢丸を3錠飲んだ次の日の事。

 

「はっ、はっ、はっ……い、居たか鈴仙!?」

 

「い、いえ……見つからないわ……えほっ、えほっ」

 

「くっそあの馬鹿!どこ行きやがったんだ……!?」

 

 時刻は夜中。

 あの後アリスを追いかけ、自身の感情のままに弾幕ごっこを仕掛けたは良いものの返り討ちにあってしまった魔理沙はボロボロの姿のまま今度は人里の中を走り回っていた。

 同じく鈴仙も呆然としていた所から立ち直った時、すぐさまに駆けだした。

 全ては、どこかに行ってしまった祐希を探す為。

 あそこまで深く傷ついてしまった人間が何をするか。最悪をイメージしてしまえば、鈴仙はおとなしく待つ事なんて出来なかった。

 暗くなる前、家に帰ってたりしないだろうかと上白沢宅を訪れれば、未だに帰ってきていないと返答が来る。その時に、弾幕ごっこに負けてトボトボと歩いて帰ってくる魔理沙を見つけて、事情を話す。魔理沙も同じように最悪をイメージしたのか、二人で人里の中を駆けずり回った。

 

「これだけ探しても居ないって事は、あいつ里の外に出てるんだきっと!」

 

「里の外って広すぎよ~!」

 

「探さん訳にもいかないだろ!ほら行くぞ―――」

 

 

ゴォォォォォン!

 

 

 鐘のような、爆発音のような音が僅かに響く。

 

「今の音は……まさか!?」

 

「ちょ、魔理沙!?」

 

 箒に跨り、即座に流星のような速度で飛び出す霧雨魔理沙。

 つい咄嗟の判断で箒の端を掴んでしまい、流星のような速度で空を引きずられる鈴仙・優曇華院・イナバ。

 二人はあっという間に音の出処に到着する。

 

 

ゴォォォォォン!

 

 

 そこには、爆音と共に空から叩き落とされる妖怪と

 

「叩いてミンチー♪斬ってサラダ♪焼いたらステーキ♪」

 

 『無』の表情で歌いながら獣のような姿の妖怪を甚振る少年の姿があった。

 

 少年が妖怪を殴れば、妖怪の腕が曲がってはいけない方向に曲がる。

 少年が妖怪を斬れば、妖怪の足の指が何処かへ飛んでいった。

 少年が魔法の炎を投げると、妖怪の口から内臓を焼く音が聞こえた。

 

 普段の優しい少年の姿から全く想像出来ないような、酷く残酷な光景が広がっていた。

 

「ギャウ……ギャワ……!」

 

 ギリギリで死なないように甚振られ続けた妖怪は、既に元の姿がどんな姿であったのかを想像することが難しい程に原型を留めていなかった。

 羽のような物が生えていたのであろう背中は皮ごと削がれ、グチャグチャと叩かれている。

 腕も内側から骨のような物が突き出し、何処が正しい関節の位置か判別つかない。

 泣き叫ぶ口からは煙がもうもうと立ち上がり、舌は炭化して黒ずんでいた。

 

「祐希さん!!」

 

「破裂する実を合わせたらー♪っとぉ、鈴仙か……ぁ……?」

 

 鈴仙は自身の能力を使い、祐希の眼を見る。黒い瞳が紅く染まり、自身の能力が問題なく掛かった事に安堵する。

 妖怪は瀕死の姿でありながら、身体を引きずるようにして何処かへ逃げていった。

 ぼうと立ち尽くす祐希を強く抱きしめ、優しく横に倒す鈴仙。

 

「ゆ、祐希のヤツ、大丈夫なのか?」

 

「……分からないわ」

 

 祐希は、本来であればこのようにわざと相手を痛めつけるような残虐性を持っていない……あるいは、残虐性は非常に小さいものであった。その筈であった。

 だというのに、格下の妖怪一匹を捕まえ、ギリギリ死なない程度に残酷に甚振り続けていた。その行動が意味する物を、鈴仙はおおよそ把握していた。

 

「このまま祐希を寝かせておいた方が……」

 

「いいえ、それじゃあ祐希さんの心が危ないわ。……祐希さんを連れて、永遠亭に戻るわ」

 

「祐希の心が危ないってどういうことだ……!?」

 

「極度のストレスから心を守るための逃避行動だと思う……とにかく、今は私が心を抑えているけど、それはただの時間稼ぎでしかないの。祐希さんの心を抑制しただけで、ストレスそのものに対処は出来てない……師匠なら何とか出来ると思うから、とにかく急ぐわよ魔理沙!」

 

「お、おう……!」

 

 そのままぐったりと力なく倒れる祐希を背負い、永遠亭に急行する鈴仙と魔理沙であった。

 

 

 

 二人が飛び去った後、遅れてやってきたのは博麗霊夢だった。

 

「まったく夜中にゴンゴン騒いで……何処のどいつよ……」

 

 地面に降りた博麗霊夢は周囲を確認し、飛び散る血や肉片を見つけ、鼻につく気化した油と肉の灼けた匂いに顔をしかめる。

 

「ふぅん?ここで何かがあったのは確実ね……でも周囲に誰も居ない、と。犯人と被害者は逃げた……って所かしら?はぁーあ、音も鳴りやんでるし、無駄足だったわね……」

 

 辺りを軽く調べた霊夢は、原因不明と結論付けてさっさと博麗神社に戻っていった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 深夜。

 永遠亭の診察室。

 

「…………」

 

「師匠……どう、ですか……?」

 

「…………かなり、拙い事になっているわね」

 

 診察室で八意永琳と鈴仙・優曇華院・イナバが横たわる少年を囲むように診ている。

 少年、祐希は瞳を紅く染めたまま、ぼんやりと天井をただ眺めていた。

 祐希を連れてきた魔理沙は、既に日付が変わっている程に遅い時間の為一旦客間にて寝かせている。

 

「祐希の精神状態が危険域に達しているわ。それに昨日、巫山夢丸を3錠飲んだ副作用が身体に回っている……祐希を眠らせずに連れてきたのはナイスプレーようどんげ」

 

「……もし、眠ってしまっていたら……?」

 

「……長い、永い眠りになっていたでしょうね」

 

 顔から血の気が引く鈴仙。

 

「うどんげ、貴方と祐希が人里へ一緒に向かった後……何があったのか全て説明しなさい」

 

「はい。私と祐希さんが迷いの竹林から出た後、魔理沙が空から―――」

 

 ―――

 

 ―――――

 

 ―――――――

 

「―――そして、祐希さんを里の外で見つけた時に、妖怪を激しく痛めつけていた所を私の能力で止めて、今に至ります」

 

「……そう。おおよそ、何が起こったか分かったわ」

 

「祐希さんは、治りますか?」

 

「ええ、月の頭脳(わたし)のプライドに懸けて、絶対に治すわ。うどんげ、早速だけど薬棚から『絶倫丸ルナティック』を持ってきて」

 

「はいすぐに!―――」

 

 

「―――ってただの精力剤じゃないですか!!!こんな時にふざけてるんですか師匠!!!」

 

「別にふざけてる訳じゃないわ。男のストレスってのは大抵ヤれば解決するのよ」

 

「ヤるって……いや、そんな、ちょっと急に言われても……」

 

「…………貴方は駄目よ?」

 

「なっ!?べ、べべ別に期待してないですけど!?……って、えっと、じゃあ誰がお相手を……?」

 

「私がするわ」

 

「―――……師匠?ちょっと、詳しい説明をしてもらえませんか?私は今冷静さを欠こうとしてます」

 

「はぁ……あのねうどんげ、別に貴方をからかってる訳でも、私の欲で言ってる訳でもないの」

 

 八意永琳は説明をする。今、祐希の心を蝕むストレスに対して早急に対処する必要がある事。それにはゆっくりとストレスを取り除いていく方法では心がもたない事。故に手っ取り早くストレスを解消するには、性行為が一番効率的である……と。

 

「……ただ、話をややこしくしているのが、貴方と魔理沙が祐希を見つけた時の状況よ。過度な嗜虐心の発露……ストレスから身を守るための防御反応ね。性行為を行っている間、その相手に対して嗜虐心がまた発露したら普通の人なら死んでしまうでしょう。それが祐希なら、刀が無くても霊力、魔法で幾らでも相手を痛めつける方法はあるわ。だから―――」

 

「―――だから()()()()()()でエッチの相手をしてあげるって事ね」

 

「ひ、姫様!?」

 

 突如診察室の扉を開けて闖入して来る者は、永遠の姫。蓬莱山輝夜。

 

「……姫様、遊びではないんですよ」

 

「分かってるわよ。男の人はより多くの女を侍らせるのが夢ってモンでしょ?私も祐希とは()()()()()でもないし、それくらい協力してあげるのもやぶさかではないわよ」

 

「……本音は?」

 

「永琳が男に抱かれてる所を間近で見てみたいわ」

 

「―――はぁぁぁ……本当に……」

 

 両手で頭を抱える八意永琳。それを見て、袖で口元を隠しながらニコニコと笑う蓬莱山輝夜。何が何だか分からない鈴仙・優曇華院・イナバ。

 

「……うどんげ、『絶倫丸ルナティック』を持ってきなさい。とにかく早く事に当たらないと、本当に手遅れになるわ。姫様、本当に良いんですね?」

 

「ええ。折角だし、()()()()()()も知りたいもの。その点祐希なら、まあ悪くない相手よね」

 

()で満足してくれると助かるんですけどね……うどんげ、早く動く!」

 

「は、はいぃ……!」

 

 そうして持ってきた薬をすぐさま仰向けに横たわる祐希に投与する。

 

「いいかしらうどんげ。この後この部屋を結界で封鎖するわ。私が結界を解除するまで、誰も部屋に入れては駄目よ。もし誰かが侵入して来るようならてゐと一緒に追い返しなさい。そして急患が来たら貴方が対処する事。良いわね?」

 

「わ、分かりました……!」

 

「……それと、部屋を覗くのも禁止よ。もし覗いたら……」

 

 にっこぉ……

 

「ひぃっ!?の、覗きません!覗かせません!!!」

 

「頼んだわよ、うどんげ」

 

「永琳、早速薬の効果が出てきたみたいよ」

 

「……うどんげ。能力を解いて、部屋の外に出なさい」

 

「分かりました……!」

 

 そうして、診察室から出る鈴仙。

 診察室のベッドで横たわる祐希の紅く染まっていた瞳が、スゥッ……と黒色に戻っていく。

 同時に、部屋に防護と防音の結界を張る永琳。

 

「輝夜。言っておくけど、逃げたくなっても絶対に逃がさないわよ」

 

「結界貼ってから言うのはずるくない?」

 

「貴方がいきなり飛び込んできたんでしょうが」

 

 薬の効果が完全に回ったのか、熱い息を吐きながら身体を起こす祐希。

 その姿を見て、自身の衣服を脱いでいく永琳と輝夜。

 

「ま、余裕でしょ。祐希は童貞で、私は絶世の美少女……すぐに骨抜きにしてあげるわ」

 

「(夢でしか男性経験がないのなら実質的に処女では?)」

 

 衣服を脱ぎ終えた二人は、荒い息を繰り返す祐希へ近づいていった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 朝。

 永遠亭。

 

「そこを通せ!」

 

「魔理沙の頼みでも聞けないわ!」

 

 深夜を回って祐希を永遠亭に届けた霧雨魔理沙は、ぎりぎり朝と呼べる程度の遅い時間に目を覚まし、祐希の容態はどうなっているかを見に来た。

 

「はいはい。魔理沙もあの男が心配なのは分かったから、今はおとなしく待ってるウサ」

 

「なんだよ揃って邪魔しやがって!大体ひとに見せられない治療ってなんだ!?」

 

「(それはまあそう)」

 

 何とか診察室に押し入ろうとする魔理沙を二人がかりで押さえる鈴仙とてゐ。

 

「つーか、お前たちは中で何してるか知ってんのか!?」

 

「そ、そりゃぁ知ってるけど……ちょっと言えないというか……」

 

「おこちゃまには10年早いウサ」

 

「子供扱いすんな!」

 

 バタバタと暴れる魔理沙を何とか押さえ込んでいるが、それも時間の問題であろう。

 

「(どうする鈴仙、魔理沙に中でナニやってるか教えた方が早いんじゃない?)」

 

「(教えるったって、中で師匠と祐希さんがえ、えっ、エッチしてるなんてとてもじゃないけど言えないわ!)」

 

「(まーそりゃそーウサねー。あたしだってヤだよそんなん)」

 

 テレパシーで会話をする兎二匹。

 しかし魔理沙がついに懐からミニ八卦炉を取り出した。

 

「お前らが退かないって言うんなら……私も本気出すぞ……!」

 

「あーちょちょちょソレは流石にマズいって!」

 

「何がマズい、言ってみろ!」

 

「いやもー建物の中でぶっ放すモンじゃないでしょうが!」

 

 キュイィィィ……とミニ八卦炉に魔力をチャージしていく霧雨魔理沙。

 その様子を見て顔を青褪めさせる兎二匹は、早く治療を終えてくれと願いながら魔理沙を説得する。

 

「分かった!分かったから!中で何してるか教えるからソレぶっ放すのは止めなさい!」

 

「嘘ついたら容赦しないぜ!」

 

「わぁかったってば!」

 

 魔理沙との揉み合いに疲れ切った兎二匹はぐったりと床に座り込む。

 

「ほら、早く何してるか言えよ」

 

「……実は―――」

 

 そうして、中で行われている事を説明する鈴仙。

 説明が終われば、耳まで真っ赤に染める魔理沙。

 

「なっ、な、なぁっ……なん、なんで、なぁっ……!!」

 

「だから()()()()()には10年早いって言ったのに……」

 

「(一応私も()()()()()ではあるんだけどな……)」

 

 真っ赤になった顔を両手で押さえ、床に座り込む霧雨魔理沙は小さく唸り声を上げる。

 

「……そ、それで、治療にはあとどれくらい掛かるんだ?」

 

「分からないわ。治療が終わったら、師匠と姫様が部屋から出てくるはずよ」

 

「―――……『姫様』?」

 

「(あ、バカ)」

 

 てゐは鈴仙の失言を察し、ひっそりとその場から立ち去った。

 

「おい鈴仙。『姫様』っつったか?つまり中に祐希と永琳と、輝夜が居るってことか?ん?」

 

「アッ、いや、それはっ」

 

「どういうことだ?治療には永琳一人居ればいいだろ?おい、答えろよ」

 

「あのー、それは、えっとぉー(てゐ助けて!てゐ……って居ないッ!?逃げたなアイツ!??)」

 

 魔理沙に胸倉を掴まれて逃げる事が出来ない鈴仙は涙目になりながら必死に助けを求めるが、既に味方は居なくなっていた後だった。

 

「くそっ!私がどれほどアイツを……もういい!アイツを連れ出してウチで介抱してやる!」

 

「待っ、ちょ、ダメ!扉を開けちゃ―――」

 

 鈴仙を投げ捨て、診察室の部屋を開ける魔理沙。そこで魔理沙の視界に飛び込んできた光景は―――

 

 

 

「がッ!?あ、あああッ……♥」

 

「ヒュッ……カ……ヒュゥ……♥」

 

「はははっ!あはははッ!」

 

 楽しそうに笑う、全裸の祐希と。

 血と臓物、()()が部屋の全体に飛び散った凄惨な部屋。

 まさに()()()()()()と表現するに等しい、全身を『解体』されながら凌辱されている八意永琳。

 手足が複雑に折れ曲がりながら全身を切り刻まれつつ、()()が穴という穴から零れている蓬莱山輝夜。

 まるで、子供が悪意も無く虫の脚を引きちぎるように。

 ゴギッ、と。今、目の前で首の骨をへし折られ、時間が巻き戻るように元の傷一つない身体へと戻っていく八意永琳。それを見て、壊れてしまったお気に入りの玩具が直って手元に戻ってきたかのような子供のような笑みを浮かべる祐希。

 

 そんな、光景を目にしてしまった魔理沙は全身の血の気が引いていき、胃の中の物が食道を逆流していくのに気が付いた。

 

 最後の気合を振り絞り、開けた扉を閉めた、その直後。魔理沙は床に胃の中身をぶちまけた。

 

「お”ッ、げぇぇぇッ!!!うっ、おえ”え”ッ……!!!」

 

 扉の中の光景を魔理沙越しに見てしまった鈴仙は、うわっ、うわぁっ、と内心でテンションを上げながら自身の両手で目を覆い、指の隙間から部屋の内側を覗いていた。

 しかし魔理沙の手で扉が閉められた直後に、魔理沙の口からドボドボと流れ出してくる胃液に正気を戻し、同時にご飯を食べる前で良かったと内心で思いながら手当てと片付けの準備をすることにした。

 

 そしてその二人を遠目から観察していた因幡てゐは、人間の処女と妖怪の処女でこうも反応が違うなんてやっぱり精神構造が全然違うもんだなと考えていた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 正午。

 『治療』が終わった永琳と輝夜の二人は身体を洗い終え、鈴仙とてゐ、そして顔色の悪い魔理沙と軽い昼食を一緒に取っていた。

 

「……随分と()()()()だったウサね」

 

「あら、次はイナバも参加する?彼ってすごい『情熱的』だからイナバもドはまりしちゃうかもよ?」

 

「『情熱的』過ぎて殺されちゃかなわないウサ」

 

「……」

 

「ちょ、ちょっと魔理沙。ここで出すのは勘弁してよ」

 

「だ、大丈夫だっての……あん時はちょっと、驚いただけだぜ……」

 

「そういえばうどんげ、貴方私が言ったことを守れなかったようね……」

 

「あっ、そっ、それはそのぉ……魔理沙がぁ……」

 

 小さいおにぎりを食べ終えた一同は、祐希の治療進捗を永琳から簡潔に聞く。

 

「まず、祐希の精神は峠を越えたと言っても良いわね。すぐさまどうにかなる事は無いでしょう。肉体の方も、巫山夢丸のオーバードーズによる損傷は完全に治療済みよ」

 

「よ、良かった……」

 

「私も()()()()()甲斐があるわね」

 

「一肌というか……いや、何でもないウサ」

 

 だけど、と。永琳は続ける。

 

「峠は越えても、未だに精神が不安定であることに変わりはないわ。ストレスが溜まる前に、適時ガス抜きが必要よ」

 

「が、ガス抜きって……」

 

「……別にいやらしい意味ではないわよ?ストレス発散なんて、本を読むとか、身体を動かすとか……気分転換の方法なんて幾らでもあるわ」

 

「子供作りとか?」

 

「やめなさい、てゐ。……まあ、色町を使えないっていうのなら、他の男性よりも特に()()()()()()が溜まりやすいのは確かね」

 

「あら、なら簡単な解決方法があるじゃない」

 

「姫様?」

 

 ニッコリと笑いながら、指を一本立てて得意げに語る。

 

「彼にはこのまま、永遠亭に住んでもらえば良いわ。永琳も信用できる男手が欲しいってこの前嘆いてたし、ちょうど良いじゃない」

 

「そりゃ言いましたけど……うーん………………まあ、悪くは無い、かと」

 

 ほんのり頬を染める八意永琳を、その目を猫のようにまんまるにしながら見る因幡てゐ。

 

「このスケベ蓬莱人共め」

 

「そんなに新薬の被検体になりたいのね。殊勝な心掛けじゃないうふふふふ」

 

「さって食後の腹ごなしにちょっと出かけるウサははははは」

 

 つったかたったーと逃げる因幡てゐ。

 スタスタと手に怪しげな煙を放つ水薬を持ち、てゐを追いかける永琳。

 

 そんな光景を後目に、両手を打ち鳴らして注目を集める蓬莱山輝夜。

 

「よし、じゃあ祐希をウチに迎え入れるって事で良いわね?はい、決定―――」

 

 

「駄目だ」

 

 

 つい、無意識に。

 自分でも驚いてしまうくらいに、大きな声が出てしまう魔理沙。

 先ほどとは違う意味で目を丸くする因幡てゐと、八意永琳。

 この場に居る4対の眼に見つめられて一瞬たじろぐ魔理沙だが、口に出した以上後には引けないと続きの声を出す。

 

「あいつは、こんなとこに閉じ込めるんじゃ絶対に駄目だ。駄目になっちまう」

 

「……魔理沙、永遠亭なら祐希に何があってもすぐに治療することが出来るわ。別に閉じ込めておく訳でもないし、それにもし()()()()()が出てもすぐに対処出来る。いいことづくめよ?」

 

「それで?本来なら虫一匹にすら慈悲をやる様な、優しい祐希の残虐性を刺激させ続けるのが本当にアイツの為になるって言うのか?」

 

「―――それは……」

 

()()()()()()()()()()なんて考えてる奴らが、本当に祐希の心に寄り添えると言えるのか?アイツは……馬鹿で、ムッツリスケベで、すぐどっか突っ走っていくような向こう見ずだけど……誰よりも優しくて、真っすぐで、一途で……そりゃ、滅茶苦茶に溜まったストレスをすぐに解消するためにあ、あんな事する必要があったんだろうとは思うけどさ……だからって言って、どれだけ相手を壊してもいいなんて環境に居続ける事がアイツの為になるって……本当にそう思っているのか?」

 

「…………」

 

 魔理沙の言葉に、口を閉じて俯いてしまう蓬莱山輝夜。

 

「……姫様、師匠。私も……魔理沙と、同じ意見です」

 

「鈴仙……」

 

「ひ、姫様と師匠にヤってたアレは、確かに祐希さんの心に隠された一側面ではあったのでしょう。で、でも、魔理沙の言う通り、祐希さんは凄く優しいから……その優しさって、本心からの優しさで……自分の凶暴性を隠すための『嘘』ではないんじゃないでしょうか……」

 

「そもそもアイツが性格誤魔化すような『嘘吐き』とは到底思えんウサ」

 

「『嘘吐き』に太鼓判押されるとかアイツも相当だぜ」

 

「いま結構真面目に言ってたんだけど!?」

 

「……イナバ、良いのかしら?貴方が言ってる事はつまり、永遠亭から祐希を遠ざけるって言ってるものよ?……好き、なんでしょ?貴方も……」

 

「好ッ、すぅ、好き……ですけど……。好き、だから……祐希さんに辛い想いをして欲しくないんです……」

 

「……そう。それなら、仕方ないわね。祐希を永遠亭に住まわせるのはまた今度にしましょ……ね、永琳」

 

「……そうですね。―――魔理沙、貴方……そこまで言うって事はつまり、『貴方が祐希をみる』って事で良いのね?」

 

「……ああ」

 

「つまり、貴方が『夜の相手』をするって事で良いのね?」

 

「おっ、うっ、ううぅん……そりゃ、えっと……」

 

「急に歯切れが悪くなったウサ」

 

「ええいうるせぇうるせぇ!私がやるぜ!」

 

「―――そう。なら、大事な話をするわ。しっかりと覚えておきなさい」

 

「う、い、良いぞ……!」

 

 八意永琳は真剣な表情で、霧雨魔理沙の眼を見る。

 霧雨魔理沙はそれに一瞬尻込みをするが、すぐに覚悟を決めて八意永琳の眼を見返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「祐希は『絶倫丸ルナティック』が無くてもとんでもない性豪よ。身体を壊されないように気を付けてね」

 

「……お、おう」

 

 霧雨魔理沙は八意永琳から女性用精力剤を受け取った。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 夕方。

 迷いの竹林~人間の里を繋ぐ道。

 激しい情事を終えてそのままひと眠りした後にシャワーを浴びて、身体に付着した血や臓物の欠片、体液を全て洗い流してさっぱりした祐希は、魔理沙と一緒に鈴仙の案内で竹林を抜けて人間の里の自宅へと帰っていた。

 

「……」

 

「……」

 

 鈴仙とは竹林の出口で別れ、箒に跨って低速飛行する魔理沙と同じく低空を流れるように飛ぶ祐希との間には気まずい沈黙が挟まっていた。

 空は赤く染まり、遠くでカラスが鳴く声が響いている。日に照らされた暖かな風と、夜に冷やされた涼しい風が混じり合った生ぬるい風が互いの間を通り抜けていく。

 

「……なあ」

 

「……なんだ」

 

 沈黙を先に破ったのは、霧雨魔理沙。祐希からでは、魔理沙の表情はつばの広い帽子に隠されて見えなかった。

 

「体調は……大丈夫なのか?」

 

「……ああ。まあ、な」

 

「そっ……か……」

 

 お互いに、いつもとは全く違うテンションで中々会話を続けられない。普段であれば次々に話題が出てきて、緩やかな坂道をゆっくり転がっていくように会話がトントン続いていくというのに、それが出来ない。

 

「……迷惑かけたな、魔理沙」

 

「……?」

 

 祐希は、昨日の夜からの出来事を全て覚えていた。自身が妖怪を痛めつけるように()()し、そんな姿を鈴仙と魔理沙に見られた事。そしてその後、深夜から昼近くにかけて永遠亭で八意先生と輝夜の二人を()()()()()()()()いた事。贅沢にして至福の思いのままに眠りにつき、目を覚ました時に自身の身体を汚す血、体液、そして臓物の欠片。

 そんな自分の姿を、鏡で見た時に感じた思いは……―――

 

「俺にさ、あんな嗜好があったなんて思っても無かったよ」

 

 ……ふと、思い返せば。()()に耽っていた時に、一瞬。魔理沙の姿を見た気がした。

 もしそれが気のせいでなければ、魔理沙はあんな()()を間近で見てしまっていたことになる。

 

「幻滅するだろ?優しいだのなんだの他人から言われても、一皮剥けば『人を解体(バラ)して愉しむクソ野郎』だ。ストレスのせいでおかしくなっただけ?違う。俺は……俺は、あの時、妖怪を痛めつけてた時から……ずっと、ずっと、愉しんでいた。心から、楽しかった……。今もしっかり手に残ってるよ……あの妖怪の翼を捥ぎ取った感触を。骨を砕いた感覚を。八意先生のハラワタを素手で引き抜いた快感を。輝夜の手足をへし折りながら体内を蹂躙する快楽を……!」

 

 己の両手を、叩きつけるように顔へ当てる。

 

「楽しかった……ああ、愉しかったよ!今まで生きてきた中で、一番!!命に手を掛ける瞬間の悦楽!相手の心臓を掌握する享楽!相手を蹂躙する快楽!!!頭の中が蕩けそうだった……!今も!!手に!!!血の熱が!!!!残り続けてるんだ!!!!!」

 

 歪む口元を抑えるように、爪を立てて顔を()()

 

「怖いだろう魔理沙!俺が!!今だって!俺は、お前を今すぐ押し倒して、その衣服を引きちぎって、その腹の中を掻きまわしてやりたいと思ってる!!!恐ろしいだろう!!!幻滅しただろう!!!失望しただろう!!!だから、今すぐ―――」

 

「いいよ」

 

「―――……あ?」

 

 魔理沙は、まるで黒のクレヨンで塗りつぶしたかのような祐希の眼をしっかりと覗くように、祐希の両腕を掴み、顔を近づける。

 

「いいよ、祐希なら。私は、祐希に殺されるんなら本望だぜ」

 

「―――な、何言って……」

 

「私を押し倒して、永琳にやったみたいに滅茶苦茶にしてもいい。輝夜にやったみたいに、グチャグチャにしてもいい。そりゃ、痛いのは嫌だけど……祐希になら、何をされてもいいよ」

 

「……じょ、冗談じゃねえぞ!?本当に、本当にお前を犯すぞ!!?」

 

「ああ。私の……私の初めてを貰ってくれるんだろ?なら、こんなに嬉しい事は無いぜ」

 

 夕陽が反射するハチミツ色の髪。優しく微笑む金色の瞳。そのきらきらした瞳に映る、乾溜液(タール)に似た色をした自身の瞳。

 魂魄妖夢に大嫌いと言われた時よりも、アリス・マーガトロイドに二度と顔を見せるなと言われた時よりも、博麗霊夢に何処かへ消え失せろと言われた時よりも。

 優しい色に反射した、愚かな自身の姿。それを見て、心の柔らかい所に深い裂傷を負った。

 

「あ……あぁ……ぅ……」

 

 言葉にならない声が喉を通る。目からぼろぼろと涙が溢れる。

 魔理沙は、そんな祐希の頭を優しく抱きしめる。

 

「ごめ、ごめん……ごめん……魔理沙……」

 

「いいよ……祐希が優しいヤツってのは、ずっと、ずーっと知ってるから」

 

 ボロボロ溢れる涙が、魔理沙の衣服を濡らしていく。そんな事をまったく気にせず、魔理沙は祐希の頭を撫でる。

 祐希の心に残った深い裂傷を埋めるように、魔理沙の愛が祐希の中へ入っていく。

 

「明日、一緒に何処かへ遊びに行こう。楽しい事は、いっぱいいっぱいあるぜ?」

 

「ぁぁ……あぁ……」

 

「昼は魔理沙様がとびきり美味い昼食を用意してやる。美味いメシは心の栄養だぜ」

 

「うん……」

 

「夜は、ウチに泊ってけ。……あ、あんま、自信ないけど……めちゃくちゃに甘やかしてやる」

 

「……ぉ、おう……」

 

 二人は、そのまま。夕陽が沈むまで静かに抱き合っていた。

 魂魄妖夢と、アリス・マーガトロイドと、博麗霊夢によって空けられた、祐希の心に空いた穴は、いつの間にか。

 ハチミツ色の愛で埋まっていた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 二日後の朝。

 魔法の森、霧雨亭。

 祐希が部屋の窓を開けると、キノコの胞子が混ざった空気が部屋の性臭を洗い流していく。

 朝日が射し込む部屋を振り返ると、部屋中に撒き散らされた()()()()()()()()()の惨状に思わず目を背ける。

 祐希と魔理沙の()()は、互いが思っていた以上に抜群だった。たった一晩で、『精も根も尽き果てる』と表現するに相応しい具合になってしまう程に。

 窓から射し込む朝日を浴びても尚気を失ったように眠る魔理沙を根性無し、あるいは貧弱モヤシと呼ぶのは難しい。むしろよく持った方であると称賛するべきだろう。八意薬師が事前に忠告していた通り、祐希は絶倫と言うに相応しい精力とスタミナを持っていた。金属の塊である刀を四本持ち歩き、振り回す体力を十全に備えている祐希の腕力にイイように振り回され続けた魔理沙は、事前に受け取っていた精力剤と体力回復の魔法を何度も使っていたにも関わらずノックアウトされてしまった。

 行為の際、祐希自身が危惧していた凶暴性・残虐性の発露は最小限に留まり、魔理沙の手足や首等に残る縄の痕が物語っていた。

 

 魔理沙が目を覚ましたのは、祐希が起きてから約30分後。悲惨な状態になっていた部屋を、祐希の魔法で綺麗に掃除し終わってからの事だった。

 そのまま、祐希と魔理沙は手を繋いで一緒に風呂に入る。狭い浴槽内、魔法で焚かれた風呂の中で互いの身体を洗い、そのまま()()()()()()()()()()二人が風呂から出たのは、結局昼近くになってからだった。

 

 

 

「えー……とりあえず、しばらくの間はえ、エッチ禁止という事で」

 

「そんな!?」

 

「私の身体が持たないぜ!!!」

 

 朝帰りどころか昼帰りとなってしまった祐希と、そのまま一緒についてきた魔理沙が上白沢宅で慧音と一緒に3人で昼食を食べ終わった後。

 愛する一人息子がついに結婚か、と大泣きしながら寺子屋に向かう慧音を見送った後の二人の会話である。

 

 元々かなりのムッツリスケベで性欲を持て余していた祐希は、一度()()()を知ったせいで色々と抑える事が難しくなっていた。

 魔理沙も()()()を知り、前日の夜に続き朝も()()()()()()()()()とは言え、足腰は今もガクガクと震えている所である。『胎』に注ぎ込まれた、スライムのように粘り気のある()が今も情欲をチリチリ焦がしているが、これ以上の『行為』は命の危機であると感じていた。

 無論祐希に言ったように、『祐希の手で壊される事』は別にやぶさかではないのだが、やはりそれとこれとは別の話なのだ。

 

 だがしかし、今も祐希のオニキスに似た黒い瞳が肉欲を滾らせている事に魔理沙も気が付いていた。

 魔理沙は、そんな事もあろうかと既に代案を用意していた。

 

「お、おじゃましまーす……!」

 

「来たか……」

 

「え、鈴仙……?」

 

 上白沢宅に来た来客は、永遠亭の兎こと鈴仙・優曇華院・イナバ。何を隠そう、祐希に恋心を抱く少女である。

 

「私とは、しばらくエッチ禁止だけど……私は別に『私だけを愛せ』なんて言わないからな」

 

「えっ……えっ?」

 

「えと……ふ、不束者ですが、よろしくお願いいたします……!」

 

「……えっ?」

 

 祐希のストレスの元(欲求)を解消するため、これは治療の一環ですと言い分を告げながら衣服を脱ぎ、畳んで、自身の傍に置いて三つ指をつく鈴仙・優曇華院・イナバ。

 妖怪とは言え美しい少女の裸体に、自身の血が一極集中していくのを悟る祐希。

 魔理沙は、そんな二人を優しい微笑みと共に眺めながら立ち上がり、祐希の頬にキスを落とす。

 

「ちゅっ。―――私の一番はお前だけど、私はお前の何番でも良いからな?」

 

「ちょ、魔理沙―――!?」

 

 にっこりと微笑みながら立ち去る魔理沙を咄嗟に追いかけようと中腰になった瞬間、腰に抱きついてくる鈴仙。

 

「私の能力ってこういう事も出来るんですよ……♥」

 

「ちょ、待っ、うおっ!?」

 

 するり、と履いていたズボンとパンツがいつの間にか鈴仙の手に渡り、息子がコンニチハと大声で主張している所を鈴仙の眼前にまろびだされる。

 

「私じゃ……ダメ、ですか?」

 

 自身の下から上目遣いで見上げられる、潤んだ紅い眼。紅潮した頬。キュッと閉じられた口元。

 

「ダメじゃ、無い……けど……」

 

「じゃあ遠慮しません!」

 

「どぅを”ッ」

 

 鈴仙の懇願に思わず屈してしまった優しい祐希(馬鹿)は、一瞬の隙を突かれて丹田を押されて畳に転がされる。

 そのまま祐希に跨った鈴仙は、硬くそびえ立つ()を両手で優しく挟むように掴む。

 

「うわぁ……すごく、熱い……よ、よろしくおねがいしまーす……♥」

 

 そのまま腰を浮かせてその()を受け入れようとする鈴仙の後ろで、魔理沙がごゆっくりと笑顔で手を振りながら部屋を出ていった。

 

「あっ、ああっ、あぁ~~~……」

 

 祐希は、咄嗟の事でただ悶える事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから。

 祐希の所に時折、幾人かの女性が訪れて身体を交わらせる。そういう事が続いた。

 

「へへっ、相変わらず人気だなお前は」

 

 ハチミツ色の髪と眼を持つ少女が、大きくなってきたお腹を抱えながらにこにこと笑う。

 

「俺はお前の愛に応えられてるかずっと不安なんだけどな?」

 

 左手の薬指にキラキラと輝くシトリンの指輪をはめた少年が、魔法薬の入ったコルドロンをゆっくりとかき混ぜていく。

 体調を崩しがちな妊婦に良く効く『健康水薬』を作っている所だ。お腹の中に居る赤ちゃんも健全に育つように、その才覚を如何なく発揮して色々と調整している。

 

「……毎日愛を囁いて、こうして私の為に色々してくれてるんだ。十分すぎるぜ」

 

「いーや、足りないね。限界だった俺に命張ってくれたんだ。なら俺も命張って愛を伝えなきゃだろ?」

 

「……バカだなホント」

 

 にこにこと笑っていた顔は真っ赤に染まり、口をすぼませながら少年から目を背ける少女。

 少女の左手の薬指には、キラリと黒く輝く小さな宝石が付いた指輪がはまっていた。

 

「……愛してるよ、魔理沙」

 

「むにゅゥっ………………わ、私も愛してるぜ、祐希……」

 

 魔法薬の調合を終えた祐希は、魔理沙の耳に優しく口づけをしながら愛を囁く。

 魔理沙は耳まで真っ赤に染めて悲鳴にも似た喘ぎ声を上げながらも、愛を囁き返した。

 

 二人の愛の結晶は、次の季節に移るころに実るだろう。




ギリギリまでR-18で投稿するべきか迷った原因の話
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