透き通る青の世界の中で、私は今日も真っ赤っか   作:名匿

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死に戻り

「いやぁ、よーやく。ここまで来られましたねぇと」

 

 崩れゆく方舟に乗りながら、私は呟いている。

 こんな私でも、ここまで来ると変な度胸ができるというもの。

 感慨深いですねぇ、嬉しいものですねぇ。

 

「どうです、満足していただけましたか」

 

 これは、とある愚か者(せんせい)への賛辞。

 不相応な弱者から、この世界を、キヴォトスを救おうと走り回った、救世主への。

 

"ヒメカ?何でここに!?"

 

「何でって、そりゃあ私だってメンバーの1人でしたし」

 

"もうとっくに、脱出したものだと……"

 

「……」

 

 先生は驚いていらっしゃる様子だが、それもその筈。

 作戦における私の役目はすでに終わっている、つまり先生からすれば居ないはずの生徒なのだ。

 

「……てへ、残っちゃいました」

 

"ここは危ないよ、今すぐヒメカも"

 

「あっ、UFO」

 

"えっ?"

 

 先生の背後を指差して、いるはずもない物の名前を呟く。

 そうすればあら不思議、隙だらけの先生のかーんせい♡……なんちゃって?

 

"ヒメカ?UFOなんていないけど……"

 

「えいっ」

 

 腕を思いっきり引っ張って、先生を私の背後にある装置の中に押し込む。

 わぁぎっちぎち、こりゃあ私の入る隙間はありませんよと。

 

「はいぽちぽち〜っと」

 

"ひ、ヒメカ!?何をしてるの!?"

 

「ん、何ってそりゃあ。先生を脱出させてるんですよ」

 

"これは、ヒメカの脱出装置じゃ"

 

「私に割り振られたものなだけであって、誰が使うのか誰のものなのかは決まってないですよ」

 

 あはれ抵抗間に合わず、扉が閉まって装置は発射準備の段階に入った。

 強いて言うなら開発者のもの、ですかねぇ。

 

"何で"

 

「生徒1番の精神は素晴らしいですけど、自己犠牲ってのは誰にも喜ばれないかなしーい手段なんですよ」

 

 他ならぬあなたが生徒を優先して死んだら、それこそキヴォトスが終わりますよ。

 先生が死なない範囲で先生しているからこそ、現状のキヴォトスはキヴォトス足り得るんです。

 

「ましてや誰かの為に死ぬなんて、それこそブーイングだらけのクソゲーですクソゲー。評価☆1、コメントは『私はこのゲームを評価しません』ってとこですね」

 

"それって……"

 

「ええ、なので評価を☆4にしようかと思ったんです」

 

 嘘です、私が死んだ程度じゃ精々1個増やすのが限度かも。

 まあ、先生がこのままお空の星になるよりかは良いエンディングかなって。

 

「それじゃあ先生、この先のご健勝をお祈りしてますね」

 

"待って、だめだよヒメカ。そんなの    "

 

「だめって言われても、もうキャンセルはできませーん。大人しく先生は救われといてくださーい」

 

 先生が装置を止めようと奮闘しているが、私の知る限り停止装置なんてものはない。

 これ以外にも、もしかしたら先生が助かる道はあるのかもしれない。

 でもそんなもしかしたら〜なんて知らない、だから私は私の方法で先生を助けるんだ。

 

「私のことはきっぱりさっぱり忘れちゃってください……とは言いませんけど。まあこんな子居たなぁって思って頂ければ幸いです」

 

 これも、嘘。

 この世界のこの先、十中八九先生は私のことを引き摺る。

 

「私からは後、一つだけ」

 

 でも、生きてさえいればどうにでもなる。

 

    生きて、絶対に生き続けて。自己犠牲なんて愚かな方法で、生きることを諦めないでください」

 

"ヒメ……カ……!"

 

「では、先生。さようなら」

 

 先生を乗せた装置が放たれた。

 ……ふー、これで先生生存ルートだね。

 

「結局私は、こうなるのかぁ」

 

 そう、また独り呟いて赤錆色のハンドガンを取り出す。

 これ、手に入れた覚えはないけどすっごい特注品で、すごい機能があるんだよね。

 

 なんと、このハンドガンで私の頭を撃つと、一瞬で死ねるんだっ!

 ……それだけかって?

 いやいや、これが大切なんですよ皆さん。

 

「この銃で云々はともかく、楽に死ねるってのが重要」

 

 そうこの私の、私だけの力である『死を起点とした回帰』をスムーズに発動させるには、ね。

 

「まあカラクリは未だわかってないんだけど……」

 

 とは言え早くしよう、そろそろこの船崩れちゃうし。

 そう考えて、私は慣れた手つきで、引き金を引いたのでした。

 

 

 

 

 

 

 そしたら何だか、今回は状況が違うみたいです?

 えー?

 

「……へ、へー。少し前に空が真っ赤になってたんだー。シラナカッタナー」

 

 いつもの如く、隣の席の名前も知らないモブちゃんに話を聞いてみたところ、既にあの出来事は過ぎ去っている様子だ。

 

 どういうこと?今までこんなことはなかったのに。

 いつもなら、決まり文句の連邦生徒会長の失踪という単語を聞けていた。

 回帰のタイミングが変わったとでも言うのだろうか。

 

「いつ、どうして、何故、どうやって」

 

 今までどうアプローチしたって変わらなかった。

 それが変化した、しかも先生が生きているらしいことは、軽く調べたら出てきたし。

 

「……いつもの如く余計なお世話だったと、仕方ない仕方なーい」

 

 私のやり方が遠回しだったことなんてザラにある。

 過ぎたことに感傷を向けるより、やるべきことはいーっぱい。

 

「さて、次はどんな困難が待ち受けて    

 

「ヒメカちゃんっ!」

 

「あいたっ」

 

 廊下を歩いていたら、いきなり誰かに背後から突撃されてしまった。

 えっ誰?

 

「ヒメカちゃん、ヒメカちゃん、ヒメカちゃん……!」

 

「んー?えっ、と……こっちから見えないんだけど、どちら様?」

 

「ヒメカちゃあん……」

 

「あれ、もしもーし?」

 

 聞いたことがある声なのは間違いない。

 しかしだね、長い繰り返し人生の中で聞いたことのある声なんて無数にあるんだよ、誰が誰なんて一々覚えてない。

 情報ってのは、必要な時必要なものを覚えておくことが大切なのさ。

 

「同じ学校の子なら確か……セイアさん?」

 

「……」

 

「あー違うか……」

 

 ギリっと私を拘束する力が強くなった、間違えたね。

 てかこんな力の強い子ってだれだっけ?私が非力なのはそうなんだけどさ、ちょっと痛い。

 

「わかった、ナギサさんだ!」

 

「ナギちゃんでもないよっ!?」

 

「ナギちゃん……え誰……?」

 

 というか私、この学校で仲良い友達なんてそれこそいないんだけどー?元ぼっちなんだからさー。

 死に戻る前に、目的の為の必要な付き合いとかは経たから、今ならぼっち脱却できる気はする、しないけど。

 

「あはは……そうだよね、ヒメカちゃんにとって私は、殺された憎い敵だもんね」

 

「ん、殺されたって……んー?」

 

 この学校関連で殺されたのは……まあいっぱいあるんだけど。

 その中で印象的だった死因と、その関連というと結構数は絞られる。

 

「……ミカさん?」

 

「!そうだよヒメカちゃんっ!」

 

「うぐお苦しっ……ちょ、ちょーっと離してくれると、話しやすいんだけどどなーって……」

 

 あっミカさんかぁ、先生に救われたんじゃないの?

 あれ、ミカさんと交友があったのっていつだっけ、前回はまず無かったんだけど。

 

「お腹の傷は大丈夫?苦しくない?アリウスの連中に変なことされてないっ!?」

 

「いや、平穏無傷だけど……」

 

 お腹の傷って結果的に先生が負ったアレのこと……じゃないみたい。

 となると私……ん、思い出したあの時かな。

 

「何のことかなミカさん。私はこうやってピンピンしてるよ?」

 

「そうじゃなくてっ、いやそうなんだけどぉ……!」

 

 と言うことで、しらばっくれます。

 当然だよね、前のことなんて今回に持ち込んだって面倒くさいだけだからね。

 

「じゃあ、そう言うことで。私は失礼しまーす!」

 

「あっ……」

 

 ……この時の私は、正直甘くみてた。

 何でミカさんが覚えてる?のかってところを、もう少し深く考えるべきだったなぁ。

 

 少なくとも他に、このこと覚えてる人がいるかもしれないってくらいにはさ。

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