透き通る青の世界の中で、私は今日も真っ赤っか   作:名匿

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この血は誰の?

「うっはー……」

 

 つい先程まで私がいた場所に立っている、翼がある方のピンクのお姫様、ミカさん。

 それもその筈で、さっきまで彼女と私は鬼気迫る鬼ごっこを繰り広げていた。

 

「はぁ、困っちゃうねほんと」

 

 私としては全力で逃げていたと言うのに、あちらはまだまだ続ける気満々。

 何がどうして以前の記憶が出てきたのか知らないけど、それは今後の活動に影響が出かねないので困るのだ。

 ミカさん程、周りへの影響力がある人なら尚更ね。

 

「ミカさんの言うことなら、先生だって動きかねないし」

 

 ティーパーティーはどうだろうか、はてさてどうあれ困った困った。

 その記憶を、ただの夢だと否定してしまえば早いかな?

 

「と、だめだねそろそろ離れよう」

 

 私の隠れている物陰にミカさんが近付いて来ている、どうやら通行人に聞き込みをしている様だ、抜かり無くて困っちゃう。

 いかんせん素の身体能力からして差があるから、ただ真っ直ぐ逃げるだけだと段々と詰められるんだよね、これだから強い人ってのは。

 

「ひとまず逃げて。その後現状確認」

 

 ここ1番とも言える大舞台は幕を閉じたんだけど。

 今までの人生が"そこ"止まりな私にとってそれ以外の情報が無さ過ぎ、知識はある程度の武力にも勝るって私はよーく知ってるんだから。

 

「ヒーメーカーちゃーん……何で、逃げるの……?」

 

「心当たりがないから逃げるんだよね……!」

 

 ミカさんの呟きに、聞こえない程度の呟きで返答する。

 いやほんとにね?

 

「ゲヘナ方面なら、ミカさんも追っては来ない」

 

 確かあの人は、ゲヘナを嫌っていたから。

 ここから行けばゲヘナ付近に行く電車に乗れる。

 

「善は急げ、ささっと行こう」

 

 ゲヘナでまた仕切り直すことだってできるからね。

 ……というか、困った時はゲヘナかブラックマーケットに行けば大体誤魔化せると思ってる自分がいる、どちらも騒がしいからさ。

 

 

 

 

 

 

「替えの服買わなきゃなー……」

 

 上手い具合にミカさんを撒きつつ、ゲヘナ付近まで来たところなのだが、私の今の服じゃあちょっとね。

 いかんせんトリニティの制服というのはゲヘナじゃあ目立つのだ、条約が結ばれたとしてもね。

 

「近くに……まあ、ブティックはあった筈なんだけど」

 

 ゲヘナ寄りとはいえまだここはちゃんとした経済が機能しているので、買ってる途中にドッカーンとかはない、買い物はここら辺で済ませておきたいな。

 

「でも私服でゲヘナをうろつくのもなぁ」

 

 買うなら目立たない服がいいけど、そういうの売ってるかな?

 

「ヒメカさん?」

 

「ん?君は確か……」

 

 んーと、その制服はシスターフッドだね。

 その上で私を知ってる人なんてほんとに限られるから……うん。

 

「若葉、ヒナタさん、だったよね?」

 

「あっ、は、はい!覚えてくださっていたんですね!」

 

「まぁね」

 

 ギリッギリだった。

 記憶のほんの片隅に残ってた程度、いつだったかなシスターフッドなんかに関わったの。

 確かこの人……あっ。

 

「きゃあっ!?」

 

 バギンッ!

 

「あー……」

 

 こちらに駆け寄ろうとして転けた、そしてぶっ壊した。

 持っていた鞄、その持ち手を。

 

「大丈夫?ほら」

 

「あいたた……。ありがとうございます……!」

 

 あーうん、なんで記憶の片隅にあったのか思い出した。

 ヒナタさんってすっごい怪力なんだよね、前の時は確か……。

 

「確か、古い備品だとかいう物騒な奴……」

 

「そ、それは忘れてくださいっ!」

 

 シスターフッドの古い備品、なんて名目の物騒過ぎる機関銃を間違えてぶん回して、最終的にはまたぶっ壊したんだったっけ。

 あれが印象的過ぎて忘れるに忘れられなかったんだ、そうだった。

 

「あはは、相変わらずなんだね」

 

「うぅ……お恥ずかしいところをお見せしました」

 

 ……?

 あれ、なんかおかしい。

 シスターフッドに関わった時は、確か……。

 

「えっと、ヒナタさん」

 

「はい、どうかされましたか?」

 

「……」

 

 今回は関わってないよね?覚えてる限り。

 あれ、じゃあ何でこの人私のこと……え、ミカさんパターン?

 

「んと、珍しいね。こんなところにシスターフッドが来るなんて」

 

「あ、そうですね。今回はマリーさんと一緒に、この地域にある孤児院を訪れてまして、あれ、えっと……」

 

「へえ、そうなんだね。……それ、どう頑張ってもくっ付かないと思うよ?」

 

「はうっ……ど、どうしましょう……!」

 

 ワタワタと壊れた持ち手をくっ付けようとしているけども。

 うん、多分それ根本から逝かれたから無理だよ、どんな力で千切ったのかな。

 

「んー、鞄貸して」

 

「あ、はいっ」

 

「重っ」

 

 えっこんなのあんな軽々と持ってたのってのはさておいて。

 このまま見捨てるのは良心に反する。

 応急処置、というか死体の修復みたいなものだけどね。

 

「ここを、こうして……よしっ」

 

 行うのは、最低限鞄として機能してもらう為の処置。

 偶然持ち合わせていた裁縫セットで、壊れた持ち手をぱぱっと縫い合わせる。

 

「はい、完成」

 

「わあっ、すごいですね!」

 

「持ってた糸が糸だから、そう長くは持たないよ」

 

 おそらく、そんな重量を支えられる程丈夫じゃない。

 あんまり乱暴な扱いをしたら、間違いなくまた千切れて飛んでいくね。

 

「それでも、ありがとうございます!」

 

「うん、どういたしまして」

 

 どうやらこの人は私との思い出を、別の世界の記憶と認識していないみたい。

 何故って?

 ……ミカさんみたいに悲しそうじゃないから、かな?

 あの人どう見ても私の死に目を想起してたからね、じゃなきゃあんな、今にもあっちが死にそうな表情にはならないでしょう。

 

 当の本人にはしらばっくれたんだけど、ごめんね。

 

「じゃ、そろそろ行くね。用事があるから」

 

「あっ……マリーさんには会われて行かないんですか?」

 

「……マリーさん?」

 

 と、言うことで去ろうとしたんだけど。

 ……マリーさんって言うと……。

 

「あの笑顔が下手な人?」

 

「?」

 

「……じゃなさそうだね、うん」

 

 あの裏ボスやってそうな人じゃないなら、もう1人の方かなマリーさんは。

 あっちの子は、とても可愛らしい印象の人って記憶がある。

 すると……。

 

「っ!」

 

「おわっ」

 

 背中に軽い衝撃が走る、本日2度目の。

 でも1度目よりすごく軽かった、別人かな?

 

「ヒメカさん……っ!」

 

「マリーさん、かな?」

 

「!はい、伊落マリーですっ、ヒメカさん!」

 

「わあっと、落ち着いて、ね?」

 

 捲し立てる様な、鬼気迫る様な、既視感ある表情で抱き付いているマリーさん。

 ……もしかしなくても流行ってる?背中から抱きつくの。

 

「はい、深呼吸深呼吸」

 

「すぅ……はぁ」

 

「どう、落ち着いた?」

 

「……ヒメカさん!」

 

「あちゃあ、だめだったかぁ」

 

 引き剥がして深呼吸させてみたら、落ち着いた表情でくっ付いて来た。

 うん、抱き付かれるのは嫌いじゃないけど、ほぼ見ず知らずの相手にそうされると流石に困る。

 

「えーっと、どうしたの?」

 

「……あの時は、ヒメカさんがこうして守ってくださったので」

 

「うん?」

 

 守った?いつどこで。

 おっかしいな、この子を守らなくちゃいけなくなる様なことはしていない。

 

「えぇと……」

 

「相当前のことですから、覚えていないのも無理はありませんよ」

 

「……あはは、ごめんね?」

 

 相当前ってまた判断の難しい言葉を言うねぇ。

 君達にループの記憶がある疑惑を抱く私からすると、その言葉は判断に困る。

 

「ヒナタさんの所為だね、うん」

 

「……えええっ!?な、何でですかっ!」

 

 いきなり責められてびっくりしている様子のヒナタさん。

 いやいや何でって、ミカさんと一緒に変なドッキリ仕掛けてるじゃないですか……とは、言えないよね。

 ドッキリじゃない可能性だってあるんだし。

 

 ……まあ、どうしようもなくなったら"もう一回"があるのが私の強みだし、流れに身を任せるしかないよね。

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