透き通る青の世界の中で、私は今日も真っ赤っか   作:名匿

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レッド・パンプキン

「右見て爆発、左見て乱闘。風流だね」

 

 嘘です何も風流じゃありません、ずっと私が巻き込まれないかヒヤヒヤしてます。

 当然とは言えトリニティの生徒がいるってわかったら真っ先にそっちに向かってくるだろうし。

 

「地味目な服はあったけどね」

 

 あの後袖を掴み続けるマリーさんと別れつつ、最低限必要なものを取り揃えることには成功した。

 予想通りミカさんも追っては来なかったからね。

 

「……音だらけで耳が役に立たない感覚、ほんっと慣れない」

 

 こう言う環境こそリアルタイムの情報が大事なのに。

 私の耳じゃ騒音だらけだと細かい音まで拾えないんだよ、とても苦手。

 

 パシャリ

 

「ん?」

 

 ドカンバゴンという音の中に、一際軽い音が紛れて……いた気がしたんだけど。

 だーれもいない。

 

「はぁ、慣れるまでは大人しくしとかなきゃかな」

 

 私のループは、正真正銘記憶だけを引き継ぐもの。

 いくら前回培った感覚と言えど身体の方はそんなもの覚えてないからね、習熟は早くても0から始めなきゃいけないことに変わりはない。

 

「それはそうとどこに潜もうか」

 

 ここは世紀末学園領域ゲヘナ、下手な場所を選ぼうものならすーぐ消し飛ばされるオチが待っている。

 どこだったか覚えてないけどテロリスト紛いの部活はぜっったいだめ。

 

「ゲヘナだと、風紀委員だけは敵にしたくない」

 

 あそこだけ戦力がおかし過ぎるんだよね。

 だから候補になるのは、余程の辺境域か学園近くにある比較的、割と安全と言える部活になる。

 ……学校外の生徒の癖に、部活に?と言うのはね。

 

 そこがゲヘナの怖いところ。

 まず自由が過ぎる所為で、一々生徒名簿を誰も確認しないんだよね。

 これのおかげで私がひっそりと部活のお手伝いをしたところで基本バレない。

 

 次にフリーな立場のカモられやすさ。

 ここがほんとに予想外、誰も彼もが徒党を組んでは好き勝手してるからさ。

 どこにも属さない個人野郎ってのは、どう立ち回っても噂になるし連中にとって都合の良い的だったのだ。

 以前はそれで酷い目にあった。

 

「だから、基本はどこかに所属したフリが必要になる」

 

 ……まあつらつらと言ったこれらも、ヒナさんレベルで強かったりゲヘナ生くらい自由に生きられたら関係ないんだろうけど。

 生憎私は強くないしトリニティ生だ、価値観が違う。

 

「……やっぱり、給食部かなぁ」

 

 名前は確か、フウカさんとジュリさん。

 ゲヘナに来たルートはそこまで多くないものの、来た時大抵お世話になるのが給食部だ。

 人手が足りてないフウカさんと、隠れ蓑が欲しい私、厄介ごとだけど利害の一致でいつも助けてもらってる。

 

「うん、そうしよう。となったら移動開始かな」

 

 別のところに移動して、情報を集めたいのは山々なんだけど。

 何より今は最低限落ち着ける場所が欲しい。

 

 

 

 

 

 

 ガチャリ

 

「えへへ、これでヒメカさんは私のものですね♡」

 

「んー???」

 

 そうして給食部まで来た私なんだけど。

 出会い頭にフウカさんに軟禁されちゃいました。

 私の脳が処理落ちしそう、助けて。

 

「えっとぉ……フウカさん?」

 

「はい、何ですか?」

 

「いやぁ、どうして私は軟禁されてるのかなーって」

 

「……えへへ」

 

「いやいや、ニコッてしてもだめだからね。説明はしてよ」

 

 とても可愛らしいけれど笑えない。

 それどころかフウカさんの目は笑ってない。

 

「私、すごく考えたんです」

 

「何をかな」

 

「もちろん、ヒメカさんが傷付かなくて済む方法を」

 

 私?てことはやっぱりフウカさんもか。

 ……信じたくなかったけど、ここまで来たら関係があった人には基本何かしらあるって思って良いのかな。

 

「私は大丈夫なんだけどな」

 

「そう仰られることは想定済みです。でも……」

 

 瞬間、フウカさんの表情が一変する。

 

「ヒメカさんがそう言って、本当に大丈夫だったことはないんですよ?」

 

「……」

 

「私は、あんな光景をもう見たくはないんです」

 

 ……光景って何の話?

 私そんなもの見せた覚えはないんだけど。

 

「ヒメカさんの為になるなら、私は何だってします。そう決めたんです」

 

「ちょ、一旦落ち着いてフウカさん」

 

「えへへ、ヒメカさんっ」

 

 私の言葉なんて聞こえてないかの様に頰擦りをするフウカさん。

 ……ほんっとに何があったの?今までの知識からじゃ到底導き出せない様な現状がここにある。

 

「大丈夫です、ここにはヒメカさんを傷付ける様なものはありません。身の回りのことだって私がします」

 

「いやいやいや、流石に申し訳ないからね?」

 

「大丈夫ですよ?」

 

「フウカさんが気にしない、とかの問題じゃなくってね」

 

 私が気にするんですそれはもう。

 確かにフウカさんなら家事スキルめちゃくちゃ高いんだろうけどね、それは不衛生な先生にでもやってあげて欲しい。

 

「……とにかく、今日から私とヒメカさんはここで暮らすんです」

 

「えっ私の意見は?」

 

「?」

 

「わぁ当然の様に度外視なんだ」

 

 あれっさっきまでの抗議全部無駄?

 んーどうしよう、逃げ出すのは簡単だけど、フウカさんを傷付けるのもなー、散々お世話になって来たから抵抗あるかも。

 

「……はーい、わかった。()()()()はここで過ごさせて貰うね」

 

「!本当ですか?」

 

「うん、まあ身の回りのことは自分でやるけど」

 

「……私が全部ぜーんぶ、やりますよ?」

 

「いやぁ、流石にね?」

 

 私の微かな抵抗を、渋々と言った様子で受け入れるフウカさん。

 冷静になって考える時間が欲しかったのはそうだから、少しの間その時間をフウカさんと過ごすことにするのも悪くはない筈だ。

 モブちゃん、ヒナタさん、マリーさんに聞いた情報とか、フウカさんにこれから聞く情報とかを整理したいしね。

 

「ところで、ここはどこなのかな」

 

「私の部屋です」

 

「ほぇー、綺麗な部屋だね」

 

 知らない部屋だなと聞いてみたらフウカさんの部屋だった。

 いやね、睡眠薬盛られてたらしくて道中のこと知らないんだよ私。

 

「どうやってここまで運んだの?」

 

「途中までは荷台に乗せて、そこからは買い出し用のバイクを使いました」

 

「あー……」

 

 すごい目立ちそう。

 ……まあ私にはどうしようもなかったし、噂になってたら仕方ないかな。

 知り合いなんてそういないし問題ない筈。

 

「あ、そうだ」

 

「?」

 

「何か、食べたいものはありますか?」

 

「えっ、あー……」

 

 食べたいもの、食べたいものか。

 どうやら、フウカさんが作る気満々の様だ、身の回りは自分でやるって言ってるんだけどな私ね。

 

「……卵焼き」

 

「?」

 

「うん、フウカさんの卵焼き、食べたいな」

 

    はい、任せてください」

 

 今日一のとびっきりの笑顔を見せるフウカさん、可愛いけどちょっと他の要素が強過ぎるかな。

 

 パシャリ

 

「ん」

 

「どうかしました?」

 

「……いや、何でもない。気の所為だったみたい」

 

 また、何かの音が響いた気がした。

 ……これでも結構疲れてるのかな、一応大仕事終わらせてすぐのループだし。

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