「んー、変な情報はないなぁ」
青い空、白い雲!良いねぇ平和だねぇ。
ゲヘナじゃなければ、ということでお外に出て来ちゃいました。
「そっちのスキルはまだまだだったねフウカさん」
まあ以前までにそんなスキルがある風にも見えなかったし、そんなものだよね。
それにフウカさんはすっごく忙しいし真面目だ。
「放課後までに戻れれば問題はなさそう」
基本学校にいるし、食材の仕入れ先や時間も大体覚えてるから問題ない。
それに鍵を壊した訳じゃない、ちょちょいっと鍵開けただけだから戻れば元通り。
そう言う技術はあればあるほど有用なのです。
「とは言え収穫もあんまりないんだよねぇ」
聞けたことで有用だと言えるのは、連邦生徒会が騒がしいというニュースくらい。
連邦生徒会と言えば兎の小隊さんがいるけどどうなるのやら。
後は……ああ、そう言えば。
「不知火カヤ、か」
色彩との戦いでループしてた時、幾度となく邪魔された存在。
いっちばん邪魔だったのは結局カイザーなんだけど、手を組んでるみたいだしどっちもどっち。
なんだかんだと目を付けられてるのも気になる。
「私なんかに目を付けるあたり、見る目は無さそうなんだよねぇ」
いわゆるマコトさんタイプなのか、それとも爪を隠した鷹なのか。
判断に困るね。
「とは言え、ここから動くならもう少し確実性が欲しい」
逃げたのがD.U.だったら自由に動けたけどね。
いやぁミカさんに追われることになるとは思わないよ、やっちゃったなー。
ループ地点が変わってるのも意味わからないし。
「ただでさえ、新しい時は考えることが多いのに、今回は別の何かも混ざってる」
ループの記憶を保持した人達が多くいること。
それをループだと認識してない場合もある。
「というより、してる人達の方はあれなんじゃないかな」
あの感じ、私が死ぬ場面を見てしまって、否が応でもループしてると認識しちゃってるだけな気がする。
ミカさんもフウカさんもそうだからね。
「通常ならヒナタさんのが普通」
というか、ループに慣れるまでは大体そうなる。
まあループの記憶の扱い方に関しては私の方がずっと上だし、経験もある。
……ぶっちゃけどういう条件でループしてるのかでも変わるんだけど……一度にそこまで考えてられない。
私は己の死が引き鉄だから、他の人もそうだと思うだけ。
反応の違いは、それを目の当たりにしたのかしてないのか。
「ひとまずこれで行こう。だめならやり直す」
懐に備えた赤錆の銃をなぞる。
……ん、そう言えば。
「……先生ってどうなんだろ」
そうしなきゃいけない関係上、あの人の近くで死にまくってたんだけど。
……大丈夫?発狂とかしてない?
「ま、その時はその時かな」
心の強い先生だし大丈夫でしょ。
悲しむだろうけどそれはそれ、で割り切るのが大人だよ大人、まだ子供だから知らないけど。
ピロン
「ん、何の音?」
スマホが鳴った?
……ああモモトークか、びっくりした。
このアプリさぁ、元ぼっちには慣れないが多過ぎるよね。
元ぼっち……あれ私誰か登録してたっけ。
表示される通知から、送り主の名前を確認する。
「げっ」
そこに表示されていた名前に、思わず声が出てしまう。
『空崎ヒナ』
……えっ何で?私何か悪いことした?そもそも何で知ってんの私のモモトーク。
「……待たせた」
「ん、全然待ってないよ」
返信してたら待ち合わせすることになってました、忙しいんじゃないのか風紀委員長。
声の主の方に振り返ってみると……。
「わ」
「……どうかした?」
「いやすっごい隈だけど。ちゃんと寝てる?」
「……」
暗い色が、うっすらと化粧の上から浮き出ている。
化粧でも隠せないほどの隈って、やっぱゲヘナってブラックだね、色んな意味で。
「最近は、いつにも増して寝れてない」
「そう。ここで寝てく?」
「……いい。寝ると、夢に出てくるから」
「はい?」
「何でもない」
そうぼやくヒナさんはふらふらしている、まともに立ってられないくらいなのか。
……いやー、この人に倒れられるのはちょっと不味いんだけど、どうしよっかな。
「とにかく、行こう。あまり時間がないから」
「あ、うん」
話し合いたいってことで、話ができる場所に移動する。
ヒナさんに1番効くのは先生セラピー、やっぱりこれだね。
でもそんな多用できるものでもないんだよねぇ、2人とも忙しいし早々に持ち場を離れられないから。
「……驚いた、あなたがゲヘナにいるなんて」
「ん、まぁね。それは私も驚いてるよ」
私がゲヘナにいることを知ったから連絡して来たと、ほうほう。
「どうして私のことを?」
「……それが役目だから」
「?あと、どうやって知ったの、私がゲヘナにいること」
「机の上にあった」
「何が」
「写真。風紀委員会の机の上に置いてあった」
「???」
何それ怖すぎない?犯人誰さ。
それだけで動くヒナさんもヒナさんで怖いけど。
「え、えー。それでヒナさんはどういう用件で会おうと?」
「……」
押し黙ってしまった。
……何か言い難いことなのかな。
「怖かった」
「え?」
「また、あなたが知らない間に消えてしまうんじゃないかって」
「それは……」
……私がヒナさんと関わったのはそう多くない。
今言っているのはおそらく、風紀委員会のお手伝いをしていた時だ。
ひょんなことから、イオリさんチナツさんと共闘したんだけど、何の因果かその後何度も何度も、毎日の様に遭遇しては共闘する流れが頻発したんだよね。
その時、人手不足を理由にお手伝い枠として採用されたって訳。
まあ結局最後私は死んだんだけど、理由が理由でさ。
「あいつらは先んじて叩いたから、大丈夫」
「そこまでしなくても……現状はただの集団なんだし」
「だめ」
「あはは……」
悪党にとって悪名高い風紀委員会、そこに妙なお手伝い枠がいるとなればそりゃあ悪目立ちする。
しかも単体じゃそんなに強くない、ストレス発散には良い的でしょ?
普通に数でぼこぼこにされまして、その後にね。
「アコ達もやる気だった」
「やる気って……お疲れ様」
相手の方怖かっただろうねぇ、風紀委員会がやる気になってぼこぼこにしに来るって。
私ならトラウマになるね。
「今になって、ヒメカが言っていた言葉の意味がわかった」
「ん」
「次は、もっと上手くやるからって。こういうことだったんだ」
「……まぁ、うん。びっくりした?」
静かに頷くヒナさん。
ループ初心者らしい反応だと思うよ。
「……同時に、チャンスだって思った」
「うん?」
「あなたを失わないで済むって」
「そっか」
余程トラウマなのかな、私の死に様。
あの時は確かただの失血死なんだけどなー。
「傷だらけのあなたを見た時は、怖かった」
「ごめんね。怖がらせちゃって」
「血が止まらなくて、下がっていく体温」
「……」
「……今でも、夢に見る」
そうか、だから寝不足なんだね。
普段から睡眠不足なのに、悪いことしちゃった。
「今向かってるのって」
「風紀委員の部屋。喜ぶよ」
「えっ」
「どうかした?」
「んー……何でもない!」
フウカさんと鉢合わせたらとんでもないことなるなって思ったけど、そうそう出会わないよねあそこじゃ。
基本的に食堂に居る筈だから。