ホロライブラバーズ トロフィー「3馬鹿1人三役」取得チャレンジ 作:片割れコンセント
どっちかって言うと過去編だね。とは言っても、この話はゲームで言う回想シーンを0.5話みたいにした物って感じ。
「なんで急にそんなこと始めたんだ?」
本編より短いこれを持っておけばまた更新期間がえげつなくなった時の時間稼ぎになるから。
「あんたの投稿頻度が遅いのはあんたが何も考えずに書くからでしょ。あと、最近ぷにぷにに熱入りすぎっすよ」
それはそうなんだけどさぁ?……あっ!ニコル君とアスランの話!手抜きだし短めで〜す!
「あんたって人はァ!」
あの日、何も知らなかった僕はこの世界の無情さと、自分の無力さを思い知った。あれは三年前のことだった……
「明日はニコルの誕生日ね!晩御飯はローストビーフ作ってあげるから、楽しみにしててね?」
「ニコル、前にもっとしっかりしたピアノが欲しいって言ってたよな?少し早いけど、進学祝いも兼ねて、父さんが買ってやるぞ!それか、機械いじりの道具の方が良かったか?そっちも欲しいって言ってただろ?」
「えっ、いいんですか!?そんな贅沢な……」
「いいのよいいのよ。中学校の進学祝いは、一生に一度しかもらえないんだから!」
「ニコルはいつも遠慮しすぎなんだよ。もう少しねだったっていいんだぞ?父さんたちはニコルに誰かのために動ける人になれって言っただけで、遠慮ばっかりして自我を殺せなんて言ってないんだからな!」
「いやそんな……僕なんかが……」
明日は僕の誕生日だった。母さん父さんと一緒に食卓を囲んで、他愛もない話をするいつもと変わらない日常の風景。また勉強して、ピアノを弾いて、夕ご飯を食べ、お風呂に入って寝る。そういう日常が、ずっと続いていくと、そう思っていた……
「やめて……助けっ!……」
「何が起こってるんだ……ニコル!逃げ……」
その日の晩。僕は下の階から響く激しい物音と、鼻をつく血生臭い匂いに叩き起こされた。その時の僕は、その違和感の正体を明日のローストビーフを父さんと母さんが作っているんだろうと考えて、何の違和感も持つこともなく一階へと繋がる階段を下っていった。一歩進むごとに血生臭さは増していき、全身を逆撫でされるような不快感が僕を襲った。恐る恐る扉を少し開けて中を覗くと、そこに広がっていたのは、この世のものとは思えない光景だった。
「えっ……?父さん?母さん?何が起きて……?」
リビングはほとんど見る影もないほど荒らされていて、壁には獣が引っ掻いたような傷跡が痛々しくついていた。そんな変わり果てたリビングの奥で、何かが蠢いた。いや、単独じゃない、無数の何かが電気もついていないダイニングの闇に紛れて闊歩していた。その何かの隙間に、僕は確かに見た、見てしまった。
「えっ……?あれ、父さんと母さんの……?」
その奥にあったのは、確かに父さんと母さんの着ていたパジャマで、ビリビリに破けていた。恐怖のあまり、急いでここから逃げないとという感情に駆られ、一歩後ろに下がった時だった。
「あっ……」
「「「「?……」」」」
恐怖のあまり足がすくんで、その場に尻もちをついて倒れる。その瞬間、ダイニングで蠢いていた何かが、一瞬でこちらに振り向く。その黒一色の体についた赤い眼が一斉に僕を捉える。一瞬で全身から血の気が引いた。玄関から裸足で駆け出し、必死で家から離れた。
「はぁ……はぁ……逃げなきゃ……もっと遠くに…!」
家の外はもっとひどく、建物が壊れ、あちこちから炎が上がり、家の残骸からは、さっきのやつと同じ何かの姿が見えた。後ろから聞こえてくる幾つもの足音から逃れるため、必死で走り続けた。
どこまで逃げただろうか。気づけば、街の中心からかなり離れた雑木林まで逃げてきてしまった。ただ、足音は未だ僕を追っている。草木に体が当たってできた切り傷も無視して、ただひたすらに逃げ続けた。
「いやだ……死にたくない……死にたく……うわっ!?」
死に物狂いで走り続けていた僕の足が、剥き出しになっていた木の根に引っかかってそのまま体が前に倒れる。いくら起きあがろうと力を入れようとしても、足は一切それに応えてはくれなかった。
「うっ…うわぁ!来ないで!来るなぁ!」
「ギィッ?……グルアゥ……」
後ろに後退りしながら手につく枝や石を半ば狂ったように狼の化け物に投げつける。しかし、そのせめてもの抵抗も嘲笑うかのように化け物は一切臆せず僕の目の前まで歩み寄り、その血と肉で汚れた大きな口を開き、僕へと牙を向く。
(あぁ、ここで死んじゃうのか……なんで世界は、こんなにも理不尽なんだろう……父さん母さん、ごめんなさい……)
もはや抵抗する気力も失せ、目の前に広げられた大きな口をただ眺めるしかできなかった。世界への少しの文句と、両親への謝罪を済ませ、おとなしく怪物たちにその身を差し出した。
「グルゥ……」
一際大きい個体が、倒れ伏した僕にその牙を突き立てる……その時だった
「させるかっ!」
その鋭い牙が肉を引き裂く音の代わりに辺りに響いたのは乾いた銃声と、目の前の巨体がずしんと目の前に倒れる音のみだった。それを皮切りにあたりから次々と悲鳴が上がりはじめる。僕を取り囲んでいた赤い光が一つ、また一つと消えていく。数分としないうちに怪物は姿を消し、この場に残ったのは僕と、目の前に立つ謎の存在だけとなった。
「やっぱりこの状態じゃ、まともな運用はできないか……君、大丈夫か?立てるか?」
謎の存在が僕に手を差し出した。木々の隙間から差し込んだ月明かりが辺りを照らし、暗闇に紛れていたその姿が顕になる。SFでしか見ないようなロボット、闇夜に同化するような黒色の装甲、背中に装備された翼のような謎の装備。機械いじりもそれなりに好きであった自分からしたら、あまりのかっこよさに興奮を抑え切れない物だった。しかし、よく見ればその装甲は所々に傷がついており、別の材質のもので補っている部分もあった。左腕部に関しては腕がなく、恐らくは元々かなり破損していたものを無理矢理使っているのだろう。
「大丈夫か?聞こえているか?聞こえているなら返事をしてもらいたいんだが……」
「あっ!すいません……少し考え事を……大丈夫ですよ、助けてくれてありがとうございます」
その後、その人は僕を連れて何か大きい建物の辺りに僕を残すと、そのまま街の方向へと消えていった。
「突然連れられて、ここは安全なのか……?」
「うぇぇっ……ママ、怖い……」
「そりゃ、私も怖いわよ……よしよ〜し。大丈夫、大丈夫だからねぇ……」
「チィッ、何なんだよ本当に。突然襲われたと思ったらこんな窮屈な場所に入れられて……最悪だよクソ……」
中から出てきた人達に連れられて、建物の中でも一際大きな沢山の人がいる場所へと迎えられた。その中にいた人々は皆恐怖に怯えた顔をしていて、その中には何人か顔見知りもいた。
「ここ、避難所……なのかな。でも、ハザードマップとかにこんな所はのってはなかったけど……」
「まぁ、ここは政府公認の組織じゃないからな。あくまでこの仮避難所も、民間で勝手にやってるだけなんだよ」
そうしていると背後のドアが開き、そこから聞こえてくるどこか聞いたことがあるような声が僕の独り言に答えた。振り向くと、そこにいたのはあの漆黒のロボットではなく、茶髪に濃紺の瞳を持つ僕と同じくらいの男の子だった。
「えっと、さっきの黒いロボットの人……であってますよね?」
すると、その男の子は少し首を傾げ、それからハッとしたかのように目を見開きながらに答えた。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。僕は明空……いや、まぁ別にいいか俺はアスラン・ザラだ」
「えっと、アスランさん?色々とお聞きしたいことがあるんですが……」
「アスランでいい。歳もそんなに変わらないだろ?まぁ、答えれるところまでだったら答えるぞ」
そういうとアスランは僕にペットボトルの水を一本手渡すと、そのまま近くの壁に背中を預けた。
「あっ、僕はニコル・アマルフィです。ニコルって呼んでください。じゃあまずは……ここってどういう場所なんですか?さっき政府公認じゃないって言ってましたけど、施設も大掛かりですし、設備も完璧ですし……どこかの企業がやってるとかですか?」
「いや、特にそういった支援は受けてないな。ここ『特殊非政府組織アークエンジェル』は完全に自分達だけで行動してる。給料も出ないし、いわばボランティアのコミュニティみたいな物だな」
支援もなしにこんな大掛かりな事を?と思ったが、そこを聞いても何も出てこないのは薄々勘付いたので、別の質問を投げかける。
「なら、あの時の怪物について聞いてもいいですか?後、さっきアスランが使っていたあのロボットのような物についても……」
それを聞くと、アスランは少し顔を顰めながらも口を開いた。
「あれは特に名称はない。俺達は魔物と呼んでいるが、普通の動物を逸脱した力がある。普通の銃火器なども大抵通用しないから、あの時ニコルを見つけられて良かったよ……で、あの兵装に関してか?まぁ、端的に言えばあの魔物達に対処できるように作られた対魔物用の武器って感じだ。俺達はそれを使ったりして、魔物の被害を防いだり、こうして被害に遭った人達を守ったりしているということだ。といっても、あれを使えるのは俺以外いないんだがな……」
(今までもこういう被害があったんだ……でも、ニュースとかでも聞いたことがないから、アスラン達が事前に対処したりしてたのかな……というか、さっき言っていたけどアスランはあんな化け物と、ずっと一人で戦って?)
もしそうだとしたら、アスランは歳もそう変わらないのに、ずっとあんな怪物から人々を守り続けてたのだろうか。僕には到底できそうにない事をどうして投げ出したりしないのだろうか。僕はそんな事を考えながら、最後の質問へと移る。
「じゃあ最後に……ここに来る前から気になっていたんですけど、建物の内部も外部も相当大規模な損傷がありますよね。この建物の防御性はシェルターや戦艦ぐらいに高いと思ったんですけど、一体何があったんですか?」
今思い返せば、あの時のアスランが見せた辛そうで苦しそうで、でもどこか覚悟を感じる瞳は、あの時が最初で最後のものだったかもしれない。アスランの声のトーンが落ち、辺りの空気が少し変わったのを肌で感じながら、アスランの続く言葉を待った。
「少し前に、今みたいな魔物の襲撃があったんだ。それも、今回よりも大規模かつ、より悪辣なやつがな……その時に、少なからずここにも被害を受けたんだ。さっき言ったとおり、俺達には援助なんて物はないから、ああいう感じでなんとか傷を隠して塞いでるんだ。まぁ、知らない人が外側から見たら見えないってだけで、内側で傷は深く残り続ける物なんだがな……あの兵装も、その襲撃時に大破した物をなんとかかろうじて使えるレベルまで修復しただけから、あんなに不完全で扱いづらくなってるんだ。これで全部なんだな?あっ、そうだ……あそこにピアノが置いてあるだろ?避難民の気を紛らわすために置いてあるんだが、暇なら使っていいぞ。俺は後始末があるから、安全が確認されるまではここで待ってろよ」
そう言い残すとアスランは元来た方向へと去っていく。一人取り残された僕は、アスランのあの顔が頭から離れなかった。強い覚悟を持ちながらも、その目は何度も絶望を体感した様な何処か虚ろな瞳は、とても同じくらいの歳とは思えないほどに大人びていた。そんな事を考えていると、突如として避難民の人混みの中から悲鳴が上がる。目線の先には拳を握りしめる一人の男と地面に倒れて泣いている子供。それだけで状況はすぐに飲み込めた。
「ちょっと!うちの子に急に何するんですか!」
「るっせえな!さっきからぎゃいぎゃい泣きじゃくって迷惑なんだよ!」
騒ぎを聞きつけた周りの職員やその場にいた人達が止めようとするも、男はそれを振り払って母娘の前に向き直り、わなわなと震えながらに口を開く。
「お前らだけ怖えわけじゃねえんだよ!ここにいる奴らみんなあの化物から逃げてきたんだ!ダチが殺された!いつも通り集まってたら急にあの化物に食い殺されたんだよ目の前で!いいやつだった……確かに俺らで色々馬鹿やったけど、あんな仕打ちを受けるほどのクズじゃなかった!なんなんだよあれ!あんなの人間の死に方じゃねえ!それを必死で堪えようとしてるのに隣でずっと喚き散らしやがって!」
「こっちだって辛いんですよ!夫が私達を逃すために死んだんです!家にあれが侵入してきて、私たちの囮に……っ!まだ幼かったこの子の妹も死んだんです!この子を守るのに必死で……ここにもいつあの化物が来るかわからないんですよ!?せめてここでくらい泣かせてやってください……ずっとお守りして嫌なんですよ!少しは私を落ち着かせてください!」
口論はどんどんヒートアップしていき、周りの人達は声をあげて二人を止めるどころか、そちらでもざわつきが大きくなっていく。
「確かに、ここも安全か限らないよな……」
「本当にここは安全なの……?いつになったら帰れるの……」
「こんなところにいるより、もっと遠くに逃げるべきなんじゃないか!?」
避難民達の不安が煽られ、収容空間の中は荒れた海のようだった。中には荷物を持って無理矢理扉をこじ開けようとして職員さんに抑えられている人もいた。
僕の体が一直線にピアノに向けて走り出していることに気づいたのはちょうどその時だった。今思い返せば、自分でも何であんな事をしたのかわからなかったが、おそらくは今の自分にもできる事をしたかったんだと思う……ピアノの前に座って、力一杯鍵盤を叩く。重厚感のある音が辺りに響き渡り、あたりの人達の目線が一斉にこちらに向く。そこからの記憶は今でもぼんやりとしか思い出せない。一心不乱にお粗末な曲を奏で続けていた、恥ずかしい姿を曝け出していたに違いない……ただ、その時だけはみんなの動きもやんで、穏やかな顔で恐怖を落ち着かせて僕の演奏を聴いてくれていた事がとても嬉しかった。そして……
「はぁ……はぁ……ピアノの演奏?どういうわけかわからないが……皆さん!街の安全は確認されました!もうあの化物はいません!不安なら残っても大丈夫ですし、住宅が無事なら帰っていただいて構いません!」
アスランが吉報を持って帰ってくるまでを助けることができたのが、何より嬉しかった。
「何であんな事をしたんだ?いや、別に責めているわけじゃないんだ。現にこちらとしても助かったわけだし、ただ理由を聞きたいだけで……」
避難民の数も前と比べればかなり少なくなり、施設内も落ち着きを取り戻した頃、アスランが不意に僕に問いかけてきた。
「それが、僕にもあんまりわかっていないんです。ただ、みんなが大変な所を黙ってみてられなくて、僕も何かしなきゃって思ったんです……何もできないのは嫌ですからね」
それを聞いた時のアスランはその時どこか上の空だった気がする。何か別のことを考えていたのか、急にハッとして謝りながらに答えた。
「そうか……ピアノ、上手いんだな。俺はあいにく絵とか音楽とかには疎いんだが、君がとても上手な事だけは、俺にもわかった」
「いや、上手だなんてそんな……僕なんて全然ですよ。本当は、もっとちゃんとしたのをやりたいんですけどね。こういう状況ですし……」
少しの静寂が僕らの周りの空気を冷やし、気まずくなってきた空気感をアスランが再び壊した。
「そういえば、君はこれからどうするんだ?家や両親は大丈夫なのか……?」
さっきまでの楽しいような気まずいようなふわふわした気持ちが、急に現実に引き戻された。今の僕にはもう帰る家も、迎えてくれる両親も、すでにいないのだ。たった2時間程で鎮圧したこの騒動は、僕の人生を大きく変えてしまったのだろう……
「いや、実はアスランに助けてもらう前に、その……」
「っ、すまない……」
ただ、あの恐怖はまだ頭に残っているはずなのに、僕の中にはすでにこれからの考えが浮かんでいた。きっと父さんも母さんも認めてくれるだろう。これはきっと、父さん母さんが望んでいた他者のために動ける人になるための道なんだから……
「何で謝るんですか!アスランは一人で僕を助けてくれて、その上街の人たちもみんな助けたんです。悪い事なんてしてないんですよ?それで、お願いがあるんですけど……」
「……何だ?」
「えっと、あの、その……」
決めたはずなのに、言葉に出そうとすると引っかかってしまう。また、あの化物に襲われるかもしれない。今度こそ命を落とすかもしれない。そういう危険に自ら入っていく事なんだから……今からでも辞めようかと思った。ただ、アスランの事を考えれば、自然とそんな考えは無くなった。彼は一人で何度もああいう恐怖からみんなを守り続けていたんだから……
「僕を、アークエンジェルで働かせてくれませんか?」
「………は?いやいやちょっと待ってくれないか!?」
全く予想していなかったのかアスランの素っ頓狂な声が静まった避難所に響き渡った。そんなアスランの様子を尻目に僕は話し続ける。
「アスランを見て、思ったんです。アスランはずっと一人でここにいる人たちのためにあんな化物と何度も戦って、それが僕にはすごい辛そうに思えて……代わりにやるなんてそんな傲慢なことは僕にはできませんけど、こんなことが起きている事を知って、僕も何かしたいって思ったんです。アスランが僕を助けてくれたように、僕も誰かを助けたいって……わかってます!危険だってことは……またあの化物に襲われるかもしれないって事は……でも、アスランが逃げないように、僕も逃げませんから!」
アスランは時折何かを言おうとしていたが、結局認めてくれたのか大きなため息をついて真剣な顔つきでこちらに向き直る。
「確かに君が身寄りがないのは分かった……だが、俺は君をわざわざこんな事に巻き込みたくはない……こんな事は俺一人がやればいいんだ。君が今から進もうとする道はデメリットしかないんだ。もう今までみたいな平和で普通の生活には戻れないし、常に命の危険に晒されることになる。それでもいいのか?」
今までの自分だったら、それを聞いた時にすでに逃げているだろう。現に今だって一瞬嫌な考えが脳裏をよぎった。ただ、今はもうそんな弱い自分はいらないんだ。僕みたいな人を一人でも助けたいって思えたから。
「はい……覚悟はあります」
「……わかった。代表には俺が話を通してくる。まぁ、これからよろしくな」
「はい!精一杯頑張ります!」
その後、アスランのおかげで僕は無事にアークエンジェルの一員になれた。仕事は大変だし、慣れないことも多いけど、みんなに助けてもらいながらも一歩一歩進んでいこうと思う……そして、僕がアークエンジェルに加入してから1ヶ月が経った頃、アスランに武器庫に呼び出された。どうやらほかの職員さんが言うには、武器庫はアークエンジェル内でも機密区間らしく、入れる人はほんの一握りらしいのだが……そんな事を考えている間に武器庫に辿り着き、恐る恐る中へ入る。
「あの〜アスラン?言われた通り来ましたけど……」
「あぁ、ニコルか。いきなりこんなところに呼び出して悪かったな。見せたい物があるんだ」
そう言ってアスランは自分の後ろを指差す。そこにあったのは、アスランに初めて会った時に見たような黒色のロボットであった。あまりの重厚感と非現実感に一瞬眩暈がしたし、アスランから手渡された数枚の資料に目を通していくたびに恐怖と興奮が同時に脳内を駆け巡る。
(いったいこんな非現実的な物をどうやって……ダメだ……考えても考えてもわからないや)
「GAT−X207『ブリッツ」前に俺が使っていたあの兵装と似たような物だ。色々作ってる中で試作的に作った物だが、ニコルにこれを任せたい」
「これを、僕に……」
「あぁ、ニコルになら任せられると思ってな。嫌なら別に断ってくれて構わないさ、これを使うのは戦いが起きた時になるんだから……」
つまり、これを受け取ったら僕はあの化物と戦わなければならない。だからアスランは僕に渡す事に対してあまりいい気持ちじゃないんだろう。確かに戦うのは怖い。だけど、これでようやく僕は、アスランを助けることができるんだ
「わかりました、僕がこれを使います。今まで、アークエンジェルに入ってからもずっとアスランに頼りっぱなしでしたけど、これからは僕がブリッツでアスランを支えますから」
それを聞いたアスランの表情が一瞬緩んだ気がした。アスランもやっぱり一人は辛かったんだろう……アスランは柔らかな笑みを浮かべながら僕に手を差し出した。
「頼もしいな。これからも頼りにしてる」
「任せてください!今度は僕がアスランを助けますから!」
これでようやくあの時の恩返しができるんだ。あの時ほぼ全てを無くした僕に寄り添ってくれて、居場所を与えてくれた事は感謝しても仕切れない物だ。どんなことがあっても、絶対にアスランを助ける。そう心の中で誓いながら、僕はアスランと握手を交わした。そのとき僕はようやく、スタートラインに立てた気がしたんだ。
そんな武器庫の上部、辺り一体が見下ろせる場所に二人の人影があった。
「ブリッツを任せるなんて、アスラン君はよっぽどニコル君を信頼してるみたいね」
一人は、このアークエンジェルの代表であるマリュー・ラミアス代表
「俺はわかってたぜ?あの時、アスラン君があんなに必死で説得してきてたんだからな」
もう一人は、そんな代表の側近のような立場にあるムウ・ラ・フラガ大佐。アークエンジェルは軍ではないのだが、分かりやすいという理由でアークエンジェルではそういう呼ばれ方で通っているのだ。ただ、その顔色はとても良いとは言えず、どこか迷っているような悩んでいるような、そんな何とも言えない顔だった。
「私達、何のためにこの活動をしてるんでしょうね……あの子たちに続いて結局、また一人こんな事に巻き込んでしまって……」
「俺だってわかんねえよ……でも、俺達が残された理由は魔物を止めるためだ。それだけは決まってる。悔やんでても仕方ないさ、実際俺たちだけじゃ魔物を止めるなんて夢のまた夢。そもそも坊主たちがいなきゃみんな死んじまってるんだからさ……」
自分たちの活動の意味は魔物による被害を止める事。そして、それによって命を落としたり、人生を歪められたりする人を一人でも減らす事だと思っていたが、結局は自分たちの力ではどうにもならず、子供達を戦わせてしまっている。人生を歪められる人がいないように魔物を止める。しかし、そのために自分たちは多数の人の人生を現に歪めてしまっている。そんな矛盾が二人を苦しめるのだ。
重苦しい雰囲気を払うようにムウがマリューの肩に手を置き、陽気に声を上げる。
「まぁ、それは俺達が弱かったからだし、それをいくら悔やんでももう意味ないさ。だからさ、そう落ち込まないで、未来でそんな事起きずに済むようにしていくしかない!だろ?」
それが虚勢なのは誰の目から見ても明らかだった。だが、マリューもそれに応えるように薄く微笑んでみせた。
「そうね、いつまでもあの子達だけに責任を押し付けているわけにもいかないわ。私達も、出来る事をしましょう」
二人の中でも明るい雰囲気が戻ってくると、ムウはさっきの重苦しい感じはどこへやら、いつもと変わらぬ態度で武器庫の下に降りていこうとした。
「よしきた!じゃあ俺は早速メビウス・ゼロの訓練に出るぜぇ!」
「フラガ大佐?貴方にはまだやってもらわないといけない仕事が残っているはずですが……」
「げっ、代表お厳しい〜!そんな事言わずにさ?いいだろ?」
「無断出撃はそれ相応の罰を覚悟してくださいね?1ヶ月は忘れられないと思っていただければ」
「わかった、わかったって!俺が悪かった!」
上でも下でも、明るい雰囲気が武器庫を包み込んだ。傷は残ったまま、誰もがそれぞれの傷を抱えたなかでも、この瞬間だけここは希望に満ちていた。それがどんなに儚いものかは皆わかっていたが、今はそれだけで十分だった。 西暦797年。現在から三年前、第三次アークエンジェル襲撃事件の一年後出来事であった……
三馬鹿チャレンジの別にどうでもいい小ネタ
トリィの鳴き声
今作のトリィの鳴き声には「ピ」と「トリィ」の二種類がありますが、これらの違いは何でしょうか?
「うーん……トリィの方は俺が作ったからわかるがピの方の詳しいことは知らないんだよな……」
「あんたが間違えただけじゃないんすか?」
違います!正解はその鳴き声を出してる時に使ってる機能を誰がつけたかです!流石に失礼すぎるでしょ!パチンコで救われてんだぞ!
「すっ、すんません……ってかあなたseed打てましたっけ!?」
「遠征すれば打てるんだとさ……トリィに機能を追加できる俺以外のやつ……あぁ、キラか」
正解!鳴き声がトリィの機能はアスランがつけた物で、ピのやつはキラが後から改造したものってわけ!
「俺は目覚まし時計機能やらインターホンとの接続やらはしてなかったからな……納得だ」
「何で分ける必要があったんですか?大した変化があるわけでもないし……」
まぁ、後々使うかなぁ〜って
「ふぅん……まぁ、使う場面が早く描けるといいですね」
「今回あんたが使ってた機体ってひょっとして……あのストライクノ……」
「それ以上言うな。その機体は中々に人気だから扱いに困ってるんだ。作者は出す気満々らしいけどな……」
出したいよねぇ……だって普通にかっこいいし強いしGジェネに実装されたしで頭の中に戦闘バンクが溢れてきて……
「どうせ過去編で出すんでしょ?さっさと書いたほうがいいですって」
はい……
seed履修済勢の閲覧者の皆様〜!何か勘付いたら当ててみてね〜!
今回の懺悔
ぷにぷにに時間を喰われた
ホロドリにも時間を喰われた
29話と同時並行でやってたから完成が遅れた
結論 間違っているのは僕じゃない。間違っているのはこの世界だ。小説の書き方があやふやになってきた。何てこった。