ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録   作:えぴっくにごつ

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間が開いてしまい本当に申し訳。


Part11:「展開鎮圧、しかし――」

「――入った」

 

 村内の広場から一番離れた、村の外周に位置する家屋の上階。

 そこに位置取り、今に撃ち放ったばかりの7.62mm狙撃銃 HK417を支え構えながら。越生はそう一声を零した。

 

「グッドショット」

 

 その越生の隣には、スポッターを応急で担う本部班の隊員。その隊員からは、そう評する言葉が寄越される。

 その言葉にある通り。今に向こうに狙撃を叩き込み、野盗を撃ち仕留めたのは越生であった。

 

「際どかった」

「一層、大したモンだ」

 

 配置と同時に子供の危機を見止めたため、狙撃行動は急く動きとなったのだが。越生の手腕により、一撃は見事に野盗を仕留めた。

 越生当人は一連の動きが際どいものとなったことを零したが。

 スポッターの隊員は、その状況で越生が狙撃を成功させて見せた事を、また評する。

 

「普通科の面子が突っ込む」

「了、展開支援に移行する」

 

 そのやり取りの直後。建物上階より眼下側方を。それなりの速度で、二輛の共通軽装甲車が走り抜けていった。

 それ等はこれより突入し展開する、普通科小隊の第1小銃分隊だ。

 

 その第1分隊を見送りながら。越生とスポッターの隊員はそれの支援に移行するべく、言葉を交わしてまた動きを再開した。

 

 

「う、うわぁ!?」

「なぁ!?な、なんだぁっ!?」

 

 突然仲間が打ち吹っ飛び、そして凄惨な有様となった場を目撃し。

 下卑た色で村の住民たちを襲おうとしていた野盗たちは。しかし一転、あからさまな狼狽混乱に陥った。

 

「!」

 

 状況に驚いたのは村人たちも同じ。そしてしかし、その驚きはさらなる存在の登場に上書きされることとなる。

 

 その場に、異質な唸りを――エンジン音を立てて走り込んできたのは。

 異様な鉄の車――二両の共通軽装甲車だ。

 

 二両の共通軽装甲車は、村人と野盗が混ざる集団の側方に、やや雑になることを構わず停止。

 

「な――がぅ!?」

「ぎゃえ!?」

 

 その突然の光景に、野盗たちは狼狽の色を見せつつも。慌て剣を抜き、もしくはクロスボウの類を向け。突然の襲来者に応じようとしたが。

 だが、それよりも早く。その動きを認められることなく、野盗たちは立て続けに悲鳴を上げ。打ち退けられ、崩れ沈み始めた。

 

 それを成したのは、共通軽装甲車にて場に現れた第1分隊の隊員等だ。

 

 車輛の停止と同時にすかさず降車し。もしくは降車の暇すら惜しみ、開け放ったドアから各銃火器を突き出し。

 事前の観測からの状況情報と。そして格好と、武器を構えようとした姿から素早く「敵」を判別し、それらを撃ち仕留めたのだ。

 

「わぁぁ!?」

「な、なん……ぎゃ!?」

「ゴぎぇ!?」

 

 状況の変動は続く。

 次には村人たちからは離れた位置に居て、また武器を構え向けようとした野盗たちが。

 しかし響き上がり始めた唸る音に合わせて、まるで薙ぎ浚えるように吹っ飛び沈み始めた。

 

 共通軽装甲車の一両が搭載する、ターレット車載のMINIMI Mk.3。それからの掃射がそれを成したのだ。

 

「ダウン、ワンダウンッ!」

「そのまま割り入るッ、場を確保するッ」

 

 その掃射の最中にも、第1分隊は各共通装甲車から手早く降車を完了。

 周辺の点在する野盗たちを、一体一体と確実に撃ち沈めながら。同時進行で押し上げ、周辺へと展開。

 併せて、村人たちから野盗たちを遠ざけ分断して保護すべく、その間へと割って踏み入る。

 

〈武器を捨てろォッ!〉

〈抵抗するなッ、武器を捨てて伏せろッ!〉

 

 野盗たちの注意が隊員等に向いて逸れ、そしてその動きが緩慢になったことが助け。村人たちと野盗を、割り入って分断することは容易に叶った。

 

 割り入った第1分隊の隊員数名が、各火器を野盗たちに突き付け向けて、野盗たちの目の前まで距離を詰め。

 そしてジェスチャーと併せて、この世界の簡単な言葉での命じる声を、野盗たちに向けて張り上げる。

 

〈伏せてッ、身を低く安全に!〉

「!」

 

 同時に別の隊員が、立ち庇うようにした村人たちにも。身を低くして安全な形を取るよう促す。

 

「ぅぁ……」

「ひ……」

 

 野盗たちは、突き付けられた銃火器の類が何であるのかまでは理解が及ばなかったが。

 ここまで仲間たちが凄惨に沈んだ様子と、そして隊員等の剣幕から。それが己たちに向けられた脅威であることは本能で理解。

 

 もとより寄り合い所帯の雇われ者でしかなく、士気の類も希薄であった野盗たちは、容易に戦意を喪失。

 隊員等の言葉に従い、武器を捨てて膝を突き始める。

 

「〈よし、そのままにしているんだッ〉――他はッ?」

 

 その野盗たちにまた命じる声を向けつつも、同時に尋ねるのは第1分隊の分隊長の陸曹。

 

「右、クリア!」

「アクティブな敵影、ナシッ!」

 

 それに分隊の各員から、周辺各方がクリアされた事実が報告される。

 

 暴虐に染められ欠けたリェエンの村は。

 しかし予期せぬ、そして果敢な自衛隊の突入から戦闘展開行動によって。

 思わぬ形で、そして驚くべきまでに急転した展開にて。その魔の手から救われる事となった。

 

 

「クリア了解ッ」

 

 分隊各員からクリア完了の報告を受け取り、分隊長の陸曹はそれに答える声を上げて返す。

 そして隊員等が投降した野盗の拘束に。併せて村人たちの安否状態の確認に掛かり始める中。

 その背後向こうより、また唸る音が。複数のエンジン音が聞こえ届いたのは直後。

 

 そして場へさらに走り込んで来たのは、また二両の車両。それぞれは普通科小隊の1/2tトラックと、そして本部の共通軽装甲車だ。

 

「状況を知らせて!」

 

 先んじて走り込んで来て停車した1/2tトラックから降りて来たのは、普通科小隊長の御屋。

 彼女は降車と同時に、自身も周囲を掌握するべく視線を走らせながら。同時に報告を求める声を張り上げる。

 

「うまくいったようだな」

 

 それに一拍遅れるも、ほぼ同時。また走り込んで来て停車した共通軽装甲車から降り立ったのは、他ならぬ須藤。

 須藤は大口径リボルバーの10.9mm拳銃を手元に控えつつ、周囲に視線を走らせて、状況をおおよそ察しながら零す。

 また、「お守り」として同行降車した加納がその側をカバーし。共通軽装甲車の上では薩摩が、ターレットに据えたM240Gを旋回させて周囲を警戒する動きも見える。

 

「周辺はクリア、数名を拘束中。今の所その他動きナシッ」

 

 御邸の報告の要求には、分隊長からそう現状が伝えられる。

 

「いいわ、そのまま続けて。警戒も継続ッ」

 

 それに御邸は了解し、併せて引き続きの状態維持を命じる声で答える。

 

「――ふぅ……〈みなさん、もう大丈夫ですっ。お怪我はありませんか?〉」

 

 そして御邸は、背後にしていた村人たちに。突然の事態に驚きつつも、子供たちを守り、そして互いを庇い合おうとして集まり身を寄せ合っていた人たちに。

 固くしていたその表情を崩して、「営業スマイル」にも似た意識した柔らかい笑みを作って。異世界の言葉にてそう呼び掛けた。

 

 驕りを恐れず言えば、凛々しさの中に愛らしさを含む、好感を得やすい美人である御邸。

 そんな彼女が前に立ち、心配する言葉にてその意識を伝えれば。相手方の警戒を解き、不安を解すことは容易なものとなることが期待できた。

 

「一応、負傷状況をよく確認した方がいい。衛生班に合流指示を」

「了」

 

 須藤も、折り合いこそ悪くも御邸のそこは買っている所であり。

 表立っての村人の相手は彼女に任せ、自分は遅れその場に合流しつつも。大事を取って衛生班への合流連絡を、他の隊員に指示していた。

 

「あ、あれ……?」

 

 しかし。見れば、その御邸の意識した可憐な立ち振る舞いを受けて尚。

 村人たちの表情は硬く、そして皆は何かただの驚きでは無く、不穏な色で騒めいていた。

 御邸当人としても、目測が外れての村人たちのその反応に。次には思わず微かに狼狽える声を漏らしてしまう。

 

〈……あ、あの……!〉

 

 そんな御邸をよそに。村人の中から妙齢の女が、この村のまだ若き女村長が立ち上がり。

 何か周囲にしきりに視線を走らせながらも、訴える声を上げて向けて来た。

 

〈気を付けて……!いないんです!彼らの頭目が……!〉

「え……?」

 

 そして女村長から訴えられたのは、そんな旨。

 だが、異世界の言葉で捲し立てられた事もあって。御邸はすぐにはそれを飲み込めず、呆けた顔に声を浮かべて漏らしてしまう。

 

「ッ」

 

 しかしその別方、須藤にあっては女村長のその剣幕から、少なくとも歓迎し難い事態を察し。

 周囲に視線を向けて走らせる。

 

 ――ドシン、と。

 

 何か、鈍くも響く振動が伝わり来たのは直後。

 

「!」

「チッ」

 

 そして御邸が目を剥き、須藤は隠さぬ舌打ちを打ち。それぞれが音がし、そして「気配」が伝わり来た方向を見る。

 そして、向こうの村家屋の背後にそれは、巨大な影に形は見えた。

 

 巨大な爬虫類――いや、恐竜。

 そんな印象を思わせる、巨大な生物が家屋の影から出現。

 そして、その足音で微かな地鳴りを伝えながら、こちらにその鼻面を向けて迫る姿がそこにはあった。

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