ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録   作:えぴっくにごつ

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また間が空いてしまった。ようやく初動シーンが決着です。


Part13:「決着の大口径、そして救いの手」

「うそ……」

「召喚魔獣を……あれは……?」

 

 機動戦闘車のライフル砲による一撃によって撃破された召喚魔獣。

 それに、その事実に女村長を始め周りの村人達は驚き。呆気に取られながら沈んだ召喚魔獣を、そしてそれを成して見せた機動戦闘車を見つめている。

 

「やった……?」

 

 方やその近く、須藤と一緒に立つ御邸にあってはまた少しの驚きを見せつつも。未だ警戒の色を保って向こうを観察しながら、そんな声を零す。

 

「ッ――いや、まだ居るッ」

「えっ?」

 

 しかし、須藤が告げる声を発したのは直後。その動きは向こうに見えた。

 

 地面に沈んだ召喚魔獣の巨体の影。

 そこから鈍い動きで現れ出てきたのは、大男の体。それは野盗の頭目に他ならない。

 

「――……おぉ……ガあぁぁぁぁぁっ!!」

 

 しぶとくも生きていて現れた頭目の男は。ノッシノッシと歩み出てきた姿を見せたのも束の間。

 次にはその巨体を反らして天を仰ぎ、まさに獣のような様で雄叫びを上げて響かせた。

 

「ッ!止まれェッ!」

 

 その頭目の男にまず対応するべく動いたのは、最寄りにいた普通科小隊の隊員等。

 内の一名が警戒しつつも接近し、小銃を突き向けながら命じる声を張り上げて向ける。

 

「うがぁっ!」

 

 しかし、頭目の男がそれに耳を貸すことは無く。

 次には頭目の男はその体に下げて所持していた手斧を乱暴に掴み取ると、今の隊員を狙って投げ放ってきた。

 

「とわッ!?」

 

 隊員は間一髪、側方に飛び退いてその手斧の命中を免れる。

 

「ッ!」

 

 そして、今の隊員のカバーに着いて居た別の隊員が動く。

 最早遠慮容赦の余地は無いと、その隊員は次には迷わず小銃の引き金を引き、発砲した。

 

 ガギンッ!

 

 しかし、なんということか。

 それが狙ったものか、偶然かは判別が付かないが。銃弾は頭目の男が担いでいた大斧が丁度盾となり、それによって防ぎ弾かれてしまった。

 

「うがぁぁっ!!」

 

 そしてしかし大斧を叩いた銃撃の衝撃が、頭目の男の不快感を誘ったのか。

 頭目の男は血眼の目でこちらを見ると、次にはまた唸り声を上げながら、その担いでいた大斧を地面に振って叩き降ろした。

 何か、この世界の魔力的なそれでも含まれるのか。それとも頭目の男の強靭な腕っぷしが成せる業なのか、定かではないが。

 その叩き降ろされた大斧は凄まじい衝撃を生み、爆発の如きで土砂や石を飛散させて周囲に威嚇する様を見せた。

 

「なんてやつ……!」

 

 少し離れた位置よりそれを目撃した御邸は零す。

 見るに、頭目の男はすでに正気を失っている。

 あんな凶悪な身体を持つ大男に、その制御を失われて暴れ回られたら堪ったものでは無い。

 

「やれやれだな――各員、無理して近づくな」

 

 一方。須藤は向こうにそんな頭目の男の様を見ながらも、動揺することは無く。

 淡々とした様子で一声を零し、併せて通信にて指揮下の各員にそう指示を告げる。

 

「え……隊長!?」

 

 そしてしかし次には、その須藤が見せた動きに御邸から驚く声が上がる。

 指揮下の各員に命じた退避の指示に反して。須藤自身は歩み踏み出し、向こうで暴れる頭目の大男にまっすぐ向かい始めていた。

 

 

「うがぁぁぁっ!!」

 

 集落のど真ん中で、怒りのままに暴れまわっている頭目の大男。

 その血眼の目をギョロギョロと回して獲物を探しているが、しかし周りの隊員が安全距離を取ったために、頭目の周りにそれが見つかることはなく。

 次には頭目は、最早癇癪のそれで大斧を降り降ろそうとした。

 

 ――ドゥンッ!

 

「がぁ!?」

 

 だが。鈍くも響く音声が木霊したのは瞬間だ。

 同時にギャッ、と。嫌な音に合わせて頭目の大男の手に、痛みと衝撃が走り伝わり。

 そして一拍の後に、顔を顰める頭目の背後地面に、その手を離れた大斧がドスっと落ちて刺さった。

 

 不快な痛みに顔を顰めながら、頭目は己の正面に現れた気配を察知し。その血走った眼を向ける。

 

「――投降しろ」

 

 頭目の正面、その視線の向こうに。

 大口径リボルバー、10.9mm拳銃を突き出し構えて立つ、他ならぬ須藤の姿があった。

 

 その様子光景から、今に頭目の大斧を弾き飛ばしてみせたのが、須藤の扱ったリボルバーであることは明白。

 そしてその須藤から発し向けられたのは、淡々とした声色での投降を勧告する言葉だった。

 

「ふっざげんな゛ぁぁっっ!!」

 

 しかしそれは頭目の大男の激高をさらに煽った。

 次の瞬間、頭目は爆発の如きで地面を踏んで飛び出し。一瞬後には、その巨体からは信じられぬ素早さで須藤に間合いを詰め。

 そして須藤に向かって、得物の大斧を振りかぶって思いっきり降り降ろした。

 

「――あ!?」

 

 しかし。その大男の一撃は、虚しくも空振りに終わる。

 

「――」

 

 見れば、頭目の目の前から須藤の身は消え。

 その身を探せば、頭目のすぐ近く側方に。身を捻り半歩だけ引く最低限の動作で、頭目の一撃を見事に回避して見せた須藤の身体があった。

 

 ドゥンッ!

 

「ぎャぁっ!?」

 

 そしてまた次に、鈍い発砲音が響くと同時。

 頭目は低い声で悲鳴を上げ、そしてその太い脚をしかしガクっと折って崩し、地面に膝を着いた。

 見れば、須藤の持つリボルバーが頭目の脚に向けられて白煙を上げている。頭目は脚を撃ち抜き砕かれたのだ。

 

「繰り返す、投降しろ」

 

 回避のために一度引いた立ち位置からまた踏み出し、再び頭目の目の前に立った須藤は。

 頭目が膝を折って崩れた関係から、頭目の顔を見下ろす形となりながら、再び通告の言葉を降ろして向ける。

 

「馬鹿に゛すんな゛ぁぁっ!ぶっごろ――!」

 

 しかし頭目はその通告に一切聞く耳を持たず、まさに獣の如きで怒り。

 次には崩した巨体を、折った膝を無理やり動かし。その口に犬歯を剥き出しにして叫びながら、須藤に飛び掛かって襲おうとする動きを見せた。

 

「――ごぼっ!?」

 

 だが。頭目のその獣の如き唸りは、次には濁った妙なものに変貌した。

 

「ごぉ……!?ぉげ……!?」

 

 見れば、雄叫びのためにかっ開いた頭目の大口には。

 須藤が扱う大口径リボルバーの、その冷たい銃身が突き込み捻じ込まれてきた。

 

 そしてリボルバーを持ち支える須藤の腕は、リボルバー越しにそのまま頭目の頭を、巨体を押さえつけるかのように止めている。

 

「ぽげっ……ぉっ……!?」

 

 そして、血走った眼を一転して白黒させる頭目が、次に気づき見たのは――己を見下ろす須藤の冷淡な眼。

 そこで頭目の大男は初めて、己に向けられ刺す「死の気配」を察知。大男は青ざめ、慌て藻掻きを見せようとしたが。

 

 ――ドゥッ!

 

「ビョぎょ゜ぼ゜ッッ!?」

 

 瞬間。大口径リボルバーの引き金が引かれ、鈍い銃声が響き上がった。

 

 頭目の大男の後頭部から、砕けた脳漿に頭蓋骨が噴出し散乱。

 頭目の大男の巨体は、面白いようにもんどり打ち。そして次には背後にグラリと倒れてドサと地面に沈み、それ以上動きを見せることな無くなった。

 

「――ハッ」

 

 頭目の大男の確かな無力化を、足元に確認した須藤は。

 小さく倦怠の混じる色で零しながら、その手に持つ大口径リボルバーを降ろした。

 

「隊長!」

 

 そんな須藤に、決着が着いたその場に。背後からが掛かり、そして次には御邸が駆け寄って来て須藤に追い付き立つ。

 またさらに一拍遅れてエンジン音が届き聞こえ。加納と薩摩の乗る共通軽装甲車が、カバー援護のために走り込んで来て須藤の近くに停車。

 

「っ……」

 

 御邸は、次には頭目の大男の惨たらしい最期の有様を見て。少しその顔色を青くする。

 

「心苦しいが、拘束は困難と判断した」

「別に、そこにまで異論は唱えませんよ……」

 

 反して冷静な様子で、対処手段の事由を紡ぎ伝えた須藤。

 それに御邸は引き続きの青い顔ながらも、そこにまでとやかく言うつもりはない旨を返す。

 

「チト、隊長自らのパフォーマンスが行き過ぎとは思いますがねェ?」

「必要と考えた」

 

 その次に須藤へ飛んできたのは、共通軽装甲車のターレット上で警戒は抜かりなく行いながらも、薩摩が紡ぎ寄越した皮肉の言葉。

 しかしそれにも須藤は淡々と返す。

 

「周辺掌握に掛かれ。村の皆さんの安否確認、それと連中の生き残りの確保拘束だ」

 

 そして切り替えるように、須藤は周辺の指揮下各班各員に。取り掛かるべく各要項を紡ぎ指示する。

 

「了」

「へィへィ」

 

 それに加納や薩摩、他に周り近くの隊員は呼応。各々動きに掛かっていく姿を見せる。

 

「あの……」

 

 各員が動きを見せ始めた中。そこへ入れ替わるように、須藤に控えめな声が掛けられた。

 見ればそこにはおずおずと伺うような様子で立つ、村の女村長の姿があった。

 その顔色からは、漠然と脅威が去ったことこそ察しているものの、それ以上に困惑している様子が明確に見えた。

 

「あぁ、皆さんご無事でしょうか?驚かせてしまい、申し訳ありません」

 

 女村長に気づいた須藤は彼女に向き直り、まずは無事を尋ねる言葉と、驚き怖がらせてしまった可能性を鑑みて詫びる言葉を向ける。

 

「いえ、とんでもない……!村の皆は幸いにも無事です。……それでその……あなた方は……?」

 

 その須藤の詫びの言葉には、女村長も驚きそして弁明し、併せて村の皆は無事である旨を回答。

 そしてそれから女村長は、また探る様子で須藤等にその身分を尋ねる言葉を向ける。

 

「申し遅れました。我々は、日本国の自衛隊です」

 

 それに須藤が返したのは、また淡々とした声色でのまずはそう名乗る言葉。

 

「……ニホン……ジエイタイ……?」

 

 しかし、やはりというかそれだけでは伝わらず。女村長や、さらに周りに集まってきた村人たちは、皆疑問の様子を顔に浮かべる。

 

「疑問に思われる事項は多くあるでしょう。順を追って、説明します」

 

 それも等当然と、須藤は女村長たちの心情を察する言葉を向け。

 周りで各班各員が安全掌握等に動くのと並行して、村人たちへの説明が始められた。

 

 

 

 そこは、リェエンの村から離れた場所にある、打ち捨てられた古代の遺跡。

 今現在にあっては、流れ着いた野盗に占拠されてその根城となっている場所。

 

「……くっ……」

 

 その遺跡施設の奥。薄暗く殺風景な、元の目的もすでに分からぬ一つの部屋空間。

 そこに置かれていて見えるのは、一つの大きな檻籠。

 

「っぅ……」

「くそ……」

 

 そしてその中に囚われているのは、三人の少年少女たち。

 それは先日にリェエンの村より発ったエルフの少年、武人の少女、狼獣人の少年の三人だ。

 

 村に害成す野盗を討伐すべく、この野盗たちの根城へと乗り込んだ少年たちであったが。

 まだ駆け出しであった少年たちは、あまりにも屈強で凶悪であった野盗の頭目を相手に容易く手折られてしまい。

 そして傷ついた互いを人質に取られ、囚われの立場へと落ちてしまったのだ。

 

 今は武器も衣服防具も奪われ、三人揃って裸に剥かれ、そして首輪と鎖でつながれる恥辱の姿とされてしまっている。

 

 三人は三人とも、若い少年少女特有の可憐さの持ち主。美少年、美少女と言っても驕りではない容姿だ。

 そんな三人を野盗たちが放って置くわけもなく。

 三人のこの後の運命は、野盗たちの慰み物にされてしまうか、もしくは後ろ暗いツテで売られてしまうか。そういったことが容易に想像できた。

 

「ゲケっ、いい眺めだぜっ」

 

 そんな少年たちに浴びせられるのは、下卑た視線に言葉。少年たちを監視する見張りの野盗たちからのものだ。

 

「そうそう、いいことを聞かせてやるよ。お前らが泣きつかれて格好つけようとした村の連中は、今頃お頭たちが絞めてる頃だぜ?」

「!」

 

 そして次に、そんな見張りの野盗たちの一人が発し浴びせて来たのは、そんな残酷な事柄。

 それは少年たちを虐げ、面白がって己が加虐欲を満たすことを目的とする下卑たもの。

 そして野盗の目論見通り、それを聞かされたエルフの少年たちの顔に、暗いものが走る。

 

「ケケっ、いい顔を見せてくれるねェ。そういう趣味の人間に、高く売れそうだぜっ」

「ヒヒ。だがその前に、『お楽しみ』で俺たちにも鳴いて悦ぶ様を見せて欲しいもんだなっ」

 

 そんな少年たちを面白がり、野盗たちがまた浴びせてくるのはまた下劣な企みを示す声の数々。

 受けたそれに、恥ずかしく悔しい感情を覚えながらも。しかし少年たちには逆らう術はない。

 

 最早、絶望に染まるしかないかに思われた。

 

 ――ピピ。

 

 何か微かに、異質な音声が部屋空間に響いたのは直後。

 

 ――ドッゴォッ!

 

 そして部屋空間の壁面が、向こう外側から大きく派手に「吹き飛んだ」のは瞬間だ。

 

「げェっ!?」

「ぎゃっ!?」

 

 その炸裂の衝撃効果を諸に受け、また砕け飛び散った瓦礫に晒され。見張りの野盗たちは傷つき吹っ飛ばされ、床や壁に叩きつけられた。

 

「な、なぁ……がぁ!?」

「ぎゃっ!?」

 

 そしてしかし、それもまた一瞬。開口した壁面から何者かの気配が侵入したかと思えば。

 次には連続的に何かが爆ぜるような音が響き。

 藻掻き動こうとした野盗たちは、しかしその体を打たれ揺らして血を噴き出し、小さな悲鳴を最後に床に崩れて動かなくなった。

 

「……っ!?」

 

 その方や、檻の中の少年たちは。突然の事態に驚き体を竦ませ、しかし互いに庇いあう姿を見せている。

 その少年たちが次に檻籠越しに気づき見たのは、侵入してきたその何者かの、差し込む光を背後に受けて浮かぶシルエット。

 その背後にも一名二名程のシルエットが見え。いずれもが何かを持ち構え、警戒の姿勢を見せている。

 

〈――クリア〉

 

 そのシルエットからは、何かそんな声が発され聞こえる。

 

〈他の部屋施設も浚えろ、抵抗するなら無力化を躊躇うな〉

〈了〉

 

 そのシルエット、存在等は何か言葉を交わし、数名はすぐに部屋を後にする。

 そして背後向こう、この部屋空間の外からまた破裂音が散発的に響き届く。

 

〈この子たちか〉

「!」

 

 そんな中、この場に残った一名のシルエットが檻籠の前に立ち。何か声を零す。

 形やそんな正体不明の存在を前に、エルフの少年たちは抱える恐怖を押し殺し、互いを庇いあいながら警戒の色を見せる。

 

〈あぁ、いかん――すまない、怖がらないでくれ。もう大丈夫だ〉

 

 しかしその存在は、そのエルフの少年たちの反応を見て、何か困ったようなトーンの言葉を零すと。

 檻籠の前でしゃがみ、身振り手振りと合わせて何か優しく訴える言葉を寄越す。

 

「……?」

 

 そこでようやく差し込んだ光に目が成れたエルフの少年は。

 その目の前に、不思議な斑模様の衣装の存在――迷彩服姿の自衛隊の隊員姿を確かに見た。

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