遭遇戦が前進観測隊の勝利の形で終わり。
前進観測隊は一旦周辺に展開、併せてさらにいくつかの方向に偵察を出すとともに。遭遇襲撃を仕掛けて来た不明な一団の調査見分に取り掛かった。
都合の悪いことに、包囲戦でもなかったため戦意喪失した敵の多くは逃走を許してしまい。
わずかに負傷し逃げ遅れた者を確保には至ったが、これらは負傷度合いが深く聴取できる状態ではなく、応急手当の上でただちに後送を手配する判断がなされたため。
今の所、確定的な情報を得るには至っていなかった。
今は遺体の安置埋葬を簡易的に済ませ、残された馬車列を漁る形で手がかりを探している。
「――これは……傭兵だよ」
その見分の場の中で、推察からそんな情報を口にする姿がある。
調査見分の行う隊員等の中に混じり、その言葉を零したのは。
インナー衣装で飾る姿体が魅惑の可憐なエルフの美少女……と見まがう程の容姿の、エルフの美少年の彼だ。
ここに来てようやくだが、その名はクィーシュという。
他、仲間の武人少女と、獣人の少年の姿も近くにある。
三人は現在、第101前進観測隊に「案内人」として同行していた。
実の所。異世界の調査行動の開始初期より、前進観測隊は「現地案内人」を欲していたのだが。
その前に優先して対処、手配しなければならない問題が常にあったことから、その確保はなかなら成らずにいた。
しかしその都合を聞きつけ、名乗りを上げたのがクィーシェたち。
彼らは冒険者パーティとして各地を巡り知った身であり、その知識経験が役立つであろうと申し出てきたのだ。
理由として己たちを救い出してくれた自衛隊に、礼を返したいとの思いがあるとのことであったが。その内には、冒険者として不格好を晒してしまったことを悔い、何かの形で名誉挽回をしたいという気持ちがあるのだろう。
結果として、一度日本本国の許可回答を待ち。他必要な手続き、協力してもらう上での保障の準備などの時間はかかったが。
クィーシェたちには彼らの登録する「冒険者ギルド」を通して、日本国からの要請が正式に打診され。
クィーシェたちはそれをギルドから「クエスト」という形で受諾し、第101前進観測隊に案内人として同行することとなったのであった。
「傭兵?」
そんな経緯から自衛隊と今の場を同じくし、そして調査見分に立ち会っているクィーシェが零したそんな言葉に。
須藤はその詳細を尋ねる意味で聞き返す。
「うん、それも遭遇するなり襲って来た所を見るに、おそらく帝国に雇われた傭兵団だ」
それにクィーシェは、肯定と併せてその詳細を紡ぐ。
ドゥリオルン幻龍帝国は、準備期間もそこそこに大陸の各地各国への侵略・拡大政策に乗り出したことから。保有する強大な軍隊の大部分を動員してもなお、その手勢は足りていない状況となっているらしく。
多くの傭兵団を金に糸目を着けずに雇い入れ、戦力の補助としているとのことだ。
遭遇接敵した一団は、その一つ。
おそらく帝国軍の先鋒、先遣隊の役目を肩代わりして進出してきたものだろうとのことであった。
「クィーシェ、こいつら『剣牙虎の傭兵団』だ」
クィーシェからそんな説明を聞いていた須藤だが。次にはその二人に透る声色での言葉が割り入れられる。
映した視線の先に見えたのは、レオタード状のインナーの上に軽防具服を装備するという、少し艶やかな衣装装備姿の少女。
クィーシュの仲間の武人の少女、名はエフィというらしい。今の声はその彼女からのもの。
彼女は周りに倒れている陸竜の亡骸の一つを。正確にはそれに伴う騎乗具類の、そこに記された乱雑な描かれ方の紋様を示しながら。
そんな名称を紡ぎ伝えて来た。
「剣牙虎の傭兵団、確か……」
「もうちょっと北のほう、最近はヘリュール王国の周りで活動してた傭兵団だよ。金次第で汚い仕事も平気でやる連中だ、帝国に雇われ抱き込まれてても不思議じゃない」
思い当たる所のあったクィーシェの反応に、エフィはより詳細な説明でもって返す。
「その傭兵団は、これが全てなのか?」
そのエフィに、須藤が尋ね返す。
話を一旦外れて補足すると、須藤等自衛官は当初は保護対象と見ていたクィーシェたちに敬語で接していたが。
クィーシェたちから畏まった形は苦手と言う申し出があり、途中から崩した言葉で接し合うようになっていた。
「ううん、連中はそこそこの大きさの傭兵団だ。これはたぶん偵察を兼ねた先遣隊、本隊がきっと近くに居る」
須藤からの尋ねる言葉に、エフィは今度は否定で答える。
「都合の良い状況ではなさそうだな、先んじてその傭兵本隊の居所を掴みたいが――」
回答を聞き、歓迎し難い状況であろう気配から、そんな言葉を零しかけた須藤。
《――武蔵10ッ、こちら武蔵22ッ》
直後、須藤の着ける簡易無線から響いた呼びかけの音声が、零し掛けた言葉に割り込んだ。
その無線識別は、周辺の偵察に出した偵察の一つ。
87RCVを用いる偵察班のもので。何か急き焦る声色で響いた呼びかけの声は、その長の湯川三尉からのものだ。
「武蔵10だ、送レ」
《北北東に向かった方向に町を発見ッ――不明な一団に襲撃されている模様ッ》
「ッ」
向こう急いた声色から、すぐに受け取り端的に回答を送るよう返した須藤。
その要請にまた急く声色で返され来たのは、そんな詳細を知らせる内容。
それに須藤は目を見開き、その顔を険しくした。
《待ったッ。建物の影から人が――あれは、追われてるッ》
さらに続け、湯川からは向こうの状況の動きを伝える言葉が寄越される。
《民間人、住人と思しき人が追われてますッ。その相手は凶器所持、いや武装を確認ッ》
「湯川三尉、許可するッ。ただちに交戦しろッ!」
響き聞こえた通信から状況を理解し。須藤は次には向こうからの許可要請を受けるよりも前に、許可し命じる声を張り上げる。
《了ッ――》
その須藤の指示命令に、湯川から端的な了解の声が返り来た後。
次には無線通信の向こうに、機関銃のもので違いない苛烈な発砲音が響き聞こえ始めた。
「聞こえたかッ?各隊、移動するぞッ」
今の通信は須藤の周りにいた各員にも聞こえ伝わり、また各隊班もそれぞれの通信機器で傍受しており。
一転して周辺に緊迫した空気が張り詰め、周囲で各員は一刻を争う様相で動き始める。
「他方向への偵察に出た各班にも、戻り合流するよう伝えろッ」
「はッ」
須藤は近くに同伴していた本部付随の通信員に、指示の声を向ける。
「この先にあるのは……っ」
「フレンクィの町だ……!」
そんな須藤の傍ら、同じく通信のやり取りを驚きつつも聞いていたクィーシェたちは。
その襲われている町の心当たりに至り、苦く険しい表情でその名を紡ぐ。
そんな所へまた次には一輛の共通軽装甲車が、若干荒い運転でその場に走り込んで来た。
「――隊長ッ」
「息つく暇も無ェでネクストかよッ」
それは須藤を迎えに来たもの。
運転席からは加納が須藤を呼び。
ターレット上では薩摩がいつものように悪態を吐きながら、丁度M240Gのスライドハンドルを引く姿を見せている。
「悪いな――皆は、お守りの班の傍を離れないようにッ」
「う、うん……!」
その迎えの共通軽装甲車に向けて駆けながらも、須藤はクィーシェたちにそんな旨の忠告を飛ばす。
それに返されたのは、少し悔しそうな色を見せてのクィーシェの声。
おそらく、己たちも戦いの場に向かうことが今は認められないことに。冒険者としてもどかしい感情を感じているのだろう。
須藤はそれを容易く察したが、しかし自衛隊側としては彼らを矢面にまで連れて行く選択は無い。
「行くぞッ、出すんだ」
そんなクィーシェたちの視線を受けつつ、須藤は次には飛び込む勢いで共通軽装甲車の助手席に乗り込み。
須藤を乗せるが早いか、共通軽装甲車はエンジンを唸らせて急く運転で走り出した。
冒険者パーティの同行経緯の流れは、色んな他作品からの影響というかパクリ。