ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録   作:えぴっくにごつ

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Part24:「駆けつけた救い」

 そこは、フレンクィと呼ばれる町。

 その町は現在、幻龍帝国に雇われる一つの傭兵組織。『剣牙虎の傭兵団』からの略奪・支配の暴虐に晒されていた。

 

 数刻前だ。

 傭兵団は突如として現れ町に押し込んで来て。そして町に対して、武器をちらつかせながら物資食糧を差し出すことを要求してきた。

 この横暴に対して、町の住民たちは狼狽しながらも拒否の意向を示したが。

 従順を示さない町人たちに機嫌を損ねたか。いや、端からそのつもりであったのか。

 傭兵団はフレンクィの町に牙を剥き、略奪行為を開始したのだ。

 

 

「っ!……はぁ……っ!」

 

 町の外周の一ヵ所。

 ちょうど今の瞬間、建物の影を飛び出し。町を一歩でも遠くに離れようとする様子で走る少女の姿があった。

 

 齢にして15~17程か、凛として少し気の強そうな顔立ちのその彼女は。

 その片腕にまだ小さな男の子を抱き抱え。さらに少し無理をして空けたもう片方の腕で、それより少し年上の女の子の手を引き。

 必死の様相で走っている。

 

 少女たちは略奪に遭う最中の町からの、傭兵たちからの必死の逃走の最中にあった。

 抱き、あるいは手を引く幼い子供たちは彼女の弟妹――ではない。

 子供たちは略奪の町の中で、親と引き剥がされて取り残されており。彼女は己の逃走の最中で子供たちを見つけ、考えるよりも先にその手を取っていた。

 

「オラァっ!待ちやがれェ!」

「おいおい、どこに逃げようてんだぁっ!?」

 

 そんな少女に次に背後から聞こえ届いたのは、複数の荒々しく下卑た声。

 一瞬振り向き見れば、『追っ手』が。

 陸竜に跨り操る傭兵に、傭兵歩兵の数騎数人が。町の外周の各所より現れ、そして少女たちを追いかけて来る姿が見えた。

 

「っ……!」

 

 加虐に酔い、逆らう力が無い者を甚振り楽しもうとする無法者ども。捕まれば無事で済まないのは明白。

 当ても策も無いが、彼女は息の上がる体に鞭打ち、必死に足を動かして走る。

 しかし。

 

「……っ!?」

 

 走り向かう先、正面に見えるなだらかな丘の稜線の向こうから。

 そんな少女たちの逃走を阻むかのように――「それ」は突然姿を現した。

 

 それは、鈍い緑色の色彩の武骨な物体。

 異様に角張った見た目、胴体が特徴で。その「それ」は何か歪な唸りを上げながら、鈍くも威圧感のある動きで「ヌッ」と現れた。

 

 魔物か魔獣の類なのかも怪しい、まるで正体の分からぬ怪物のようなそれの出現。

 しかし今の状況から少女が思ったのは、それが傭兵団が回り込ませた追っ手だという考え。

 

「ぁ……」

 

 回り込まれて逃走路を断たれ、そして「怪物」の異様な姿を目の当たりにした驚愕も相まって。

 とうに体力の限界を迎えていた少女の体は、ついに立ち支える力を失い。彼女は脚を崩し、その場に座り込んだ。

 

そんな彼女の目の前で、その異質な怪物はゆっくりとした動きで迫る。

 

「ごめん……っ!」

 

 希望が潰えたことを感じながらも。彼女は抱き抱え、あるいは引き連れていた子供たちを囲い抱きしめ、せめて己の体で庇う

 

 ――直後。何か異質な、強烈で甲高い音が響き渡った。

 

「……!?」

 

 聞き慣れないその音を。彼女は最初、その「怪物」が己たちに向けた咆哮か何かと思い。

 身を竦め、抱き囲う子供たちを強く抱きしめた。

 

「――ぎゃァ!?」

「ぐぎゃっ!?」

 

 だが、しかし。

 次に少女たちに聞こえ届いたのは、背後向こうからの濁った悲鳴だ。

 

「……!?」

 

 聞こえた方向に居たのは、己たちを追い捕まえようとする下卑た傭兵たちであったはずでは。

 そんな疑問に違和感を少女が浮かべるが早いか、さらに状況は変化する。

 

「な……なんだありゃァ!?」

「ま、魔物か!?あんなのが居るなんて聞いて……ぎゃ!?」

 

 立て続き聞こえた、背後向こうよりの狼狽に悲鳴。

 

「……ぇ!」

 

 ついには聞こえるそれらに引かれるがままに、顔を起こして振り向いた少女が目撃したのは。

 己たちを追いかけて来ていた傭兵たちが、向こうで困惑狼狽の様を晒し。

 

 そして、次には。

 その傭兵たちが響いた破裂音に併せて、「何か」に打ち弾かれるようにして沈む光景。

 

「!」

 

 思いもよらぬ光景に驚いたのも束の間。次には少女は、己の横側方に差した気配とシルエットに意識を引かれる。

 それこそ、今に現れた異質な「怪物」。

 今になってようやく、複数の車輪を備える乗り物のようである事が。そしてその上に、何か手振りと併せて声を張り上げている、扱い手のような存在が乗っていることが分かったそれは。

 微速で前進しながらも、次には長い嘴のようなものを備える頭から、破裂音のような唸りを上げ。

 その次には向こうでまた、傭兵たちが弾かれ打ち崩れる様が見えた。

 

 その怪物は吐き出す「何か」で、傭兵たちを「啄んで」いる。少女は、漠然とだが今の光景にそんな感覚を覚えた。

 

「……!」

 

 そんな「怪物」の姿と、それが成す光景に驚いていた少女だが。次にはまた少女に気配が差し、そして人影が姿を見せる。

 

 彼女の視線の死角から、前側に抜けるように現れたのは。全身を緑を基調とする斑模様の服で包む人影。

 何か杖のような物を持って突き出し、その人影は彼女の前横に庇うように立つと。

 次にはその杖から、怪物のそれよりは控えめだが似通った破裂音を響き上げて。おそらく傭兵たちに向けての「攻撃」の姿を見せた。

 

「――あなた、大丈夫ッ?」

 

 さらにもう一人。一拍遅れ、少女の背後死角から人影が繰り出てくる。

 その人物にあっては次には少女に振り向き、顔を覗き込んで来ながらそんな尋ねる言葉を掛けて来た。

 その被る兜のような物の下に、女のものである可憐な顔が覗く。

 

「ぁ……ぇと……」

「驚かせたね、怖がらないで。まず、怪我がないか確かめさせて欲しい」

 

 驚きと困惑から、すぐには言葉を返せないでいる少女に。

 それを察したのか、その女は身振り手振りと併せて、何か少し拙さを感じる言葉にて。説明し、そして求める旨を伝えて来る。

 

「ぁぁ、うんっ……」

 

 それに、戸惑いつつも受け入れる言葉を返す少女。

 

 漠然と、まだ憶測に過ぎない自覚もあったが。しかしそれでも彼女はこう思えてならなかった。

 「救い」が、現れたのだと。

 

 

 異質な怪物の如き物体――改め、87RCVの車上。

 キューポラから上半身を出し、湯川は向こうを刺すような視線で観察している。

 遭遇発見からなんとか間に合い庇った少女たちは、降車展開させ向かわせた偵察員二名に任せ。

 自身等は向こうの敵、傭兵たちの排除にまずは専念する。

 

「右方から新手複数、排除しろ」

《了》

 

 騒ぎを聞きつけたか。向こうの町の外周沿いから、さらに数体の陸竜騎兵と複数名の傭兵歩兵が出現。

 

 湯川はそれを視認すると同時に車の砲手に指示し。それを受け取った砲手の操作で、砲塔は微調整のために旋回。

 次にはこれまで行われてきたのと同様。同軸の74式車載7.62mm機関銃が唸り、銃火が向こうに撃ちこまれた。

 

 向こうで陸竜騎兵が弾かれもんどり打ち、同時に傭兵歩兵たちも数人が射撃に弾かれ崩れ。

 残る傭兵たちが、驚き狼狽しながらも散ろうとする様子が見える。

 

「残り、散会しようとしてる」

《了、大丈夫。散られる前に攫えます》

 

 敵のその動きを湯川から伝えられながらも、砲手は冷静に対応。

 また砲塔操作の微調整を行いながら、同軸機関銃を唸らせ。その手でさらに2~3度ほど行われた射撃行動は。

 向こう周辺に現れた傭兵たちの一隊を、間もなく全て無力化して沈黙させた。

 

「――クリアだな」

 

 傭兵たちが倒れ沈み、周り近くに動く敵影は無くなり。それを車上から確認した湯川は零すように、しかし各員に向けての知らせの意味もあっての声を上げる。

 

「矢屋二曹、甘波三曹、その子たちは?」

 

 それから湯川は車上キューポラ上で振り向き、車体後側方に向けて声を向ける。

 

「驚かせてしまったようですが、皆、命に別状はなさそうです」

 

 その湯川からの問いかけに。

 矢屋、前に立ち射撃行動を見せた男性隊員が今も警戒する中。

 甘波、少女たちへの接触を担当した女性隊員が。今も少女に子供たちの容態を続けて確認しながらも、報告を上げて寄越す。

 

「なぁ、あの……あ、あんたたちは……?」

 

 そんなところへ。

 恐怖に危機感こそ収まったが、まだ多くの状況については理解が追い付けていない少女から。隊員等に向けて困惑の混じる声色で声が掛けられる。

 

「あぁ、ごめんね。私たちは、ニホンコク リクジョウエイタイの者。あなたたちの敵じゃない、安心して」

 

 その少女に問いに引き続き甘波が代表して、まだ若干たどたどしい異世界の言葉で自分等の正体を答え教える。

 

「ニホン……もしかして最近聞いた、異界からの……?」

 

 日本と自衛隊の噂はここまで届いていたのか。聞いたワードから少女は目の前の隊員等とその噂を結びつけ、そんな声を零す。

 

「まだ分かんないけど……なぁっ!今は助けを、助けてくれないかい!町が、皆が!」

 

 そしてしかし次には少女は、探るのは後だと考えを振り払い。

 その身を乗り出し、隊員等に向けて藁にも縋る様相で訴え求める言葉を紡いだ。

 

「大丈夫、任せて」

 

 その少女に、落ち着ける意味も含めて甘波はそう伝え。併せての動作で背後を振り向く。

 

「武蔵23から10。接触した敵性武装集団は排除、併せて住民と思しき人々を保護」

 

 振り向き見た87RCV。その車上では湯川が通信にて、前進観測隊本隊との連絡を取っている。

 

「併せて保護の住民から助けを求められました、行動の継続が必要かと――了解、掛かります」

 

 次には湯川は通信を終えた様子を見せる。

 

「普通科小隊が町へ展開する、我々はこれに合流して支援に当たるッ」

 

 そしてキューポラ上で振り向いた湯川から、次に偵察班の各員に向けられたのは、そう知らせ指示する言葉。

 

 そのすぐ直後。

 背後の丘の稜線をまた越え、普通科小隊 第1小銃分隊の共通軽装甲車や1/2tトラックがエンジンを吹かしながら勢いよく出現。

 偵察班の側方を抜け、町へと作戦展開するために向かう姿を見せた。

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