偵察班がフレンクィの町の異常を発見、そして接敵した事実が各隊各班に共有されると同時に。
事態を見越して前進観測隊の各隊は行動を開始していた。
その先鋒が、普通科小隊 第1小銃分隊。
稜線を越えて現れた、第1分隊の共通軽装甲車と1/2tトラックの各車は。なかなかに乱雑な運転でフレンクィの町の付近に乗りつける。
「展開ッ、町へ入るぞッ」
そして各車のドアが荒々しく開かれ、第1分隊の各隊員が次々に降車。
分隊長を務める一等陸曹、伊国という彼の張り上げた指示を聞くが早いか、各々は展開散会しながらも駆け移動。
次には町の外周にある各家屋建物に取り付きカバー。
「この辺から、車輛は通せません」
「あァ、一号車は回り込ませる、我々は徒歩で入る。行くぞッ」
付近は建物が密集し、歩行者用の小さな出入り口があるのみで、車輛を入れられる幅の通路は無かった。
隊員からのその旨を伝える言葉に、伊国は援護させるための共通軽装甲車だけは回り込ませ。自分等はここから徒歩で町に入る旨を各員に伝える。
指示はすぐに伝わり反映され。
共通軽装甲車の一輛は回り込むために発進。
それを見つつも分隊各員は一旦取ったカバーを解き、小さな出入り口から町に進入を開始した。
小さな出入口から続いていた、建物間を縫う短い通路を駆けぬけ。
そう立たずに第1分隊は広い通りに当たる。
「一旦待てッ」
隊形の先頭を務めていた伊国が停止を命じ。各員は沿って進んでいた家屋建物の壁にまた張り付く。
そんな指揮下各員の動きを背後に感じつつ、伊国はカバーした建物の端から、当たった広い通りを覗き見る。
やや荒らされた様子の見える広い通りに、その向こうに動きが見えたのは直後。
通りに面する一つの建物の扉が叩き開かれ、数名の傭兵であろう人影が何か声を荒げながら飛び出てくる。
さらに通りの向こう奥からは、二騎程の陸竜騎兵を伴う小規模な隊伍が急く色で出現。
先の町の外での戦闘の騒ぎを聞き、異常に気付いたか。その動きは慌てて合流編成を行おうとしているものと見えた。
「接敵ッ、交戦するぞッ」
それを見止め、そして張り上げると同時か早いか。
伊国は自身の装備の89式5.56mm小銃を突き出し向け、発砲。
さらに当然の行動というように、伊国の背後に位置していた陸士が。身を低くしながら伊国に被さり続く形で小銃を向け、発砲。
それぞれの銃火火線が向こうで慌て動いていた傭兵たちを襲い、内の2~3名ほどの屠り、あるいは傷つけた。
「ッ。何名か反対に移れッ」
「了ッ」
伊国と陸士は、それぞれのタイミングで一旦引き込んで息を整え。そして再度小銃を突き出し、向こうに向けて短く射撃。
それの反復行動と並行して、伊国は背後の他隊員等に移動配置を指示。
それに各員は呼応。そして伊国等が射撃を行い、そして敵がまだ混乱している隙を狙い。
三名ほどの隊員が次には順に建物の影を飛び出し、先頭の陸曹が牽制の射撃をばら撒きながら、広い通りを横断。
三名は間もなく、通りの反対向こうの家屋の影に飛び込む姿を見せ。次には向こうからも射撃行動を始める様子が見えた。
「ッ」
「チッ」
その直後のタイミングだ。向こうの敵傭兵より、矢撃が一発二発と寄越され飛び来た。
混乱下にある敵傭兵の内から我武者羅に放たれた様子のそれは、しかし内の一発が伊国等の近くを掠める。
伊国や陸士は反射で遮蔽に引き込むと同時。それに微かにだが驚き、あるいは煩わしさを覚えて舌打ちを打つが。
しかし怯み臆する事は無く。次にはまた各小銃を突き出して向こうへ撃ち、傭兵をまた一体一隊と確実に撃ち仕留める。
「ダウンッ」
「入った」
各員は苛烈な銃火を向こうに向け、多数の発砲音が響き上がったが。それはあまり長い時間を要することな無かった。
「――敵、ナシ」
通りで遭遇した敵は、小さな一個部隊程であったことから。分隊各員の攻撃に間もなく全て撃ち沈められ、通りの向こうに動く敵の影は無くなった。
「ヨシ、通りの建物を調べながら進めるぞ」
遮蔽から覗き見てその事実を確認し、伊国は次にはハンドサインを伴いながら各員に指示を向ける。
伊国のそれを受け、分隊各員は順に通りへ繰り出し。
先を調べるべくより前進し。あるいは近場の建物へクリアリングのための突入を開始した。
場所は、町の中心部へ。
そこは大きくは無いが良い造りの一軒家。元は、仲睦まじい若い夫婦が暮らしていた家。
「――あぁん?怪物に、おかしなヤツ等だぁ?」
しかし今、その家は招かれざる客に占拠されていた。
一軒家の夫婦の寝室、そのベッド上に我が物顔で腰掛けているのは。まるで狼のように鋭利に鍛えられた長身を持つ男。
男は町を襲った『剣牙虎の傭兵団』の団長で、名をガイサという。
「はぅ……くぅ……」
「あぁ……あなた……」
そのガイサの背後、ベッドの隅には寄り添いあう若い男女の姿が見えた。
女のほうは大変な美人。そして男のほうも中性的でかなり美麗な顔立ちであり、女と見紛える程の容姿。
しかしそんな二人は揃って一糸纏わぬ姿。。
そして男は微かに上がった吐息を漏らし、悔しくも恥ずかしそうな顔色を作りながら女に寄りかかり倒れ。
女は男を抱き支えながら、また恥ずかしくも憂う色を見せている。
二人はこの家の持ち主の夫婦。
そしてしかしガイサに家を占拠され、己たちも囚われ。そしてガイサにその体を『いただかれた』ばかりであった。
この夫婦の家から収穫品を略奪し、そして女を捕まえ『愉しむ』こと目的に押し入ったガイサ。
住民に邪魔な男がいるなら始末し、そして女をいただく事を目論んでいた彼であったが。
しかしどうだ、家に押し入り見つけたのは。大変な美女の妻と、そして妻も顔負けの美女と見まがう容姿の旦那。そんな『美味そうな』夫婦であった。
好色家なガイサはこれは面白いと、二人を互いに人質に取る形で脅し捕らえ。
そして占拠した夫婦の寝室で、今まで代わる代わる、夫婦を揃って『喰らい抱いて』いたのであった。
しかしそんな『お楽しみ』を邪魔したのは、何か狼狽した様子で知らせを持って来た部下。
そのことから、ガイサは丁度犯し愉しんでいた美麗な旦那を乱雑に放り、夫婦を一度放置。
お楽しみを邪魔されたことへの不満を隠そうともしない顔で、部下の報告を聞いていたのだ。
「へ、ヘイっ。先遣隊から逃げ帰って来た一人が、そんな事を言ってまして……それに妙な音がさっきから町のあちこちで……」
しかしだ。
「得体の知れぬヤツ等と、怪物が現れた」
「敵が何か音を上げる度に、仲間が倒れた」
お楽しみを邪魔されたところに聞かされたのは、そんな数々の要領を得ない説明に面白くない報告。
それはさらにガイサを苛立たせることとなった。
「バカが、何に遭ったか知らねぇが無様を打ちやがって。腹が膨れて英気を養ったばかりだろうが、なのに何を腑抜けてやがるッ」
知らされた部下たちの体たらくに、ガイサはまずは報告に来た部下にぶつけるように悪態を吐く。
「ったく、野郎共を集めて隊を組め、収穫を回収しに行った連中も戻せ。お楽しみを邪魔しやがって、とっとと片づけるぞッ」
「へ、ヘイ!」
次にはガイサは立ち上がり、あちこちに放り欠けていた服や装備を拾って身に付けながら部下に命じる。
それを受け、部下は跳ねるようにそれに掛かるべく走り去った。
「しょうがねぇ、捻ってくるかッ。戻ったら、お前たちはまた夫婦揃って悦ばせて鳴かせてやるからなぁ?」
一方のガイサは装備を整え終える、景気づけの一声を紡ぐと。
次には夫婦に振り向き、その顔に下卑た笑みを浮かべてそんな煽る言葉を向けた。
「……くっ」
「……ぅぅ」
ガイサのそれに夫婦の二人は、旦那は恥じらいを思えながらもガイサを睨み返し、妻は恥じらい憂う顔色を、それぞれの形をその美麗な顔に見せたが。
だがガイサはそれすらも面白がりながら下卑た笑いを上げながら、部屋を後にした。
町に進入してから以降。第1分隊は入ってすぐの遭遇接敵自に見たような、索敵からの遭遇戦を繰り返す形となっていた。
町を占拠していた傭兵たちは、略奪のために細かく散り、即応できる体制になかったのか。
自衛隊側からしてみれば、その排除無力化は難い物ではなかった。
索敵を進めた先の、大通りの一ヵ所一帯を舞台に。また交戦様子が繰り広げられている。
第1分隊の各員は周辺に散会展開し、向こうに散らばる傭兵の一隊をまた相手取っている。
「ぅォ!」
そんな光景の中に、今ちょうど。
路地にカバーしていた陸曹隊員を『火の玉』が、おそらくこの世界の魔法で生み出されたそれが掠め抜け。
背後の家屋の壁を叩く様子が見える。
「ッ――尾張12、左ッ側に火力集中をッ」
《了解》
その陸曹は少し冷や汗を掻きながらも、次にはヘッドセットで通信に張り上げ。それに寄越され来たのは承知の声。
声の主は、今先にちょうど回り込んで来て合流したばかりの共通軽装甲車。
路上、分隊各員のすぐ背後のど真ん中に停車した共通軽装甲車は。正しくはそのターレットに着く射手は、次には搭載のMINIMI軽機を撃ちばら撒き。
通りの向こう、今に襲い来た魔法の火の玉の出現点が。そこで狼狽をみせつつも動いていた敵傭兵の数人が、次には攫えられるように撃ち砕かれて沈む様が見えた。
また、そんな一方。その共通軽装甲車の近く背後では。隊員の二名程が一軒の家屋の玄関を破り。内部をクリアするために突入する様子が見える。
「分隊長、本部からです」
そんな各戦闘行動が行われ、周辺の敵の排除と制圧が滞りなく行われる中。
捨て置かれた小さな屋台の影にカバーしている伊国は、同じくカバーする隊員に差し出される武骨なタブレット端末に目を落としながら、その隊員の言葉に耳を傾けていた。
「飛ばしたドローンが町の中心少し東北、交差路が集まっている所に活発な動きを確認。敵が拠点にしている可能性ありと」
まだ続いている各員の銃声に混じって、隊員はタブレットの画面に映るドローンからの上空映像の該当箇所を示しながら、報告説明の言葉を連ねる。
「さらに、町の住民が集められ囚われている可能性があると。各隊を向けているが、第1分隊もこれを優先し先行せよとのことです」
「分かった――通り沿いだと迂回する羽目になるな、また徒歩で先行する」
説明と、そして本部からの支持を伝えられ。
伊国は次には取るべき行動を判断し、その決定を口にする。
「分隊長、一帯はクリアです」
伊国等のそのやり取りが終わるのを見計らったように、次には近くの隊員から報告の声が飛び来る。
その通り、遭遇から交戦した敵の一隊は。向こう周辺からの排除され、戦闘行動は区切りが付いていた。
「了解。立て続けで悪いが、別件指示だ。町の中心に敵の終結の動き、再度徒歩にて路地を移動しこれに向かう」
そんな報告に了解で返すと併せて、伊国は各員にさらなる行動指示を紡ぎ向ける。
それを聞いた各員は「やれやれ」といった色を見せながらも、同時にまた移動するための再編成に手早く掛かっていく。
「民間人が集め囚われている可能性があるとのことだ、発砲の際は今まで以上に注意しろ。行くぞ」
自身も態勢を整え直しながら、伊国は動く各員に伝え。
程なく第1分隊はまた再編成を完了。路地を縫っていく徒歩隊と、通りを沿う車輛に再び別れ、行動継続する。
夫、旦那が『美人』というのがフェチ。