自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
普通科小隊 第1小銃分隊の主は徒歩行動にて、小さな通りや裏路地を縫い進んで、フレンクィの町の中心部に近づきつつあった。
「――ナシ」
「了解」
今はまた、路地を通り抜けて小通りに当たったところであり。先頭の陸士が建物の影から視線を出して先を確認。
通りに敵の姿、気配が無い事を確かめ、その旨を背後に立つ伊国に伝える。
「――ッ、息絶えてる」
その伊国等のまた背後。
そこには、家屋に寄りかかって崩れ倒れる人の身体が。そしてその前に膝立ちで相対し、その人の手首を取りながら苦く険しい声を零す隊員の姿があった。
倒れているその身体は、この街の住人の男性のもの。その息絶えて発見された姿だ。
垂れる片腕には息絶えてなお農具が固く握られており。顔は目を瞑りながらも、無念を伝える険しい形相を作ったまま。
それらから、傭兵を相手に最後まで抗ったのであろうことが見えた。
「どうか、あなたの神様を元へ――仇は取る」
隊員は、脈の確認のために取っていた男性の腕をそっと降ろし。祈り、そして誓う言葉を紡いだ。
「連中に、容赦は無用だな」
そんな様子を背後に見ながら、伊国は静かにしかし尖る声色で紡ぐ。
第1分隊はここに至るまでに、いくつもの住民の亡骸を発見していた。
伊国の言葉は、目撃して来たそれらから。最早敵に遠慮容赦は無用との考えを示し、そして自身に指針として言い聞かせるものでもあった。
《――武蔵12より尾張11》
「尾張11です、どうぞ」
そこへ、伊国始め各員の装着するヘッドセットに呼び出しの音声が入る。それは前進観測隊の本部班からのもの。
《町の中心部、教会と思しき建造物を中心に活発な動きが見える、ドローンが観測した。敵傭兵組織がこちらの接近に気づき、態勢を構築しているものと見える》
すぐに受け取り返した伊国に、本部班からはドローンが捉えたこの先の状況を、端的に伝える言葉が寄越される。
《尾張11、貴隊の現在位置より100m程度。そちらがまず先着すると思慮、十分警戒せよ》
「了解、警戒をより厳とする」
《合わせて、教会には住民の生存者が拘束されている可能性がある。発砲にも注意されたい》
「併せて了解、十分注意する」
《そのように願う、終ワリ》
さらに該当地点とこちらの位置、距離関係に。そして拘束されている住民の可能性など、必要な各事項が本部より伝え知らされる。
各要項に伊国が承知の旨を返し、通信は一旦終了した。
「聞いたな?敵はウジャウジャ、そして住民が拘束されている可能性だ。それぞれ十分注意警戒しろ」
伊国は同じ通信内容を聞いていた分隊各員に、内容反復の意味も含めて伝え指示。
それに各員は「了解」の言葉や頷き、あるいは装備火器を構え直す動作でもって返す。
「再開する、行くぞ」
第1分隊は行動を再開。
そしてそう掛からず、目指していた町の中心部へと踏み込んだ。
「――」
何か所目かとなる狭い路地を進み抜けて。第1分隊は目的地である、教会建物を中心とする町の中心部へと辿り着いた。
一帯は大通りから小さな通りまでが、いくつか集まりやや複雑に合流する区画。
分隊はその区画の内の一つ交差路に至り、すぐさま近場の建物の壁に取り付きカバー。
「――ッ!」
続けざまに先頭を務める陸士が、建物の角から隣接する通りを覗こうとした、しかし瞬間。
そこを狙ったかのように、通りの向こうから矢撃が飛来。陸士のすぐ近くを掠め飛び抜けた。
「接敵ッ!」
陸士は反射行動で一旦で引き込むと同時に、知らせの声を張り上げ。
しかし一拍置いた次には、小銃を突き出し向けて、矢撃が来た方向に数発応射をして見せた。
「交差路を一つ挟んだ向こうに教会ッ、付近に人影多数ッ」
「了ッ」
応射の際に見えたものを陸士はまた張り上げ報告。
それを受けた伊国は了解を返しつつも、しかし自身の目での確認と、敵への追撃牽制も兼ねて。
陸士の背後を越えるように、一瞬だけ通りに繰り出て数発発砲。
さらに伊国が引き込むと入れ替わりに、陸士がまたも遮蔽から小銃を突き出し向けて数発を向こうに撃ち込んだ。
その一連の行動が一旦区切り、両名がカバーに戻った後。
教会の方向からまたおっかなびっくりと言った様相で数発の矢撃が寄越され、隣接する通りの上を飛び抜けていく。
「句住と府尾、左手から回り込めるか試せッ」
「はッ」
そんな矢撃の気配を感じつつも、しかしそれに過度に驚き反応することはなく。
伊国は次には、背後でカバー待機していた隊員の内の二名に、別方向からの回り込みを指示。
指定を受けた二名は、端的な了解の言葉と同時に、隊伍を外れて回り込むための動きを始める。
「ワンダウンッ」
その間にも、陸士はまた遮蔽から射撃を向け。今度にあっては教会建物の近くを慌て動いていた傭兵を一人仕留めるに至り、その成果を伝え知らせる。
「押し上げる。栖来、不破、援護の隙に次の交差路まで行けるか?」
「やりますッ」
同時進行で、伊国はまたスタンバイ状態にある二名の隊員に考えを伝え尋ねる。
それに二名は当然と言うように、言葉及び頷きで答える。
「頼む。行くぞ――援護射撃ッ!」
託す言葉を短く伝え、そして次には。
陸士と、その背をまた越える形で伊国は遮蔽から小銃を突き出し。そして我武者羅の様相で発砲。
援護のための銃弾をばら撒き始める。
「GOッ」
それと同時。前進指示をうけた二名は続けざまに、さらにその伊国等の背後を抜けて通りへと飛び出した。
伊国等の援護射撃の元を抜け、二名は通りを押し上げると併せて横断。
数秒程度で、前方対角線上にある建物の角へ、まず先の一名が飛び込み遮蔽。
そして続けざまに、もう一名の隊員も追いつき飛び込もうとした。
「――ッ!」
だが――その瞬間であった。
その隊員が嫌な気配を。
そして通りの向こうの教会の窓に、一瞬瞬いた発光を見たのは。
――瞬間。
隊員の背後すぐ傍を、無数の「殺意」が。向けられた相手を喰らい貫かんとする「それ」が。
「破裂音」を伴い、豪雨の如きで掠め飛び抜けた。
それは、少し特徴は異なるが隊員等にとって聞き慣れたもの。
紛うことなき――「機銃掃射」であった。
ほんの少し前、視点は傭兵たちの占拠し籠る教会へ。
「うわ!?な、なんなんだよアイツ等!?」
「痛ェ!かっ、『噛まれた』ぁ!?」
教会内で傭兵たちは荒々しく動きながらも、半ば混乱に陥っていた。
ついに姿を現した、得体の知れない「敵」。その身を異質な緑の服装装備で包む、謎の武装組織。
その敵が現れるや向けて来た「矢撃」――ともつかぬ「攻撃」は。破裂音を響かせると同時に、傭兵たちを「貫き喰らい」始めた。
音が鳴り響くたびに誰かが血を噴き倒れ、そうでなくとも傷つく。そしてしかし、矢の類などは姿形も見えない。
その恐怖に、傭兵たちはパニックに陥りつつあった。
「連弩と似た感じみてぇだが、これが鏃か……?相手に刺さる以前に、こんなんちゃんと飛んでくのかよ……っ?」
そんな多くの傭兵たちの一方。教会の聖堂内、その内の半二階の構造になっている場にて。
窓際に物々しい「それ」を据え、困惑を交えつつも焦り何か準備を進める数名の二人の傭兵の姿があった。
「いいから急げ!これは、ひょっとすると……」
その内の一人は、頭のガイサから「それ」の準備を命じられた傭兵。
半信半疑の色で言葉を漏らしていた片割れに、方やその傭兵は何かに思い当たっている様子を言葉に見せながら、
窓際に据え置いた「それ」を。鉄製と思しき長細くも重く物々しいその代物の準備を、おぼつかない手つきながらも進めている。
「お、おい!ヤツ等が迫って来たぞ!」
そんな傭兵の一方、片割れの傭兵が次には狼狽の声を上げながら、窓より眼下の向こうを示す。
見れば教会から見降ろせる通りの向こうから、建物影を飛び出して「敵」が迫り上がって来る姿が見えた。
「クっ……『連中』は、威力があるからしっかり構えろと言ってたよな……」
横で狼狽える片割れを少し煩わしく思いながら。
次には傭兵は、今準備がなんとか完了した「それ」を、その体で取り付くように「構える」。
「クソッ……どうにでもなれだっ!」
次にはヤケにも近い様で言葉を荒げながら。傭兵は向こうを大雑把に「狙い」、「それ」を扱うための指に力を込めた。
――次には、「それ」は唸りを上げた。
それが吐き出した「殺意」の籠った鉛は、次には豪雨の如きで眼下へと降り注ぎ。地面を叩き、石畳を割る。
それは向こうの「敵」に驚愕を与え。そしてそれを扱った傭兵自身をも驚愕で震わせた。
「それ」は元あった世界で。
「PKM 7.62mmカラシニコフ機関銃」と呼ばれるものであった。
VSファンタジーというお題目をおもいっきり脱線しましたが、作者の好みと趣味を優先した有様です。
本当に申し訳ない。