ジェイ・ソーティー 自衛隊、異世界へ 任務は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
第3小銃分隊がT字路に設けられた火点を、そこの機関銃銃座を無力化したことにより。
傭兵側は十字砲火態勢を喪失。
場の脅威度の低下から、状況はいよいよ前進観測隊側が攻める形に傾き。
傭兵側は残された正面教会の機関銃を頼るように、教会周りを固めて籠城の様子を見せ始めた。
「っー……追い詰められて、躍起になってるわね」
教会からの機関銃銃火は、教会から伸びる正面通りに無我夢中の様相でばら撒かれている。
その教会から正面に一ブロックのみを離れた交差路では。御邸以下、集合した各隊各員が散会展開し。
建物や、寄せて配置停車させた装甲車輛にカバーして銃火を凌ぎながらも。隙あらば銃撃攻撃を返し、対峙交戦している状況だ。
「教会玄関周りを固めてる敵は、削り減りつつありますが。結局ネックは上の機関銃です」
面白くなさそうに口を鳴らしながら、遮蔽から向こう教会を観察していた御邸に。
同じ場にいる伊国が状況の進捗を伝え、併せて教会の機関銃の無力化が焦点であることを紡ぐ。
しかし先にも言及されたが、教会内部には住民の拘束されている可能性が大きいため。携行対戦車火器の類や、車載の重火器・火力の安易な使用はまだできない。
「じゃあ、あと必要なのは少し強引な一押しね――各班、車輛も。スモークを準備して、援護火力の用意もッ」
伊国からの言葉を受けた御邸はそんな一言を零すと、次には周辺の各隊各員に指示の声を張り上げる。
「で、その強引な一押しは誰がやるんです?」
「あの人よ――」
動き始めた周りの各員を見ながら、その所を尋ねた伊国に。
御邸はその可憐な顔を、しかし渋く困ったような色に染めて答えた。
それから準備が整い、また御邸の号令が出されると。
展開中の各隊各員は、教会の正面玄関周りの防御を固めた敵に、火力をより苛烈なものとして集中。
固めた防御も甲斐なく、向こう周りの傭兵たちは次に次にと撃ち抜かれ崩れ。
そして頃合いを見計らって、各員や各車輛から発煙弾が投げ入れられ、あるいは射ち込まれ。
教会の正面周りには煙幕が濛々と立ち込め始める。
そして。
御邸等の展開位置する交差路からより前方、教会のすぐ傍、目と鼻の先にある一軒の家屋より。
煙幕が充満したタイミングを見計らい、身に息を潜めていたその「シルエット」等が。
家屋を飛び出し、全速で駆け。そして立ち込める煙幕の中へと突っ込んだ。
「クソ、クソ、クソォっ!なんだってんだァ!?」
教会の中、その聖堂の真ん中では、傭兵団の頭のガイサが癇癪を起して声を荒げる姿があった。
「キカンジュウ」とやらの力で優位に立てたと思ったのも僅かな暇。
敵はそれならばと言うように、その対応は熟知していると見せつけるかのように。
憎らしいまでの手早い動きにて、その策にて。「キカンジュウ」を置いた陣の一つを潰し。
そして今はその手数を増やし、こちらを潰さんと教会を包囲し迫っていた。
こんな事態は想定もしていなかった。
ガイサたち傭兵団は、碌に逆らう力も持たぬこの町から糧を奪い。己の腹に欲を満たせることを信じて疑わなかった。
だがそのはずは、その目論見は挫かれ、どころか己たちが窮地に陥っている有様。
受け入れ難い状況に現実に、今のガイサの頭には困惑狼狽とそれ以上の憤慨しかなかった。
「おい!そいつらを引っ張って来て並べろ!少しでも足しにするんだ!」
次には憤慨の心情のままに、ガイサはまた声を荒げて近くの傭兵たちに命じる。
示されたのは、今も聖堂内の隅で体を寄せ合う子供たちと、それをせめて囲い庇うディーロ始め老人たち。
ガイサが企て命じたのは、そのディーロたちを利用して肉の盾とすること。
「よせ、やめろ!子供たちに手を出すな……っ!」
「うるせェ!」
「オラ!大人しく来いやぁっ!」
ディーロはその子供に老人たちの一番前に庇い立ち、傭兵たちの企みを阻み抗おうとするが。
しかし危機的状況下で焦れて動揺し、己のかわいさも助け。傭兵たちはそんなディーロたちに脅かし命じる怒鳴り声を飛ばし。
次にはディーロに老人子供たちを引き摺り立たせるべく。
その複数の乱暴な手が、ディーロたち伸びて捕まえようとした。
――ピピピ。
何か、小さくしかし確かに響いた異質な音が。ガイサを始め傭兵たちに、そしてディーロに老人子供たちに届き。
その動きを阻み止めたのはその時。
――直後瞬間。
教会聖堂の正面の大きな扉が、劈く如きの爆発音が響くと同時に、外側から叩き吹っ飛ばす勢いで開かれた。
次には外に立ち込めていた煙幕が、土砂崩れにも似た形で流れ込んで来る。
――そして、その煙の内からまるで割り開く様相で。
滑らかに、しかし堂々とした動きで踏み入り現れたシルエットがあった。
それは、須藤だ。
「!……がェっ!?」
「ぎゃァ!?」
また直後だ。鈍くも劈く破裂音が連続的に響いたかと思えば。
今にディーロに老人子供たちを捕まえようとしていた傭兵たちが、そして事態から半分呆けた様で振り向きかけていた傭兵たちが。
次に瞬間には、立て続けにもんどり打って悲鳴を上げた。
視線を辿り戻せば、現れ堂々と押し進む須藤のその手には、愛用の大口径リボルバーである10.9mm拳銃が。今のそれを成し遂げた得物が見える。
「な……!?うぎゃァ!?」
「うげェァ!?」
起こりはその一つに留まらず。また直後には聖堂内の別位置に居た傭兵たちが、同じく立て続けに体を打たれ、弾かれ吹っ飛ぶまでの勢いで崩れて行く。
視線をまた正面扉の側に戻せば。
正面先頭を務め踏み込んで来た須藤に続き、少し開いた縦隊を作る形で。
加納が、今に撃ち鳴らした20式5.56mm小銃 IARを構えて。
さらにそれを背後からカバーする形で、M240Gを構えた薩摩が。
二名どちらもやはり煙幕を身体で割る様相を見せながら、立て続けに踏み込み現れた。
「ぎゃぅ!?」
「ひぎゃっ!?」
「ごうォ!?」
そんな様子光景すらも一瞬。次にはそれぞれの装備火器の銃声が遠慮なく響き上がり。
各個が突入からの展開行動を伴いつつも、それぞれの判断から各方へ向けて撃った銃撃が。
教会聖堂内の各所に散在していた傭兵たちを、その抵抗の気配すらを認めるよりも前に撃ち弾き、あるいは沈めていく。
「チィッ!――ヤロォォァァア!!」
そんな中、唯一動いた。行動に移行できて飛び出していたのはガイサ。
その位置関係は、ちょうど須藤のすぐ斜め前。
ガイサは怒りの雄叫びを張り上げながら、己が得物である大剣を抜いて振り上げ。同時進行で、飛び掛かるまでの勢いで須藤との間合いに踏み込む。
ガイサは悪辣と言われても否定はできない傭兵頭だが、少なくともその剣を扱う腕っぷしは本物だ。
その一太刀を喰らえば、無事では済まない。
そして怒りの感情のままにガイサはその剣撃を、須藤へと叩き振るい降ろした。
――だが。
「ぁっ!?」
ガイサの剣撃は、儚くも空振りに終わった。
見れば、須藤はその身体を最低限。半歩分捻りずらすだけの動きで位置を変え。
ガイサの剣撃を、紙一重のそれで見事に回避して見せていた。
「ヤロァっ……――ぎゃブぐぃっ!?」
渾身の一撃が空振りに終わり、一層の激昂を覚えたガイサだが、しかしそれも一瞬。
空振りからつんのめる形で姿勢を崩したガイサの、その顔面を。次の瞬間には襲ったのは強烈な打撃だ。
また見ればガイサの顔面鼻面にめり込んでいたのは、10.9mm拳銃のストック・ホルスターの硬い銃床角。
須藤は紙一重の回避を成功させると同時に、拳銃を振るい薙ぎ、それを鈍器としてガイサの顔面に一撃をお見舞いして見せたのだ。
「ぐィァぁ……っ」
痛烈な一撃を食らわされたガイサは数歩よろめき後退し、しかし倒れてしまいそうな所をその健脚で踏み留まる。
「ふじゃァ……ふっじャぁけンなァァァア……っ!!!」
その顔面殴打の痛みが、いよいよガイサの激昂を誘発。
ガイサはまさに狼か獅子か、肉食獣かと思う形相を作り、犬歯をむき出しにして怒りの雄叫びを上げ。
そして次には、必ず獲物の喉笛に食らいつかんとする獣の如きの前動作を見せ。
目の前の気配に、シルエットに。その健脚での渾身の踏み切りで飛び出した。
――ドゥンッ!
「ぎャぽっ゛!?」
だが、その渾身のそれが実を結ぶことは無かった。
濁った歪な悲鳴が響いたのと同時。
まさに飛び出した瞬間であったガイサの体は、しかしそれを押し返し止められるような形で。思いっきりもんどり打ち、綺麗なまでのくの字を描き反らしている。
その額には、赤黒い大穴が空いていた。
「ぉ゜……?」
そしてそれまで憤怒の形相を浮かべていた顔を、呆けた驚きのそれに変え。次には糸が切れた人形のように、ガイサは床へと崩れ沈み。
そして、二度と動く事は無くなった。
恐ろしい悪逆の傭兵頭、ガイサの。しかしあっけない最後であった。
「――沈んだ」
そんな、息絶え沈んだガイサの目の前の向こう
そこには、銃口からうっすらと煙の上がる10.9mm拳銃を、今にガイサを撃ち沈めたそれを片手のみで突き出し構え。
そして堂々とした様相で立ち構える。
須藤の揺ぎ無き姿があった。