ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界!   作:えぴっくにごつ

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Part31:「ヤツさ」

 第3小銃分隊がT字路に設けられた火点を、そこの機関銃銃座を無力化したことにより。

 傭兵側は十字砲火態勢を喪失。

 場の脅威度の低下から、状況はいよいよ前進観測隊側が攻める形に傾き。

 傭兵側は残された正面教会の機関銃を頼るように、教会周りを固めて籠城の様子を見せ始めた。

 

 

「っー……追い詰められて、躍起になってるわね」

 

 教会からの機関銃銃火は、教会から伸びる正面通りに無我夢中の様相でばら撒かれている。

 その教会から正面に一ブロックのみを離れた交差路では。御邸以下、集合した各隊各員が散会展開し。

 建物や、寄せて配置停車させた装甲車輛にカバーして銃火を凌ぎながらも。隙あらば銃撃攻撃を返し、対峙交戦している状況だ。

 

「教会玄関周りを固めてる敵は、削り減りつつありますが。結局ネックは上の機関銃です」

 

 面白くなさそうに口を鳴らしながら、遮蔽から向こう教会を観察していた御邸に。

 同じ場にいる伊国が状況の進捗を伝え、併せて教会の機関銃の無力化が焦点であることを紡ぐ。

 しかし先にも言及されたが、教会内部には住民の拘束されている可能性が大きいため。携行対戦車火器の類や、車載の重火器・火力の安易な使用はまだできない。

 

「じゃあ、あと必要なのは少し強引な一押しね――各班、車輛も。スモークを準備して、援護火力の用意もッ」

 

 伊国からの言葉を受けた御邸はそんな一言を零すと、次には周辺の各隊各員に指示の声を張り上げる。

 

「で、その強引な一押しは誰がやるんです?」

「あの人よ――」

 

 動き始めた周りの各員を見ながら、その所を尋ねた伊国に。

 御邸はその可憐な顔を、しかし渋く困ったような色に染めて答えた。

 

 

 それから準備が整い、また御邸の号令が出されると。

 展開中の各隊各員は、教会の正面玄関周りの防御を固めた敵に、火力をより苛烈なものとして集中。

 固めた防御も甲斐なく、向こう周りの傭兵たちは次に次にと撃ち抜かれ崩れ。

 そして頃合いを見計らって、各員や各車輛から発煙弾が投げ入れられ、あるいは射ち込まれ。

 教会の正面周りには煙幕が濛々と立ち込め始める。

 

 そして。

 御邸等の展開位置する交差路からより前方、教会のすぐ傍、目と鼻の先にある一軒の家屋より。

 煙幕が充満したタイミングを見計らい、身に息を潜めていたその「シルエット」等が。

 家屋を飛び出し、全速で駆け。そして立ち込める煙幕の中へと突っ込んだ。

 

 

「クソ、クソ、クソォっ!なんだってんだァ!?」

 

 教会の中、その聖堂の真ん中では、傭兵団の頭のガイサが癇癪を起して声を荒げる姿があった。

 

 「キカンジュウ」とやらの力で優位に立てたと思ったのも僅かな暇。

 敵はそれならばと言うように、その対応は熟知していると見せつけるかのように。

 憎らしいまでの手早い動きにて、その策にて。「キカンジュウ」を置いた陣の一つを潰し。

 そして今はその手数を増やし、こちらを潰さんと教会を包囲し迫っていた。

 

 こんな事態は想定もしていなかった。

 ガイサたち傭兵団は、碌に逆らう力も持たぬこの町から糧を奪い。己の腹に欲を満たせることを信じて疑わなかった。

 

 だがそのはずは、その目論見は挫かれ、どころか己たちが窮地に陥っている有様。

 受け入れ難い状況に現実に、今のガイサの頭には困惑狼狽とそれ以上の憤慨しかなかった。

 

「おい!そいつらを引っ張って来て並べろ!少しでも足しにするんだ!」

 

 次には憤慨の心情のままに、ガイサはまた声を荒げて近くの傭兵たちに命じる。

 示されたのは、今も聖堂内の隅で体を寄せ合う子供たちと、それをせめて囲い庇うディーロ始め老人たち。

 ガイサが企て命じたのは、そのディーロたちを利用して肉の盾とすること。

 

「よせ、やめろ!子供たちに手を出すな……っ!」

「うるせェ!」

「オラ!大人しく来いやぁっ!」

 

 ディーロはその子供に老人たちの一番前に庇い立ち、傭兵たちの企みを阻み抗おうとするが。

 しかし危機的状況下で焦れて動揺し、己のかわいさも助け。傭兵たちはそんなディーロたちに脅かし命じる怒鳴り声を飛ばし。

 次にはディーロに老人子供たちを引き摺り立たせるべく。

 

 その複数の乱暴な手が、ディーロたち伸びて捕まえようとした。

 

 ――ピピピ。

 

 何か、小さくしかし確かに響いた異質な音が。ガイサを始め傭兵たちに、そしてディーロに老人子供たちに届き。

 その動きを阻み止めたのはその時。

 

 ――直後瞬間。

 教会聖堂の正面の大きな扉が、劈く如きの爆発音が響くと同時に、外側から叩き吹っ飛ばす勢いで開かれた。

 次には外に立ち込めていた煙幕が、土砂崩れにも似た形で流れ込んで来る。

 

 ――そして、その煙の内からまるで割り開く様相で。

 滑らかに、しかし堂々とした動きで踏み入り現れたシルエットがあった。

 

 それは、須藤だ。

 

「!……がェっ!?」

「ぎゃァ!?」

 

 また直後だ。鈍くも劈く破裂音が連続的に響いたかと思えば。

 今にディーロに老人子供たちを捕まえようとしていた傭兵たちが、そして事態から半分呆けた様で振り向きかけていた傭兵たちが。

 次に瞬間には、立て続けにもんどり打って悲鳴を上げた。

 

 視線を辿り戻せば、現れ堂々と押し進む須藤のその手には、愛用の大口径リボルバーである10.9mm拳銃が。今のそれを成し遂げた得物が見える。

 

「な……!?うぎゃァ!?」

「うげェァ!?」

 

 起こりはその一つに留まらず。また直後には聖堂内の別位置に居た傭兵たちが、同じく立て続けに体を打たれ、弾かれ吹っ飛ぶまでの勢いで崩れて行く。

 

 視線をまた正面扉の側に戻せば。

 正面先頭を務め踏み込んで来た須藤に続き、少し開いた縦隊を作る形で。

 

 加納が、今に撃ち鳴らした20式5.56mm小銃 IARを構えて。

 さらにそれを背後からカバーする形で、M240Gを構えた薩摩が。

 

 二名どちらもやはり煙幕を身体で割る様相を見せながら、立て続けに踏み込み現れた。

 

「ぎゃぅ!?」

「ひぎゃっ!?」

「ごうォ!?」

 

 そんな様子光景すらも一瞬。次にはそれぞれの装備火器の銃声が遠慮なく響き上がり。

 各個が突入からの展開行動を伴いつつも、それぞれの判断から各方へ向けて撃った銃撃が。

 教会聖堂内の各所に散在していた傭兵たちを、その抵抗の気配すらを認めるよりも前に撃ち弾き、あるいは沈めていく。

 

「チィッ!――ヤロォォァァア!!」

 

 そんな中、唯一動いた。行動に移行できて飛び出していたのはガイサ。

 

 その位置関係は、ちょうど須藤のすぐ斜め前。

 ガイサは怒りの雄叫びを張り上げながら、己が得物である大剣を抜いて振り上げ。同時進行で、飛び掛かるまでの勢いで須藤との間合いに踏み込む。

 

 ガイサは悪辣と言われても否定はできない傭兵頭だが、少なくともその剣を扱う腕っぷしは本物だ。

 その一太刀を喰らえば、無事では済まない。

 

 そして怒りの感情のままにガイサはその剣撃を、須藤へと叩き振るい降ろした。

 

 ――だが。

 

「ぁっ!?」

 

 ガイサの剣撃は、儚くも空振りに終わった。

 

 見れば、須藤はその身体を最低限。半歩分捻りずらすだけの動きで位置を変え。

 ガイサの剣撃を、紙一重のそれで見事に回避して見せていた。

 

「ヤロァっ……――ぎゃブぐぃっ!?」

 

 渾身の一撃が空振りに終わり、一層の激昂を覚えたガイサだが、しかしそれも一瞬。

 空振りからつんのめる形で姿勢を崩したガイサの、その顔面を。次の瞬間には襲ったのは強烈な打撃だ。

 

 また見ればガイサの顔面鼻面にめり込んでいたのは、10.9mm拳銃のストック・ホルスターの硬い銃床角。

 須藤は紙一重の回避を成功させると同時に、拳銃を振るい薙ぎ、それを鈍器としてガイサの顔面に一撃をお見舞いして見せたのだ。

 

「ぐィァぁ……っ」

 

 痛烈な一撃を食らわされたガイサは数歩よろめき後退し、しかし倒れてしまいそうな所をその健脚で踏み留まる。

 

「ふじゃァ……ふっじャぁけンなァァァア……っ!!!」

 

 その顔面殴打の痛みが、いよいよガイサの激昂を誘発。

 ガイサはまさに狼か獅子か、肉食獣かと思う形相を作り、犬歯をむき出しにして怒りの雄叫びを上げ。

 そして次には、必ず獲物の喉笛に食らいつかんとする獣の如きの前動作を見せ。

 

 目の前の気配に、シルエットに。その健脚での渾身の踏み切りで飛び出した。

 

 ――ドゥンッ!

 

 「ぎャぽっ゛!?」

 

 だが、その渾身のそれが実を結ぶことは無かった。

 濁った歪な悲鳴が響いたのと同時。

 まさに飛び出した瞬間であったガイサの体は、しかしそれを押し返し止められるような形で。思いっきりもんどり打ち、綺麗なまでのくの字を描き反らしている。

 

 その額には、赤黒い大穴が空いていた。

 

「ぉ゜……?」

 

 そしてそれまで憤怒の形相を浮かべていた顔を、呆けた驚きのそれに変え。次には糸が切れた人形のように、ガイサは床へと崩れ沈み。

 そして、二度と動く事は無くなった。

 

 恐ろしい悪逆の傭兵頭、ガイサの。しかしあっけない最後であった。

 

「――沈んだ」

 

 そんな、息絶え沈んだガイサの目の前の向こう

 

 そこには、銃口からうっすらと煙の上がる10.9mm拳銃を、今にガイサを撃ち沈めたそれを片手のみで突き出し構え。

 そして堂々とした様相で立ち構える。

 

 須藤の揺ぎ無き姿があった。

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