ジェイ・ソーティー 自衛隊異世界任務記録 指令は「冒険」、派遣先は幻想的なファンタジー世界! 作:えぴっくにごつ
Part34:「一時にて」
それから日が沈む直前程に、応援で要請した中隊戦闘群が到着合流。
第101前進観測隊は、主題である押収した銃火器の見分調査他、各種事項を調整し引継ぎ。
そして翌朝早朝から再開予定の行動に備え、フレンクィの町で、正しくはその町に隣接する土地にて野営に入った。
野営地は簡易な防護陣地を。壕を掘り銃座火点を設置し、戦闘車両を配置し、それ等で囲う形態で構築。
必要とする者はその内で宿泊天幕を組み。あるいは平気であり手間を省いてでも休息時間を多く取りたい者は車中泊を選択。
立哨警戒は中隊戦闘群が主として担ってくれる事となったため。前進観測隊各員は糧食等にて各自食事を済ませた後、それぞれの休息に入った。
フレンクィの町から、町長のディーロ始め住民たちからは。恩人である自衛隊に町の宿泊施設や公共施設の利用提供の提案があったが。
これは一部望む隊員や、引き続きの町での住民の救護看護の都合がある隊員などが恩恵に預かるに留まり。
多くの隊員は慣れて馴染み、勝手も知れた野営での休息を選択した。
これには本日の思わぬ「脅威」との接触から、落ち着かぬ、張り詰めた気持ちの隊員が少なからずいたことも理由にあった。
ちなみに一部の町での宿泊を望む隊員とは。そのような状況背景下でも我を崩さぬ薩摩などが代表であったりする。
「――」
そんな野営のために構築された陣地の内にある、一つの業務天幕。
前進観測隊隊長の一時事務所、件宿泊室として組まれたその内に。その隊長である須藤の姿があった。
時刻は地球基準で、そろそろ日付の変更が近づいている頃であり。この世界でもわずかなズレは観測されていたが、しかしそう変わりはない時刻。
そんな頃合いに、照明で最低限照らされる天幕の中。須藤はパイプ椅子に座して机に向かい、置いたノートパソコンの画面に目を落とし。
そろそろぬるくなり始めたコーヒーを啜りながら、明日以降の行程の確認他。隊長に求められる各仕事を行っていた。
「?」
そんな須藤は、しかし次には天幕の外に気配を感じる。
そして振り向くと同時。天幕の出入り口が伺いつつの形で静かに開かれ、一人の人影が顔を覗かせた。
「あ、ゴメンねスドウ。まだ起きてる気配がしたから」
覗き現れた顔は、可憐な美少女……と見紛う程の美少年、エルフのクィーシェだ。
「あぁ、構わない。君も起きていたのか」
「一回寝ようとしたんだけど、寝付けなくてね。ちょっと動いて仕切り直してたところ」
須藤を見ると同時にまず詫びる言葉を紡いだクィーシェに、須藤は構わない旨と併せて尋ね返し。それにクィーシェはまたそう答え返した。
「寝床が良くないかい?」
「ううん、そこは心配しないで。僕たちだって野営は慣れてる、ただちょっと今日も目まぐるしかったせいかな」
懸念し尋ねた須藤に、しかしクィーシェはその心配はないことを理由と併せて答える。
「よければお湯を口にしていくか、体が温まって入眠の助けになる」
「ありがとう、それじゃあ」
そのクィーシェに須藤は提案、机の端に置いてあった電気ケトルと未使用のマグカップを手に取り、湯を注ぐ。
クィーシェもそれを受けることとし、天幕内に入って空いていた簡易ベッドに腰掛けた。
「何か不自由してることはないか?こんな行程中だから、すまないが全てを手配はできないが」
「旅路の苦労はそれは少しはあるけど……それは当たり前だし、嫌な事は何も。皆良くしてくれてるよ、先の夕食も楽しかった」
マグカップを受け渡しつつ尋ねた須藤の言葉に、クィーシェはそう回答を返す。
クィーシェたち冒険者パーティの三人も、前進観測隊に同行中もできる限りの事は自分たちで行おうと努めていた。
先の夕食の時間には、自衛隊側が戦闘糧食Ⅱ型(パック飯)を主体とする夕食をクィーシェたちに提供する一方。
クィーシェたちも保存食料を活用調理した冒険者料理を振舞うなど、互いにとって興味深い夕食の時を過ごしていた。
「ありがとう――キミは遅くまで仕事をしていたの?」
「隊長であり管理責任者だからな、抑えやっておく要項は少なくなくてな。ただ、今日はもうここで切るから心配ない」
マグカップを受け取り礼を言いつつ、今度はクィーシェが尋ね返し。それに須藤は自身の立場の説明と併せてそう返す。
「そう……あちっ」
その回答を聞きつつマグカップを口にしたクィーシェは、しかしまだ熱かったお湯に、小さく可愛らしく声を漏らしてしまう。
「あぁ、まだ熱いか。水を」
「あっ、大丈夫」
それを見た須藤は火傷なども懸念して、また置いてあった水ボトルを手に取るが。
しかしクィーシェはそれを差し止める。
「ゴメンね、ちょっとのことだけどお願い」
そして次に、クィーシェは何か宙空に視線を向けて言葉を紡ぐ。
「?――ッ」
それを不思議に思ったが須藤だったが、次にはクィーシェのその行為の理由を証明するように、「それ」が形となって現れた。
クィーシェの周りに「フッ」と現れたのは、三つほどの小さな薄緑の発光体。
それぞれが綿毛のような印象を抱かせる見た目で、ぼんやりとした発光を伴いながら。クィーシェの周りを幻想的に回り始める。
「魔法、か」
それを見て須藤はそう言葉を零す。
言葉の通り、それはこの異世界の人々が体得する魔法現象のものだ。
「風のマナたちに、冷ましてもらおうと思って」
そんな出現した『風のマナ』たちと触れ合うように手を翳しながら、クィーシェは己の考えを伝える。
だが、
「!」
次にそのマナたちが見せた仕草に、クィーシェは微かに目を剥く。
呼び出したマナたちはしかし直後、何かまるで小動物か驚いたかのような、ビクと震え跳ねる動きを見せたかと思うと。
次にはやはり小動物が逃げ隠れするかのような動きで、慌てた色でフッと姿を消してしまったのだ。
「あ、あれ……っ?」
「どうした」
次には起こったそれに戸惑いを見せ零したクィーシェに、須藤が尋ねる。
「わ、分からない……マナたちが何か『嫌がって』……隠れちゃった」
しかしクィーシェにもその理由は分からず、また戸惑う声で返す。
「何かにびっくりしたみたいというか……「気配」?、に怖がったみたい……」
そして戸惑いつつ、彼が『感じ』分かったことを伝えるクィーシェ。
「ッ、あぁ――」
しかし、その伝えられた旨から。須藤はその原因に思い当たった。
「すまない、おそらく自分が原因だ」
「え?」
そして須藤は次には詫びる言葉をクィーシェに向けた。しかし方やのクィーシェは、唐突なその詫びる言葉に理解が及ばず、少しの困惑の色で声を返す。
「今出現した、「子たち」か?それは魔法の存在なんだろう?だから自分の――「反特性現象効果」を警戒したんだ」
「はん……とくせい……?」
そして次に須藤が明かした旨、事由に。しかしクィーシェはまた疑問の言葉を零した。